《第19話》インスタ。
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それから薫のInstagramには、少しずつ変化が出始める。
今までのヨガと料理の投稿の間に。
時々――
一杯のカクテル。
⸻
📱 ホワイトレディ
写真。
白いカクテルグラス。
透き通った液体。
レモンの香りが伝わりそうな一枚。
キャプション。
今日はホワイトレディ🍸
ジンの香りと柑橘のバランスが好き。
シンプルなカクテルほど、奥が深い。
コメント。
え、作れるんですか!?
バーテンダーさんみたい
レシピ知りたいです!
薫返信。
材料はシンプルですよ☺️
おうちでも作れます!
⸻
神田が投稿を見る。
「また増えたな」
「何が?」
「カクテル」
「だめ?」
「別に」
「?」
「楽しそうだから」
「……最近それ言えばいいと思ってない?」
「思ってない」
即答。
でも顔は少し柔らかい。
⸻
📱モヒート
別の日。
夏の夜。
ミントを潰す音。
ライム。
氷。
炭酸。
爽やかなグラス。
写真。
暑い日はモヒート🌿
ミントの香りで少し涼しい気分。
お酒も季節を感じられるところが好き。
コメント欄。
爽やか!
ヨガの雰囲気と合ってる
生活がおしゃれすぎる
⸻
秘書課。
「薫さんのインスタ、癒されます」
「ヨガだけじゃなくて料理もあるし」
「最近カクテルもありますよね」
「元々詳しいのかな」
薫。
「趣味です趣味」
「趣味のレベルじゃないですよ……」
⸻
📱カンパリソーダ
ある夜。
少し大人っぽい一枚。
赤い色。
透明なグラス。
泡。
オレンジ。
キャプション。
シンプルにカンパリソーダ。
苦味があるお酒って、
大人になってから好きになりました。
コメント。
おしゃれすぎる
仕事終わりに飲みたい
作り方シリーズ希望です!
⸻
そして。
フォロワーが気付く。
「この人、ただ飲んでるんじゃなくて作ってる」
「説明が分かりやすい」
「初心者でも真似できそう」
少しずつ。
ヨガアカウントだった場所が、
「身体を整える」
「食を楽しむ」
「一日の終わりを楽しむ」
そんな暮らしのアカウントになっていく。
⸻
ある夜。
神田がスマホを見ながら言う。
「……」
「何?」
「フォロワー増えてる」
「え?」
「前より」
薫が確認する。
「本当だ」
「酒の投稿からだな」
「えー」
「意外か?」
「うん」
少し考えて。
「でも」
「?」
「好きなもの載せてるだけだから」
神田は頷く。
「それでいいんじゃないか」
「……」
「お前、好きなものの話してる時が一番楽しそうだから」
また。
薫は頬を押さえる。
「……」
「またその顔」
「だって」
「?」
「ユウ、最近人を照れさせるの上手くなってない?」
「そんなつもりはない」
「そこが困るんだよ」
神田は分からない顔をする。
でも。
薫の投稿には、今日もまた新しいカクテルが増えていった。
ある日の夜。
いつものように、薫は新しいカクテルを作っていた。
キッチンの一角。
並んだボトル。
氷の音。
グラス。
そして、お気に入りのシェーカー。
写真だけでは伝わらない「作っている時間」。
⸻
投稿後。
コメント欄を眺めていると。
作ってるところ見てみたいです!
シェーカー振ってるところ気になります🍸
動画とか見たいです!
「……」
薫がスマホを見せる。
「ユウ」
「ん?」
「作ってるところ見たいって」
神田が画面を見る。
「載せればいいんじゃないか」
「え」
「嫌なのか」
「いや……」
少し考える。
「顔出しはちょっと恥ずかしい」
「じゃあ手元だけでいいだろ」
「……」
⸻
数日後。
初めてのリール投稿。
映るのは手元だけ。
氷をグラスに入れる音。
ボトルを持つ手。
メジャーカップで量る動き。
シェーカーを閉じる。
カチッという音。
そして――
シャカシャカシャカシャカ。
最後にグラスへ注ぐ。
完成。
BGMだけ。
キャプション。
リクエストいただいたので🍸
今日は作っているところを。
手順はシンプルですが、
氷の音や香りを楽しむ時間も好きです。
⸻
投稿して数時間。
通知が増える。
どんどん増える。
「……」
「どうした」
神田が見る。
「……すごい」
コメント欄。
『え、本当に作ってる!!』
『手慣れてる!』
『動きが完全に経験者』
『シェーカーの振り方綺麗すぎる』
『見てて癒される』
さらに。
『ヨガの先生の趣味レベルじゃない』
『何者なんですか?』
「……」
薫苦笑い。
「趣味なんだけどな」
神田。
「でも」
「?」
「本物なんだろ」
「え」
「前から言ってる」
神田はリールを見る。
「好きなものに対して、ちゃんとやってる」
⸻
翌日。
会社、秘書課。
「薫さん」
「はい?」
「リール見ました」
「え!?」
「フォローしてます」
「また!?」
「すごかったです」
「何がですか」
「シェーカー」
⸻
営業部。
ラビがスマホ片手に入ってくる。
「ユウ」
「何だ」
「お前の彼女」
「?」
「本当にバーテンダーだったんだな」
「だから言った」
「いや、聞いたの昨日だし」
アレンも見る。
「これ、普通にお店の動画みたいですよ」
神田。
「……」
「?」
「家で見るより反響あるな」
「家?」
ラビが食いつく。
「家で作ってもらってんのか!?」
「……」
神田、しまった顔。
薫の趣味が少しずつ会社にも、世間にも知られ始める。
でも本人は。
「次何作ろうかな」
と、また楽しそうに瓶を眺めている。
今までのヨガと料理の投稿の間に。
時々――
一杯のカクテル。
⸻
📱 ホワイトレディ
写真。
白いカクテルグラス。
透き通った液体。
レモンの香りが伝わりそうな一枚。
キャプション。
今日はホワイトレディ🍸
ジンの香りと柑橘のバランスが好き。
シンプルなカクテルほど、奥が深い。
コメント。
え、作れるんですか!?
