《第17話》オンセン。
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旅行当日。
東京駅。
「楽しみ!」
薫は小さなキャリーケースを引きながら、朝から上機嫌だ。
「東北だー!」
神田は隣を歩く。
「そんなに嬉しいか」
「嬉しい!」
「新幹線乗るのも好きなんだよね」
ふたりは指定席へ座る。
発車すると、薫は早速窓際へ。
「ユウ見て!」
「ん?」
「田んぼ!」
「まだ埼玉だ」
「え、まだ?」
神田は思わず笑う。
新幹線は北へ進む。
仙台を過ぎる頃には、景色はすっかり変わっていた。
一面の田んぼ。
遠くには山。
薫は窓に張り付いている。
「懐かしいなぁ」
「東北だからか」
「うん」
「こういう景色見て育ったから」
神田も外を見る。
「確かに東京とは違うな」
「でしょ?」
「何にもなくて落ち着く」
さらに北へ。
景色はもっとのどかになる。
「……。」
神田がぽつり。
「どんどん何もなくなるな」
薫は笑う。
「これが東北!」
「これでもまだある方」
「まだ?」
「まだ」
新花巻駅。
「到着しました」
ふたりはホームへ降りる。
駅を出る。
「……」
「……」
ふたりとも黙った。
目の前には。
広い空。
道路。
田んぼ。
そして静けさ。
「……」
神田が辺りを見回す。
「思ったより」
薫も辺りを見回す。
「何もないね」
「何もない」
「駅前だからもう少しあるかと思った」
「俺も」
ふたりで顔を見合わせる。
「……」
「……」
そして同時に吹き出した。
「ははは!」
「ほんとに何もない!」
薫が笑いながらスマホを取り出す。
「バスあるかな。」
検索。
「えーっと……」
時刻表を見る。
「……」
神田も覗き込む。
「どうだ」
「一本行っちゃった」
「次」
「……一時間後」
「一時間」
「しかも本数少ない」
神田は腕を組む。
「待つか」
薫は少し考える。
駅前を見渡す。
「あ」
「ん?」
「レンタカーある」
神田も看板を見る。
「本当だ」
「借りちゃう?」
「その方が動きやすい」
「だよね!」
薫は嬉しそうに頷く。
「せっかくだし観光もしたいし!」
「決まりだ」
ふたりはレンタカー店へ向かう。
店員が笑顔で迎えた。
「ご予約ですか?」
薫と神田は顔を見合わせる。
「予約してないんですけど。」
「空いてますか?」
店員はパソコンを確認して微笑んだ。
「ちょうど一台ございますよ。」
薫は神田を見て、小さくガッツポーズ。
「ラッキー!」
神田も頷く。
「運がいい」
キーを受け取ると、薫は嬉しそうに助手席へ。
「ユウ、運転お願い!」
「ああ」
エンジンがかかる。
車はゆっくりと新花巻駅を出発した。
窓の外には、どこまでも広がる田園風景。
薫はその景色を眺めながら、懐かしそうに笑う。
「やっぱり東北っていいなぁ」
神田もフロントガラスの向こうに広がる景色を見ながら、小さく頷いた。
「ああ」
「静かで、落ち着く」
レンタカーを借りて、駅前をゆっくり走り出す。
助手席で薫が地図を眺めていた。
「あれ?」
「どうした」
「ユウ!」
スマホを神田に向ける。
「駅出てすぐに『童話村』ってある!」
神田が信号待ちでちらりと見る。
「童話村?」
「宮沢賢治の童話村だって!」
薫の目がきらきら輝く。
「メルヘン!」
「……」
「行ってみたい!」
神田は笑った。
「早速寄り道か」
「だめ?」
期待いっぱいの目で見上げてくる。
「旅行なんだから、寄り道するために来たようなもんでしょ?」
「それもそうだ」
「やった!」
薫は嬉しそうに拍手した。
「ナビ、童話村!」
神田は目的地を変更する。
「5分もかからんな。」
「近っ!」
「本当に駅のすぐそばだ。」
数分後。
駐車場へ車を停める。
車を降りると、緑に囲まれた静かな空気が流れていた。
薫は深呼吸する。
「空気がおいしい……」
神田も周りを見渡す。
「静かだな」
入口の案内板には、
『宮沢賢治童話村』
と書かれている。
薫は嬉しそうに読んだ。
「なんか名前だけでわくわくする!」
「そんなに童話好きだったか?」
「好き!」
「あとね」
神田を見る。
「こういう世界観好き」
「知ってる」
「ロリータ着て来れば良かったかな」
神田は少し考えて。
「似合うだろうな」
「ほんと?」
「ここなら」
薫は照れ笑い。
「じゃあ今度来る時はロリータ!」
「また来る前提か」
「うん!」
即答だった。
「花巻好きになりそう!」
神田はその笑顔を見て、小さく笑う。
「まだ温泉にも入ってないぞ」
「それでも!」
薫は入口へ小走りで向かう。
「ユウ早く!」
神田は苦笑しながらその後を歩く。
「転ぶなよ」
「転ばなーい!」
そう返事をした直後、小さな段差につまずきそうになり、
「あっ」
神田がすっと腕を支える。
「ほら」
「……」
薫はえへへと笑った。
「今のはノーカウント!」
「アウトだ」
「まだ転んでないもん!」
「未遂だ」
