《第17話》オンセン。
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わんこそばを満喫したふたりは、レンタカーで花巻市内を出発。
「思ったより遠いね」
「そうだな」
ナビを見ると、まだしばらく山道が続く。
街並みはいつの間にかなくなり、木々が増え、道路の両側は緑一色になっていた。
薫が笑う。
「めちゃくちゃ山じゃん」
「温泉地だからな」
「花巻温泉って駅の近くかと思ってた」
「俺も」
ふたりで笑う。
神田がぽつり。
「車借りて正解だったな」
「ほんとそれ!」
薫は何度も頷く。
「バスだったら時間気にしなきゃだったもん」
「好きな所にも寄れない」
「レンタカー最高!」
窓を開けると、少しひんやりした山の空気が入ってくる。
「空気気持ちいい~!」
「東京と全然違う」
神田も深呼吸する。
「ああ」
しばらく走ると、大きな案内板が見えてきた。
『花巻温泉』
「着いた!」
薫が嬉しそうに前を指さす。
温泉街へ入る。
ホテルが並び、木々に囲まれた落ち着いた雰囲気。
「いいところだな」
神田も辺りを見回す。
その時だった。
「あーーーーっ!!」
薫が突然大きな声を出す。
神田がびくっとする。
「どうした」
「ユウ!」
窓の外を指さす。
「あれ見て!」
神田が視線を向ける。
そこには大きな看板。
『花巻温泉 バラ園』
「……バラ園。」
「バラ園あるーーー!!」
薫のテンションが一気に跳ね上がる。
「えっ!えっ!バラ!?温泉に!?」
神田は思わず笑った。
「そんなに好きか」
「好き!」
即答。
「めっちゃ好き!ロリータの世界じゃん!絶対行く!」
「まだホテル着いてないぞ。」
「チェックインしたら!温泉入る前!いや、温泉入った後!夜まで開いてるかな!?」
一人で予定を組み始める。
神田は苦笑するしかない。
「落ち着け」
「だってバラだよ!?」
「こんな山の中でバラ園あると思わなかった!」
薫はスマホで営業時間を調べ始めた。
「あ!開いてる!今日行ける!」
ガッツポーズ。
「やったぁ!!」
神田はその様子を見て、静かに笑う。
「温泉旅行なのに、最初の目的地がバラ園になったな」
薫は満面の笑みで振り向いた。
「どっちも楽しむ!温泉も!バラも!」
神田は頷く。
「じゃあ今日は、お前の行きたい所を回ろう」
薫は嬉しそうに笑った。
「ありがとう!」
そして車は、花巻温泉の緑豊かな敷地へとゆっくり入っていった。
温泉の湯けむりの向こうには、色とりどりのバラが咲く庭園が広がり、薫は子どものように目を輝かせていた。
ホテルに到着。
フロントでチェックインを済ませる。
「こちらがお部屋の鍵でございます」
「ありがとうございます」
部屋へ入ると、窓の向こうには山々の緑が広がっていた。
「わぁ……」
薫は窓際まで駆け寄る。
「景色きれい!」
神田もキャリーケースを置いて窓を見る。
「静かだな」
「鳥の声しか聞こえない」
薫は深呼吸した。
「癒やされる~」
しかし数秒後、くるりと振り返る。
「ユウ」
「なんだ」
「荷物置いた」
「置いたな」
「行こう」
「どこへ」
薫が満面の笑みで指をさす。
「バラ園!」
神田は思わず笑う。
「やっぱり先か」
「だって気になるもん!」
「温泉は逃げないけど、明るいうちのバラは今しか見られないよ?」
「確かに」
「ね?」
期待いっぱいの目。
神田は降参したように頷く。
「行くか」
「やったー!」
薫は小さなショルダーバッグだけ持つ。
「カメラ持った?」
「スマホで十分」
「私はいっぱい写真撮る!」
「知ってる」
ホテルを出て、歩いて数分。
ふわっと甘い香りが風に乗って届く。
「……」
薫の足が止まる。
「もういい匂い」
「本当だ」
入口をくぐると。
一面に咲き誇る色とりどりのバラ。
赤。
白。
黄色。
ピンク。
オレンジ。
見渡す限りのバラに囲まれている。
薫は思わず両手を口元に当てた。
