《第20話》コンシンカイ。
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宴もたけなわ。
料理もひと通り運ばれ、仕事の話から自然と昔話へ移っていく。
クロスが焼き鳥をつまみながら聞く。
「そういえばお前」
「はい」
「学生時代、確か女子大だったよな」
「はい」
「何学部?」
「児童学部です」
クロスの箸が止まる。
「児童学部?」
「はい」
「何勉強してたんだ?」
薫はさらっと答える。
「保育士の勉強です」
「……」
「保育士資格を取って」
クロスが聞き返す。
「保育士って」
「国家資格です」
「……は?」
秘書課も「そういえばそうだった」と頷く。
薫は続ける。
「あと幼稚園教諭」
「は?」
「小学校教諭」
「…………」
クロスが固まる。
「三つです。」
「…………」
「資格取りました」
沈黙。
秘書課も静かになる。
クロスがゆっくり口を開いた。
「……なんでうちの会社にいるんだ?」
薫はきょとん。
「え?」
「保育士にも先生にもなれるだろ」
「なれますね」
「じゃあなんで秘書やってる」
「ご縁です」
「軽い!」
秘書課が吹き出す。
薫は悪びれもせず笑う。
「就職活動してたら、うちの会社にご縁があって」
「それだけか」
「それだけです」
クロスは腕を組んで唸る。
「……もったいねぇ」
薫が首を傾ける。
「辞めていいんですか?」
「え?」
「保育士になります」
クロスは即答した。
「それは困る」
「ですよね」
「辞めるな」
「はい」
クロスが深いため息をつく。
「びっくりさせやがって」
リナリーが笑う。
「社長、完全に焦ってましたよ」
「焦るだろ!」
クロスは薫を指差す。
「うちの秘書が『先生になります』なんて言い出したら会社の損失だ」
「そんな大げさな」
「大げさじゃない」
秘書課もうんうん頷く。
「中田さんいなくなったら困ります」
「仕事回らないです」
クロスは納得したようにジョッキを置く。
「しかし児童学部か」
「はい」
「子ども好きなのか」
「好きですよ」
「だから保育士目指してた?」
「最初はそうでした」
「へぇ」
「実習も行きましたし」
「実習まで?」
「保育園も幼稚園も小学校も」
「全部か」
「全部です」
クロスは呆れたように笑う。
「お前、秘書になるための人生歩んでねぇじゃねぇか」
「歩んでないですね」
「それが今じゃ社長秘書」
「人生分からないです」
その一言に、秘書課も思わず笑った。
クロスが興味深そうにグラスを置く。
「大学は分かった」
「はい」
「じゃあ高校は?」
「高校も女子校です」
「ほぉ」
「何してたんだ?」
薫は即答する。
「バスケです」
クロスが頷く。
「スポーツやってたのか」
その会話を聞いていた秘書課の一人が笑う。
「でもボーリングあんなに下手だったじゃないですか」
周りも思わず吹き出す。
「確かに!」
「52点!」
「ガーター祭り!」
薫がむっとする。
「失礼な!ちゃんとバスケやってました!」
「ほんとか?」
「全国大会常連校だったんですよ!」
「…………」
クロスの動きが止まる。
「……は?」
「え?」
「普通に部活やってました、じゃなく?」
薫はきょとん。
「はい」
「全国大会常連校です」
「…………」
秘書課がざわつく。
「え?」
「強豪校?」
「そうです」
「レギュラー?」
「はい」
「…………」
クロスが額を押さえる。
「またさらっと爆弾投げたな」
薫は首を傾ける。
「そうですか?」
「そうだ」
「髪もショートでした」
「ん?」
「男の子みたいってよく言われました」
「へぇ」
「ラビより短かったですよ」
シーン。
その場のみんなが一斉に営業部テーブルを見る。
ラビは焼き鳥を食べながら首をかしげる。
「……え?」
全員の視線。
「なんさ?」
秘書課。
「あれより短かった?」
「ラビより?」
「マジで?」
薫が頷く。
「うん」
ラビが自分の髪を触る。
「えぇ?」
「見てみたい!」
「絶対似合う!」
「写真ないの!?」
薫は笑う。
「実家にはあると思います。」
「見たい!」
「見たい!」
クロスまで身を乗り出す。
「今度持ってこい」
「えぇ」
「命令だ」
「そんな命令あります?」
秘書課は大盛り上がり。
「絶対かわいい!」
「いや、イケメンじゃない?」
「宝塚っぽそう」
薫は照れ笑い。
「本当に男の子みたいでしたよ。」
「毎日部活?」
「はい」
「朝練」
「放課後」
「休みの日も部活」
「長期休みも部活」
「……」
「バスケ三昧でした。全国目指してたので」
クロスが感心したように腕を組む。
「だから体力あるのか」
「そうかもしれません」
「だから酒も強い?」
「それは関係ないと思います」
笑いが起こる。
リナリーが思い出したように言う。
「だから姿勢もいいんですね」
「あー」
「立ち姿きれいですもん。」
薫は照れくさそうに笑う。
「癖ですね」
クロスはしみじみと薫を見る。
「保育士、幼稚園教諭、小学校教諭」
「全国常連のバスケ部」
「酒強い」
「秘書」
「……」
「お前、情報を小出しにするな。」
薫は首を傾ける。
「聞かれたから答えただけです」
「まだ何か出てくるんじゃないだろうな……」
秘書課一同が大きくうなずいた。
「まだありそう」
「絶対あります」
その頃、営業部テーブルではラビだけがまだ自分の髪を触りながらぼやいていた。
「……俺より短いって、どんなだったんさ。ユウ知ってる?」