「むぅ」
ふたりで笑いながら、童話の世界への入口をくぐっていった。
東京駅。
「楽しみ!」
薫は小さなキャリーケースを引きながら、朝から上機嫌だ。
「東北だー!」
神田は隣を歩く。
「そんなに嬉しいか」
「嬉しい!」
「新幹線乗るのも好きなんだよね」
ふたりは指定席へ座る。
発車すると、薫は早速窓際へ。
「ユウ見て!」
「ん?」
「田んぼ!」
「まだ埼玉だ」
「え、まだ?」
神田は思わず笑う。
新幹線は北へ進む。
仙台を過ぎる頃には、景色はすっかり変わっていた。
一面の田んぼ。
遠くには山。
薫は窓に張り付いている。
「懐かしいなぁ」
「東北だからか」
「うん」
「こういう景色見て育ったから」
神田も外を見る。
「確かに東京とは違うな」
「でしょ?」
「何にもなくて落ち着く」
さらに北へ。
景色はもっとのどかになる。
「……。」
神田がぽつり。
「どんどん何もなくなるな」
薫は笑う。
「これが東北!」
「これでもまだある方」
「まだ?」
「まだ」
新花巻駅。
「到着しました」
ふたりはホームへ降りる。
駅を出る。
「……」
「……」
ふたりとも黙った。
目の前には。
広い空。
道路。
田んぼ。
そして静けさ。
「……」
神田が辺りを見回す。
「思ったより」
薫も辺りを見回す。
「何もないね」
「何もない」
「駅前だからもう少しあるかと思った」
「俺も」
ふたりで顔を見合わせる。
「……」
「……」
そして同時に吹き出した。
「ははは!」
「ほんとに何もない!」
薫が笑いながらスマホを取り出す。
「バスあるかな。」
検索。
「えーっと……」
時刻表を見る。
「……」
神田も覗き込む。
「どうだ」
「一本行っちゃった」
「次」
「……一時間後」
「一時間」
「しかも本数少ない」
神田は腕を組む。
「待つか」
薫は少し考える。
駅前を見渡す。
「あ」
「ん?」
「レンタカーある」
神田も看板を見る。
「本当だ」
「借りちゃう?」
「その方が動きやすい」
「だよね!」
薫は嬉しそうに頷く。
「せっかくだし観光もしたいし!」
「決まりだ」
ふたりはレンタカー店へ向かう。
店員が笑顔で迎えた。
「ご予約ですか?」
薫と神田は顔を見合わせる。
「予約してないんですけど。」
「空いてますか?」
店員はパソコンを確認して微笑んだ。
「ちょうど一台ございますよ。」
薫は神田を見て、小さくガッツポーズ。
「ラッキー!」
神田も頷く。
「運がいい」
キーを受け取ると、薫は嬉しそうに助手席へ。
「ユウ、運転お願い!」
「ああ」
エンジンがかかる。
車はゆっくりと新花巻駅を出発した。
窓の外には、どこまでも広がる田園風景。
薫はその景色を眺めながら、懐かしそうに笑う。
「やっぱり東北っていいなぁ」
神田もフロントガラスの向こうに広がる景色を見ながら、小さく頷いた。
「ああ」
「静かで、落ち着く」
レンタカーを借りて、駅前をゆっくり走り出す。
助手席で薫が地図を眺めていた。
「あれ?」
「どうした」
「ユウ!」
スマホを神田に向ける。
「駅出てすぐに『童話村』ってある!」
神田が信号待ちでちらりと見る。
「童話村?」
「宮沢賢治の童話村だって!」
薫の目がきらきら輝く。
「メルヘン!」
「……」
「行ってみたい!」
神田は笑った。
「早速寄り道か」
「だめ?」
期待いっぱいの目で見上げてくる。
「旅行なんだから、寄り道するために来たようなもんでしょ?」
「それもそうだ」
「やった!」
薫は嬉しそうに拍手した。
「ナビ、童話村!」
神田は目的地を変更する。
「5分もかからんな。」
「近っ!」
「本当に駅のすぐそばだ。」
数分後。
駐車場へ車を停める。
車を降りると、緑に囲まれた静かな空気が流れていた。
薫は深呼吸する。
「空気がおいしい……」
神田も周りを見渡す。
「静かだな」
入口の案内板には、
『宮沢賢治童話村』
と書かれている。
薫は嬉しそうに読んだ。
「なんか名前だけでわくわくする!」
「そんなに童話好きだったか?」
「好き!」
「あとね」
神田を見る。
「こういう世界観好き」
「知ってる」
「ロリータ着て来れば良かったかな」
神田は少し考えて。
「似合うだろうな」
「ほんと?」
「ここなら」
薫は照れ笑い。
「じゃあ今度来る時はロリータ!」
「また来る前提か」
「うん!」
即答だった。
「花巻好きになりそう!」
神田はその笑顔を見て、小さく笑う。
「まだ温泉にも入ってないぞ」
「それでも!」
薫は入口へ小走りで向かう。
「ユウ早く!」
神田は苦笑しながらその後を歩く。
「転ぶなよ」
「転ばなーい!」
そう返事をした直後、小さな段差につまずきそうになり、
「あっ」
神田がすっと腕を支える。
「ほら」
「……」
薫はえへへと笑った。
「今のはノーカウント!」
「アウトだ」
「まだ転んでないもん!」
「未遂だ」
「むぅ」
ふたりで笑いながら、童話の世界への入口をくぐっていった。