《第14話》メガミ。
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午後7:10。
仕事帰りのふたりはいつものジムへ。
「こんばんは!」
受付スタッフが笑顔で迎える。
「こんばんは」
「今日もレッスンですね!」
「はい、8時からです!」
薫はにこっと笑って会員証を渡す。
フリーウエイトエリア。
神田は迷いなくベンチプレスへ向かう。
プレートを付け替える。
ガシャン。
ガシャン。
常連のマッチョたちが振り返る。
「神田さん来た」
「今日はベンチか」
「補助いる?」
「大丈夫だ」
神田はラックに寝転ぶ。
バーを持ち上げる。
1回。
2回。
3回。
無駄のないフォーム。
その横では薫がダンベルを持つ。
「今日は軽めで!」
ショルダープレス。
「…よいしょ」
神田がセットを終えて立ち上がる。
薫を見る。
「肘」
「あ、開きすぎ?」
「少し」
「ありがとう」
言われた通り直すと、
「あ、やりやすい!」
「効くだろ」
「うん!」
マッチョたちが笑う。
「神田さん、彼女にはちゃんと喋るんだな」
「指導が的確」
「一言で終わるのが神田さんらしい。」
薫も笑う。
「短いですけど分かりやすいんですよ」
午後7:40。
薫は時計を見る。
「あ、そろそろ行きます」
神田はダンベルをラックへ戻す。
「ああ」
「終わったら迎えに来る?」
「筋トレ終わったら」
「じゃあ頑張って!」
薫は手を振ってスタジオへ向かう。
午後8:00。
スタジオ。
薫のヨガレッスン。
参加者は20人ほど。
常連も多い。
「こんばんは!」
「先生こんばんは!」
「今日もお願いします!」
薫はインストラクターのスイッチが入る。
「今日は一日お仕事だった方も多いと思いますので、肩と股関節をしっかりほぐしていきましょう」
柔らかな声。
穏やかな笑顔。
照明が少し落ちる。
静かな音楽が流れる。
「では楽な姿勢で座ります。」
参加者たちも自然と呼吸が落ち着いていく。
「鼻から吸って……」
「口からゆっくり吐いて……」
スタジオの空気が変わる。
昼間、社長秘書としてきびきび動いていた姿とは別人のようだった。
⸻
一方その頃。
フリーウエイトエリア。
神田はスクワット中。
ガシャン。
「相変わらず強いなぁ」
「フォームが崩れない」
「仕事帰りなのに元気だ」
神田は淡々と最後の1回を上げる。
タオルで汗を拭きながら、ふとスタジオのガラス越しを見る。
薫が参加者の前でポーズを取り、ゆっくりと動きを説明している。
常連のマッチョが隣に来る。
「彼女、人気だよな」
「ああ」
「説明うまいし、初心者でも安心できるって評判」
神田は短く頷く。
「努力してる」
その一言だけだったが、どこか誇らしげだった。
午後9:00。
レッスン終了。
「ありがとうございました!」
参加者全員で一礼。
「先生、今日も気持ちよかったです!」
「肩が軽くなりました!」
「来週もお願いします!」
「ありがとうございました!」
笑顔で参加者を見送るヒロイン。
スタジオを出ると、壁にもたれて待っていた神田と目が合う。
「終わったか」
「うん、お待たせ」
「帰るぞ」
「その前にプロテイン飲んでいい?」
「好きにしろ」
「じゃあユウの分も買ってくる!」
軽やかにラウンジへ向かうヒロインを見送りながら、神田は小さく息をつく。
常連のマッチョがその横で笑う。
「仕事して、筋トレして、ヨガ教えて……彼女、本当に体力あるな」
「ああ」
神田は短く答える。
「だから、ちゃんと食わせないとな」
その言葉にマッチョたちは顔を見合わせて笑った。
「彼氏の発言だ」
午後9:20。
ジムを出る。
夜風が火照った体に心地いい。
薫がぐーっと伸びをする。
「はぁー、今日も気持ちよかった!」
神田はスポーツバッグを肩に掛ける。
「飯どうする?」
「んー…」
少し考えた薫が指を立てる。
「あ!」
「?」
「昨日仕込んでおいた鶏ハムある!」
神田が少し眉を上げる。
「いつ仕込んだ」
「ユウがお風呂入ってる間」
