《第17話》オンセン。
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部屋に戻ると、さっきまで出掛ける前にはなかった布団が、きれいに二組並べられていた。
「……二組あるね」
「二人だからだろ」
温泉で火照った体に、涼しい部屋の空気が心地いい。
薫は神田の浴衣の裾をちょんと控えめに引っ張る。
「なんだ?」
「一緒のお布団がいい」
薫は少し見上げるようにして話す。
「いいぞ」
「やった」
薫は嬉しそうに喜び、それを見て神田の表情も柔らかくなる。
部屋の明かりを少し落とすと、旅館らしい落ち着いた空気が二人を包む。
窓の外からは虫の声が聞こえる。
ぽすんとふかふかの布団にダイブする薫。
「えへへへへ…気持ちいい」
枕を抱きしめながら笑う。
それを優しい目で見る神田。
「あ」
「なんだ?」
何かに気付いたように顔を上げる薫。
「大変ユウ」
「どうした?」
「地酒飲んでない」
「は?」
「せっかく岩手きたのに地酒飲んでないよ!」
酒好きの薫にとっては大問題だった。
関内の案内を見ながら神田
「食事処行くか?」
「うん!」
薫の目がぱあっと輝く。
慌てて浴衣を整え、帯を締め直す薫。
神田も苦笑しながら立ち上がる。
「早く行こ」
「転ぶなよ」
「大丈夫!」
部屋を出て廊下を歩く。
「何飲もうかなぁ」
「もう決めてるのか」
「日本酒!」
「だろうな」
「岩手のお酒って美味しいんだよ」
「詳しいな」
「旅行行くと結構調べるもん」
神田は感心したように笑う。
「温泉より酒が目的だったんじゃないか?」
「違うもん」
少し考えて、
「……やっぱり半々かも」
「正直だな」
二人で笑いながら食事処へ向かう。
店員に案内され席へ着くと、メニューを開いた瞬間、
「わあ……岩手の地酒飲み比べある!」
目をきらきらさせる。
「これ!」
「最初から決まってたな。」
「もちろん!」
「ユウは?」
「同じのもらうか」
「すみません。岩手の地酒飲み比べセットを二つお願いします。」
しばらくすると、お盆に小ぶりなお猪口が三つ並んだ飲み比べセットが運ばれてきた。
透明感のあるもの。
少し琥珀がかったもの。
香りの立つもの。
「おお……」
薫の目がきらきら輝く。
「幸せそうな顔するな」
「こういうの大好き」
まずは一番淡麗そうなお酒から。
「いただきます。」
二人でお猪口を合わせる。
小さく、こつん。
一口。
薫は目を閉じて味わう。
「……あぁ、美味しい」
「そんなに違うもんか?」
「違うよ」
もう一口飲んでから説明する。
「すっきりしてるけど、お米の甘みが最後にふわってくる」
神田も飲んでみる。
「……なるほど」
「でしょ?」
「日本酒詳しくない俺でも飲みやすい」
「これは万人受けするタイプだね」
次のお猪口へ。
香りを確かめてから一口。
「ん〜!」
思わず声が漏れる。
「これは?」
「香り華やか!フルーティー!」
神田も飲む。
「さっきより甘いな」
「そうそう!こっちは女性も好きそう」
「酒なのにジュースみたいな言い方するな」
「危険なお酒だよ」
「飲み過ぎるやつか」
「そう」
二人で笑う。
最後のお猪口。
薫は少し真面目な顔になる。
「これはお燗でも美味しそう」
一口。
「……あ」
「どうした」
「これ好き」
「そんなにか」
「旨みがすごい」
神田も口に含む。
「確かに」
「食事と合わせたい」
「酒飲みだな」
「褒め言葉」
「褒めてない」
「えへへ」
お猪口を順番に飲み比べながら、
「私は二番目かなぁ」
「俺は三番目」
「やっぱり?」
「飲んだあとに残る感じが好きだ」
「分かる!」
嬉しそうに身を乗り出す薫。
「ユウ、日本酒のセンスある」
「一杯飲んだだけで分かるか」
「分かる」
神田は苦笑しながら残ったお酒を口に運ぶ。
「旅行先で飲む酒はうまいな」
「温泉入ったあとだから余計にね」
薫は最後の一滴まで大事そうに味わってから、お猪口を静かに置いた。
「はぁ……」
満足そうに息をつく。
「じゃあ売店行って買おう」
「は?」
会計を済ませるとその足で売店に向かう。
「同じ日本酒置いてるかなー」
「まだ飲む気か」
「もうちょっとだけ飲みたい気分」
