《第9話》オソロイ。
お名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次は家電量販店へと向かった。
目的はもちろんオーブンレンジ。
一目散に売り場に行くと、どれにしようか悩み始める薫。
「どれも一緒だろ」
「違う!大きさもスペックが全然違う!」
「スペックは大事だな」
「そうでしょ?」
美男美女の組み合わせ、そしてロリータ服という売り場で明らかに目立つふたり。
店員が迷わず声をかけてきた。
「失礼します。オーブンレンジをお探しですか?」
薫が振り返る。
「はい」
店員が少し固まる。
美人だった。
ロリータ服着てるなんて、変なやつだろうと面白がって声をかけたのに、かなり美人だった。
そして隣の神田を見る。
さらに固まる。
(美男美女だ……)
しかしそこはプロの店員なので立て直す。
「どのような用途でお使いですか?」
薫が答える。
「料理とお菓子作りです」
「なるほど」
店員は神田を見る。
「ご主人様はどうでしょう?」
沈黙。
薫が固まる。
神田は平然。
「なんでもいい」
「ユウ!」
「好きなの選べばいいだろ」
ご主人、と呼んでしまったことに対して定員が慌てる。
「いやその……申し訳ありません!」
だが神田は特に気にしていない。
「別に構わん」
「私は気にする!」
気を取り直して説明開始。
「こちらは二段調理対応です」
「へえ」
「パンやクッキーを複数同時に焼けます」
薫の目が輝く。
神田がそれを見る。
「欲しいのか」
「ちょっと」
「買えばいい」
「まだ比較する」
十分後。
「こちらは自動調理機能が豊富で」
「なるほど」
二十分後。
「庫内がフラットなので掃除がしやすく」
「なるほど」
三十分後。
「温度制御が優秀で」
「なるほど」
神田。
何も理解していない。
しかし店員は気付く。
説明のたびに神田が見ているのは商品ではなく薫の反応。
「どう?」
と聞かれるたび、
「気に入ったならそれでいい」
しか言わない。
最終候補が三台に絞られる。
「ユウ、どれがいいと思う?」
「真ん中」
「なんで?」
「お前が一番長く見てた」
薫が一瞬黙る。
店員も黙る。
確かにそうだった。
薫が説明を聞く時間が一番長かったのは真ん中の機種。
神田はスペックを見ていたわけではない。
薫を見ていた。
「見てたの?」
「見てた」
「……」
「欲しいんだろ」
薫が少し照れる。
「では購入手続きへ移らせていただきますね。配送先は…」
「持って帰る」
「え」
「在庫はねーのか?」
「只今確認して参ります」
そう言って倉庫に向かう店員。
「今日から使える?」
「嬉しそうだな」
「嬉しいもん」
会計は当たり前のように神田がカードを切っていた。
「こちらお車まで運びますね」
帰りの車の中、薫は思い出してまた照れていた。
「そんなに見てた?」
「見てた」
「なんで?」
神田はハンドルを握ったまま答える。
「楽しそうだったから」
その一言で。
薫は窓の外を見るしかなくなった。
ふと、踏ん切りがついたかのように
「いい買い物できたー!」
両手を上げて喜ぶ。
完全にご機嫌。
「そうか」
運転席の神田はいつも通り。
「見た?あの二段調理!」
「見た」
「スチーム!」
「見た」
「発酵機能!」
「見た」
「自動メニュー百種類以上!」
「見た」
神田は全部同じテンションで返す。
だがちゃんと聞いている。
「料理するの楽しみ!」
薫はスマホを取り出し始める。
何かと思えばレシピ動画。
「まずグラタン作る」
「そうか」
「次にクッキー」
「そうか」
「シフォンケーキもいいなぁ」
「そうか」
「ローストビーフも作れる」
神田が少しだけ反応した。
「ローストビーフか」
「食べたい?」
「食う」
即答だった。
薫が笑う。
「絶対美味しいのできますよ」
「期待してる」
信号待ち。
神田がちらりと横を見る。
薫はまだ楽しそうにレシピを見ていた。
その姿を見てふと思う。
オーブンレンジを買っただけ。
本来ならそれだけ。
なのに。
不思議と家に帰るのが少し楽しみだった。
「何笑ってるの?」
薫が気付く。
「笑ってない」
「笑ってた」
「気のせいだ」
絶対笑ってた。
神田のマンションへ到着。
エレベーターの中でも薫は止まらない。
大きな袋を抱えながら
「キッチン整理しなきゃ」
「好きにしろ」
「収納ケースも欲しかったかも」
「また買いに行けばいい」
「トング買い忘れた」
「また今度だな」
神田は気付いていなかった。
それら全部が、
『俺の城』ではなく『二人の家』の話になっていることに。
玄関を開ける。
まだ何も変わっていないキッチン。
新品の調理器具。
買ってきたばかりのオーブンレンジを設置する。
薫は満足そうだった。
「ユウ今日はありがとね」
「なんでだ」
薫は少しだけ考えて、そして笑った。
「だってさ」
「なんだ」
「ユウの家で料理が作れるんだもん」
神田が一瞬だけ黙る。
そんなことでこんなに喜んでいるのかと。
「今日こそ照り焼きです!」
そう言うと薫は買ってきたものを整理していく。
