《第20話》コンシンカイ。
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場の空気はすっかり昔話モード。
クロスが興味津々で身を乗り出す。
「高校までは分かった」
「はい」
「じゃあ中学校は?」
薫の箸が止まる。
「あーーーー……」
その反応に秘書課がざわつく。
「出た」
「また何かある」
「今度は何ですか?」
クロスも笑う。
「何面白いの出てくるんだ?」
「……」
「中学校……ですか」
少しだけ言いにくそうに笑う。
「ネタ尽くしか?」
「んーーーー」
珍しく歯切れが悪い。
秘書課は逆に期待してしまう。
「何だろう」
「気になる」
薫は少し考えてから、さらっと口を開いた。
「中学校は」
「うん」
「いじめられっ子でした」
静まり返る。
「……は?」
クロスの笑顔が消える。
薫はいつもの調子で続ける。
「机に『死ね』って書かれたり」
「…………」
「教科書隠されたり」
「…………」
「まあ、よくあるやつです」
秘書課全員が固まる。
クロスが低い声で聞く。
「……よくある、じゃないだろ」
薫は苦笑した。
「でも私も性格悪いから」
「え?」
「私がいることで嫌になる人もいるんだなーって思って。毎日普通に学校行ってました。あはは」
笑う。
その笑い方があまりにも自然で。
誰も笑えなかった。
リナリーがぽつりと呟く。
「……そんな明るく言う話じゃなくない?」
薫は肩をすくめる。
「もう昔の話ですし」
クロスはしばらく黙っていたが、静かに尋ねる。
「……だからバスケか」
「はい」
「なんで」
薫は少しだけ遠くを見る。
「ルールがあるから」
「?」
「コートの中なら。ぶつかっても怒られない。ルールの中で思い切りぶつかれる」
少し笑う。
「正当防衛……みたいなものですかね。あと、正しいルールの中での仕返し」
「…………」
「負けたくなかったんです。だから毎日練習して。気付いたら、強豪校に入ることになってました」
最後だけ、いつもの調子で笑った。
「あはは」
誰も笑えない。
クロスはグラスを置いたまま、しばらく何も言わなかった。
秘書課も言葉を失っている。
さっきまで賑やかだったテーブルが、不思議なくらい静かになる。
薫だけが空気を変えようと笑う。
「だから結果オーライです!今では笑い話ですよ」
クロスはその笑顔を見て、小さく息を吐いた。
「……お前」
「はい?」
「本当に強いな」
薫は首を横に振る。
「強くないですよ。バスケがあったからです。バスケがなかったら、多分学校行けてなかったと思います」
その言葉に、リナリーは静かに頷いた。
「だからあんなに打ち込めたんですね」
「うん」
薫は少し照れくさそうに笑う。
「当時は必死でした」
クロスはそれ以上深くは聞かなかった。
ただ徳利を手に取り、薫の空いたグラスへ静かに酒を注ぐ。
「……今日は飲め」
「はい」
薫も何も言わず、小さく笑ってグラスを持ち上げた。
周りの誰も、その話を軽く茶化すことはしなかった。
さっきまで少ししんみりしていた空気を変えるように、クロスがわざと明るく口を開いた。
「よし」
「はい?」
「じゃあ小学校」
薫は笑う。
「えー」
「まだあるのか」
「ありますよ」
「何して遊んでた?」
「山通って帰ったり」
「……待て」
クロスが即座に止める。
「なんで山?」
秘書課も一斉に頷く。
「山?」
「通学路じゃなく?」
薫はケロッとしている。
「うちの実家、青森の田舎なんです」
「あー」
「近道が山だったので」
「近道が山?」
「はい」
「あと用水路で遊んだり」
「…………」
クロスが笑い出す。
「やばい小学生だな!」
秘書課も爆笑。
「危ない危ない!」
「今だったら先生に怒られる!」
「男の子じゃん!」
薫も笑う。
「近所の子みんなやってましたよ」