「……わぁ」
その一言しか出ない。
「すごい……」
神田は隣でその表情を見る。
「そんなに嬉しいか」
薫は何度も頷く。
「うん」
「写真で見るより何倍もきれい」
ゆっくり歩き始める。
「あ、この色かわいい!あっちは真っ赤!こっちは香りが全然違う!」
一株一株立ち止まっては楽しそうに眺める。
神田はその少し後ろを歩く。
「バラ見てるお前も楽しそうだな」
薫が振り返る。
「えへへ。だって幸せ」
「そうか」
「ユウ!」
「ん?」
「写真撮って!」
「ここ!」
バラのアーチの下で両手を広げる。
神田はスマホを構える。
「笑え」
「もう笑ってる!」
パシャ。
画面には、満開のバラに囲まれて無邪気に笑う薫が映っていた。
神田は写真を見て、小さく頷く。
「いい」
「見せて!」
薫が駆け寄る。
画面を見るなり。
「わぁ!いい感じ!ユウ、写真上手!」
神田は照れくさそうにスマホをしまう。
「被写体がいい」
薫は一瞬固まってから顔を真っ赤にした。
「……そういうことさらっと言う。」
神田は首を傾ける。
「本当のことだ」
薫は笑いながら神田の腕にそっと自分の腕を絡めた。
「今日は最高の旅行になりそう」
神田もバラ園を見渡し、穏やかに微笑む。
「ああ」
バラ園をゆっくり散策し、ホテルへ戻る。
部屋で一息ついたあと。
神田が館内案内を手に取る。
「貸切露天風呂、予約制だな」
薫が身を乗り出す。
「入りたい!」
「空いてるか聞いてみる」
神田がフロントへ電話をかける。
「貸切露天風呂をお願いしたいんですが」
しばらく案内を聞き、
「……はい」
薫は横でそわそわ。
「どう?」
神田は受話器を押さえて小声で答える。
「夕方は埋まってる」
「えー」
「……」
再び電話。
「夕食後ですか」
少しして。
「その時間でお願いします」
電話を切る。
「取れた」
「ほんと?」
「ああ。夕食後の時間」
「やったー!」
飛び跳ねる薫。
「夜の露天風呂だ!」
神田も頷く。
「ちょうどいい。」
フロントでもらった案内図をテーブルに広げるヒロイン。
「ねえ、ユウ」
「ん?」
「これ見て」
神田が隣へ座る。
案内図には、3つのホテルが渡り廊下でつながっている図が載っていた。
薫が目を輝かせる。
「えっ」
「……」
「えぇぇぇ!?」
神田も案内図を見直す。
「3つのホテルの温泉」
「どこでも入れるのか」
「そうみたい!」
薫は案内図を指でなぞる。
「このホテルも。こっちのホテルも。あっちのホテルも!全部入れる!」
テンションが一気に爆発した。
「すごい!」
「温泉3か所!」
「露天風呂も違う!」
「内湯も違う!」
神田は笑う。
「そんなに嬉しいか。」
「嬉しい!」
薫は立ち上がる。
「どれから行こう!」
案内図を何度も見比べる。
「えー!最初はここ?いや、こっち?夜景ならあっち?朝風呂はここ?」
神田は腕を組みながら聞いている。
「決まらんな」
「決まらない!」
「全部魅力的!」
しばらく悩んで。
薫がぽつり。
「……」
神田を見る。
「制覇したい」
「全部か」
「うん!」
「3つ全部!」
神田は少し笑う。
「スタンプラリーみたいだな」
「そう!」
「温泉スタンプラリー!」
薫は拳を握る。
「目標!全制覇!」
神田も乗ってくる。
「今日2つ。明日の朝1つ。完璧!………いや」
薫が首を振る。
「今日3つ」
神田が吹き出す。
「入る気か」
「入る!」
「温泉旅行だもん!」
「一泊二日しかないんだよ?」
「全部入りたい!」
神田は苦笑しながら頷く。
「じゃあ無理しない程度にな」
「はーい!」
薫はタオルを持って立ち上がる。
「第一温泉!」
「出発!」
神田も立ち上がる。
「風呂上がりの牛乳も忘れるな」
薫は振り返ってにっこり笑う。
「もちろん!3つの温泉!牛乳!温泉まんじゅう!全部楽しむ!」
神田は笑いながらドアを開けた。
「忙しい旅行だな」
「最高にね!」
そう言って、二人は最初の温泉へ向かって歩き出した。