バーテンダーさんみたい
レシピ知りたいです!
薫返信。
材料はシンプルですよ☺️
おうちでも作れます!
⸻
神田が投稿を見る。
「また増えたな」
「何が?」
「カクテル」
「だめ?」
「別に」
「?」
「楽しそうだから」
「……最近それ言えばいいと思ってない?」
「思ってない」
即答。
でも顔は少し柔らかい。
⸻
📱モヒート
別の日。
夏の夜。
ミントを潰す音。
ライム。
氷。
炭酸。
爽やかなグラス。
写真。
暑い日はモヒート🌿
ミントの香りで少し涼しい気分。
お酒も季節を感じられるところが好き。
コメント欄。
爽やか!
ヨガの雰囲気と合ってる
生活がおしゃれすぎる
⸻
秘書課。
「薫さんのインスタ、癒されます」
「ヨガだけじゃなくて料理もあるし」
「最近カクテルもありますよね」
「元々詳しいのかな」
薫。
「趣味です趣味」
「趣味のレベルじゃないですよ……」
⸻
📱カンパリソーダ
ある夜。
少し大人っぽい一枚。
赤い色。
透明なグラス。
泡。
オレンジ。
キャプション。
シンプルにカンパリソーダ。
苦味があるお酒って、
大人になってから好きになりました。
コメント。
おしゃれすぎる
仕事終わりに飲みたい
作り方シリーズ希望です!
⸻
そして。
フォロワーが気付く。
「この人、ただ飲んでるんじゃなくて作ってる」
「説明が分かりやすい」
「初心者でも真似できそう」
少しずつ。
ヨガアカウントだった場所が、
「身体を整える」
「食を楽しむ」
「一日の終わりを楽しむ」
そんな暮らしのアカウントになっていく。
⸻
ある夜。
神田がスマホを見ながら言う。
「……」
「何?」
「フォロワー増えてる」
「え?」
「前より」
薫が確認する。
「本当だ」
「酒の投稿からだな」
「えー」
「意外か?」
「うん」
少し考えて。
「でも」
「?」
「好きなもの載せてるだけだから」
神田は頷く。
「それでいいんじゃないか」
「……」
「お前、好きなものの話してる時が一番楽しそうだから」
また。
薫は頬を押さえる。
「……」
「またその顔」
「だって」
「?」
「ユウ、最近人を照れさせるの上手くなってない?」
「そんなつもりはない」
「そこが困るんだよ」
神田は分からない顔をする。
でも。
薫の投稿には、今日もまた新しいカクテルが増えていった。
ある日の夜。
いつものように、薫は新しいカクテルを作っていた。
キッチンの一角。
並んだボトル。
氷の音。
グラス。
そして、お気に入りのシェーカー。
写真だけでは伝わらない「作っている時間」。
⸻
投稿後。
コメント欄を眺めていると。
作ってるところ見てみたいです!
シェーカー振ってるところ気になります🍸
動画とか見たいです!
「……」
薫がスマホを見せる。
「ユウ」
「ん?」
「作ってるところ見たいって」
神田が画面を見る。
「載せればいいんじゃないか」
「え」
「嫌なのか」
「いや……」
少し考える。
「顔出しはちょっと恥ずかしい」
「じゃあ手元だけでいいだろ」
「……」
⸻
数日後。
初めてのリール投稿。
映るのは手元だけ。
氷をグラスに入れる音。
ボトルを持つ手。
メジャーカップで量る動き。
シェーカーを閉じる。
カチッという音。
そして――
シャカシャカシャカシャカ。
最後にグラスへ注ぐ。
完成。
BGMだけ。
キャプション。
リクエストいただいたので🍸
今日は作っているところを。
手順はシンプルですが、
氷の音や香りを楽しむ時間も好きです。
⸻
投稿して数時間。
通知が増える。
どんどん増える。
「……」
「どうした」
神田が見る。
「……すごい」
コメント欄。
『え、本当に作ってる!!』
『手慣れてる!』
『動きが完全に経験者』
『シェーカーの振り方綺麗すぎる』
『見てて癒される』
さらに。
『ヨガの先生の趣味レベルじゃない』
『何者なんですか?』
「……」
薫苦笑い。
「趣味なんだけどな」
神田。
「でも」
「?」
「本物なんだろ」
「え」
「前から言ってる」
神田はリールを見る。
「好きなものに対して、ちゃんとやってる」
⸻
翌日。
会社、秘書課。
「薫さん」
「はい?」
「リール見ました」
「え!?」
「フォローしてます」
「また!?」
「すごかったです」
「何がですか」
「シェーカー」
⸻
営業部。
ラビがスマホ片手に入ってくる。
「ユウ」
「何だ」
「お前の彼女」
「?」
「本当にバーテンダーだったんだな」
「だから言った」
「いや、聞いたの昨日だし」
アレンも見る。
「これ、普通にお店の動画みたいですよ」
神田。
「……」
「?」
「家で見るより反響あるな」
「家?」
ラビが食いつく。
「家で作ってもらってんのか!?」
「……」
神田、しまった顔。
薫の趣味が少しずつ会社にも、世間にも知られ始める。
でも本人は。
「次何作ろうかな」
と、また楽しそうに瓶を眺めている。