《第16話》キョウジ。
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2日目・午前 会議室
「おはようございます」
「おはようございます、先生」
昨日より姿勢よく頭を下げる専務。
薫は小さく笑った。
「いい朝の挨拶ですね」
「昨日教わりましたから」
「早速成果が出ています」
専務が少し照れる。
薫はホワイトボードに書く。
『相手に安心感を与える振る舞い』
「昨日は距離感でした」
「今日は?」
「所作です」
「所作?」
「立ち方、歩き方、座り方、目線、声の大きさ」
専務は首を傾ける。
「そんな細かいこと?」
「細かいことほど印象を左右します」
まず立ち姿。
「立ってみてください」
専務が立つ。
「……」
薫が一周する。
「癖があります。」
「え?」
「片足に重心をかけていますね」
「無意識です」
「それが『偉そう』『退屈そう』という印象になります」
「マジか……」
「両足に均等に体重を乗せてください」
やってみる。
「どうです?」
「疲れる」
「慣れです」
次は座り方。
「応接室です」
ソファに座る専務。
どかっと深く腰掛ける。
薫は笑う。
「社長室で昨日もそうでしたね。」
「あっ……」
「取引先では浅く腰掛けます」
実際に座って見せる。
背筋は自然。
肩の力は抜けている。
「これが基本です」
専務が真似する。
「……先生って姿勢きれいですね。」
「ありがとうございます」
「なんかやってる?」
「筋トレとヨガを少し」
さらっと流す。
午後。
今度は会食。
料理が並ぶ。
「今日は食事のマナーではありません」
「違うの?」
「会話です」
「会話」
「食べることより、人との時間を大切にします」
食事開始。
専務。
「先生、好きな食べ物は?」
薫が少し笑う。
「質問自体は悪くありません」
「やった」
「ですが、」
専務が身構える。
「質問攻めです」
「あ」
「相手が答えたら、自分も少し話してください。」
「キャッチボールか」
「そうです」
もう一度。
「先生、好きな食べ物は?」
「和食が好きです。」
「そうなんですね。私は焼肉が好きです」
「焼肉もいいですね」
「最近いいお店見つけて」
自然と会話が続く。
薫は頷いた。
「今のは良かったです」
その後もロールプレイ。
女性社員。
男性社員。
年上役員。
年下社員。
相手によって話し方を変える。
専務は徐々に慣れていく。
夕方。
社長室。
社長が尋ねる。
「どうだ?」
薫が資料を見せる。
「初日よりかなり改善しています」
「ほう」
「人の話を最後まで聞けるようになりました」
「それは大きい」
「女性社員への接し方も自然です」
社長が驚く。
「もう口説かないのか?」
専務が苦笑した。
「……ちょっと我慢してる」
薫が笑う。
「“我慢”ではなく、“必要がない”と思えるようになるのが理想ですね」
専務は腕を組み、少し考える。
「昨日から思ってたんだけど」
「はい」
「先生ってさ」
「?」
「誰に対しても態度変わらないよね」
「意識していますから」
「社長にも」
「はい」
「新人にも」
「はい」
「俺にも」
「もちろんです」
専務は感心したように笑う。
「だから安心して話せるのか」
薫は少しだけ微笑んだ。
「ありがとうございます」
社長も静かに頷く。
「それがお前に一番足りなかったものだ」
専務は素直に返事をする。
「……はい」
そして薫が資料を閉じる。
「明日は最終日です」
「営業について学びたいと伺っていますので、午後からは弊社営業部より神田がお伺いします。」
専務は興味深そうに身を乗り出した。
「神田さんって、クロス社長の会社の営業エース?」
「はい。」
「楽しみだな。」
薫はくすっと笑う。
「営業のことになると、私は教わる側です」
「先生にもそんな相手がいるんだ」
「ええ」
