幼馴染みで終われない [赤井秀一]
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ー幼馴染みで終われないー
幼い頃から彼女は何処か危なっかしい所があった。目を離した隙に物にぶつかる、転ぶ。気付けば膝を擦りむいていたり、青アザまで出来ていることも珍しくなかった。
差程年は離れていない筈なのに、まるで自分よりも遥かに幼い子供を見ている様だった。
ふわふわとした髪、柔らかな頬、俺よりもずっと小さな手。ふにゃりと気の抜けた笑みを見せるのが堪らなく可愛い。
警戒心が無さすぎて、いつか誰かに拐われるんじゃないかと心配で目が離せなかった。
『ねぇ秀くん、...お願い』
「ん?ヒロイン、どうした...?」
彼女からの小さなお願いの数々。
俺の袖を引いて見上げてくる様子に、僅かに優越感が生まれる。瓶の蓋が開かないとか、クロスワードが解けないだとか、そんな些細だが可愛いお願い。
いくらでも叶えるから、俺以外を頼らないでくれと、切に願った。
目が離せない。その理由は、ただ危なっかしい彼女を放っておけなかった、それだけだった。
当時は、その筈だった。
あれから10年、時が流れた。
まだまだ子供だと思っていた筈なのに、...このもどかしさは何なんだ。
誰からも傷付けられないように守りたいだけだったのに、いつの間にかどす黒い感情が溢れ出してくる。
誰にも渡さない。触れたい。...俺だけの、危なっかしくて目を離せない、可愛いヒロインでいて欲しい。
“優しい秀くん”の仮面が
少しずつ剥がれ落ちていくようだった
「ヒロイン...?起きてるか...?」
『秀くん...?またベランダ伝って来たの?危ないよ』
「問題ない。どちらかと言うとヒロインのその格好の方が問題ありだな」
『え...?そうかなぁ...』
「......そんな薄着だと風邪引くぞ」
『だいじょぶだいじょぶー。寝る時はちゃんとブランケットかけるもん』
「ヒロイン......」
『じゃあさ、風邪引かないように秀くんにくっついとけば良いね。秀くんあったかいから、きっとお布団より効果あるよ』
「おい、......流石にその格好でくっつくのは...」
『えー、ダメ...?』
「駄目、...じゃない」
『ふふ、やったぁ』
ピトリと背中へ抱き着いてくる柔らかな感触にNoとは言えなかった。
子供の頃と変わらない距離感。嬉しいような、悲しいような。信頼されていると言えば聞こえは良いが、...ただ意識されてないだけかもしれない。少し虚しさを感じた。
『秀くんの背中、おっきいね。子供の頃はあんまり私と身長変わらなかったのに』
「ヒロインはずっと小さいな」
『秀くんが伸び過ぎなんですー』
「そうか?」
『うん、ぐんぐん伸びてって羨ましかったよ。いいなぁ。んー、おっぱいはそこそこ育ったんだけどなぁ』
「こら。男の前でそういう事を言うんじゃない」
『いいじゃない。他の人の前では言わないし』
「ほう...?俺は男の内に入らないと?」
『んぇっ?ど、どうしてそうなるの...』
「違うのか?」
『えっと、......のわっ!ちょ、ちょっと秀くん...っ』
背中にくっついていたヒロインを剥がして、くるんと回転させて腕の中へ閉じ込める。
俺から動く事は滅多にないからか、彼女は動揺して腕の中でもぞもぞと動いて無駄な抵抗を試みていた。
『ぷはっ.........秀くんってば...、あのっ、...ね、...どうして、ギュッてするの......?』
「駄目なのか?」
『ダメじゃないけど......いつも、そんなこと、しないから...ちょっと、びっくりした...』
彼女の潤んだ瞳が、俺を見上げる。
いつもなら真っ直ぐに、じっと見つめてくるのに...今は、俺と目が合うと...ふいと目を逸らして恥ずかしげに頬を染めている。頬とお揃いの火照りを示す耳朶が目に入り、自然と口角が上がる。
『...今日の秀くん、...何か変だよ』
「そろそろ、行動しないと...手に入らないと気付いたんでね」
『え......?秀くんの欲しいもの?珍しいねぇ。いっつも誕生日やクリスマスにプレゼント何がイイ?って聴いても“何でも嬉しい”...って言ってくるから、毎回すっごく悩むんだよね』
「あぁ、そうだったな...」
『ハッ!今なら、秀くんの欲しいもの聴けるじゃん。リサーチしとかなきゃ!教えて教えてっ!』
先程の恥じらいは何処へやら、腕の中でピョコピョコ跳ねる兎のような彼女。
「俺が欲しいのは物じゃないんだ」
『それってナゾナゾ?』
「今、目の前にいる可愛い可愛い俺の幼馴染みのLadyなんだが...あまり男として意識されてないみたいで気落ちしてるんだ...良いアドバイスをくれないか?」
