悪魔のうたたね 天使のゆうわく [安室透]
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『安室…さん、…』
安室さんの口唇に、ちょん、と触れるだけの口付けを落とす。それだけでも、私の心臓は爆発寸前だ。
「ん、……」
『っ?!』
安室さんが小さく身動ぎして、片手に持っていた小説がバサリと落ちた。それに驚いて思わず声を上げそうになって、両手で自分の口を覆った。
起こしてしまったかと思ったけど、そうじゃないみたい。一瞬だけ眉を寄せていたけれど、すぐに穏やかな寝顔に戻ったのを見て、胸を撫で下ろした。
流石にこれ以上近くにいると、本当に起こしてしまう。そう思って離れようとしたのに、服が何かに引っ掛かったようで、動けなかった。
その先を辿れば……いつの間にか安室さんの手に私のスカートの端が握られてた。
『(~~っ!!か、……かわいい!!)』
その様子と寝顔の幼さが相俟って、愛しくてたまらなくなって…胸の奥がきゅんと疼いた。
こんなことされたら、……離れたくなくなっちゃう。
もう少しだけなら、……いいかな…
ぴょんと跳ねた髪の毛の隙間から覗く、柔らかそうな耳朶に
ちゅ、と口付ける。
「んん、……」
『っ……!』
びっくりした……起きちゃったかと思った……
再びすぅすぅと穏やかな寝息が聞こえてホッとした。
何だか、……自分がイケナイ事をしている気分になってきた。寝込みを襲っているようなもんじゃ…?
で、でも……ここまで熟睡してる安室さんなんて、なかなかお目にかかれないし、……寝顔を見る機会も少ないんだもん。こんなチャンス、次はいつやってくるかもわからないし!……なんて心の中で言い訳をつらつら並べて勝手に自己解決した。
これで、最後にするから……と、心の中で呟いて
無防備に晒された喉から首筋へ、ちゅ、ちゅ、と小さくキスを落とした。…ら、
『ん?……きゃっ!!』
ニュッと伸びてきた腕に捕まって、身体が一瞬浮いて、そのまま、ぎゅっと温もりに包まれた。
「愛情、誘惑、欲求、執着……ですか。
ヒロインさんって意外と大胆ですね」
『え??それ、なに……?え?起きてたの?』
いつの間にか安室さんに横抱きにされてて、もう何が何だかわからない。さっきの単語の意味も気になるし…。
『も、もしかして、私の所為で起こしちゃった…?』
「大丈夫ですから、そんな不安そうな顔しないで」
柔らかな笑みを浮かべた安室さんに、頬をつん、とつつかれた。
「因みに、さっき僕が言ってたのは、キスをする場所について。どこにキスをするかによってそれぞれ違った意味があるらしいんです」
『そうなの…?』
「えぇ。そうですね……例えば、」
伸ばされた褐色の手は私の頬へ。そして顎に添えられ、くいと上を向かされる。
ちゅ、
と、短いリップ音を残して、口唇に柔い感触。
「口唇へのキスは、“愛情”」
耳元で低音が響いて、肩がビクッと小さく跳ねた。
『ん、…安室、さん………ぁっ、』
続けざまに耳朶にぬるりとした生温い感触の後、甘く食まれて、最後にちゅっと軽い音を残して離れていく熱。
「耳へのキスは、“誘惑”」
私の着てるブラウスのリボンを指先で弄びながら甘ったるく微笑む安室さんは、とても色っぽくて……見てるだけで頭がクラクラしちゃいそう。
そこで漸く、気付いた。
愛情、誘惑、欲求、執着…
口唇へのキスが愛情、耳へのキスが誘惑、ならきっと喉、首筋が欲求と執着を意味するんだろう。
私の行動を再現するように、さっきの私と同じ順番で口付けていく安室さん。
……と、いうことは、
『最初から……?』
「浅い眠りについてたんですけど、気配で起きまして」
『起きてたなんて……は、恥ずかしい…』
「何をするのかなと、気になって……寝たフリしちゃいました」
クスクスと、優雅に笑うなぁ…と、ぽけーっとしながら見ていたら、
「でも、あまりにも可愛い事をするんで、……途中で我慢出来なくなっちゃいましたけどね」
ニッコリ、爽やかな笑顔でそう告げると、安室さんはリボンをしゅるりと一気にほどいた。
『え?!』
「散々煽ってくれた、お返しです」