そう答えた薫の表情は、どこか信頼に満ちていて、それを見た専務は「神田」という人物への興味をさらに強くした。
「おはようございます」
「おはようございます、先生」
昨日より姿勢よく頭を下げる専務。
薫は小さく笑った。
「いい朝の挨拶ですね」
「昨日教わりましたから」
「早速成果が出ています」
専務が少し照れる。
薫はホワイトボードに書く。
『相手に安心感を与える振る舞い』
「昨日は距離感でした」
「今日は?」
「所作です」
「所作?」
「立ち方、歩き方、座り方、目線、声の大きさ」
専務は首を傾ける。
「そんな細かいこと?」
「細かいことほど印象を左右します」
まず立ち姿。
「立ってみてください」
専務が立つ。
「……」
薫が一周する。
「癖があります。」
「え?」
「片足に重心をかけていますね」
「無意識です」
「それが『偉そう』『退屈そう』という印象になります」
「マジか……」
「両足に均等に体重を乗せてください」
やってみる。
「どうです?」
「疲れる」
「慣れです」
次は座り方。
「応接室です」
ソファに座る専務。
どかっと深く腰掛ける。
薫は笑う。
「社長室で昨日もそうでしたね。」
「あっ……」
「取引先では浅く腰掛けます」
実際に座って見せる。
背筋は自然。
肩の力は抜けている。
「これが基本です」
専務が真似する。
「……先生って姿勢きれいですね。」
「ありがとうございます」
「なんかやってる?」
「筋トレとヨガを少し」
さらっと流す。
午後。
今度は会食。
料理が並ぶ。
「今日は食事のマナーではありません」
「違うの?」
「会話です」
「会話」
「食べることより、人との時間を大切にします」
食事開始。
専務。
「先生、好きな食べ物は?」
薫が少し笑う。
「質問自体は悪くありません」
「やった」
「ですが、」
専務が身構える。
「質問攻めです」
「あ」
「相手が答えたら、自分も少し話してください。」
「キャッチボールか」
「そうです」
もう一度。
「先生、好きな食べ物は?」
「和食が好きです。」
「そうなんですね。私は焼肉が好きです」
「焼肉もいいですね」
「最近いいお店見つけて」
自然と会話が続く。
薫は頷いた。
「今のは良かったです」
その後もロールプレイ。
女性社員。
男性社員。
年上役員。
年下社員。
相手によって話し方を変える。
専務は徐々に慣れていく。
夕方。
社長室。
社長が尋ねる。
「どうだ?」
薫が資料を見せる。
「初日よりかなり改善しています」
「ほう」
「人の話を最後まで聞けるようになりました」
「それは大きい」
「女性社員への接し方も自然です」
社長が驚く。
「もう口説かないのか?」
専務が苦笑した。
「……ちょっと我慢してる」
薫が笑う。
「“我慢”ではなく、“必要がない”と思えるようになるのが理想ですね」
専務は腕を組み、少し考える。
「昨日から思ってたんだけど」
「はい」
「先生ってさ」
「?」
「誰に対しても態度変わらないよね」
「意識していますから」
「社長にも」
「はい」
「新人にも」
「はい」
「俺にも」
「もちろんです」
専務は感心したように笑う。
「だから安心して話せるのか」
薫は少しだけ微笑んだ。
「ありがとうございます」
社長も静かに頷く。
「それがお前に一番足りなかったものだ」
専務は素直に返事をする。
「……はい」
そして薫が資料を閉じる。
「明日は最終日です」
「営業について学びたいと伺っていますので、午後からは弊社営業部より神田がお伺いします。」
専務は興味深そうに身を乗り出した。
「神田さんって、クロス社長の会社の営業エース?」
「はい。」
「楽しみだな。」
薫はくすっと笑う。
「営業のことになると、私は教わる側です」
「先生にもそんな相手がいるんだ」
「ええ」
そう答えた薫の表情は、どこか信頼に満ちていて、それを見た専務は「神田」という人物への興味をさらに強くした。