《第28話》キセイ。
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別室で大学生の弟の子どもと遊んでいた薫がリビングへ戻ってくる。
「ただいまー。私も飲むー」
冷蔵庫からビールを一本取り出し、プシュッと開ける。
「おい、飲むのか」
「飲むよー。せっかくみんなで飲んでるんだもん」
神田の隣に座って、缶を軽く掲げる。
「お疲れさまー」
「おう」
「……で?」
薫が弟たちを見回す。
「私がいない間、ユウのこといじめてないー?」
「いじめてないよ!」
高校生の弟が即答。
「むしろ仲良くなった」
「何がだ」
神田が低い声で突っ込む。
大学生の弟がニヤニヤしながら、
「ユウ兄さんって呼んでる」
「えっ」
薫が神田を見る。
「ユウ兄さん?」
「……」
「なにそれ、かわいいじゃん」
「やめろ」
「なんでー?私のお兄ちゃんみたい」
「お前の弟だろ」
「じゃあ今日からユウもお兄ちゃんね」
「お前まで乗るな」
弟たちが爆笑する。
「ほら!姉ちゃんも認めた!」
「ユウ兄さん!」
「……うるせぇ」
薫は楽しそうにビールを一口飲んで、神田の肩に寄りかかる。
「よかったね、ユウ兄さん♡」
「……お前な」
「ふふっ」
お父さんまで笑いながら、
「まあ、いいじゃねぇか。もう家族みたいなもんだ」
神田は一瞬黙ってから、薫の頭をぽん、と撫でる。
「……そうだな」
「え?」
「なんでもねぇ」
弟たちがまた顔を見合わせる。
「やっぱ兄さんじゃん」
「完全に兄さんだな」
「聞こえてるぞ、お前ら」
「で、本当はなんの話してたの?」
薫がビールを飲みながら、三人を順番に見る。
「……」
神田、無言。
弟二人、露骨に目を逸らす。
「……?」
「いや、別に」
「なんも話してない」
「そうそう」
「嘘だ」
薫が即答。
「絶対なんか話してたじゃん」
すると、お父さんまで黙って酒を飲み始める。
「お父さん?」
「……」
「お父さん、ユウのこといじめてたんでしょー?」
「いじめてねぇよ」
お父さんが即座に否定する。
「じゃあ何話してたの?」
「……」
「ほら!」
薫が神田を見る。
「ユウ、何話してたの?」
「……言わなくていい」
「なんで?」
「お前が知らなくていい話だ」
「えー!気になる!」
弟が耐えきれず吹き出す。
「姉ちゃん、ユウ兄さんに聞いても無駄だよ」
「ユウ兄さん?」
「おい」
神田が睨む。
「だから何の話!?」
弟二人が顔を見合わせる。
そして大学生の弟が、ぽろっと。
「姉ちゃんと結婚するなら――」
「おい」
神田が遮る。
「……え?」
薫の動きが止まる。
「結婚?」
静まり返る居間。
弟二人は「やっべ」という顔。
お父さんは黙ってビールを飲む。
神田はしばらく黙っていたが、観念したように息を吐く。
「……そういう話だ」
「……」
薫、神田を見る。
「……結婚するの?」
「そのつもりはある」
「……」
薫の顔がみるみる赤くなる。
「……聞いてないんだけど」
「だから言うなって言ったんだ」
弟たちが大爆笑。
「姉ちゃん真っ赤!」
「ユウ兄さん、頑張れ!」
「お前ら黙れ」
お父さんだけが、静かに笑っていた。
「待って、まだ付き合って2ヶ月だから!」
薫が慌てて言う。
「え?」
大学生の弟が目を丸くする。
「姉ちゃんたち、まだ2ヶ月だったの?!」
「そうだよ!」
「それでユウ兄さん青森連れてきたの?!」
高校生の弟も神田を見る。
「やべーな、2ヶ月で彼女の実家!」
「しかも東京からわざわざ!」
「……誘われたから来ただけだ」
神田は淡々と答える。
「いやいやいや!」
大学生の弟が笑う。
「普通、付き合って2ヶ月で彼女の実家って結構ハードル高いって!」
「それについてくるユウ兄さんもすげーわ!」
「だからその呼び方やめろ」
「もう無理。今日から兄さんだもん」
「勝手に決めんな」
薫が隣で恥ずかしそうにビールを飲む。
「だって……一緒に帰りたかったんだもん」
「……」
神田が薫を見る。
「そう言われたら断れねぇだろ」
「うわ」
弟二人が同時に声を上げる。
「ユウ兄さん、姉ちゃんに弱っ!」
「めちゃくちゃ惚れてんじゃん!」
「うるせぇ」
お父さんが笑いながら、
