《第30話》ギョウムコウリツカ。
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一週間目。
営業部のフロアでは、まだ薫も神田も手探り状態だった。
「神田さん、今日の午後の商談、先方から開始時間が三十分早まりました」
「分かった」
「あと、商談資料の最新版、こちらにまとめておきました」
「……助かる」
「その後の社内打ち合わせは5時からです。移動時間を考えると、4時半には出た方がいいですね」
「了解」
薫は神田のスケジュールを確認しながら、次々と仕事を捌いていく。
まだ営業部特有の流れは完全には分からない。
神田も、どこまで薫に任せていいのか探っている。
それでも――。
「神田、昨日の見積もり今日中に出せそうか?」
営業部の同僚に聞かれ、
「もう出してある」
「え?」
「中田がまとめてくれた」
「もう!?」
同僚が目を丸くする。
「さっき先方に送った」
「早……」
別の社員も振り返る。
「神田、午後の商談資料は?」
「そこ」
「もう準備できてんの?」
「中田がやってくれた」
「……すげぇな」
神田は営業活動に集中できるようになり、資料や日程調整に割く時間が目に見えて減っていた。
そして一週間後。
営業部長が先週と今週の数字を並べて確認している。
「……」
「どうですか?」
秘書課課長が尋ねる。
営業部長は資料を見ながら、思わず笑う。
「……効果、出てるな」
「やっぱり?」
「まだ一週間だぞ」
「はい」
「しかも二人とも、まだ探り探りだ」
「それなのに?」
「それなのにだ」
営業部長が数字を指差す。
「神田の商談件数が増えてる。しかも資料作成や日程調整にかかってた時間がかなり減ってる」
「つまり……」
「神田が営業に集中できてる」
二人は顔を見合わせる。
「……これは一ヶ月後、かなり面白い結果になりそうですね」
「だな」
その頃、営業部では。
「神田さん、次の商談まであと15分です」
「分かった」
「コーヒー、ここに置いておきますね」
「……ありがとな」
「いえ」
薫が自分の席へ戻っていく。
神田はふと、その背中を見る。
「……思ったより便利だな」
「便利って言わないでください」
即座に聞きつけた薫が振り返る。
「悪い」
「もう」
神田は小さく笑う。
そして、薫も笑う。
――まだ一週間。
それでも二人の連携は、少しずつ形になり始めていた。
一方、その頃――社長室。
「社長、午後3時からの来客ですが、4時に変更になりました」
「……ああ」
「それと、4時からの会議なんですが、3時に前倒しになりました」
クロスが顔を上げる。
「……つまり?」
「3時から会議で、そのあと4時から来客です」
「最初からそう言え」
「すみません!」
秘書が慌てて手帳をめくる。
「あと、社長。明日の朝9時から――」
「明日は10時からだ」
「え?」
「先方から昨日連絡が来てる」
「あっ……」
クロスは深いため息。
「お前、スケジュール管理向いてねぇだろ」
「す、すみません……」
さらにその日の午後。
「社長、お客様がお見えです!」
「誰だ?」
「えっ……」
秘書が資料を確認する。
「……営業部の方です」
「俺は今日、営業部と打ち合わせの予定ねぇぞ」
「……」
「誰だ」
「……すみません、別の役員の方でした」
「……」
クロスが額を押さえる。
「もういい」
「はい……」
「秘書課に連絡しろ」
「はい」
クロスは椅子に深く座り直す。
そして一言。
「秘書チェンジだ」
「えっ!?」
「一ヶ月の試験運用なんだろ」
「は、はい」
「一週間も経ってねぇが、もう十分分かった」
「……」
「チェンジ」
秘書は慌てて秘書課へ連絡する。
数分後、秘書課課長から電話が入る。
『社長、どうされました?』
「どうもこうもねぇ」
『……はい』
「秘書を替える」
『え?』
「スケジュール管理が下手すぎる」
『……』
「薫を戻せ」
課長が一瞬黙る。
『……社長』
「なんだ」
『薫さんは現在、営業部の業務効率化テスト中です』
「知ってる」
『一ヶ月の予定です』
「だから?」
『……まだ一週間目です』
「関係ねぇ」
『社長』
「なんだ」
『神田さんのところでは、すでにかなり効果が出ているそうですが』
「…………」
クロスが黙る。
「……そうか」
『はい』
「……」
しばらく考えたあと。
「じゃあ、そっちは一ヶ月やらせろ」
『はい』
「俺の秘書は別のやつに替えろ」
『承知しました』
電話を切る。
クロスはソファーに背を預け、ぼそっと呟く。
