《第19話》インスタ。
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飲み会帰り。
駅へ向かう夜道。
酔って少し頬が赤いと薫、いつものペースで歩く神田。
ネオンが光る通りを抜けようとした時。
「……あ」
薫が足を止める。
「なんだ?」
神田が振り返る。
薫の視線の先。
小さな酒屋。
店先には色とりどりの瓶が並んでいる。
「酒屋さん」
「……まだ飲むのか?」
少し呆れた声。
「んーん」
薫は首を振る。
「見たいだけ」
「……」
「ちょっとだけいい?」
神田は時計を見る。
数秒。
「……5分だけな」
「やった」
店に入ると、薫の目が一気に輝く。
さっきまで飲み会で笑っていた顔とはまた違う。
真剣な顔で棚を見る。
「……」
神田は少し離れて眺める。
「そんな顔するんだな」
「え?」
「仕事の時とも違う」
「そう?」
薫は瓶を手に取る。
「お酒って面白いよ」
「飲むだけじゃなくて?」
「うん」
ラベルを見る。
「作った人のこだわりとか、土地とか、香りとか。料理と合わせたらどうなるかなとか考えるの楽しい」
神田は黙って聞く。
薫が一本の瓶を手に取る。
「これ珍しい」
「分かるのか?」
「少しだけ」
「少しだけ、でそんな顔になるか?」
「好きなもの見てる時ってこうならない?」
「……」
神田、答えない。
でも否定もしない。
店員が声をかける。
「お酒お好きなんですね」
「はい」
薫が笑う。
「昔ちょっとバーで働いてたので」
「へえ」
神田が横を見る。
「初耳」
「言ってなかった?」
「聞いてない」
「大学の時だけだよ」
「……」
神田は少し驚いた顔。
「だから詳しいのか」
「詳しいってほどじゃないよ」
「いや」
神田を見る。
「飲み会でカクテル頼んでた時、作り方まで気にしてただろ」
「あ」
見られていた。
そうこうしていると5分が15分になっていた。
酒屋の奥。
リキュールやワインの棚を見ていた薫が、ふと足を止める。
そこに並んでいたのは――
シェーカー。
バースプーン。
メジャーカップ。
ストレーナー。
綺麗に並んだバーツールのセット。
「……」
じっと見る。
神田が気付く。
「なんだ?」
「……いいなあ」
「?」
薫は棚の前から動かない。
「これ」
シェーカーを指差す。
「振れるのか?」
「昔働いてたし振れるよ」
「……」
「大学の時だけだけどね」
薫はシェーカーを見ながら笑う。
「久しぶりにやったら楽しそう」
その目。
さっきまで料理の話をしていた時とも、ヨガの話をしている時とも違う。
完全に好きなものを見つけた顔。
神田は黙ってそれを見る。
「……買うか?」
「え?」
薫が振り返る。
「欲しいんだろ?」
「いや、でも……」
慌てて手を振る。
「家に置く場所とかないし」
「置けばいい」
「そんな簡単に」
「欲しいんだろ」
「……」
言葉に詰まる。
神田はため息。
「そんな顔されたら」
「?」
「買ってやらないといけない気がする」
「どんな顔してるの私」
薫は自分の頬を両手で押さえる。
「そんなに分かりやすい?」
「かなり」
「嘘……」
「嘘じゃない」
店員さんが近くで笑う。
「お姉さん、本当に好きなんですね」
「え、いや……」
「さっきからずっと目が輝いてますよ」
「……」
薫、さらに頬を押さえる。
「恥ずかしい」
神田を見る。
「ユウ」
「なんだ」
「今の忘れて」
「無理」
即答。
「なんで」
「珍しいから」
「珍しい?」
「ああ」
神田はシェーカーを見る。
「仕事の時のお前とも違う」
「……」
「こういう顔するんだなって」
結局、店を出る時袋を持っているのは神田。
中身はシェーカーセット。
「本当に買っちゃった……」
「いいだろ」
「高かったのに」
「大した額じゃない」
「でも……」
「使え」
「え?」
「飾るために欲しがったわけじゃないだろ」
薫は少し黙る。
「……うん」
「じゃあ使え」
「家で?」
「ああ」
「誰に作るの?」
神田は一瞬考える。
「……」
「?」
「俺」
薫が固まる。
「え」
「嫌か」
「いや……」
顔が赤くなる。
「そういう意味じゃなくて」
神田はいつもの無表情。
でも耳が少し赤い。
「楽しみにしてる」
その一言で、薫はまたさっきと同じ顔になる。