「2ヶ月でも、本人たちがいいならいいだろ」
「そうだけどさぁ!」
大学生の弟が神田に向き直る。
「でも兄さん、覚悟はしといた方がいいよ」
「何のだ」
「姉ちゃん、家族にめちゃくちゃ愛されてるから」
「……知ってる」
即答。
薫が神田を見上げる。
「ユウ……」
「なんだ」
「……来てくれてありがと」
神田は少しだけ目を細めて、
「俺も来たかったからな」
「うわあああ、また始まった!」
「2ヶ月カップル強ぇ!」
「お前ら本当にうるせぇな」
居間に笑い声が響いた。
すると薫のスマホがテーブルの上で震える。
「ん?」
画面を見ると、大学時代の同級生からの着信。
「もしもしー?」
『久しぶり!インスタ見た!青森帰ってきてるんでしょー?』
「そうそう、今実家ー」
『じゃあご飯行こ!明日のお昼とか時間どう?』
「明日?」
薫がカレンダーを確認する。
「うん、空いてるよー」
『やった!何人か声かけとく!』
「え、いいの?」
『もちろん!……あ、そうだ。彼氏もいるんだよね?』
「うん、いるよー」
『じゃあ連れてきたらいいじゃん!』
「え?」
薫がちらっと隣を見る。
神田は何事もなかったようにビールを飲んでいる。
『せっかくだし紹介してよ!大学の友達みんな気になってるって!』
「えー……」
『いいじゃんいいじゃん!明日のお昼!』
「……ユウ、どうする?」
神田が薫を見る。
「俺は構わねぇ」
「だって」
電話の向こうに聞こえるように、
「彼氏もいいってー」
『よっしゃ!じゃあ決まり!』
「うん、また場所送ってー」
『了解!じゃあ明日ね!』
「はーい、またねー」
電話を切る。
すると弟二人がすぐに食いつく。
「え、明日も彼氏連れ回すの?」
「姉ちゃん、ユウ兄さん青森デビューしまくりじゃん」
「ユウ兄さんって呼ぶな」
「明日は姉ちゃんの大学の友達かー」
お父さんもニヤニヤしながら神田を見る。
「忙しいな、兄さん」
「親父までやめろ」
薫は楽しそうに笑う。
「でも、大学の友達にユウ紹介するの楽しみかも」
神田は少しだけ薫を見る。
「……そうか」
「うん!」
「なら、行くか」
「やったー♡」
その横で弟二人。
「もう完全に兄さんじゃん」
「な」
「だから聞こえてる」
「ただいまー。私も飲むー」
冷蔵庫からビールを一本取り出し、プシュッと開ける。
「おい、飲むのか」
「飲むよー。せっかくみんなで飲んでるんだもん」
神田の隣に座って、缶を軽く掲げる。
「お疲れさまー」
「おう」
「……で?」
薫が弟たちを見回す。
「私がいない間、ユウのこといじめてないー?」
「いじめてないよ!」
高校生の弟が即答。
「むしろ仲良くなった」
「何がだ」
神田が低い声で突っ込む。
大学生の弟がニヤニヤしながら、
「ユウ兄さんって呼んでる」
「えっ」
薫が神田を見る。
「ユウ兄さん?」
「……」
「なにそれ、かわいいじゃん」
「やめろ」
「なんでー?私のお兄ちゃんみたい」
「お前の弟だろ」
「じゃあ今日からユウもお兄ちゃんね」
「お前まで乗るな」
弟たちが爆笑する。
「ほら!姉ちゃんも認めた!」
「ユウ兄さん!」
「……うるせぇ」
薫は楽しそうにビールを一口飲んで、神田の肩に寄りかかる。
「よかったね、ユウ兄さん♡」
「……お前な」
「ふふっ」
お父さんまで笑いながら、
「まあ、いいじゃねぇか。もう家族みたいなもんだ」
神田は一瞬黙ってから、薫の頭をぽん、と撫でる。
「……そうだな」
「え?」
「なんでもねぇ」
弟たちがまた顔を見合わせる。
「やっぱ兄さんじゃん」
「完全に兄さんだな」
「聞こえてるぞ、お前ら」
「で、本当はなんの話してたの?」
薫がビールを飲みながら、三人を順番に見る。
「……」
神田、無言。
弟二人、露骨に目を逸らす。
「……?」
「いや、別に」
「なんも話してない」
「そうそう」
「嘘だ」
薫が即答。
「絶対なんか話してたじゃん」
すると、お父さんまで黙って酒を飲み始める。
「お父さん?」
「……」
「お父さん、ユウのこといじめてたんでしょー?」
「いじめてねぇよ」
お父さんが即座に否定する。
「じゃあ何話してたの?」
「……」
「ほら!」
薫が神田を見る。
「ユウ、何話してたの?」
「……言わなくていい」
