《第23話》ケンカ。
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夜。
リビングのソファ。
テレビはついているけれど、二人とも特に見ているわけでもなく、静かな時間が流れていた。
並んで座っていた薫が、神田を見上げる。
「ねえ、ユウ」
「なんだ」
「喧嘩してみたい」
神田は一瞬だけ視線を向けて、真顔のまま答えた。
「めんどくさい」
「えー」
「喧嘩しよーよー」
「なんでだ」
「喧嘩してみたいから」
「意味がわからん」
「いいじゃん」
神田は小さくため息をつく。
「却下だ」
「えー……」
まだ何か言おうとする薫を見て、神田は片腕を伸ばした。
「来い」
「ん?」
軽く腕を引くと、そのまま薫は神田の膝へ。
「わっ」
横向きに寝かされ、自然と頭が神田の太ももに収まる。
「大人しくしてろ」
そう言って、前髪をそっとかき分ける。
優しく頭を撫でる手。
「……ふふっ」
「なんだ」
「髪やって」
神田は返事の代わりに、指を髪へ通した。
さらり、と長い髪をすくい、絡まないように丁寧に梳いていく。
時折、頭皮を優しく撫でるように指先が動く。
「ん……」
気持ちよさそうに目を細める薫。
「気持ちいい」
「そうか」
「もっと」
「注文が多いな」
そう言いながらも手は止まらない。
髪をすき、頭をゆっくり撫でる。
一定のリズムが心地よくて、薫のまぶたが少しずつ重くなっていく。
「……良かったな」
「うん……」
「喧嘩するより、こっちの方がいいだろ」
「……そうかも」
くすっと笑う薫。
「でもね」
「なんだ」
「喧嘩しても、こうやって仲直りするのかなって気になっただけ」
神田は少しだけ手を止め、薫を見下ろした。
「喧嘩する前提で考えるな」
「じゃあ?」
「不満があるなら言え。話して終わりだ」
「そっか」
「だから喧嘩にならん」
また髪をゆっくり梳き始める。
薫は安心しきったように目を閉じ、神田の膝に頬を預けた。
「……やっぱりユウの膝、好き」
「知ってる」
短い返事と一緒に、また優しく頭を撫でる。
その穏やかな時間の方が、二人にはずっと似合っていた。
次の日の昼休み。
薫とリナリーがラウンジでカフェラテを飲みながら話している。
「――ってことがあったのー」
薫は昨日の出来事を楽しそうに話し終えた。
リナリーは動きを止める。
「……何それ」
「ん?」
「ただの惚気じゃん」
「えー?」
「『喧嘩してみたい』って言ったら膝枕されて頭撫でられました、って話でしょ?」
「そうだよ?」
「そうだよ?じゃないの!」
思わずツッコミを入れるリナリー。
「喧嘩しないの?」
「したいのにできなかったよ?」
「神田さん、開始すらさせてくれなかったじゃん」
「うん」
「『めんどくさい』『大人しくしてろ』で終了」
ヒロインは思い出して、ふふっと笑う。
「そのあと髪までやってくれた」
「聞いてない!」
「気持ちよかったよー」
「そこじゃない!」
リナリーの鋭いツッコミが入る。
「仲良しか」
リナリーが呆れ半分、笑い半分で言う。
「仲良しだよー」
「いや、聞いたの私だけどさ……」
リナリーは肩をすくめた。
「普通、喧嘩したいって言われたら『なんで?』って話になるじゃん」
「なったよ?」
「でも最終的に膝枕で解決してる!」
「あはは」
「神田さん、喧嘩する気ゼロだね。」
薫は嬉しそうに頷く。
「『不満あるなら言え。話して終わりだ』って」
「……」
リナリーは一瞬黙ってから、小さく笑った。
「それ、めちゃくちゃ大人」
「そう?」
「うん。喧嘩じゃなくて話し合いするタイプなんだ」
「確かに」
「だから仲良しなんだろうね」
薫は照れくさそうに笑った。
「えへへ」
そこへ通りかかった営業部のラビが、最後の一言だけ聞こえてきた。
「仲良しって誰?」
リナリーは即答する。
「神田さんと薫」
「あー、それは知ってる」
「昨日なんて薫『喧嘩したい』って言ったら、膝枕して頭撫でて終了したらしいよ」
ラビは数秒固まり、
「……ユウ、攻略法がうますぎるだろ」
「でしょ?」
「喧嘩の芽を根本から摘んでるじゃん」
薫は笑いながら頷く。
「結果、喧嘩できなかった!」
ラビは苦笑して言った。
「いや、それもう喧嘩できないくらい仲良しってことじゃん」