「知らない」
神田も彼女の知らない面を初めて見た。
料理もひと通り運ばれ、仕事の話から自然と昔話へ移っていく。
クロスが焼き鳥をつまみながら聞く。
「そういえばお前」
「はい」
「学生時代、確か女子大だったよな」
「はい」
「何学部?」
「児童学部です」
クロスの箸が止まる。
「児童学部?」
「はい」
「何勉強してたんだ?」
薫はさらっと答える。
「保育士の勉強です」
「……」
「保育士資格を取って」
クロスが聞き返す。
「保育士って」
「国家資格です」
「……は?」
秘書課も「そういえばそうだった」と頷く。
薫は続ける。
「あと幼稚園教諭」
「は?」
「小学校教諭」
「…………」
クロスが固まる。
「三つです。」
「…………」
「資格取りました」
沈黙。
秘書課も静かになる。
クロスがゆっくり口を開いた。
「……なんでうちの会社にいるんだ?」
薫はきょとん。
「え?」
「保育士にも先生にもなれるだろ」
「なれますね」
「じゃあなんで秘書やってる」
「ご縁です」
「軽い!」
秘書課が吹き出す。
薫は悪びれもせず笑う。
「就職活動してたら、うちの会社にご縁があって」
「それだけか」
「それだけです」
クロスは腕を組んで唸る。
「……もったいねぇ」
薫が首を傾ける。
「辞めていいんですか?」
「え?」
「保育士になります」
クロスは即答した。
「それは困る」
「ですよね」
「辞めるな」
「はい」
クロスが深いため息をつく。
「びっくりさせやがって」
リナリーが笑う。
「社長、完全に焦ってましたよ」
「焦るだろ!」
クロスは薫を指差す。
「うちの秘書が『先生になります』なんて言い出したら会社の損失だ」
「そんな大げさな」
「大げさじゃない」
秘書課もうんうん頷く。
「中田さんいなくなったら困ります」
「仕事回らないです」
クロスは納得したようにジョッキを置く。
「しかし児童学部か」
「はい」
「子ども好きなのか」
「好きですよ」
「だから保育士目指してた?」
「最初はそうでした」
「へぇ」
「実習も行きましたし」
「実習まで?」
「保育園も幼稚園も小学校も」
「全部か」
「全部です」
クロスは呆れたように笑う。
「お前、秘書になるための人生歩んでねぇじゃねぇか」
「歩んでないですね」
「それが今じゃ社長秘書」
「人生分からないです」
その一言に、秘書課も思わず笑った。
クロスが興味深そうにグラスを置く。
「大学は分かった」
「はい」
「じゃあ高校は?」
「高校も女子校です」
「ほぉ」
「何してたんだ?」
薫は即答する。
「バスケです」
クロスが頷く。
「スポーツやってたのか」
その会話を聞いていた秘書課の一人が笑う。
「でもボーリングあんなに下手だったじゃないですか」
周りも思わず吹き出す。
「確かに!」
「52点!」
「ガーター祭り!」
薫がむっとする。
「失礼な!ちゃんとバスケやってました!」
「ほんとか?」
「全国大会常連校だったんですよ!」
「…………」
クロスの動きが止まる。
「……は?」
「え?」
「普通に部活やってました、じゃなく?」
薫はきょとん。
「はい」
「全国大会常連校です」
「…………」
秘書課がざわつく。
「え?」
「強豪校?」
「そうです」
「レギュラー?」
「はい」
「…………」
クロスが額を押さえる。
「またさらっと爆弾投げたな」
薫は首を傾ける。
「そうですか?」
「そうだ」
「髪もショートでした」
「ん?」
「男の子みたいってよく言われました」
「へぇ」
「ラビより短かったですよ」
シーン。
その場のみんなが一斉に営業部テーブルを見る。
ラビは焼き鳥を食べながら首をかしげる。
「……え?」
全員の視線。
「なんさ?」
秘書課。
「あれより短かった?」
「ラビより?」
「マジで?」
薫が頷く。
「うん」
ラビが自分の髪を触る。
「えぇ?」
「見てみたい!」
「絶対似合う!」
「写真ないの!?」
薫は笑う。
「実家にはあると思います。」
「見たい!」
「見たい!」
クロスまで身を乗り出す。
「今度持ってこい」
「えぇ」
「命令だ」
「そんな命令あります?」
秘書課は大盛り上がり。
「絶対かわいい!」
「いや、イケメンじゃない?」
「宝塚っぽそう」
薫は照れ笑い。
「本当に男の子みたいでしたよ。」
「毎日部活?」
「はい」
「朝練」
「放課後」
「休みの日も部活」
「長期休みも部活」
「……」
「バスケ三昧でした。全国目指してたので」
クロスが感心したように腕を組む。
「だから体力あるのか」
「そうかもしれません」
「だから酒も強い?」
「それは関係ないと思います」
笑いが起こる。
リナリーが思い出したように言う。
「だから姿勢もいいんですね」
「あー」
「立ち姿きれいですもん。」
薫は照れくさそうに笑う。
「癖ですね」
クロスはしみじみと薫を見る。
「保育士、幼稚園教諭、小学校教諭」
「全国常連のバスケ部」
「酒強い」
「秘書」
「……」
「お前、情報を小出しにするな。」
薫は首を傾ける。
「聞かれたから答えただけです」
「まだ何か出てくるんじゃないだろうな……」
秘書課一同が大きくうなずいた。
「まだありそう」
「絶対あります」
その頃、営業部テーブルではラビだけがまだ自分の髪を触りながらぼやいていた。
「……俺より短いって、どんなだったんさ。ユウ知ってる?」
「知らない」
神田も彼女の知らない面を初めて見た。