真夜中の訪問者 [ジン]
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ー真夜中の訪問者ー
お風呂に入った後、頂き物のフェイスパックをしてお気に入りのアロマを焚く。
今気付いたけど、このパックめっちゃいいやつじゃない?いつも使ってるドラッグストアの安いやつとは比べ物にならない程潤う。自分じゃ絶対買わないやつだ。肌のしっとり具合が全然違う。
……ちょっとずつ、大事に使お。
『はぁ~、いい香り………癒されるぅ~…』
アロマの香りを吸い込んで、人をダメにするクッションに ぐでーっと倒れ込んでスマホをいじる。これぞ至福の時。
…そんな私のリラックスタイムは唐突に終わりを告げる。
ーーガチャガチャ、
『え、…?』
玄関からドアを開けようとする小さな音。
この時間帯に誰か来るはずないし、それにマンションのオートロックを突破してくるなんて。
しまった、チェーンしておくべきだった。
焦りを感じて私は咄嗟にキッチンへと向かい、侵入しようとしてくる者に対抗するべく目についたものを手に取った。
とうとう、ドアの鍵が破られ、無情にもガチャリとドアノブが回った…
『せ、成敗ーーっっ!!!!』
私は手に持っていたものを振り上げて、侵入者目掛けて振り下ろした。
ーーパシッ。
『えっ、』
渾身の力で振り下ろしたのに、片手で軽々と受け止められて思わず怯む。
「手荒な歓迎じゃねぇか……」
『は?ジン???」
真夜中の訪問者は、ジンだった。
どうしてもっと、こう…普通に来れないのか。
一気にホラー展開かと思ってビビったわ。
『不法侵入する方が悪いと思いまーす』
「嫌なら合鍵よこせ」
『ぇえ~……うーん………検討します。』
毎回ドアノブガチャガチャされて怖い思いするくらいなら、もう合鍵渡しちゃった方がいいんじゃないか…と思っちゃったけど、一旦思考を放棄した。
「それにしても、随分と愉快な格好だな」
『私のリラックスタイムに来たジンが悪い』
私の格好?
モコモコあったかパジャマにふわふわのヘアバンド。顔にはパック貼り付けたまま玄関でフライパンを握り締めています。
いやだって、包丁だと取られた時危ないと思って…フライパンなら、いけると思った。
まぁ、ジンじゃなければ多分フライパンでボコボコにしてたと思う。ジンは……フライパンでは倒せないなぁ~
『取り敢えず、上がりなよ』
「言われなくてもそうする」
『いやまずは家主に聞こうよ』
「上がるぞ」
『遅いわ。しかも質問じゃないし』
当たり前のようにコートと帽子を渡されて、渋々ハンガーラックに引っかける。自分でしてよ。
「珈琲でいい」
『寛ぐの早』
私のビーズクッションで寛いでるジンを見るとなんか笑っちゃう。ここはお前の家か。
『インスタントしかないからね』
「あぁ」
普段コーヒーなんて飲まないクセに、インスタントコーヒーを常備してしまうくらいには……この男に毒されてるのかもしれない。
ジン用のコーヒーと、自分用にノンカフェインの紅茶を用意して、テーブルへ。こんな時間にカフェイン摂取して、眠れるのかな。ま、知らんけど。
『ねぇ、……このフェイスパック……凄いね…』
「気に入ったのか」
『すっごく!気に入ったなんてもんじゃないよ!でも、勿体ないからちょっとずつ使う…』
「……んなこと気にせず毎日使え。また用意してやる」
『素直に嬉しい』
パックを外せば、お肌ぷるんぷるんヒロインちゃんの誕生だ。もちもちのぷるぷる~!!きゃー!テンション上がる~!