「秘密基地作ったり」
「虫捕まえたり」
「木登りしたり」
「完全に男子!」
「女の子らしい遊びしろ!」
「おままごともしましたよ」
「ついでみたいに言うな!」
大笑いが起こる。
薫が「あ」と思い出したように言う。
「でも」
「ん?」
「自慢あるかも」
クロスが身を乗り出す。
「なんだ?」
「児童会長でした」
「…………」
「え」
秘書課全員が固まる。
「児童会長?」
「はい」
「なんで?」
薫は悪びれもなく答える。
「図書委員になりたかったんです」
「うん」
「ジャンケンで負けて」
「うん」
「悔しかったので」
「うん」
「じゃあもう学校のトップ取っちゃえーって。児童会長になりました」
沈黙。
クロスが目をぱちぱちさせる。
「……そんな理由?」
「はい」
「図書委員になれなかった腹いせ?」
「そうです」
「発想おかしいだろ!」
秘書課は笑い転げる。
「スケールが違う!」
「普通は保健委員とか行くんですよ!」
「なんで学校のトップ!」
薫はきょとん。
「せっかく立候補するなら一番上かなって。」
クロスが頭を抱える。
「勝ったのか?」
「勝ちました」
「…………」
「人気あったんだな」
「いや」
薫は首を横に振る。
「演説頑張りました。あと公約」
「何言ったんだ?」
「もっと図書室の本増やしてください」
「図書委員への未練!」
秘書課大爆笑。
「結局本なんだ!」
「ぶれてない!」
「児童会長になってまで図書室!」
薫は満足そうに頷く。
「図書室の本、少し増えました」
「成果出してる!」
「有能!」
クロスは腹を抱えて笑う。
「なんなんだお前の人生!」
「小学校は児童会長」
「中学はいじめられっ子」
「高校は全国常連のバスケ」
「大学で資格三つ」
「今は秘書。」
「情報量多すぎる!」
薫はジョッキを持ちながら笑う。
「聞かれるから答えてるだけですよ」
クロスは肩を震わせながら言った。
「もう怖くて幼稚園以前が聞けねぇ」
その一言で、秘書課のテーブルは再び大きな笑いに包まれた。
クロスが興味津々で身を乗り出す。
「高校までは分かった」
「はい」
「じゃあ中学校は?」
薫の箸が止まる。
「あーーーー……」
その反応に秘書課がざわつく。
「出た」
「また何かある」
「今度は何ですか?」
クロスも笑う。
「何面白いの出てくるんだ?」
「……」
「中学校……ですか」
少しだけ言いにくそうに笑う。
「ネタ尽くしか?」
「んーーーー」
珍しく歯切れが悪い。
秘書課は逆に期待してしまう。
「何だろう」
「気になる」
薫は少し考えてから、さらっと口を開いた。
「中学校は」
「うん」
「いじめられっ子でした」
静まり返る。
「……は?」
クロスの笑顔が消える。
薫はいつもの調子で続ける。
「机に『死ね』って書かれたり」
「…………」
「教科書隠されたり」
「…………」
「まあ、よくあるやつです」
秘書課全員が固まる。
クロスが低い声で聞く。
「……よくある、じゃないだろ」
薫は苦笑した。
「でも私も性格悪いから」
「え?」
「私がいることで嫌になる人もいるんだなーって思って。毎日普通に学校行ってました。あはは」
笑う。
その笑い方があまりにも自然で。
誰も笑えなかった。
リナリーがぽつりと呟く。
「……そんな明るく言う話じゃなくない?」
薫は肩をすくめる。
「もう昔の話ですし」
クロスはしばらく黙っていたが、静かに尋ねる。
「……だからバスケか」
「はい」
「なんで」
薫は少しだけ遠くを見る。
「ルールがあるから」
「?」
「コートの中なら。ぶつかっても怒られない。ルールの中で思い切りぶつかれる」
少し笑う。
「正当防衛……みたいなものですかね。あと、正しいルールの中での仕返し」
「…………」
「負けたくなかったんです。だから毎日練習して。気付いたら、強豪校に入ることになってました」
