レオラギ短編
ラギーの同室者である僕は、ラギーの私物に一切手を付けない、余計なことはしないという契約の元に観察することを許されている。対価はそれだけでいいのかとか気持ちが悪いなど散々言われたが、僕が本当に何もしないと理解してからは貯金箱だって机の上に置いてある。初めは警戒して隠してたみたいだけど、僕がお金に興味がなく盗まないってのが分かっているからだろう。毎日小銭を嬉しそうに入れてる姿は見ていて可愛い。思わず僕もニコニコしてしまう。
僕は臆病でチビで腕力だってないし、初めからラギーに勝てる要素がこれっぽっちもない。常におどおどしているし、自分の存在を消してしまいがちなので、クラスでもあまり認識されていないと思う。あぁ、そういえばなんかいたなそんな奴って認識だろう。そんな僕だから、気に入らないことをしたら抵抗する間もなく頭からガブッとされるに決まってる。
観察がしたいと言ったのだって、臆病すぎて近くにいる人の動向が気になってつい目で追ってしまうからだ。この癖だけはどうしても抜けなくて相手に不快感を与えてしまうから、同室のラギーには先に言っておくことにしたのだ。
そんなわけで、僕はラギーの一日を本人了解の元に観察している。観察日記をつけているわけじゃないけど、だいたいいつも同じだ。
ラギーの朝は早い。朝練もあるからだろうけど大体朝日が昇る少し前に目覚める。ベッドの中で大きく伸びをしてからすぐに動き出すから、朝に弱い方の僕はすごいなと思う。
朝練がある日は運動着、休みの日は寮長のお下がりだっていう制服を着て部屋を出ていく。ラギーには朝一番に寝汚い寮長を起こすという重大な役目があるんだって。
前にラギーが寝込んだ時に頼みこまれて仕方なく寮長を起こしに行ったことがあるけど、激しく威嚇されてこのままだと食われてしまうと震えて逃げ帰った。役立たずでごめんねってベソをかきながらラギーに謝ったことがあるけれど、もう頼まれても二度と行かない、なんとしても断ると心に決めている。今は寮長に憧れているジャックくんもいるから、ラギーも頼む人に困らないと思うし。
僕は草食動物だからか通常時は平気だけど、寮長に本気で威嚇されると本能的に逃げたくなってしまうって告げたら、眉尻を下げてそれは可哀想なことをしたッスって謝られた。寮長のことは格好いいと思うけれど、遠くから観察するのが性に合ってる。
同じクラスだからラギーのことを授業中もつい目で追ってしまうんだけど、厚くふっくらとした耳を震わせながら真面目に勉強している姿は部屋での姿と一緒だ。後ろから見てると、あー分かんないんだな、とか、自信たっぷりっていうのがピョコピョコ動く耳を見てるだけでわかる。意識してる時は違うんだろうけど、無意識の時はけっこう分かりやすいんだよなあ、あの耳。気付いてるのかな、あれ。
教室の移動や休み時間にもラギーはよく消える。しつこく言わないと授業に出ないで寝ている寮長を起こしに行ってるんだって。たまにラギーが背負うようにしながら寮長を引きずってるのを見るけど、あの細い体でよく運んでるなとビックリする。
手伝いたいところだけど一度その状態のラギーに近づこうとしたら、寮長の目がパッと開いて睨まれたから絶対に近づかないでおこうと心に誓っている。ライオンな寮長に言うのも変だけど、あれは絶対狸寝入りだ。ラギーも分かっててやってるんだと思うんだけどなあ。
二人の関係に口出すのも野暮だし、巻き込まれるのは絶対に嫌だから、僕は何も気づいていないんだということにしたい。
お昼もラギーは寮長の食事だなんだと駆け回っている。ちょっとごめんよー、って言いながら人波掻き分け、目当ての品を手に入れる手腕は見事だ。僕は人が去ったところから残り物を買うだけで精一杯。少食だしそんなに食にもこだわりが無いから構わないんだけど、どうしても食べたいものがある時だけラギーに仕事としてお願いする。ラギーのデリバリーサービスは早くて確実だ。本当にすごいのでオススメだ。