『やっぱこれすごい……ジン、ありがと!』
嬉しくて満面の笑みを向けてしまった。な、なんかちょっと恥ずかしい。
ジンはそんな私を見てちょっと笑って、頭をポンポンと撫でてコーヒーを呷った。
『…あ、タバコ吸う時はベランダでね!』
「吸わねぇよ。……荒事とは無縁の、平和な香りが…逃げちまうからな…」
『新しいアロマにしてみたけど、ジンも気に入った?』
「…悪くねぇ」
それは気に入った…ってことね。
素直なんだか、そうじゃないんだか。
『ふふ、…そっか。私も、この香り…悪くないと思ってるよ』
甘くて優しいアロマの香り
それに少し混じるコーヒーの香り。
平和な香り、か。
うん、…結構好きかも。
『あっ、そうだ!この前ね、金髪のゴージャスなお姉様に高級チョコ貰ったんだけどね~、それがもう絶品で!ビターチョコもあったからジンもどう?』
「……は?」
『可愛い子猫ちゃんね…だって!や~ん、あんな美人になら飼われてもいいかも。なーんて』
「ヒロイン、お前……厄介な奴に好かれる体質だろ」
『それ、ジンも含めて?』
「…おい、」
『フライパン片手で受け止める人って普通じゃないでしょ。私結構全力だったよ?……危険な香りしかしないんだが』
「危険だと知ってて平然としてるお前こそ異常だろ」
『失礼な。私はノーマルホモサピエンスだよ』
こら、そこ!ため息つかない!
「…能天気なお前が羨ましい」
『喧嘩売ってる?』
「ククッ……褒めてるんだぜ?」
『褒められてる気がしないんだよなぁ…』
その態度はムカつくけど、高級フェイスパックに免じて許してやろう。
『今日、泊まってくの?』
「誘ってんのか」
『それならもっとそれなりの格好するわ』
「それもそうか」
『おいこら』
「泊まるからベッドを寄越せ」
『え、家主差し置いて寝床強奪?お客さん用布団で我慢してよ』
「詰めれば二人いけるだろ」
『やだよ、狭いもん』
「ヒロイン、」
そんな、急に優しい声で聴いてもダメに決まってるでしょ。
まるで子猫を愛でるみたいに、長い指先で私の頬を悪戯に擽る。
「有名ブランドの化粧品一式」
『明け渡しましょう』
「それじゃ意味ねぇ」
『ん…?』
「本当にわからねぇか?」
『……誘ってるの…?』
「わかってんじゃねぇか」
『う、………その誘いには乗らないけど、……ベッドは、…ちょっとだけ詰めてあげる。な、何もしないって約束してよね!』
「それはフリか?」
『違うから!』
「ククッ………必死なその朱色に免じて、何もしねぇよ。…今日は、な」
そう言ってジンは私の頬をスルリと撫でて、私を置き去りにして、勝手にベッドに入ってった。
何、その、意味深な発言は…!!
このまま同じようにベッドに潜り込むのもどうかと思うし、でも私のベッドだし、…
悶々と悩んでたら「早く来ねぇとさっきの発言を撤回するぞ」と脅し文句みたいな発言が聞こえて、慌ててベッドに向かうのでした。
『ちょ、狭いんですけど』
「うるせぇな。塞ぐぞ」
『ぅ、……私のベッドなのにぃ』
「端に寄るからだろ」
『ジンが詰めろって言ったじゃん』
「そっちじゃねえ、こっちに詰めろって意味だ」
『え、ちょっ……近っ、んんっ…!』
「ふ、…やっと静かになったな」
満足げなジンを睨んで、プイッとそっぽを向いたら「そっちじゃねぇ」とか言われて無理矢理方向転換させられた。
本当に口を塞がれるとは思ってなくて、内心物凄くドキドキしちゃって、顔が赤くなっていくのがわかった。暗くて良かった。…って安心してたら、くっついてたから心拍数上がってるのバレバレだった。
悔しくて、数日拗ねてたけど…
少しして、ちゃんとジンの言ってた通り、有名ブランドの化粧品一式と、アクセサリーにチョコレートまで届いて、秒で許してしまった。
(も、物に釣られたわけじゃないから。ジンからだから、嬉しかったんだからね)
(物じゃなくて俺に釣られたって訳か?)