『そっ......れって、つまり、目の前にいる幼馴染みって、.........自惚れじゃなければ、...わたし...ってことで、いいのかな』
「あぁ、君だ」
『......もぅ、...アドバイスなんて、必要ないじゃん』
「...もしかしなくても今俺はフラれたのか?」
『ちっがーう!!そうじゃなくて、......つまり、その.........もう、とっくに...意識してるってこと』
ちゅ、と小さなリップ音と柔い温もりが頬に触れて、すぐに離れていった。
『ずっとずっと、...秀くんは私の特別だったから』
俯いた彼女のくぐもった小さな声が聴こえる。
思い出したように心臓がドクドクと大きな音を立てる。ティーンじゃあるまいし、静かにしろ俺の心臓。ヒロインの声が聴こえんだろうが。
『私こそ、ただの幼馴染みとしか思われてないんだって、思ってて...。秀くん...、私なんかで良ければ、いくらでも、あげ「待て、待ってくれ。今この場で続きを聴けば多分、...余裕が無くなる自信があるんたが」
『む、んむむむむっ!むーっ』
思わず手の平でヒロインの口元を覆ってしまえば、不満気な視線を向けられた。
「あ、すまない...」
『ぷは、...何で塞ぐの...』
「君が可愛すぎて心臓に悪い」
『好き好き大好き!!秀くん!!だいす...むぐっ』
「ヒロイン、わざとか?」
ジトリと目を細めて問えば眩しい程の笑顔で頷くヒロイン。勘弁してくれ。こっちはやっと惚れた女と相思相愛だった事実を知ったばかりだと言うのに。
初っ端から襲うような真似はしたくない。大事にしたいんだ。...だから、頼むからそんなキラキラした目で見つめないでくれ。
『秀くんなら、...何されてもいいのに』
覆ってた手を離した途端、ポツリと落とされた爆弾発言に、俺の理性にヒビが入ったのは言わずもがな。
(ねぇ、秀くんってば~!じゃあチューは?ダメ...?)
(ぐっ......キスだけで、我慢出来るか......いや、無理だ。)
(...もうっ、したくないなら、いいもんっ)
(ヒロイン、そうじゃないんだ。なぁ、機嫌を直してくれないか...?)
(......じゃあ、お願い、...聴いてくれる?)
嗚呼、俺は昔から、彼女からのお願いに弱いんだ。
可憐な口唇から紡がれる試練に、俺は黙って頷いた。
ーfinー
幼い頃から彼女は何処か危なっかしい所があった。目を離した隙に物にぶつかる、転ぶ。気付けば膝を擦りむいていたり、青アザまで出来ていることも珍しくなかった。
差程年は離れていない筈なのに、まるで自分よりも遥かに幼い子供を見ている様だった。
ふわふわとした髪、柔らかな頬、俺よりもずっと小さな手。ふにゃりと気の抜けた笑みを見せるのが堪らなく可愛い。
警戒心が無さすぎて、いつか誰かに拐われるんじゃないかと心配で目が離せなかった。
『ねぇ秀くん、...お願い』
「ん?ヒロイン、どうした...?」
彼女からの小さなお願いの数々。
俺の袖を引いて見上げてくる様子に、僅かに優越感が生まれる。瓶の蓋が開かないとか、クロスワードが解けないだとか、そんな些細だが可愛いお願い。
いくらでも叶えるから、俺以外を頼らないでくれと、切に願った。
目が離せない。その理由は、ただ危なっかしい彼女を放っておけなかった、それだけだった。
当時は、その筈だった。
あれから10年、時が流れた。
まだまだ子供だと思っていた筈なのに、...このもどかしさは何なんだ。
誰からも傷付けられないように守りたいだけだったのに、いつの間にかどす黒い感情が溢れ出してくる。
誰にも渡さない。触れたい。...俺だけの、危なっかしくて目を離せない、可愛いヒロインでいて欲しい。
“優しい秀くん”の仮面が
少しずつ剥がれ落ちていくようだった
「ヒロイン...?起きてるか...?」
『秀くん...?またベランダ伝って来たの?危ないよ』
「問題ない。どちらかと言うとヒロインのその格好の方が問題ありだな」
『え...?そうかなぁ...』
「......そんな薄着だと風邪引くぞ」
『だいじょぶだいじょぶー。寝る時はちゃんとブランケットかけるもん』
「ヒロイン......」
『じゃあさ、風邪引かないように秀くんにくっついとけば良いね。秀くんあったかいから、きっとお布団より効果あるよ』
「おい、......流石にその格好でくっつくのは...」
『えー、ダメ...?』
「駄目、...じゃない」
『ふふ、やったぁ』
ピトリと背中へ抱き着いてくる柔らかな感触にNoとは言えなかった。
子供の頃と変わらない距離感。嬉しいような、悲しいような。信頼されていると言えば聞こえは良いが、...ただ意識されてないだけかもしれない。少し虚しさを感じた。