そう言って、先程飲んで気に入った日本酒の一合瓶を購入する。
「ちょっとだけだから」
そう言って薫は嬉しそうに笑った。
「……二組あるね」
「二人だからだろ」
温泉で火照った体に、涼しい部屋の空気が心地いい。
薫は神田の浴衣の裾をちょんと控えめに引っ張る。
「なんだ?」
「一緒のお布団がいい」
薫は少し見上げるようにして話す。
「いいぞ」
「やった」
薫は嬉しそうに喜び、それを見て神田の表情も柔らかくなる。
部屋の明かりを少し落とすと、旅館らしい落ち着いた空気が二人を包む。
窓の外からは虫の声が聞こえる。
ぽすんとふかふかの布団にダイブする薫。
「えへへへへ…気持ちいい」
枕を抱きしめながら笑う。
それを優しい目で見る神田。
「あ」
「なんだ?」
何かに気付いたように顔を上げる薫。
「大変ユウ」
「どうした?」
「地酒飲んでない」
「は?」
「せっかく岩手きたのに地酒飲んでないよ!」
酒好きの薫にとっては大問題だった。
関内の案内を見ながら神田
「食事処行くか?」
「うん!」
薫の目がぱあっと輝く。
慌てて浴衣を整え、帯を締め直す薫。
神田も苦笑しながら立ち上がる。
「早く行こ」
「転ぶなよ」
「大丈夫!」
部屋を出て廊下を歩く。
「何飲もうかなぁ」
「もう決めてるのか」
「日本酒!」
「だろうな」
「岩手のお酒って美味しいんだよ」
「詳しいな」
「旅行行くと結構調べるもん」
神田は感心したように笑う。
「温泉より酒が目的だったんじゃないか?」
「違うもん」
少し考えて、
「……やっぱり半々かも」
「正直だな」
二人で笑いながら食事処へ向かう。
店員に案内され席へ着くと、メニューを開いた瞬間、
「わあ……岩手の地酒飲み比べある!」
目をきらきらさせる。
「これ!」
「最初から決まってたな。」
「もちろん!」
「ユウは?」
「同じのもらうか」
「すみません。岩手の地酒飲み比べセットを二つお願いします。」
しばらくすると、お盆に小ぶりなお猪口が三つ並んだ飲み比べセットが運ばれてきた。
透明感のあるもの。
少し琥珀がかったもの。
香りの立つもの。
「おお……」
薫の目がきらきら輝く。
「幸せそうな顔するな」
「こういうの大好き」
まずは一番淡麗そうなお酒から。
「いただきます。」
二人でお猪口を合わせる。
小さく、こつん。
一口。
薫は目を閉じて味わう。
「……あぁ、美味しい」
「そんなに違うもんか?」
「違うよ」
もう一口飲んでから説明する。
「すっきりしてるけど、お米の甘みが最後にふわってくる」
神田も飲んでみる。
「……なるほど」
「でしょ?」
「日本酒詳しくない俺でも飲みやすい」
「これは万人受けするタイプだね」
次のお猪口へ。
香りを確かめてから一口。
「ん〜!」
思わず声が漏れる。
「これは?」
「香り華やか!フルーティー!」
神田も飲む。
「さっきより甘いな」
「そうそう!こっちは女性も好きそう」
「酒なのにジュースみたいな言い方するな」
「危険なお酒だよ」
「飲み過ぎるやつか」
「そう」
二人で笑う。
最後のお猪口。
薫は少し真面目な顔になる。
「これはお燗でも美味しそう」
一口。
「……あ」
「どうした」
「これ好き」
「そんなにか」
「旨みがすごい」
神田も口に含む。
「確かに」
「食事と合わせたい」
「酒飲みだな」
「褒め言葉」
「褒めてない」
「えへへ」
お猪口を順番に飲み比べながら、
「私は二番目かなぁ」
「俺は三番目」
「やっぱり?」
「飲んだあとに残る感じが好きだ」
「分かる!」
嬉しそうに身を乗り出す薫。
「ユウ、日本酒のセンスある」
「一杯飲んだだけで分かるか」
「分かる」
神田は苦笑しながら残ったお酒を口に運ぶ。
「旅行先で飲む酒はうまいな」
「温泉入ったあとだから余計にね」
薫は最後の一滴まで大事そうに味わってから、お猪口を静かに置いた。
「はぁ……」
満足そうに息をつく。
「じゃあ売店行って買おう」
「は?」
会計を済ませるとその足で売店に向かう。
「同じ日本酒置いてるかなー」
「まだ飲む気か」
「もうちょっとだけ飲みたい気分」
そう言って、先程飲んで気に入った日本酒の一合瓶を購入する。
「ちょっとだけだから」
そう言って薫は嬉しそうに笑った。