整頓が落ち着くと調理に取りかかり、美味しそうな香りが漂ってきた。
目的はもちろんオーブンレンジ。
一目散に売り場に行くと、どれにしようか悩み始める薫。
「どれも一緒だろ」
「違う!大きさもスペックが全然違う!」
「スペックは大事だな」
「そうでしょ?」
美男美女の組み合わせ、そしてロリータ服という売り場で明らかに目立つふたり。
店員が迷わず声をかけてきた。
「失礼します。オーブンレンジをお探しですか?」
薫が振り返る。
「はい」
店員が少し固まる。
美人だった。
ロリータ服着てるなんて、変なやつだろうと面白がって声をかけたのに、かなり美人だった。
そして隣の神田を見る。
さらに固まる。
(美男美女だ……)
しかしそこはプロの店員なので立て直す。
「どのような用途でお使いですか?」
薫が答える。
「料理とお菓子作りです」
「なるほど」
店員は神田を見る。
「ご主人様はどうでしょう?」
沈黙。
薫が固まる。
神田は平然。
「なんでもいい」
「ユウ!」
「好きなの選べばいいだろ」
ご主人、と呼んでしまったことに対して定員が慌てる。
「いやその……申し訳ありません!」
だが神田は特に気にしていない。
「別に構わん」
「私は気にする!」
気を取り直して説明開始。
「こちらは二段調理対応です」
「へえ」
「パンやクッキーを複数同時に焼けます」
薫の目が輝く。
神田がそれを見る。
「欲しいのか」
「ちょっと」
「買えばいい」
「まだ比較する」
十分後。
「こちらは自動調理機能が豊富で」
「なるほど」
二十分後。
「庫内がフラットなので掃除がしやすく」
「なるほど」
三十分後。
「温度制御が優秀で」
「なるほど」
神田。
何も理解していない。
しかし店員は気付く。
説明のたびに神田が見ているのは商品ではなく薫の反応。
「どう?」
と聞かれるたび、
「気に入ったならそれでいい」
しか言わない。
最終候補が三台に絞られる。
「ユウ、どれがいいと思う?」
「真ん中」
「なんで?」
「お前が一番長く見てた」
薫が一瞬黙る。
店員も黙る。
確かにそうだった。
薫が説明を聞く時間が一番長かったのは真ん中の機種。
神田はスペックを見ていたわけではない。
薫を見ていた。
「見てたの?」
「見てた」
「……」
「欲しいんだろ」
薫が少し照れる。
「では購入手続きへ移らせていただきますね。配送先は…」
「持って帰る」
「え」
「在庫はねーのか?」
「只今確認して参ります」
そう言って倉庫に向かう店員。
「今日から使える?」
「嬉しそうだな」
「嬉しいもん」
会計は当たり前のように神田がカードを切っていた。
「こちらお車まで運びますね」
帰りの車の中、薫は思い出してまた照れていた。
「そんなに見てた?」
「見てた」
「なんで?」
神田はハンドルを握ったまま答える。
「楽しそうだったから」
その一言で。
薫は窓の外を見るしかなくなった。
ふと、踏ん切りがついたかのように
「いい買い物できたー!」
両手を上げて喜ぶ。
完全にご機嫌。
「そうか」
運転席の神田はいつも通り。
「見た?あの二段調理!」
「見た」
「スチーム!」
「見た」
「発酵機能!」
「見た」
「自動メニュー百種類以上!」
「見た」
神田は全部同じテンションで返す。
だがちゃんと聞いている。
「料理するの楽しみ!」
薫はスマホを取り出し始める。
何かと思えばレシピ動画。
「まずグラタン作る」
「そうか」
「次にクッキー」
「そうか」
「シフォンケーキもいいなぁ」
「そうか」
「ローストビーフも作れる」
神田が少しだけ反応した。
「ローストビーフか」
「食べたい?」
「食う」
即答だった。
薫が笑う。
「絶対美味しいのできますよ」
「期待してる」
信号待ち。
神田がちらりと横を見る。
薫はまだ楽しそうにレシピを見ていた。
その姿を見てふと思う。
オーブンレンジを買っただけ。
本来ならそれだけ。
なのに。
不思議と家に帰るのが少し楽しみだった。
「何笑ってるの?」
薫が気付く。
「笑ってない」
「笑ってた」
「気のせいだ」
絶対笑ってた。
神田のマンションへ到着。
エレベーターの中でも薫は止まらない。
大きな袋を抱えながら
「キッチン整理しなきゃ」
「好きにしろ」
「収納ケースも欲しかったかも」
「また買いに行けばいい」
「トング買い忘れた」
「また今度だな」
神田は気付いていなかった。
それら全部が、
『俺の城』ではなく『二人の家』の話になっていることに。
玄関を開ける。
まだ何も変わっていないキッチン。
新品の調理器具。
買ってきたばかりのオーブンレンジを設置する。
薫は満足そうだった。
「ユウ今日はありがとね」
「なんでだ」
薫は少しだけ考えて、そして笑った。
「だってさ」
「なんだ」
「ユウの家で料理が作れるんだもん」
神田が一瞬だけ黙る。
そんなことでこんなに喜んでいるのかと。
「今日こそ照り焼きです!」
そう言うと薫は買ってきたものを整理していく。
整頓が落ち着くと調理に取りかかり、美味しそうな香りが漂ってきた。