《第15話》デート。
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休日の朝。
カーテンの隙間から柔らかな日差しが差し込む。
神田はキッチンでコーヒーを淹れ、薫はソファで毛布にくるまってぼんやりしていた。
しばらく神田を眺めていた薫が、不意に声をかける。
「ユウ」
「なんだ」
「デートしよう」
神田はマグカップを置いた。
「デート?」
「うん。今まで、」
薫は指を折りながら数える。
「仕事終わりにご飯食べたり、ジム行ったり、スーパー行ったり、家で映画見たり。それはそれで好きなんだけど。」
神田は頷く。
「ああ」
薫が少し照れくさそうに笑う。
「デートらしいデート、したことないじゃん」
神田は少し考える。
「……そうだな」
「でしょ?」
「付き合ってから忙しかったし。同棲も始まったし。気付いたら普通に生活してた」
神田は苦笑した。
「生活になってたな」
「うん」
薫はソファから立ち上がり、神田の前まで歩いてくる。
「だから今日は、ちゃんと恋人っぽいことしたい」
「恋人っぽいこと?」
「手つないで歩いて、買い物して。カフェ入って。映画見たり。写真撮ったり。そういう普通のデート!」
神田は静かに薫を見つめる。
「……」
「嫌?」
薫が少し不安そうに聞く。
神田は首を横に振った。
「いや。俺も…してみてもいい」
薫の目がぱっと輝く。
「ほんと?」
「ああ。どこ行きたい?」
「えーっとね!」
薫はスマホを開く。
「まず駅前に新しくできたカフェ!そのあとショッピング!ロリータのお店もちょっと見たい!映画!夜ご飯!」
「盛りだくさんだな」
「せっかくのデートだもん」
神田は笑って財布をポケットに入れた。
「分かった。今日は、全部付き合う」
「やった!」
薫は嬉しさのあまり神田の腕に飛びつく。
「ありがとう!」
神田はその頭を軽く撫でる。
「ただ一つ」
「ん?」
「今日は仕事の話は禁止」
薫は一瞬きょとんとしてから笑った。
「あ、それいい!」
「会社の人の話もなし!」
「秘書も営業も忘れる」
神田が玄関の鍵を手に取る。
「今日は、ただの恋人だ」
薫は嬉しそうに笑って頷いた。
「うん!」
「今日は社長秘書じゃない」
神田の手を握る。
「ユウの彼女!」
神田はその手を握り返し、小さく笑った。
「行くか」
「デート!」
「待っててね!着替えてくる!」
そう言うと薫は気合いを入れてロリータ服を選ぶ。
「動きやすいように…ワンピースタイプにしよっかな」
比較的カジュアルなデザインのワンピース。
ガチガチに固めないのが珍しい。
「準備OK!」
「行くか」
マンションのエントランス。
神田はいつもの癖で車のキーを取り出す。
「車出す」
薫はその手元を見て、小さく笑った。
「ユウ」
「ん?」
「今日は、」
神田の手をそっと止める。
「ゆっくり歩こうよ」
「歩く?」
「うん。せっかくのデートだもん。電車乗って。街歩いて。寄り道して。疲れたらカフェ入って……そういうのしたい」
神田は車のキーと薫の顔を見比べる。
「……」
普段なら迷わず車。
営業で毎日運転しているせいか、移動は効率が一番だった。
薫はそんな神田の考えを読んだように笑う。
「今日は効率いらない。目的地に行くのが目的じゃなくて」
神田の手を握る。
「ユウと歩くのが目的」
その一言に、神田の表情が少しだけ柔らかくなる。
「……そうか」
静かにキーをポケットへ戻した。
「今日は車なし」
薫が満面の笑みになる。
「やった!」
「でも」
神田が少しだけ意地悪そうに言う。
「歩き疲れても文句言うな」
「言わない!」
「荷物増えても」
「……」
薫は目を逸らす。
神田が笑う。
「増えるんだな」
「見るだけ!」
「本当か?」
「たぶん!」
「信用ならん」
ふたりで笑いながら駅へ向かう。
休日の街は穏やかで、人通りも多い。
信号待ち。
薫は何気なく神田の隣へ並ぶ。
「ユウ」
「なんだ」
「手」
神田は何も言わず、自然に手を差し出した。
薫が嬉しそうにその手を握る。
「えへへ」
「そんなに嬉しいか」
「うん。会社じゃできないし」
「そうだな」
青信号になる。
ふたりは手をつないだまま歩き出す。
薫は神田を見上げて笑う。
「こういうの憧れてたんだ。普通のデート。」
神田は歩幅を薫に合わせながら答える。
「俺は」
「ん?」
「普通かどうかは分からん」
握った手に少しだけ力を込める。
「でも、お前が嬉しいなら、それでいい。」
薫は照れくさそうに笑って、神田の腕に少しだけ寄り添った。
「今日は一日いっぱい思い出作ろうね」
「ああ」
車では数分で着く距離。