最後だけ、いつもの調子で笑った。
「あはは」
誰も笑えない。
クロスはグラスを置いたまま、しばらく何も言わなかった。
秘書課も言葉を失っている。
さっきまで賑やかだったテーブルが、不思議なくらい静かになる。
薫だけが空気を変えようと笑う。
「だから結果オーライです!今では笑い話ですよ」
クロスはその笑顔を見て、小さく息を吐いた。
「……お前」
「はい?」
「本当に強いな」
薫は首を横に振る。
「強くないですよ。バスケがあったからです。バスケがなかったら、多分学校行けてなかったと思います」
その言葉に、リナリーは静かに頷いた。
「だからあんなに打ち込めたんですね」
「うん」
薫は少し照れくさそうに笑う。
「当時は必死でした」
クロスはそれ以上深くは聞かなかった。
ただ徳利を手に取り、薫の空いたグラスへ静かに酒を注ぐ。
「……今日は飲め」
「はい」
薫も何も言わず、小さく笑ってグラスを持ち上げた。
周りの誰も、その話を軽く茶化すことはしなかった。
さっきまで少ししんみりしていた空気を変えるように、クロスがわざと明るく口を開いた。
「よし」
「はい?」
「じゃあ小学校」
薫は笑う。
「えー」
「まだあるのか」
「ありますよ」
「何して遊んでた?」
「山通って帰ったり」
「……待て」
クロスが即座に止める。
「なんで山?」
秘書課も一斉に頷く。
「山?」
「通学路じゃなく?」
薫はケロッとしている。
「うちの実家、青森の田舎なんです」
「あー」
「近道が山だったので」
「近道が山?」
「はい」
「あと用水路で遊んだり」
「…………」
クロスが笑い出す。
「やばい小学生だな!」
秘書課も爆笑。
「危ない危ない!」
「今だったら先生に怒られる!」
「男の子じゃん!」
薫も笑う。
「近所の子みんなやってましたよ」
「秘密基地作ったり」
「虫捕まえたり」
「木登りしたり」
「完全に男子!」
「女の子らしい遊びしろ!」
「おままごともしましたよ」
「ついでみたいに言うな!」
大笑いが起こる。
薫が「あ」と思い出したように言う。
「でも」
「ん?」
「自慢あるかも」
クロスが身を乗り出す。
「なんだ?」
「児童会長でした」
「…………」
「え」
秘書課全員が固まる。
「児童会長?」
「はい」
「なんで?」
薫は悪びれもなく答える。
「図書委員になりたかったんです」
「うん」
「ジャンケンで負けて」
「うん」
「悔しかったので」
「うん」
「じゃあもう学校のトップ取っちゃえーって。児童会長になりました」
沈黙。
クロスが目をぱちぱちさせる。
「……そんな理由?」
「はい」
「図書委員になれなかった腹いせ?」
「そうです」
「発想おかしいだろ!」
秘書課は笑い転げる。
「スケールが違う!」
「普通は保健委員とか行くんですよ!」
「なんで学校のトップ!」
薫はきょとん。
「せっかく立候補するなら一番上かなって。」
クロスが頭を抱える。
「勝ったのか?」
「勝ちました」
「…………」
「人気あったんだな」
「いや」
薫は首を横に振る。
「演説頑張りました。あと公約」
「何言ったんだ?」
「もっと図書室の本増やしてください」
「図書委員への未練!」
秘書課大爆笑。
「結局本なんだ!」
「ぶれてない!」
「児童会長になってまで図書室!」
薫は満足そうに頷く。
「図書室の本、少し増えました」
「成果出してる!」
「有能!」
クロスは腹を抱えて笑う。
「なんなんだお前の人生!」
「小学校は児童会長」
「中学はいじめられっ子」
「高校は全国常連のバスケ」
「大学で資格三つ」
「今は秘書。」
「情報量多すぎる!」
薫はジョッキを持ちながら笑う。
「聞かれるから答えてるだけですよ」
クロスは肩を震わせながら言った。
「もう怖くて幼稚園以前が聞けねぇ」
その一言で、秘書課のテーブルは再び大きな笑いに包まれた。