神田は
(……またその顔)
と思いながら、袋を持ち直した。
駅へ向かう夜道。
酔って少し頬が赤いと薫、いつものペースで歩く神田。
ネオンが光る通りを抜けようとした時。
「……あ」
薫が足を止める。
「なんだ?」
神田が振り返る。
薫の視線の先。
小さな酒屋。
店先には色とりどりの瓶が並んでいる。
「酒屋さん」
「……まだ飲むのか?」
少し呆れた声。
「んーん」
薫は首を振る。
「見たいだけ」
「……」
「ちょっとだけいい?」
神田は時計を見る。
数秒。
「……5分だけな」
「やった」
店に入ると、薫の目が一気に輝く。
さっきまで飲み会で笑っていた顔とはまた違う。
真剣な顔で棚を見る。
「……」
神田は少し離れて眺める。
「そんな顔するんだな」
「え?」
「仕事の時とも違う」
「そう?」
薫は瓶を手に取る。
「お酒って面白いよ」
「飲むだけじゃなくて?」
「うん」
ラベルを見る。
「作った人のこだわりとか、土地とか、香りとか。料理と合わせたらどうなるかなとか考えるの楽しい」
神田は黙って聞く。
薫が一本の瓶を手に取る。
「これ珍しい」
「分かるのか?」
「少しだけ」
「少しだけ、でそんな顔になるか?」
「好きなもの見てる時ってこうならない?」
「……」
神田、答えない。
でも否定もしない。
店員が声をかける。
「お酒お好きなんですね」
「はい」
薫が笑う。
「昔ちょっとバーで働いてたので」
「へえ」
神田が横を見る。
「初耳」
「言ってなかった?」
「聞いてない」
「大学の時だけだよ」
「……」
神田は少し驚いた顔。
「だから詳しいのか」
「詳しいってほどじゃないよ」
「いや」
神田を見る。
「飲み会でカクテル頼んでた時、作り方まで気にしてただろ」
「あ」
見られていた。
そうこうしていると5分が15分になっていた。
酒屋の奥。
リキュールやワインの棚を見ていた薫が、ふと足を止める。
そこに並んでいたのは――
シェーカー。
バースプーン。
メジャーカップ。
ストレーナー。
綺麗に並んだバーツールのセット。
「……」
じっと見る。
神田が気付く。
「なんだ?」
「……いいなあ」
「?」
薫は棚の前から動かない。
「これ」
シェーカーを指差す。
「振れるのか?」
「昔働いてたし振れるよ」
「……」
「大学の時だけだけどね」
薫はシェーカーを見ながら笑う。
「久しぶりにやったら楽しそう」
その目。
さっきまで料理の話をしていた時とも、ヨガの話をしている時とも違う。
完全に好きなものを見つけた顔。
神田は黙ってそれを見る。
「……買うか?」
「え?」
薫が振り返る。
「欲しいんだろ?」
「いや、でも……」
慌てて手を振る。
「家に置く場所とかないし」
「置けばいい」
「そんな簡単に」
「欲しいんだろ」
「……」
言葉に詰まる。
神田はため息。
「そんな顔されたら」
「?」
「買ってやらないといけない気がする」
「どんな顔してるの私」
薫は自分の頬を両手で押さえる。
「そんなに分かりやすい?」
「かなり」
「嘘……」
「嘘じゃない」
店員さんが近くで笑う。
「お姉さん、本当に好きなんですね」
「え、いや……」
「さっきからずっと目が輝いてますよ」
「……」
薫、さらに頬を押さえる。
「恥ずかしい」
神田を見る。
「ユウ」
「なんだ」
「今の忘れて」
「無理」
即答。
「なんで」
「珍しいから」
「珍しい?」
「ああ」
神田はシェーカーを見る。
「仕事の時のお前とも違う」
「……」
「こういう顔するんだなって」
結局、店を出る時袋を持っているのは神田。
中身はシェーカーセット。
「本当に買っちゃった……」
「いいだろ」
「高かったのに」
「大した額じゃない」
「でも……」
「使え」
「え?」
「飾るために欲しがったわけじゃないだろ」
薫は少し黙る。
「……うん」
「じゃあ使え」
「家で?」
「ああ」
「誰に作るの?」
神田は一瞬考える。
「……」
「?」
「俺」
薫が固まる。
「え」
「嫌か」
「いや……」
顔が赤くなる。
「そういう意味じゃなくて」
神田はいつもの無表情。
でも耳が少し赤い。
「楽しみにしてる」
その一言で、薫はまたさっきと同じ顔になる。
神田は
(……またその顔)
と思いながら、袋を持ち直した。