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1. ハウスキーパー開始

 ついに来た。オレの入寮日が!
 まあ、入寮日とは名ばかりの、ハウスキーパー一日目なんだけど。
 一応、住み込みバイトが決まった翌日に場所の下見はしていた。学園側からもらった住所と同居人の名前を頼りに行ってみたら、超高級マンションの最上階だった。
 最上階に住む大学生ってなに? オレと天と地の差があるんだけど、何食べんの、何話すの、まったく分かんねーってなってて、本当にこれからが不安すぎる。
 しかも、この人の家ってライオン族のトップだ。学園側があまりこちらに情報を流さなかったのも頷けるけど、そんなとこにオレが行っても良いんだろうか。それこそどこの馬の骨とも分からない者を同居させるって不安じゃないのか。もうとっくに調査済だとしても、お眼鏡にかなったことが不思議でならない。

「本気なんスかねー」

 とにかく行ってみるしかないか。追い出されたら困るから、なんとしてもしがみつかねーと。
 軽く両頬を叩き気合いを入れると、意を決してオレはインターホンを押した。
 しかし、いつまで経っても応答がない。仕方ないのでもう一度押す。またしても無反応。ついイラッとして、尻尾が横にあった壁を叩く。
 いやいや寝ているだけかもしれないし、とオレは気を取り直し再度インターホンを押した。
 また反応がなかったら電話してやろうと思っていると、ようやく最上階と繋がった。最高に不機嫌な声が聞こえる。初対面でこれってまずいのでは……。しかし、もう繋がってしまったので仕方が無い。

「初めまして、今日からハウスキーパーとして……」
「上がってこい」

 挨拶を遮られて名前も言わせてもらえなかった。同居人の印象は史上最悪だ。これと毎日顔を合わせて生活するのきつくないッスか。
 これだから金持ちは嫌いなんだ、くそったれ!
 見られてると困るから顔には出さず、涼しい顔をしたままオレは開いたドアを抜けエレベーターに乗る。
 回れ右して帰りたいところだけど、オレには学園に通うという使命があるから我慢だ。
 尻尾だけは我慢できず壁を叩き続けていたけど仕方ない。エレベーターを降りたらやめるから、今はどうか許して欲しい。
 営業用の笑顔を貼り付け、オレは最上階の扉を開いた。
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