「……」
「スープちゃちゃっと作るから、あとは作り置きでいいかな?」
「十分だ」
「よかった!」
スーパーには寄らず、そのまま帰宅。
玄関を開けるなり、
「ただいまー!」
「ただいま」
ヒロインは靴を脱ぐのもそこそこにキッチンへ。
「ユウ、お風呂先入る?」
「いや」
「じゃあご飯作っちゃうね」
冷蔵庫を開ける。
「ほら!」
保存容器を取り出す。
しっとりと火の通った鶏ハム。
神田が覗き込む。
「本当にあった」
「だから言ったじゃん」
「気付かなかった」
「内緒で作ってたもん」
得意げに笑う。
鍋に水を張り、冷蔵庫からきのこ、玉ねぎ、小松菜を取り出す。
「今日はコンソメでいいかな」
包丁の音が軽快に響く。
トントントン。
神田は隣で炊飯器を開ける。
「飯はある」
「昨日多めに炊いたからね」
「皿出す」
「お願い」
ふたりとも慣れた動き。
誰が指示するでもなく役割が決まっている。
10分ほどで完成。
テーブルに並んだのは、
・しっとり鶏ハム
・野菜たっぷりコンソメスープ
・作り置きのひじき煮
・ブロッコリーとゆで卵のサラダ
・雑穀ごはん
豪華ではない。
でも栄養バランスは抜群だった。
「いただきます」
「いただきます」
薫が鶏ハムを切り分ける。
「はい、ユウ」
「……うまい」
一口食べた神田が即答する。
「ほんと?」
「ああ」
「やった!」
嬉しそうに笑う。
「ちゃんとしっとりしてる」
「低温でゆっくり火入れしたから」
「なるほど」
「タンパク質いっぱい」
「助かる」
スープを飲んだ神田がふと聞く。
「レッスン疲れたか?」
「ううん」
「平気か」
「ヨガ教えるの好きだから」
スプーンを置いて笑う。
「仕事終わりでも全然苦じゃないよ」
「そうか」
「でも筋トレした後だから、お腹は空いた!」
そう言ってご飯を頬張る。
神田はその様子を見て、少しだけ口元を緩めた。
仕事を終え、体を動かし、一緒に食卓を囲む。
派手な夜ではない。
けれどふたりにとっては、それが何より落ち着く、いつもの幸せな時間だった。
仕事帰りのふたりはいつものジムへ。
「こんばんは!」
受付スタッフが笑顔で迎える。
「こんばんは」
「今日もレッスンですね!」
「はい、8時からです!」
薫はにこっと笑って会員証を渡す。
フリーウエイトエリア。
神田は迷いなくベンチプレスへ向かう。
プレートを付け替える。
ガシャン。
ガシャン。
常連のマッチョたちが振り返る。
「神田さん来た」
「今日はベンチか」
「補助いる?」
「大丈夫だ」
神田はラックに寝転ぶ。
バーを持ち上げる。
1回。
2回。
3回。
無駄のないフォーム。
その横では薫がダンベルを持つ。
「今日は軽めで!」
ショルダープレス。
「…よいしょ」
神田がセットを終えて立ち上がる。
薫を見る。
「肘」
「あ、開きすぎ?」
「少し」
「ありがとう」
言われた通り直すと、
「あ、やりやすい!」
「効くだろ」
「うん!」
マッチョたちが笑う。
「神田さん、彼女にはちゃんと喋るんだな」
「指導が的確」
「一言で終わるのが神田さんらしい。」
薫も笑う。
「短いですけど分かりやすいんですよ」
午後7:40。
薫は時計を見る。
「あ、そろそろ行きます」
神田はダンベルをラックへ戻す。
「ああ」
「終わったら迎えに来る?」
「筋トレ終わったら」
「じゃあ頑張って!」
薫は手を振ってスタジオへ向かう。
午後8:00。
スタジオ。
薫のヨガレッスン。
参加者は20人ほど。
常連も多い。
「こんばんは!」
「先生こんばんは!」
「今日もお願いします!」
薫はインストラクターのスイッチが入る。
「今日は一日お仕事だった方も多いと思いますので、肩と股関節をしっかりほぐしていきましょう」
柔らかな声。
穏やかな笑顔。
照明が少し落ちる。
静かな音楽が流れる。
「では楽な姿勢で座ります。」
参加者たちも自然と呼吸が落ち着いていく。
「鼻から吸って……」
「口からゆっくり吐いて……」
スタジオの空気が変わる。
昼間、社長秘書としてきびきび動いていた姿とは別人のようだった。