『ま、まって、煽ったつもり…っ』
「煽ったつもりはない、なんて……言いませんよね?」
啄むようなキスで黙らされて、こちらに向けられる少し圧力を含んだ笑顔に口を結んだ。
なのに、うっとりするくらいに綺麗な笑みだから、それ以上反論なんて出来る筈もなく、
観念したように小さく頷けば「いいこですね、」と額、瞼、頬へと降り注ぐ優しいキスの雨。
直に感じる体温も、身体に馴染んでしまった目の前の人物の香りにも、意思とは関係なく安心してしまって…勝手に力が抜けていく。殆ど条件反射に近い。
大人しくなった様子に気を良くして、安室さんはその形のいい口唇に笑みを乗せたまま、私の喉に、首筋に、口付けていく。
『…っ、』
それらが欲求、執着を意味するキスだと思えば、……じわじわと頬が熱を帯びていくのがわかった。
何度も、何度も触れては離れる口唇。いつまで経っても慣れない私は、それだけでもいっぱいいっぱいになってしまう。
声を上げそうになるのを必死に堪えた。
時折ちらり、と視線を向けてくるあたり、きっと安室さんはわかってるんだ。いつも余裕たっぷりで、憎らしくて、……なのに愛しくて堪らない。
結局は、安室さんには敵わないんだ。
始めからわかってはいたけれど。眠っている時くらいは、だなんて……甘かった。
いつも、触れたくて、近くにいるだけでドキドキして、好きで好きで堪らないのは、……私だけ?
確か、…耳のへのキスは、
誘惑を意味する、だっけ。
『ね、安室さん……、』
たまには、ほんのちょっとだけでも、……私に惑わされても、いいんじゃない?
そんな事を考えてしまう私は、きっとイイコじゃない。
私の声に、顔を上げた安室さんの耳朶に甘く歯を立てて、さっき安室さんにされたのを真似して、…ぎこちないながらも舌を這わせて、…最後はリップノイズを小さく残して、離れた。
「……っ、」
『わたし、……悪い子でもいい……?』
絡み合う視線は、どこか危うげで、
いつもは冷静で、曇りのないブルーグレーの瞳は、…今は熱に浮かされたように、ゆらゆらと揺れていて……。
もう、余裕の笑みは、浮かんでなかった。
「ははっ、……お返しを、また返されたって訳か…
人が必死に理性を保ってたってのに、まさか追い討ちをかけられるなんてな。…参ったよ。」
髪をかき上げて、安室さんは溜め息混じりに呟いた。
その様子は、いつもの彼とは…まるで別人。演じているのは、同一人物の筈なのに。
崩れた笑顔
剥がれた安室透の仮面
「天使のように純粋な顔をして、俺から余裕を掠め取っていくんだから……本当に、悪い子だ」
『あむ、…っんぅ、』
名前を紡ごうと口を開けば、狙っていたように親指を突っ込まれた。それは一見、乱暴に見えて……それでも傷付けないように、と注意を払ってするところが彼らしい。なんて、悠長な事は言ってられなかった。
今はそれどころじゃない。
唾液にまみれたしなやかな指が、私の口の中で悪戯に動き回る。視界にちらつく褐色の指に、驚きと混乱で思わず歯を立ててしまいそうになる。
『ふぁ、…んむ、』
「ヒロイン、今呼ぶべき名前は、…それじゃないだろ?」
そんな事言われたって、こんな状態で喋るなんて、出来ないのに。
指でぐにぐにとつつかれて、オモチャみたいに遊ばれる私の舌。溢れそうになる唾液を飲み込むだけで精一杯だ。
…でも、嬉しそうに、そしてちょっぴり意地悪な顔で、私からの言葉を待つ彼を見ていると、
もっと喜ばせたくて、なんでも、したくなる。
『れぇ…ふぁん、…んっ』
頑張って名前を呼べば、
指はすぐに引き抜かれて、
でも指の代わりに、もっと柔らかくて、にゅるりとした感触。それが零さんの口唇と舌であることに気付いた時には、もう、ソファーに押し倒された後だった。
「よくできました」
“ご褒美がいい?それとも、お仕置き?”
私の耳元で意地悪に問い掛ける零さん。どっちを答えたって、結果は一緒でしょう?それなら、私は
『……どっちも、ほしい』
欲張りだなぁ、と
零さんは満足そうに微笑んだ。
ーfinー
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