《第19話》インスタ。
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リール投稿から数日。
薫のInstagramには、また少し違うコメントが増えていた。
ライブで作ってるところ見たいです🍸
質問しながら飲みたいです!
カクテル教えてほしいです!
「……」
スマホを見ながら、薫が首を傾ける。
神田が隣から見る。
「また何かあったか」
「ライブ配信してほしいって」
「ライブ?」
「うん」
薫は少し考える。
「……」
「?」
「楽しそう」
その一言で、神田は察する。
「やる気だな」
「え」
「顔に出てる」
「また?」
「かなり」
その日の夜。
薫はソファでスマホを操作。
「えーっと……」
「何してる」
「ライブ配信の仕方調べてる」
「本当にやるのか」
「だって」
画面を見ながら。
「作ってるところ見たいって言ってくれるの嬉しいし」
「……」
「せっかくならちゃんとやりたい」
調べる薫。
・配信設定
・照明
・スマホスタンド
・音声確認
・コメントの拾い方
「意外と準備いるんだね」
「普通に動画撮るのとは違うからな」
「うん」
後日。
試しにスマホスタンドを買う。
キッチンに置いてみる。
「ここかな」
「もう完全にやる人だな」
神田が呟く。
「えへへ」
「……」
「何」
「嬉しそう」
「だって」
薫はシェーカーを見る。
「誰かと共有できるのって楽しいじゃん」
そして。
告知投稿。
📱
お知らせ🍸
初めてライブ配信してみます。
不慣れなので温かく見守ってください☺️
一緒に一杯作れたら嬉しいです。
投稿後。
コメントが一気に増える。
待ってました!
絶対見ます!
楽しみです!
何作るんですか?
神田がスマホを見る。
「……」
「どうしたの?」
「人数増えてる」
「え?」
「告知してから」
「本当?」
薫が覗き込む。
目が輝く。
「楽しみ」
神田はその顔を見る。
また。
いつもの顔。
好きなことを見つけた時の顔。
「緊張しないのか」
「するよ」
「するんだ」
「でも」
薫は笑う。
「楽しみの方が大きい」
神田は少し考える。
「失敗してもいいだろ」
「え?」
「初めてなんだから」
「……」
「お前なら普通に話してれば大丈夫だ」
薫、少し固まる。
「ユウ」
「何」
「最近、応援の仕方が優しい」
「普通だ」
「普通じゃない」
「……」
「また照れる」
神田は目を逸らす。
「準備しろ」
「はい」
こうして。
ただの趣味だったヨガと料理のアカウントに新しく「お酒を楽しむ時間」が加わっていく。
最初のライブ配信の日が、少しずつ近づいていた。
初配信の日。
薫はいつもより少し早めに準備していた。
キッチン。
スマホスタンド。
照明。
シェーカー。
グラス。
必要なものを並べる。
「……」
「緊張してるか」
後ろから神田。
「してる」
珍しく即答。
「でも楽しみ」
「ならいい。顔出しは?」
「しない」
薫は首を振る。
「まだちょっと恥ずかしいし」
「手元だけでいいのか」
「うん」
カメラに映るのは。
ボトルを持つ手。
氷を入れる音。
グラス。
シェーカー。
それだけ。
「声だけでも伝わると思うから」
時間になる。
配信開始。
画面に少しずつ人が入ってくる。
10人。
50人。
100人。
「……」
薫、少し固まる。
「ユウ」
「なんだ」
「人いる」
「見れば分かる」
「緊張してきた」
「いつも通り話せ」
「……」
深呼吸をして開始ボタンを押す。
「こんばんは」
少し緊張した声。
コメントが流れる。
こんばんは!
待ってました!
本当に手元だけだ!
薫が笑う。
「本当に手元だけです。今日は初めてなので、ゆっくりやっていきますね」
後ろの棚を見ながら
「今日は何作るかというと……」
ボトルを置く。
「ジントニックにします」
コメント。
初心者向け!
嬉しい!
「シンプルなんですけど、だからこそ楽しいです」
氷を入れる音。
カラン。
その瞬間。
コメントが増える。
音がいい
癒される
ASMRみたい
「氷の音っていいですよね」
薫が笑う。
「私も好きです」
ジンを注ぐ。
「この時の香りが好きで、最初に香りを楽しんでから飲むと、また違います」
コメント。
説明が分かりやすい
本当に好きなの伝わる
シェーカーは使わない。
今日はあえてシンプル。
トニックウォーターを注ぐ。
最後にライム。
「完成です。皆さんももし飲める環境なら、一緒に乾杯しましょう」
顔は映らないがにこりと笑う薫。
「今日一日お疲れさまでした」
グラスをカメラに向ける。
コメント。
乾杯!
初配信成功ですね!
またやってほしい!
30分予定だった配信。
気付けば1時間。
質問にも答える。
「ヨガもやってますか?」
「はい、資格を取っていて」
「料理も?」
「好きです」
「お酒詳しいですね」
「昔少し働いていたので」
配信終了。
画面が消える。
「……」
薫、椅子にもたれる。
「終わった」
神田が横から見る。
「どうだった」
「楽しかった」
即答。
「またやりたい」
神田は少し笑う。
「だと思った」
「なんで」
「そんな顔してる」
薫が頬を押さえる。
「また?」
「ああ」
「そんなに?」
「かなり」
翌朝。
通知を見る。
フォロワーが増えている。
コメントもたくさん。
「楽しかったです」
「癒されました」
「次も楽しみにしてます」
ただお酒を紹介しただけ。
ただ好きなことを共有しただけ。
でもその自然体な時間が。
少しずつ、多くの人に届き始めていた。
薫のInstagramには、また少し違うコメントが増えていた。
ライブで作ってるところ見たいです🍸
質問しながら飲みたいです!