授業が終わったラギーは、その日によってマジフト部で活躍していたり、他の部の助っ人として試合をしていたりと忙しい。
その他に寮長の部屋を掃除して洗濯をしたりしてるんだから驚きだ。よくあの体力なさそうな薄い体で動き回れるなあと感心する。休みの日はシーツとか大物を洗って、その付近で昼寝してる姿を見ることができる。でも近付くと目を覚ましちゃうから遠くから眺めるだけ。たまにその横に寮長もいたりするので、絶対に近付いてはいけない。僕は知っている。
朝から晩までそんな調子で、自分のことをするのはほんの数時間。授業の復習と予習をしてから、ベッドに転がったなと思うと数秒で寝ている。寝付きの良さは、どこでもすぐ寝れるという寮長と変わらないと思う。
余計なことはしない、干渉しないという契約なので見て見ぬふりをしてるけど、ラギーは部屋に帰ってこない日もある。これが他の寮なら点呼の際に同室者が部屋にいない時は嘘をついたりしないといけないんだろうけど、ラギーがいるのは聞いてないけど多分寮長のとこだからそんな心配はいらない。
僕は嘘をつくのが下手だから本当によかった。
多分、寮長の部屋にもラギーの服があるからだろうけど（もしくは、そのまま服をお下がりで貰っちゃうのかも）、朝方にそっと着替えるために戻ってくるなんてことはない。
いつものように教室で会って、僕は定位置に座りラギーを後ろから観察する。
「あっ」
思わず声を出してしまったけど、その声は小さすぎて周りには気付かれなかったようでホッとする。目立つのはごめんだ。
声が出てしまったのは、ラギーの首筋に噛まれた痕が見えたからだ。多分、それは微妙な角度でしか見えない場所に付けてあって。
独占欲が強い寮長は、ラギーを観察している僕とちょいちょい目が合うため、たまにこうやって牽制してくる。
ラギーのフカフカの耳とか触ったら気持ち良さそうとは思うけど、僕にはラギーとどうこうっていう気持ちはこれっぽっちもない。
まあ、寮長は僕だけではなく学園全体に対してもたまにやってるからなあ。威嚇されると震え上がってしまうけど、こういうのは寮長可愛いなあと思ってニコニコしてしまう。
今日も僕は二人ともお幸せになんて思いながら、ラギーのピョコピョコ動く耳を観察しているのだった。
僕は臆病でチビで腕力だってないし、初めからラギーに勝てる要素がこれっぽっちもない。常におどおどしているし、自分の存在を消してしまいがちなので、クラスでもあまり認識されていないと思う。あぁ、そういえばなんかいたなそんな奴って認識だろう。そんな僕だから、気に入らないことをしたら抵抗する間もなく頭からガブッとされるに決まってる。
観察がしたいと言ったのだって、臆病すぎて近くにいる人の動向が気になってつい目で追ってしまうからだ。この癖だけはどうしても抜けなくて相手に不快感を与えてしまうから、同室のラギーには先に言っておくことにしたのだ。
そんなわけで、僕はラギーの一日を本人了解の元に観察している。観察日記をつけているわけじゃないけど、だいたいいつも同じだ。
ラギーの朝は早い。朝練もあるからだろうけど大体朝日が昇る少し前に目覚める。ベッドの中で大きく伸びをしてからすぐに動き出すから、朝に弱い方の僕はすごいなと思う。
朝練がある日は運動着、休みの日は寮長のお下がりだっていう制服を着て部屋を出ていく。ラギーには朝一番に寝汚い寮長を起こすという重大な役目があるんだって。
前にラギーが寝込んだ時に頼みこまれて仕方なく寮長を起こしに行ったことがあるけど、激しく威嚇されてこのままだと食われてしまうと震えて逃げ帰った。役立たずでごめんねってベソをかきながらラギーに謝ったことがあるけれど、もう頼まれても二度と行かない、なんとしても断ると心に決めている。今は寮長に憧れているジャックくんもいるから、ラギーも頼む人に困らないと思うし。
僕は草食動物だからか通常時は平気だけど、寮長に本気で威嚇されると本能的に逃げたくなってしまうって告げたら、眉尻を下げてそれは可哀想なことをしたッスって謝られた。寮長のことは格好いいと思うけれど、遠くから観察するのが性に合ってる。