(え、いや、それは……うぅ……)
否定出来なくて俯いたら、笑われた。
悔しい。そんな嬉しそうな顔されたら、何も言えないじゃん。
ーfinー
お風呂に入った後、頂き物のフェイスパックをしてお気に入りのアロマを焚く。
今気付いたけど、このパックめっちゃいいやつじゃない?いつも使ってるドラッグストアの安いやつとは比べ物にならない程潤う。自分じゃ絶対買わないやつだ。肌のしっとり具合が全然違う。
……ちょっとずつ、大事に使お。
『はぁ~、いい香り………癒されるぅ~…』
アロマの香りを吸い込んで、人をダメにするクッションに ぐでーっと倒れ込んでスマホをいじる。これぞ至福の時。
…そんな私のリラックスタイムは唐突に終わりを告げる。
ーーガチャガチャ、
『え、…?』
玄関からドアを開けようとする小さな音。
この時間帯に誰か来るはずないし、それにマンションのオートロックを突破してくるなんて。
しまった、チェーンしておくべきだった。
焦りを感じて私は咄嗟にキッチンへと向かい、侵入しようとしてくる者に対抗するべく目についたものを手に取った。
とうとう、ドアの鍵が破られ、無情にもガチャリとドアノブが回った…
『せ、成敗ーーっっ!!!!』
私は手に持っていたものを振り上げて、侵入者目掛けて振り下ろした。
ーーパシッ。
『えっ、』
渾身の力で振り下ろしたのに、片手で軽々と受け止められて思わず怯む。
「手荒な歓迎じゃねぇか……」
『は?ジン???」
真夜中の訪問者は、ジンだった。
どうしてもっと、こう…普通に来れないのか。
一気にホラー展開かと思ってビビったわ。
『不法侵入する方が悪いと思いまーす』
「嫌なら合鍵よこせ」
『ぇえ~……うーん………検討します。』
毎回ドアノブガチャガチャされて怖い思いするくらいなら、もう合鍵渡しちゃった方がいいんじゃないか…と思っちゃったけど、一旦思考を放棄した。
「それにしても、随分と愉快な格好だな」
『私のリラックスタイムに来たジンが悪い』
私の格好?
モコモコあったかパジャマにふわふわのヘアバンド。顔にはパック貼り付けたまま玄関でフライパンを握り締めています。
いやだって、包丁だと取られた時危ないと思って…フライパンなら、いけると思った。
まぁ、ジンじゃなければ多分フライパンでボコボコにしてたと思う。ジンは……フライパンでは倒せないなぁ~
『取り敢えず、上がりなよ』
「言われなくてもそうする」
『いやまずは家主に聞こうよ』
「上がるぞ」
『遅いわ。しかも質問じゃないし』
当たり前のようにコートと帽子を渡されて、渋々ハンガーラックに引っかける。自分でしてよ。
「珈琲でいい」
『寛ぐの早』
私のビーズクッションで寛いでるジンを見るとなんか笑っちゃう。ここはお前の家か。
『インスタントしかないからね』
「あぁ」
普段コーヒーなんて飲まないクセに、インスタントコーヒーを常備してしまうくらいには……この男に毒されてるのかもしれない。
ジン用のコーヒーと、自分用にノンカフェインの紅茶を用意して、テーブルへ。こんな時間にカフェイン摂取して、眠れるのかな。ま、知らんけど。
『ねぇ、……このフェイスパック……凄いね…』
「気に入ったのか」
『すっごく!気に入ったなんてもんじゃないよ!でも、勿体ないからちょっとずつ使う…』
「……んなこと気にせず毎日使え。また用意してやる」
『素直に嬉しい』
パックを外せば、お肌ぷるんぷるんヒロインちゃんの誕生だ。もちもちのぷるぷる~!!きゃー!テンション上がる~!