山あいの温泉街は夕暮れに包まれ始め、これから始まる“温泉制覇”に薫の足取りはどこまでも軽かった。
「思ったより遠いね」
「そうだな」
ナビを見ると、まだしばらく山道が続く。
街並みはいつの間にかなくなり、木々が増え、道路の両側は緑一色になっていた。
薫が笑う。
「めちゃくちゃ山じゃん」
「温泉地だからな」
「花巻温泉って駅の近くかと思ってた」
「俺も」
ふたりで笑う。
神田がぽつり。
「車借りて正解だったな」
「ほんとそれ!」
薫は何度も頷く。
「バスだったら時間気にしなきゃだったもん」
「好きな所にも寄れない」
「レンタカー最高!」
窓を開けると、少しひんやりした山の空気が入ってくる。
「空気気持ちいい~!」
「東京と全然違う」
神田も深呼吸する。
「ああ」
しばらく走ると、大きな案内板が見えてきた。
『花巻温泉』
「着いた!」
薫が嬉しそうに前を指さす。
温泉街へ入る。
ホテルが並び、木々に囲まれた落ち着いた雰囲気。
「いいところだな」
神田も辺りを見回す。
その時だった。
「あーーーーっ!!」
薫が突然大きな声を出す。
神田がびくっとする。
「どうした」
「ユウ!」
窓の外を指さす。
「あれ見て!」
神田が視線を向ける。
そこには大きな看板。
『花巻温泉 バラ園』
「……バラ園。」
「バラ園あるーーー!!」
薫のテンションが一気に跳ね上がる。
「えっ!えっ!バラ!?温泉に!?」
神田は思わず笑った。
「そんなに好きか」
「好き!」
即答。
「めっちゃ好き!ロリータの世界じゃん!絶対行く!」
「まだホテル着いてないぞ。」
「チェックインしたら!温泉入る前!いや、温泉入った後!夜まで開いてるかな!?」
一人で予定を組み始める。
神田は苦笑するしかない。
「落ち着け」
「だってバラだよ!?」
「こんな山の中でバラ園あると思わなかった!」
薫はスマホで営業時間を調べ始めた。
「あ!開いてる!今日行ける!」
ガッツポーズ。
「やったぁ!!」
神田はその様子を見て、静かに笑う。
「温泉旅行なのに、最初の目的地がバラ園になったな」
薫は満面の笑みで振り向いた。
「どっちも楽しむ!温泉も!バラも!」
神田は頷く。
「じゃあ今日は、お前の行きたい所を回ろう」
薫は嬉しそうに笑った。
「ありがとう!」
そして車は、花巻温泉の緑豊かな敷地へとゆっくり入っていった。
温泉の湯けむりの向こうには、色とりどりのバラが咲く庭園が広がり、薫は子どものように目を輝かせていた。
ホテルに到着。
フロントでチェックインを済ませる。
「こちらがお部屋の鍵でございます」
「ありがとうございます」
部屋へ入ると、窓の向こうには山々の緑が広がっていた。
「わぁ……」
薫は窓際まで駆け寄る。
「景色きれい!」
神田もキャリーケースを置いて窓を見る。
「静かだな」
「鳥の声しか聞こえない」
薫は深呼吸した。
「癒やされる~」
しかし数秒後、くるりと振り返る。
「ユウ」
「なんだ」
「荷物置いた」
「置いたな」
「行こう」
「どこへ」
薫が満面の笑みで指をさす。
「バラ園!」
神田は思わず笑う。
「やっぱり先か」
「だって気になるもん!」
「温泉は逃げないけど、明るいうちのバラは今しか見られないよ?」
「確かに」
「ね?」
期待いっぱいの目。
神田は降参したように頷く。
「行くか」
「やったー!」
薫は小さなショルダーバッグだけ持つ。
「カメラ持った?」
「スマホで十分」
「私はいっぱい写真撮る!」
「知ってる」
ホテルを出て、歩いて数分。
ふわっと甘い香りが風に乗って届く。
「……」
薫の足が止まる。
「もういい匂い」
「本当だ」
入口をくぐると。
一面に咲き誇る色とりどりのバラ。
赤。
白。
黄色。
ピンク。
オレンジ。
見渡す限りのバラに囲まれている。
薫は思わず両手を口元に当てた。
「……わぁ」
その一言しか出ない。
「すごい……」
神田は隣でその表情を見る。
「そんなに嬉しいか」