同じクラスだからラギーのことを授業中もつい目で追ってしまうんだけど、厚くふっくらとした耳を震わせながら真面目に勉強している姿は部屋での姿と一緒だ。後ろから見てると、あー分かんないんだな、とか、自信たっぷりっていうのがピョコピョコ動く耳を見てるだけでわかる。意識してる時は違うんだろうけど、無意識の時はけっこう分かりやすいんだよなあ、あの耳。気付いてるのかな、あれ。
教室の移動や休み時間にもラギーはよく消える。しつこく言わないと授業に出ないで寝ている寮長を起こしに行ってるんだって。たまにラギーが背負うようにしながら寮長を引きずってるのを見るけど、あの細い体でよく運んでるなとビックリする。
手伝いたいところだけど一度その状態のラギーに近づこうとしたら、寮長の目がパッと開いて睨まれたから絶対に近づかないでおこうと心に誓っている。ライオンな寮長に言うのも変だけど、あれは絶対狸寝入りだ。ラギーも分かっててやってるんだと思うんだけどなあ。
二人の関係に口出すのも野暮だし、巻き込まれるのは絶対に嫌だから、僕は何も気づいていないんだということにしたい。
お昼もラギーは寮長の食事だなんだと駆け回っている。ちょっとごめんよー、って言いながら人波掻き分け、目当ての品を手に入れる手腕は見事だ。僕は人が去ったところから残り物を買うだけで精一杯。少食だしそんなに食にもこだわりが無いから構わないんだけど、どうしても食べたいものがある時だけラギーに仕事としてお願いする。ラギーのデリバリーサービスは早くて確実だ。本当にすごいのでオススメだ。
授業が終わったラギーは、その日によってマジフト部で活躍していたり、他の部の助っ人として試合をしていたりと忙しい。
その他に寮長の部屋を掃除して洗濯をしたりしてるんだから驚きだ。よくあの体力なさそうな薄い体で動き回れるなあと感心する。休みの日はシーツとか大物を洗って、その付近で昼寝してる姿を見ることができる。でも近付くと目を覚ましちゃうから遠くから眺めるだけ。たまにその横に寮長もいたりするので、絶対に近付いてはいけない。僕は知っている。
朝から晩までそんな調子で、自分のことをするのはほんの数時間。授業の復習と予習をしてから、ベッドに転がったなと思うと数秒で寝ている。寝付きの良さは、どこでもすぐ寝れるという寮長と変わらないと思う。
余計なことはしない、干渉しないという契約なので見て見ぬふりをしてるけど、ラギーは部屋に帰ってこない日もある。これが他の寮なら点呼の際に同室者が部屋にいない時は嘘をついたりしないといけないんだろうけど、ラギーがいるのは聞いてないけど多分寮長のとこだからそんな心配はいらない。
僕は嘘をつくのが下手だから本当によかった。
多分、寮長の部屋にもラギーの服があるからだろうけど（もしくは、そのまま服をお下がりで貰っちゃうのかも）、朝方にそっと着替えるために戻ってくるなんてことはない。
いつものように教室で会って、僕は定位置に座りラギーを後ろから観察する。
「あっ」
思わず声を出してしまったけど、その声は小さすぎて周りには気付かれなかったようでホッとする。目立つのはごめんだ。
声が出てしまったのは、ラギーの首筋に噛まれた痕が見えたからだ。多分、それは微妙な角度でしか見えない場所に付けてあって。
独占欲が強い寮長は、ラギーを観察している僕とちょいちょい目が合うため、たまにこうやって牽制してくる。
ラギーのフカフカの耳とか触ったら気持ち良さそうとは思うけど、僕にはラギーとどうこうっていう気持ちはこれっぽっちもない。
まあ、寮長は僕だけではなく学園全体に対してもたまにやってるからなあ。威嚇されると震え上がってしまうけど、こういうのは寮長可愛いなあと思ってニコニコしてしまう。
今日も僕は二人ともお幸せになんて思いながら、ラギーのピョコピョコ動く耳を観察しているのだった。