『やっぱこれすごい……ジン、ありがと!』
嬉しくて満面の笑みを向けてしまった。な、なんかちょっと恥ずかしい。
ジンはそんな私を見てちょっと笑って、頭をポンポンと撫でてコーヒーを呷った。
『…あ、タバコ吸う時はベランダでね!』
「吸わねぇよ。……荒事とは無縁の、平和な香りが…逃げちまうからな…」
『新しいアロマにしてみたけど、ジンも気に入った?』
「…悪くねぇ」
それは気に入った…ってことね。
素直なんだか、そうじゃないんだか。
『ふふ、…そっか。私も、この香り…悪くないと思ってるよ』
甘くて優しいアロマの香り
それに少し混じるコーヒーの香り。
平和な香り、か。
うん、…結構好きかも。
『あっ、そうだ!この前ね、金髪のゴージャスなお姉様に高級チョコ貰ったんだけどね~、それがもう絶品で!ビターチョコもあったからジンもどう?』
「……は?」
『可愛い子猫ちゃんね…だって!や~ん、あんな美人になら飼われてもいいかも。なーんて』
「ヒロイン、お前……厄介な奴に好かれる体質だろ」
『それ、ジンも含めて?』
「…おい、」
『フライパン片手で受け止める人って普通じゃないでしょ。私結構全力だったよ?……危険な香りしかしないんだが』
「危険だと知ってて平然としてるお前こそ異常だろ」
『失礼な。私はノーマルホモサピエンスだよ』
こら、そこ!ため息つかない!
「…能天気なお前が羨ましい」
『喧嘩売ってる?』
「ククッ……褒めてるんだぜ?」
『褒められてる気がしないんだよなぁ…』
その態度はムカつくけど、高級フェイスパックに免じて許してやろう。
『今日、泊まってくの?』
「誘ってんのか」
『それならもっとそれなりの格好するわ』
「それもそうか」
『おいこら』
「泊まるからベッドを寄越せ」
『え、家主差し置いて寝床強奪?お客さん用布団で我慢してよ』
「詰めれば二人いけるだろ」
『やだよ、狭いもん』
「ヒロイン、」
そんな、急に優しい声で聴いてもダメに決まってるでしょ。
まるで子猫を愛でるみたいに、長い指先で私の頬を悪戯に擽る。
「有名ブランドの化粧品一式」
『明け渡しましょう』
「それじゃ意味ねぇ」
『ん…?』
「本当にわからねぇか?」
『……誘ってるの…?』
「わかってんじゃねぇか」
『う、………その誘いには乗らないけど、……ベッドは、…ちょっとだけ詰めてあげる。な、何もしないって約束してよね!』
「それはフリか?」
『違うから!』
「ククッ………必死なその朱色に免じて、何もしねぇよ。…今日は、な」
そう言ってジンは私の頬をスルリと撫でて、私を置き去りにして、勝手にベッドに入ってった。
何、その、意味深な発言は…!!
このまま同じようにベッドに潜り込むのもどうかと思うし、でも私のベッドだし、…
悶々と悩んでたら「早く来ねぇとさっきの発言を撤回するぞ」と脅し文句みたいな発言が聞こえて、慌ててベッドに向かうのでした。
『ちょ、狭いんですけど』
「うるせぇな。塞ぐぞ」
『ぅ、……私のベッドなのにぃ』
「端に寄るからだろ」
『ジンが詰めろって言ったじゃん』
「そっちじゃねえ、こっちに詰めろって意味だ」
『え、ちょっ……近っ、んんっ…!』
「ふ、…やっと静かになったな」
満足げなジンを睨んで、プイッとそっぽを向いたら「そっちじゃねぇ」とか言われて無理矢理方向転換させられた。
本当に口を塞がれるとは思ってなくて、内心物凄くドキドキしちゃって、顔が赤くなっていくのがわかった。暗くて良かった。…って安心してたら、くっついてたから心拍数上がってるのバレバレだった。
悔しくて、数日拗ねてたけど…
少しして、ちゃんとジンの言ってた通り、有名ブランドの化粧品一式と、アクセサリーにチョコレートまで届いて、秒で許してしまった。
(も、物に釣られたわけじゃないから。ジンからだから、嬉しかったんだからね)
(物じゃなくて俺に釣られたって訳か?)
(え、いや、それは……うぅ……)
否定出来なくて俯いたら、笑われた。
悔しい。そんな嬉しそうな顔されたら、何も言えないじゃん。
ーfinー
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