「なんで?」
「お前が知らなくていい話だ」
「えー!気になる!」
弟が耐えきれず吹き出す。
「姉ちゃん、ユウ兄さんに聞いても無駄だよ」
「ユウ兄さん?」
「おい」
神田が睨む。
「だから何の話!?」
弟二人が顔を見合わせる。
そして大学生の弟が、ぽろっと。
「姉ちゃんと結婚するなら――」
「おい」
神田が遮る。
「……え?」
薫の動きが止まる。
「結婚?」
静まり返る居間。
弟二人は「やっべ」という顔。
お父さんは黙ってビールを飲む。
神田はしばらく黙っていたが、観念したように息を吐く。
「……そういう話だ」
「……」
薫、神田を見る。
「……結婚するの?」
「そのつもりはある」
「……」
薫の顔がみるみる赤くなる。
「……聞いてないんだけど」
「だから言うなって言ったんだ」
弟たちが大爆笑。
「姉ちゃん真っ赤!」
「ユウ兄さん、頑張れ!」
「お前ら黙れ」
お父さんだけが、静かに笑っていた。
「待って、まだ付き合って2ヶ月だから!」
薫が慌てて言う。
「え?」
大学生の弟が目を丸くする。
「姉ちゃんたち、まだ2ヶ月だったの?!」
「そうだよ!」
「それでユウ兄さん青森連れてきたの?!」
高校生の弟も神田を見る。
「やべーな、2ヶ月で彼女の実家!」
「しかも東京からわざわざ!」
「……誘われたから来ただけだ」
神田は淡々と答える。
「いやいやいや!」
大学生の弟が笑う。
「普通、付き合って2ヶ月で彼女の実家って結構ハードル高いって!」
「それについてくるユウ兄さんもすげーわ!」
「だからその呼び方やめろ」
「もう無理。今日から兄さんだもん」
「勝手に決めんな」
薫が隣で恥ずかしそうにビールを飲む。
「だって……一緒に帰りたかったんだもん」
「……」
神田が薫を見る。
「そう言われたら断れねぇだろ」
「うわ」
弟二人が同時に声を上げる。
「ユウ兄さん、姉ちゃんに弱っ!」
「めちゃくちゃ惚れてんじゃん!」
「うるせぇ」
お父さんが笑いながら、
「2ヶ月でも、本人たちがいいならいいだろ」
「そうだけどさぁ!」
大学生の弟が神田に向き直る。
「でも兄さん、覚悟はしといた方がいいよ」
「何のだ」
「姉ちゃん、家族にめちゃくちゃ愛されてるから」
「……知ってる」
即答。
薫が神田を見上げる。
「ユウ……」
「なんだ」
「……来てくれてありがと」
神田は少しだけ目を細めて、
「俺も来たかったからな」
「うわあああ、また始まった!」
「2ヶ月カップル強ぇ!」
「お前ら本当にうるせぇな」
居間に笑い声が響いた。
すると薫のスマホがテーブルの上で震える。
「ん?」
画面を見ると、大学時代の同級生からの着信。
「もしもしー?」
『久しぶり!インスタ見た!青森帰ってきてるんでしょー?』
「そうそう、今実家ー」
『じゃあご飯行こ!明日のお昼とか時間どう?』
「明日?」
薫がカレンダーを確認する。
「うん、空いてるよー」
『やった!何人か声かけとく!』
「え、いいの?」
『もちろん!……あ、そうだ。彼氏もいるんだよね?』
「うん、いるよー」
『じゃあ連れてきたらいいじゃん!』
「え?」
薫がちらっと隣を見る。
神田は何事もなかったようにビールを飲んでいる。
『せっかくだし紹介してよ!大学の友達みんな気になってるって!』
「えー……」
『いいじゃんいいじゃん!明日のお昼!』
「……ユウ、どうする?」
神田が薫を見る。
「俺は構わねぇ」
「だって」
電話の向こうに聞こえるように、
「彼氏もいいってー」
『よっしゃ!じゃあ決まり!』
「うん、また場所送ってー」
『了解!じゃあ明日ね!』
「はーい、またねー」
電話を切る。
すると弟二人がすぐに食いつく。
「え、明日も彼氏連れ回すの?」
「姉ちゃん、ユウ兄さん青森デビューしまくりじゃん」
「ユウ兄さんって呼ぶな」
「明日は姉ちゃんの大学の友達かー」
お父さんもニヤニヤしながら神田を見る。
「忙しいな、兄さん」
「親父までやめろ」
薫は楽しそうに笑う。
「でも、大学の友達にユウ紹介するの楽しみかも」
神田は少しだけ薫を見る。
「……そうか」
「うん!」
「なら、行くか」
「やったー♡」
その横で弟二人。
「もう完全に兄さんじゃん」
「な」
「だから聞こえてる」