「えへへへへ」
薫は嬉しそうに笑った。
リビングのソファ。
テレビはついているけれど、二人とも特に見ているわけでもなく、静かな時間が流れていた。
並んで座っていた薫が、神田を見上げる。
「ねえ、ユウ」
「なんだ」
「喧嘩してみたい」
神田は一瞬だけ視線を向けて、真顔のまま答えた。
「めんどくさい」
「えー」
「喧嘩しよーよー」
「なんでだ」
「喧嘩してみたいから」
「意味がわからん」
「いいじゃん」
神田は小さくため息をつく。
「却下だ」
「えー……」
まだ何か言おうとする薫を見て、神田は片腕を伸ばした。
「来い」
「ん?」
軽く腕を引くと、そのまま薫は神田の膝へ。
「わっ」
横向きに寝かされ、自然と頭が神田の太ももに収まる。
「大人しくしてろ」
そう言って、前髪をそっとかき分ける。
優しく頭を撫でる手。
「……ふふっ」
「なんだ」
「髪やって」
神田は返事の代わりに、指を髪へ通した。
さらり、と長い髪をすくい、絡まないように丁寧に梳いていく。
時折、頭皮を優しく撫でるように指先が動く。
「ん……」
気持ちよさそうに目を細める薫。
「気持ちいい」
「そうか」
「もっと」
「注文が多いな」
そう言いながらも手は止まらない。
髪をすき、頭をゆっくり撫でる。
一定のリズムが心地よくて、薫のまぶたが少しずつ重くなっていく。
「……良かったな」
「うん……」
「喧嘩するより、こっちの方がいいだろ」
「……そうかも」
くすっと笑う薫。
「でもね」
「なんだ」
「喧嘩しても、こうやって仲直りするのかなって気になっただけ」
神田は少しだけ手を止め、薫を見下ろした。
「喧嘩する前提で考えるな」
「じゃあ?」
「不満があるなら言え。話して終わりだ」
「そっか」
「だから喧嘩にならん」
また髪をゆっくり梳き始める。
薫は安心しきったように目を閉じ、神田の膝に頬を預けた。
「……やっぱりユウの膝、好き」
「知ってる」
短い返事と一緒に、また優しく頭を撫でる。
その穏やかな時間の方が、二人にはずっと似合っていた。
次の日の昼休み。
薫とリナリーがラウンジでカフェラテを飲みながら話している。
「――ってことがあったのー」
薫は昨日の出来事を楽しそうに話し終えた。
リナリーは動きを止める。
「……何それ」
「ん?」
「ただの惚気じゃん」
「えー?」
「『喧嘩してみたい』って言ったら膝枕されて頭撫でられました、って話でしょ?」
「そうだよ?」
「そうだよ?じゃないの!」
思わずツッコミを入れるリナリー。
「喧嘩しないの?」
「したいのにできなかったよ?」
「神田さん、開始すらさせてくれなかったじゃん」
「うん」
「『めんどくさい』『大人しくしてろ』で終了」
ヒロインは思い出して、ふふっと笑う。
「そのあと髪までやってくれた」
「聞いてない!」
「気持ちよかったよー」
「そこじゃない!」
リナリーの鋭いツッコミが入る。
「仲良しか」
リナリーが呆れ半分、笑い半分で言う。
「仲良しだよー」
「いや、聞いたの私だけどさ……」
リナリーは肩をすくめた。
「普通、喧嘩したいって言われたら『なんで?』って話になるじゃん」
「なったよ?」
「でも最終的に膝枕で解決してる!」
「あはは」
「神田さん、喧嘩する気ゼロだね。」
薫は嬉しそうに頷く。
「『不満あるなら言え。話して終わりだ』って」
「……」
リナリーは一瞬黙ってから、小さく笑った。
「それ、めちゃくちゃ大人」
「そう?」
「うん。喧嘩じゃなくて話し合いするタイプなんだ」
「確かに」
「だから仲良しなんだろうね」
薫は照れくさそうに笑った。
「えへへ」
そこへ通りかかった営業部のラビが、最後の一言だけ聞こえてきた。
「仲良しって誰?」
リナリーは即答する。
「神田さんと薫」
「あー、それは知ってる」
「昨日なんて薫『喧嘩したい』って言ったら、膝枕して頭撫でて終了したらしいよ」
ラビは数秒固まり、
「……ユウ、攻略法がうますぎるだろ」
「でしょ?」
「喧嘩の芽を根本から摘んでるじゃん」
薫は笑いながら頷く。
「結果、喧嘩できなかった!」
ラビは苦笑して言った。
「いや、それもう喧嘩できないくらい仲良しってことじゃん」
「えへへへへ」
薫は嬉しそうに笑った。