でも今日は、ふたりにとってその道のりそのものが、何より楽しいデートの始まりだった。
カーテンの隙間から柔らかな日差しが差し込む。
神田はキッチンでコーヒーを淹れ、薫はソファで毛布にくるまってぼんやりしていた。
しばらく神田を眺めていた薫が、不意に声をかける。
「ユウ」
「なんだ」
「デートしよう」
神田はマグカップを置いた。
「デート?」
「うん。今まで、」
薫は指を折りながら数える。
「仕事終わりにご飯食べたり、ジム行ったり、スーパー行ったり、家で映画見たり。それはそれで好きなんだけど。」
神田は頷く。
「ああ」
薫が少し照れくさそうに笑う。
「デートらしいデート、したことないじゃん」
神田は少し考える。
「……そうだな」
「でしょ?」
「付き合ってから忙しかったし。同棲も始まったし。気付いたら普通に生活してた」
神田は苦笑した。
「生活になってたな」
「うん」
薫はソファから立ち上がり、神田の前まで歩いてくる。
「だから今日は、ちゃんと恋人っぽいことしたい」
「恋人っぽいこと?」
「手つないで歩いて、買い物して。カフェ入って。映画見たり。写真撮ったり。そういう普通のデート!」
神田は静かに薫を見つめる。
「……」
「嫌?」
薫が少し不安そうに聞く。
神田は首を横に振った。
「いや。俺も…してみてもいい」
薫の目がぱっと輝く。
「ほんと?」
「ああ。どこ行きたい?」
「えーっとね!」
薫はスマホを開く。
「まず駅前に新しくできたカフェ!そのあとショッピング!ロリータのお店もちょっと見たい!映画!夜ご飯!」
「盛りだくさんだな」
「せっかくのデートだもん」
神田は笑って財布をポケットに入れた。
「分かった。今日は、全部付き合う」
「やった!」
薫は嬉しさのあまり神田の腕に飛びつく。
「ありがとう!」
神田はその頭を軽く撫でる。
「ただ一つ」
「ん?」
「今日は仕事の話は禁止」
薫は一瞬きょとんとしてから笑った。
「あ、それいい!」
「会社の人の話もなし!」
「秘書も営業も忘れる」
神田が玄関の鍵を手に取る。
「今日は、ただの恋人だ」
薫は嬉しそうに笑って頷いた。
「うん!」
「今日は社長秘書じゃない」
神田の手を握る。
「ユウの彼女!」
神田はその手を握り返し、小さく笑った。
「行くか」
「デート!」
「待っててね!着替えてくる!」
そう言うと薫は気合いを入れてロリータ服を選ぶ。
「動きやすいように…ワンピースタイプにしよっかな」
比較的カジュアルなデザインのワンピース。
ガチガチに固めないのが珍しい。
「準備OK!」
「行くか」
マンションのエントランス。
神田はいつもの癖で車のキーを取り出す。
「車出す」
薫はその手元を見て、小さく笑った。
「ユウ」
「ん?」
「今日は、」
神田の手をそっと止める。
「ゆっくり歩こうよ」
「歩く?」
「うん。せっかくのデートだもん。電車乗って。街歩いて。寄り道して。疲れたらカフェ入って……そういうのしたい」
神田は車のキーと薫の顔を見比べる。
「……」
普段なら迷わず車。
営業で毎日運転しているせいか、移動は効率が一番だった。
薫はそんな神田の考えを読んだように笑う。
「今日は効率いらない。目的地に行くのが目的じゃなくて」
神田の手を握る。
「ユウと歩くのが目的」
その一言に、神田の表情が少しだけ柔らかくなる。
「……そうか」
静かにキーをポケットへ戻した。
「今日は車なし」
薫が満面の笑みになる。
「やった!」
「でも」
神田が少しだけ意地悪そうに言う。
「歩き疲れても文句言うな」
「言わない!」
「荷物増えても」
「……」
薫は目を逸らす。
神田が笑う。
「増えるんだな」
「見るだけ!」
「本当か?」
「たぶん!」
「信用ならん」
ふたりで笑いながら駅へ向かう。
休日の街は穏やかで、人通りも多い。
信号待ち。
薫は何気なく神田の隣へ並ぶ。
「ユウ」
「なんだ」
「手」
神田は何も言わず、自然に手を差し出した。
薫が嬉しそうにその手を握る。
「えへへ」
「そんなに嬉しいか」
「うん。会社じゃできないし」
「そうだな」
青信号になる。
ふたりは手をつないだまま歩き出す。
薫は神田を見上げて笑う。
「こういうの憧れてたんだ。普通のデート。」
神田は歩幅を薫に合わせながら答える。
「俺は」
「ん?」
「普通かどうかは分からん」
握った手に少しだけ力を込める。
「でも、お前が嬉しいなら、それでいい。」
薫は照れくさそうに笑って、神田の腕に少しだけ寄り添った。
「今日は一日いっぱい思い出作ろうね」
「ああ」
車では数分で着く距離。
でも今日は、ふたりにとってその道のりそのものが、何より楽しいデートの始まりだった。