薫は何度も頷く。
「うん」
「写真で見るより何倍もきれい」
ゆっくり歩き始める。
「あ、この色かわいい!あっちは真っ赤!こっちは香りが全然違う!」
一株一株立ち止まっては楽しそうに眺める。
神田はその少し後ろを歩く。
「バラ見てるお前も楽しそうだな」
薫が振り返る。
「えへへ。だって幸せ」
「そうか」
「ユウ!」
「ん?」
「写真撮って!」
「ここ!」
バラのアーチの下で両手を広げる。
神田はスマホを構える。
「笑え」
「もう笑ってる!」
パシャ。
画面には、満開のバラに囲まれて無邪気に笑う薫が映っていた。
神田は写真を見て、小さく頷く。
「いい」
「見せて!」
薫が駆け寄る。
画面を見るなり。
「わぁ!いい感じ!ユウ、写真上手!」
神田は照れくさそうにスマホをしまう。
「被写体がいい」
薫は一瞬固まってから顔を真っ赤にした。
「……そういうことさらっと言う。」
神田は首を傾ける。
「本当のことだ」
薫は笑いながら神田の腕にそっと自分の腕を絡めた。
「今日は最高の旅行になりそう」
神田もバラ園を見渡し、穏やかに微笑む。
「ああ」
バラ園をゆっくり散策し、ホテルへ戻る。
部屋で一息ついたあと。
神田が館内案内を手に取る。
「貸切露天風呂、予約制だな」
薫が身を乗り出す。
「入りたい!」
「空いてるか聞いてみる」
神田がフロントへ電話をかける。
「貸切露天風呂をお願いしたいんですが」
しばらく案内を聞き、
「……はい」
薫は横でそわそわ。
「どう?」
神田は受話器を押さえて小声で答える。
「夕方は埋まってる」
「えー」
「……」
再び電話。
「夕食後ですか」
少しして。
「その時間でお願いします」
電話を切る。
「取れた」
「ほんと?」
「ああ。夕食後の時間」
「やったー!」
飛び跳ねる薫。
「夜の露天風呂だ!」
神田も頷く。
「ちょうどいい。」
フロントでもらった案内図をテーブルに広げるヒロイン。
「ねえ、ユウ」
「ん?」
「これ見て」
神田が隣へ座る。
案内図には、3つのホテルが渡り廊下でつながっている図が載っていた。
薫が目を輝かせる。
「えっ」
「……」
「えぇぇぇ!?」
神田も案内図を見直す。
「3つのホテルの温泉」
「どこでも入れるのか」
「そうみたい!」
薫は案内図を指でなぞる。
「このホテルも。こっちのホテルも。あっちのホテルも!全部入れる!」
テンションが一気に爆発した。
「すごい!」
「温泉3か所!」
「露天風呂も違う!」
「内湯も違う!」
神田は笑う。
「そんなに嬉しいか。」
「嬉しい!」
薫は立ち上がる。
「どれから行こう!」
案内図を何度も見比べる。
「えー!最初はここ?いや、こっち?夜景ならあっち?朝風呂はここ?」
神田は腕を組みながら聞いている。
「決まらんな」
「決まらない!」
「全部魅力的!」
しばらく悩んで。
薫がぽつり。
「……」
神田を見る。
「制覇したい」
「全部か」
「うん!」
「3つ全部!」
神田は少し笑う。
「スタンプラリーみたいだな」
「そう!」
「温泉スタンプラリー!」
薫は拳を握る。
「目標!全制覇!」
神田も乗ってくる。
「今日2つ。明日の朝1つ。完璧!………いや」
薫が首を振る。
「今日3つ」
神田が吹き出す。
「入る気か」
「入る!」
「温泉旅行だもん!」
「一泊二日しかないんだよ?」
「全部入りたい!」
神田は苦笑しながら頷く。
「じゃあ無理しない程度にな」
「はーい!」
薫はタオルを持って立ち上がる。
「第一温泉!」
「出発!」
神田も立ち上がる。
「風呂上がりの牛乳も忘れるな」
薫は振り返ってにっこり笑う。
「もちろん!3つの温泉!牛乳!温泉まんじゅう!全部楽しむ!」
神田は笑いながらドアを開けた。
「忙しい旅行だな」
「最高にね!」
そう言って、二人は最初の温泉へ向かって歩き出した。
山あいの温泉街は夕暮れに包まれ始め、これから始まる“温泉制覇”に薫の足取りはどこまでも軽かった。