「……一ヶ月も待たなきゃいけねぇのかよ」
その表情は、明らかに不満そうだった。
営業部のフロアでは、まだ薫も神田も手探り状態だった。
「神田さん、今日の午後の商談、先方から開始時間が三十分早まりました」
「分かった」
「あと、商談資料の最新版、こちらにまとめておきました」
「……助かる」
「その後の社内打ち合わせは5時からです。移動時間を考えると、4時半には出た方がいいですね」
「了解」
薫は神田のスケジュールを確認しながら、次々と仕事を捌いていく。
まだ営業部特有の流れは完全には分からない。
神田も、どこまで薫に任せていいのか探っている。
それでも――。
「神田、昨日の見積もり今日中に出せそうか?」
営業部の同僚に聞かれ、
「もう出してある」
「え?」
「中田がまとめてくれた」
「もう!?」
同僚が目を丸くする。
「さっき先方に送った」
「早……」
別の社員も振り返る。
「神田、午後の商談資料は?」
「そこ」
「もう準備できてんの?」
「中田がやってくれた」
「……すげぇな」
神田は営業活動に集中できるようになり、資料や日程調整に割く時間が目に見えて減っていた。
そして一週間後。
営業部長が先週と今週の数字を並べて確認している。
「……」
「どうですか?」
秘書課課長が尋ねる。
営業部長は資料を見ながら、思わず笑う。
「……効果、出てるな」
「やっぱり?」
「まだ一週間だぞ」
「はい」
「しかも二人とも、まだ探り探りだ」
「それなのに?」
「それなのにだ」
営業部長が数字を指差す。
「神田の商談件数が増えてる。しかも資料作成や日程調整にかかってた時間がかなり減ってる」
「つまり……」
「神田が営業に集中できてる」
二人は顔を見合わせる。
「……これは一ヶ月後、かなり面白い結果になりそうですね」
「だな」
その頃、営業部では。
「神田さん、次の商談まであと15分です」
「分かった」
「コーヒー、ここに置いておきますね」
「……ありがとな」
「いえ」
薫が自分の席へ戻っていく。
神田はふと、その背中を見る。
「……思ったより便利だな」
「便利って言わないでください」
即座に聞きつけた薫が振り返る。
「悪い」
「もう」
神田は小さく笑う。
そして、薫も笑う。
――まだ一週間。
それでも二人の連携は、少しずつ形になり始めていた。
一方、その頃――社長室。
「社長、午後3時からの来客ですが、4時に変更になりました」
「……ああ」
「それと、4時からの会議なんですが、3時に前倒しになりました」
クロスが顔を上げる。
「……つまり?」
「3時から会議で、そのあと4時から来客です」
「最初からそう言え」
「すみません!」
秘書が慌てて手帳をめくる。
「あと、社長。明日の朝9時から――」
「明日は10時からだ」
「え?」
「先方から昨日連絡が来てる」
「あっ……」
クロスは深いため息。
「お前、スケジュール管理向いてねぇだろ」
「す、すみません……」
さらにその日の午後。
「社長、お客様がお見えです!」
「誰だ?」
「えっ……」
秘書が資料を確認する。
「……営業部の方です」
「俺は今日、営業部と打ち合わせの予定ねぇぞ」
「……」
「誰だ」
「……すみません、別の役員の方でした」
「……」
クロスが額を押さえる。
「もういい」
「はい……」
「秘書課に連絡しろ」
「はい」
クロスは椅子に深く座り直す。
そして一言。
「秘書チェンジだ」
「えっ!?」
「一ヶ月の試験運用なんだろ」
「は、はい」
「一週間も経ってねぇが、もう十分分かった」
「……」
「チェンジ」
秘書は慌てて秘書課へ連絡する。
数分後、秘書課課長から電話が入る。
『社長、どうされました?』
「どうもこうもねぇ」
『……はい』
「秘書を替える」
『え?』
「スケジュール管理が下手すぎる」
『……』
「薫を戻せ」
課長が一瞬黙る。
『……社長』
「なんだ」
『薫さんは現在、営業部の業務効率化テスト中です』
「知ってる」
『一ヶ月の予定です』
「だから?」
『……まだ一週間目です』
「関係ねぇ」
『社長』
「なんだ」
『神田さんのところでは、すでにかなり効果が出ているそうですが』
「…………」
クロスが黙る。
「……そうか」
『はい』
「……」
しばらく考えたあと。
「じゃあ、そっちは一ヶ月やらせろ」
『はい』
「俺の秘書は別のやつに替えろ」
『承知しました』
電話を切る。
クロスはソファーに背を預け、ぼそっと呟く。
「……一ヶ月も待たなきゃいけねぇのかよ」
その表情は、明らかに不満そうだった。