『秀くんの背中、おっきいね。子供の頃はあんまり私と身長変わらなかったのに』
「ヒロインはずっと小さいな」
『秀くんが伸び過ぎなんですー』
「そうか?」
『うん、ぐんぐん伸びてって羨ましかったよ。いいなぁ。んー、おっぱいはそこそこ育ったんだけどなぁ』
「こら。男の前でそういう事を言うんじゃない」
『いいじゃない。他の人の前では言わないし』
「ほう...?俺は男の内に入らないと?」
『んぇっ?ど、どうしてそうなるの...』
「違うのか?」
『えっと、......のわっ!ちょ、ちょっと秀くん...っ』
背中にくっついていたヒロインを剥がして、くるんと回転させて腕の中へ閉じ込める。
俺から動く事は滅多にないからか、彼女は動揺して腕の中でもぞもぞと動いて無駄な抵抗を試みていた。
『ぷはっ.........秀くんってば...、あのっ、...ね、...どうして、ギュッてするの......?』
「駄目なのか?」
『ダメじゃないけど......いつも、そんなこと、しないから...ちょっと、びっくりした...』
彼女の潤んだ瞳が、俺を見上げる。
いつもなら真っ直ぐに、じっと見つめてくるのに...今は、俺と目が合うと...ふいと目を逸らして恥ずかしげに頬を染めている。頬とお揃いの火照りを示す耳朶が目に入り、自然と口角が上がる。
『...今日の秀くん、...何か変だよ』
「そろそろ、行動しないと...手に入らないと気付いたんでね」
『え......?秀くんの欲しいもの?珍しいねぇ。いっつも誕生日やクリスマスにプレゼント何がイイ?って聴いても“何でも嬉しい”...って言ってくるから、毎回すっごく悩むんだよね』
「あぁ、そうだったな...」
『ハッ!今なら、秀くんの欲しいもの聴けるじゃん。リサーチしとかなきゃ!教えて教えてっ!』
先程の恥じらいは何処へやら、腕の中でピョコピョコ跳ねる兎のような彼女。
「俺が欲しいのは物じゃないんだ」
『それってナゾナゾ?』
「今、目の前にいる可愛い可愛い俺の幼馴染みのLadyなんだが...あまり男として意識されてないみたいで気落ちしてるんだ...良いアドバイスをくれないか?」
『そっ......れって、つまり、目の前にいる幼馴染みって、.........自惚れじゃなければ、...わたし...ってことで、いいのかな』
「あぁ、君だ」
『......もぅ、...アドバイスなんて、必要ないじゃん』
「...もしかしなくても今俺はフラれたのか?」
『ちっがーう!!そうじゃなくて、......つまり、その.........もう、とっくに...意識してるってこと』
ちゅ、と小さなリップ音と柔い温もりが頬に触れて、すぐに離れていった。
『ずっとずっと、...秀くんは私の特別だったから』
俯いた彼女のくぐもった小さな声が聴こえる。
思い出したように心臓がドクドクと大きな音を立てる。ティーンじゃあるまいし、静かにしろ俺の心臓。ヒロインの声が聴こえんだろうが。
『私こそ、ただの幼馴染みとしか思われてないんだって、思ってて...。秀くん...、私なんかで良ければ、いくらでも、あげ「待て、待ってくれ。今この場で続きを聴けば多分、...余裕が無くなる自信があるんたが」
『む、んむむむむっ!むーっ』
思わず手の平でヒロインの口元を覆ってしまえば、不満気な視線を向けられた。
「あ、すまない...」
『ぷは、...何で塞ぐの...』
「君が可愛すぎて心臓に悪い」
『好き好き大好き!!秀くん!!だいす...むぐっ』
「ヒロイン、わざとか?」
ジトリと目を細めて問えば眩しい程の笑顔で頷くヒロイン。勘弁してくれ。こっちはやっと惚れた女と相思相愛だった事実を知ったばかりだと言うのに。
初っ端から襲うような真似はしたくない。大事にしたいんだ。...だから、頼むからそんなキラキラした目で見つめないでくれ。
『秀くんなら、...何されてもいいのに』
覆ってた手を離した途端、ポツリと落とされた爆弾発言に、俺の理性にヒビが入ったのは言わずもがな。
(ねぇ、秀くんってば~!じゃあチューは?ダメ...?)
(ぐっ......キスだけで、我慢出来るか......いや、無理だ。)
(...もうっ、したくないなら、いいもんっ)
(ヒロイン、そうじゃないんだ。なぁ、機嫌を直してくれないか...?)
(......じゃあ、お願い、...聴いてくれる?)
嗚呼、俺は昔から、彼女からのお願いに弱いんだ。
可憐な口唇から紡がれる試練に、俺は黙って頷いた。
ーfinー
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