カクテル教えてほしいです!
「……」
スマホを見ながら、薫が首を傾ける。
神田が隣から見る。
「また何かあったか」
「ライブ配信してほしいって」
「ライブ?」
「うん」
薫は少し考える。
「……」
「?」
「楽しそう」
その一言で、神田は察する。
「やる気だな」
「え」
「顔に出てる」
「また?」
「かなり」
その日の夜。
薫はソファでスマホを操作。
「えーっと……」
「何してる」
「ライブ配信の仕方調べてる」
「本当にやるのか」
「だって」
画面を見ながら。
「作ってるところ見たいって言ってくれるの嬉しいし」
「……」
「せっかくならちゃんとやりたい」
調べる薫。
・配信設定
・照明
・スマホスタンド
・音声確認
・コメントの拾い方
「意外と準備いるんだね」
「普通に動画撮るのとは違うからな」
「うん」
後日。
試しにスマホスタンドを買う。
キッチンに置いてみる。
「ここかな」
「もう完全にやる人だな」
神田が呟く。
「えへへ」
「……」
「何」
「嬉しそう」
「だって」
薫はシェーカーを見る。
「誰かと共有できるのって楽しいじゃん」
そして。
告知投稿。
📱
お知らせ🍸
初めてライブ配信してみます。
不慣れなので温かく見守ってください☺️
一緒に一杯作れたら嬉しいです。
投稿後。
コメントが一気に増える。
待ってました!
絶対見ます!
楽しみです!
何作るんですか?
神田がスマホを見る。
「……」
「どうしたの?」
「人数増えてる」
「え?」
「告知してから」
「本当?」
薫が覗き込む。
目が輝く。
「楽しみ」
神田はその顔を見る。
また。
いつもの顔。
好きなことを見つけた時の顔。
「緊張しないのか」
「するよ」
「するんだ」
「でも」
薫は笑う。
「楽しみの方が大きい」
神田は少し考える。
「失敗してもいいだろ」
「え?」
「初めてなんだから」
「……」
「お前なら普通に話してれば大丈夫だ」
薫、少し固まる。
「ユウ」
「何」
「最近、応援の仕方が優しい」
「普通だ」
「普通じゃない」
「……」
「また照れる」
神田は目を逸らす。
「準備しろ」
「はい」
こうして。
ただの趣味だったヨガと料理のアカウントに新しく「お酒を楽しむ時間」が加わっていく。
最初のライブ配信の日が、少しずつ近づいていた。
初配信の日。
薫はいつもより少し早めに準備していた。
キッチン。
スマホスタンド。
照明。
シェーカー。
グラス。
必要なものを並べる。
「……」
「緊張してるか」
後ろから神田。
「してる」
珍しく即答。
「でも楽しみ」
「ならいい。顔出しは?」
「しない」
薫は首を振る。
「まだちょっと恥ずかしいし」
「手元だけでいいのか」
「うん」
カメラに映るのは。
ボトルを持つ手。
氷を入れる音。
グラス。
シェーカー。
それだけ。
「声だけでも伝わると思うから」
時間になる。
配信開始。
画面に少しずつ人が入ってくる。
10人。
50人。
100人。
「……」
薫、少し固まる。
「ユウ」
「なんだ」
「人いる」
「見れば分かる」
「緊張してきた」
「いつも通り話せ」
「……」
深呼吸をして開始ボタンを押す。
「こんばんは」
少し緊張した声。
コメントが流れる。
こんばんは!
待ってました!
本当に手元だけだ!
薫が笑う。
「本当に手元だけです。今日は初めてなので、ゆっくりやっていきますね」
後ろの棚を見ながら
「今日は何作るかというと……」
ボトルを置く。
「ジントニックにします」
コメント。
初心者向け!
嬉しい!
「シンプルなんですけど、だからこそ楽しいです」
氷を入れる音。
カラン。
その瞬間。
コメントが増える。
音がいい
癒される
ASMRみたい
「氷の音っていいですよね」
薫が笑う。
「私も好きです」
ジンを注ぐ。
「この時の香りが好きで、最初に香りを楽しんでから飲むと、また違います」
コメント。
説明が分かりやすい
本当に好きなの伝わる
シェーカーは使わない。
今日はあえてシンプル。
トニックウォーターを注ぐ。
最後にライム。
「完成です。皆さんももし飲める環境なら、一緒に乾杯しましょう」
顔は映らないがにこりと笑う薫。
「今日一日お疲れさまでした」
グラスをカメラに向ける。
コメント。
乾杯!
初配信成功ですね!
またやってほしい!
30分予定だった配信。
気付けば1時間。
質問にも答える。
「ヨガもやってますか?」
「はい、資格を取っていて」
「料理も?」
「好きです」
「お酒詳しいですね」
「昔少し働いていたので」
配信終了。
画面が消える。
「……」
薫、椅子にもたれる。
「終わった」
神田が横から見る。
「どうだった」
「楽しかった」
即答。
「またやりたい」
神田は少し笑う。
「だと思った」
「なんで」
「そんな顔してる」
薫が頬を押さえる。
「また?」
「ああ」
「そんなに?」
「かなり」
翌朝。
通知を見る。
フォロワーが増えている。
コメントもたくさん。
「楽しかったです」
「癒されました」
「次も楽しみにしてます」
ただお酒を紹介しただけ。
ただ好きなことを共有しただけ。
でもその自然体な時間が。
少しずつ、多くの人に届き始めていた。