《第12話》ヒッコシ。
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日曜日、午前中。
いつも通り、早くに目を覚ます神田。
まだ眠っている薫。
そっとベッドを出て、コーヒーを淹れに行く。
「ん…」
薫は寝返りを打ち、隣に温もりがないことに気付いて目を覚ます。
「ユウおはよう」
「ああ」
まだ眠い目を擦りながらトコトコとリビングに出てくる薫。
「コーヒーいい匂い」
「飲むか?」
「飲む」
新しく買ったマグカップにコーヒーを淹れる。
「ほら」
「ありがとう」
コーヒーを受け取るとソファーに座り、ゆっくりと飲み始める。
「引越しかあ」
「嫌か?」
「ううん、嬉しい。でも不思議な感じ」
「何がだ」
「ここが帰ってくる場所になるのが」
「慣れる」
「ふふっ」
薫は嬉しそうにコーヒーを飲んだ。
「それ飲んだらお前ん家行くからな」
「はいはーい」
薫はコーヒーを飲み終わると着替えをしていく。
いつものふわっとした格好ではなく、今日は動きやすさ重視。
「さあ、忙しくなりますよー」
気合いを入れていた。
午前中のうちに神田にマンションに送ってもらうと、最後の確認を行った。
午後。
神田のマンション。
静かな部屋に、インターホンが鳴る。
「……」
モニターを見ると、引越し業者のトラック。
その後ろに——手を振る薫。
「ユウー!」
元気すぎる声。
神田は一瞬だけ目を細める。
「……来たか」
玄関を開けると、廊下にはすでに段ボールが並び始めていた。
「こんにちはー!」
業者の明るい声と一緒に、荷物が次々と運び込まれてくる。
「ここに置きますねー」
「はい!」
薫はその横で、なぜか楽しそうに指示まで出している。
「こっちはリビングで!」
「それ軽いからこっちで大丈夫!」
「おい」
神田が声をかける。
「勝手に仕切るな」
「だって私の荷物ですし」
「俺の家だ」
「今からふたりの家ですよ?」
「……」
一瞬黙る神田。
業者が去ったあと、部屋には段ボールの山。
「……すごい量だな」
「言いました」
「言ってたな」
薫は靴を脱いで、くるくると部屋を見回す。
「ここが今日から家なんだ」
「そうなるな」
「ユウと一緒の家」
「……ああ」
その言葉に、神田は少しだけ視線を逸らす。
慣れない空気。
でも、嫌ではない。
むしろ静かすぎた部屋が、少しだけ“生活”の匂いになっていく感じがする。
「ユウ」
「ん?」
「これからよろしくね」
薫は普通に言う。
神田は少し間を置いて。
「……ああ」
それだけ。
でも薫は嬉しそうに笑う。
「じゃあ最初の仕事!」
「何だ」
「段ボール開ける!」
「それは俺の仕事じゃねえ」
「手伝って」
「……」
神田はため息をつく。
「好きにしろ」
「やった」
テープをはがす音。
段ボールが一つずつ開いていく。
「これキッチン」
「それそこ」
「ユウこれは?」
「知らねえ」
「使うよ」
「勝手に決めるな」
「でも使う」
「……」
神田は諦めたように箱を受け取る。
付き合って3週間、まだ短いはずなのにこの部屋はもう、少しずつ“ふたりの家”になっていく。
薫が笑う。
神田はため息をつく。
その繰り返しが、なぜか心地いい。
「ユウ、ここいい感じ」
「そこは俺の場所だ」
「一緒の場所」
「……」
言い返そうとしてやめる。
その代わり。
「邪魔すんな」
「はーい」
楽しそうな声。
午後の光の中で、段ボールがひとつずつ開かれていく。
新しい生活が、静かに始まっていた。
いつも通り、早くに目を覚ます神田。
まだ眠っている薫。
そっとベッドを出て、コーヒーを淹れに行く。
「ん…」
薫は寝返りを打ち、隣に温もりがないことに気付いて目を覚ます。
「ユウおはよう」
「ああ」
まだ眠い目を擦りながらトコトコとリビングに出てくる薫。
「コーヒーいい匂い」
「飲むか?」
「飲む」
新しく買ったマグカップにコーヒーを淹れる。
「ほら」
「ありがとう」
コーヒーを受け取るとソファーに座り、ゆっくりと飲み始める。
「引越しかあ」
「嫌か?」
「ううん、嬉しい。でも不思議な感じ」
「何がだ」
「ここが帰ってくる場所になるのが」
「慣れる」
「ふふっ」
薫は嬉しそうにコーヒーを飲んだ。
「それ飲んだらお前ん家行くからな」
「はいはーい」
薫はコーヒーを飲み終わると着替えをしていく。
いつものふわっとした格好ではなく、今日は動きやすさ重視。
「さあ、忙しくなりますよー」
気合いを入れていた。
午前中のうちに神田にマンションに送ってもらうと、最後の確認を行った。
午後。
神田のマンション。
静かな部屋に、インターホンが鳴る。
「……」
モニターを見ると、引越し業者のトラック。
その後ろに——手を振る薫。
「ユウー!」
元気すぎる声。
神田は一瞬だけ目を細める。
「……来たか」
玄関を開けると、廊下にはすでに段ボールが並び始めていた。
「こんにちはー!」
業者の明るい声と一緒に、荷物が次々と運び込まれてくる。
「ここに置きますねー」
「はい!」
薫はその横で、なぜか楽しそうに指示まで出している。
「こっちはリビングで!」
「それ軽いからこっちで大丈夫!」
「おい」
神田が声をかける。
「勝手に仕切るな」
「だって私の荷物ですし」
「俺の家だ」
「今からふたりの家ですよ?」
「……」
一瞬黙る神田。
業者が去ったあと、部屋には段ボールの山。
「……すごい量だな」
「言いました」
「言ってたな」
薫は靴を脱いで、くるくると部屋を見回す。
「ここが今日から家なんだ」
「そうなるな」
「ユウと一緒の家」
「……ああ」
その言葉に、神田は少しだけ視線を逸らす。
慣れない空気。
でも、嫌ではない。
むしろ静かすぎた部屋が、少しだけ“生活”の匂いになっていく感じがする。
「ユウ」
「ん?」
「これからよろしくね」
薫は普通に言う。
神田は少し間を置いて。
「……ああ」
それだけ。
でも薫は嬉しそうに笑う。
「じゃあ最初の仕事!」
「何だ」
「段ボール開ける!」
「それは俺の仕事じゃねえ」
「手伝って」
「……」
神田はため息をつく。
「好きにしろ」
「やった」
テープをはがす音。
段ボールが一つずつ開いていく。
「これキッチン」
「それそこ」
「ユウこれは?」
「知らねえ」
「使うよ」
「勝手に決めるな」
「でも使う」
「……」
神田は諦めたように箱を受け取る。
付き合って3週間、まだ短いはずなのにこの部屋はもう、少しずつ“ふたりの家”になっていく。
薫が笑う。
神田はため息をつく。
その繰り返しが、なぜか心地いい。
「ユウ、ここいい感じ」
「そこは俺の場所だ」
「一緒の場所」
「……」
言い返そうとしてやめる。
その代わり。
「邪魔すんな」
「はーい」
楽しそうな声。
午後の光の中で、段ボールがひとつずつ開かれていく。
新しい生活が、静かに始まっていた。