⸻
一方その頃。
フリーウエイトエリア。
神田はスクワット中。
ガシャン。
「相変わらず強いなぁ」
「フォームが崩れない」
「仕事帰りなのに元気だ」
神田は淡々と最後の1回を上げる。
タオルで汗を拭きながら、ふとスタジオのガラス越しを見る。
薫が参加者の前でポーズを取り、ゆっくりと動きを説明している。
常連のマッチョが隣に来る。
「彼女、人気だよな」
「ああ」
「説明うまいし、初心者でも安心できるって評判」
神田は短く頷く。
「努力してる」
その一言だけだったが、どこか誇らしげだった。
午後9:00。
レッスン終了。
「ありがとうございました!」
参加者全員で一礼。
「先生、今日も気持ちよかったです!」
「肩が軽くなりました!」
「来週もお願いします!」
「ありがとうございました!」
笑顔で参加者を見送るヒロイン。
スタジオを出ると、壁にもたれて待っていた神田と目が合う。
「終わったか」
「うん、お待たせ」
「帰るぞ」
「その前にプロテイン飲んでいい?」
「好きにしろ」
「じゃあユウの分も買ってくる!」
軽やかにラウンジへ向かうヒロインを見送りながら、神田は小さく息をつく。
常連のマッチョがその横で笑う。
「仕事して、筋トレして、ヨガ教えて……彼女、本当に体力あるな」
「ああ」
神田は短く答える。
「だから、ちゃんと食わせないとな」
その言葉にマッチョたちは顔を見合わせて笑った。
「彼氏の発言だ」
午後9:20。
ジムを出る。
夜風が火照った体に心地いい。
薫がぐーっと伸びをする。
「はぁー、今日も気持ちよかった!」
神田はスポーツバッグを肩に掛ける。
「飯どうする?」
「んー…」
少し考えた薫が指を立てる。
「あ!」
「?」
「昨日仕込んでおいた鶏ハムある!」
神田が少し眉を上げる。
「いつ仕込んだ」
「ユウがお風呂入ってる間」
「……」
「スープちゃちゃっと作るから、あとは作り置きでいいかな?」
「十分だ」
「よかった!」
スーパーには寄らず、そのまま帰宅。
玄関を開けるなり、
「ただいまー!」
「ただいま」
ヒロインは靴を脱ぐのもそこそこにキッチンへ。
「ユウ、お風呂先入る?」
「いや」
「じゃあご飯作っちゃうね」
冷蔵庫を開ける。
「ほら!」
保存容器を取り出す。
しっとりと火の通った鶏ハム。
神田が覗き込む。
「本当にあった」
「だから言ったじゃん」
「気付かなかった」
「内緒で作ってたもん」
得意げに笑う。
鍋に水を張り、冷蔵庫からきのこ、玉ねぎ、小松菜を取り出す。
「今日はコンソメでいいかな」
包丁の音が軽快に響く。
トントントン。
神田は隣で炊飯器を開ける。
「飯はある」
「昨日多めに炊いたからね」
「皿出す」
「お願い」
ふたりとも慣れた動き。
誰が指示するでもなく役割が決まっている。
10分ほどで完成。
テーブルに並んだのは、
・しっとり鶏ハム
・野菜たっぷりコンソメスープ
・作り置きのひじき煮
・ブロッコリーとゆで卵のサラダ
・雑穀ごはん
豪華ではない。
でも栄養バランスは抜群だった。
「いただきます」
「いただきます」
薫が鶏ハムを切り分ける。
「はい、ユウ」
「……うまい」
一口食べた神田が即答する。
「ほんと?」
「ああ」
「やった!」
嬉しそうに笑う。
「ちゃんとしっとりしてる」
「低温でゆっくり火入れしたから」
「なるほど」
「タンパク質いっぱい」
「助かる」
スープを飲んだ神田がふと聞く。
「レッスン疲れたか?」
「ううん」
「平気か」
「ヨガ教えるの好きだから」
スプーンを置いて笑う。
「仕事終わりでも全然苦じゃないよ」
「そうか」
「でも筋トレした後だから、お腹は空いた!」
そう言ってご飯を頬張る。
神田はその様子を見て、少しだけ口元を緩めた。
仕事を終え、体を動かし、一緒に食卓を囲む。
派手な夜ではない。
けれどふたりにとっては、それが何より落ち着く、いつもの幸せな時間だった。
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