ふたりぼっちX'mas Eve [安室透]
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ーふたりぼっちX'mas Eveー
手伝って欲しい事があるから、閉店後に来て欲しい…って安室さんに言われてポアロに来たんだけど…
X'masの飾り付けとか…?いや、かなり前から飾り付けはしてたよね。X'masメニューの準備…のお手伝いとか…?
首を捻りながら、扉を開けよう…として一旦止まった。
『closeになってるけど……入って大丈夫なのかな…でも、そのまま入ってきてって…言われてるしなぁ…』
キィ…と音をたてる扉。
いつもと違って暗い店内にビビりながら、ゆっくりと店内に入る。
『あ、安室さーん…?』
「ヒロインさん?」
『きゃっ!……び、びっくりしました…』
すぐ隣から聞こえた声に、思わず飛び上がる。
気配が全然なかったんですけど?!
「すみません、驚かすつもりはなかったんですが…」
『こちらこそ、悲鳴上げちゃってすみません。…言われた通りお手伝いに来ましたけど、何をお手伝いしたらいいですか…?』
「明日出す予定のX'mas限定メニューなんですが、…いくつか候補はあるんですけど、実はデザートメニューだけまだ決まってなくて、その試食をお願いしたいんです」
『なるほど…』
「土台はもう決まってるんですが、仕上げのデコレーションに悩んでしまって…」
聞けば、3つある候補の中から1つを選んで欲しい…とのこと。
ふむふむ、チョコ、イチゴ、抹茶味のチョコレートソースのかかった3種類の小さめの可愛いケーキ。フルーツをふんだんに使ってて全部美味しそうだ。
小さなキャンドルの明かりに照らされて、キラキラしてる。綺麗…。ほんと、安室さんて器用。
「…というのは建前で」
『えっ?』
「それを理由にして、ただヒロインさんに会いたかっただけ……って言ったら、困りますか?」
『え?……えっ?!』
その真剣な表情を見ると、からかってる訳じゃなさそうだけど…。いきなりこれは、心臓に悪いんですが!
『こ、こ、困るません』
「クスッ…それはどっちなんですか?」
『うぅ……今日、X'mas Eveですよ?…困るなら、…事前に断ってますよ……』
安室さんに手伝って欲しいと言われて、嬉しかった。
少しでも役に立てるなら…って。
X'mas Eveだし、期待しなかった訳じゃないけど、期待しすぎて落ち込むのも嫌だから、考えないようにしてたのに。
『安室さんにお手伝い、お願いされなかったら、ぼっちX'mas Eveでしたし…。ポアロの手伝いだとしても、……安室さんに会えるのは、…嬉しかった、から』
「今日、ヒロインさんが来てくれる事が決まって、柄にもなく浮かれてしまったんです。実はメニューも決まってて、仕込みも、もう終わってるんです。このケーキは、……X'mas用じゃなくて、…ヒロインさん用で…」
ゆらりと揺れる、キャンドルの明かり。
ほんのり安室さんの頬が赤く見えるのは、キャンドルのせい…?
『う、嬉しい、ですっ!』
「……良かった…。」
私の頬も、きっと赤くなってるけど、
…キャンドルのせいにしてしまおう。
『あっ、あの、…良かったら、……安室さんも一緒に…食べませんか?』
「えぇ、…喜んで」
二人で食べた、今限定のX'masケーキは…何だか特別な味でした。しっかり味わいました。
「紅茶、もう一杯どうですか?」
『ありがとうございます、いただいてもいいですか?』
「…はい、どうぞ」
『ありが…っあ、す、すみません…』
少し手が触れただけなのに、…私何でこんなそわそわしてるの?!!少女漫画か!!
「大丈夫ですか?少し顔が赤いようですけど…」
『えっ、あっ、いえ、お構いなく……』
「…ほら、頬もこんなに熱い…」
『や、これは…その………って、安室さん、わかっててやってますね?』
「クスッ……えぇ、わざとです」
安室さんの大きな手に、私の頬が包まれる。
この人、自分がイケメンだってわかっててやってんな…?ドキドキするに決まってるじゃんか…。
『こんなの……ずるい』
目の前にいる確信犯から目を逸らして、不満げに口唇を尖らせてたら、
ちゅ、…と、口唇に柔らかくて暖かい何かが触れた。
『…へ………?』
「あ、…つい」
『つい…って、何?!』
被ってた猫も逃げ出すよ。
思わずつっこんでしまったじゃないか。
「可愛い顔して口唇尖らせてたから、思わず塞いでしまいました。反省はしてません」
『ぬぁっ…、か、かわっ、……』
動揺しすぎて、言葉にならなかった。
可愛い顔してとか、それ貴方だよ!!!!鏡見ろよ!!!!超絶ベビーフェイスでしょうが!!!!
しかも反省してませんて、何なのこのイケメンは!!!!!
罪深すぎるでしょ!!!!!
はい、ギルティ!!!!!!!
「一回も二回も同じですよね?」
『えっ、なにこのイケメン…怖い……えっ、ちょ、あの…!!近いんですけど!!』
猫被ってたのは、安室さんもだったみたいです。
たぶん、10匹くらい、猫被ってた。
「ふふ、…近付いてるんだから当たり前じゃないですか」
『ひぇ……耳元で囁くのはNGで…っ』
「許可できませんねぇ」
『いじわるだ…』
「好きな子ほど、意地悪したくなる…っていうのはこういう事か」
『何一人で納得してっ……、ちょっと…安室さっ…ん、ぁ、っ……』
「ん…?どうしました?」
『ぅ、…だから、……耳っ、ダメって…』
多分、今の私の顔は真っ赤だろう。
それもこれも全部安室さんのせいだ。
いつもならこんなに動揺なんて、する事ないはずなのに…
耳元で触れる吐息がくすぐったくて、時折甘噛みされて、身体がプルプルと震えてしまう。
ろくに抵抗も出来ないまま真っ赤な顔して震えることしか出来ない。何故なら、私の両手は安室さんの手に優しく、けれどもがっちりと固定されてるから。
『…くっ、………ぅ……』
変な声が出そうになって、ぐっと口唇を噛んだ。
「あ、駄目ですよ。口唇に傷が出来たらどうするんです」
誰のせいだよ!!と叫び出さなかった私を誰か誉めてほしい。ただ、目の前の意地悪な人を恨めしそうに睨むことしか出来なかった。
「……煽ってるんですか?」
『睨んでるんですよ!!』
「可愛い顔して睨んでも、逆効果ですよ?」
可愛い顔して…なんて、イケメンプリティフェイスに言われたくない。
嫌な訳じゃないけど、むしろ嬉しかったし、…でも、これはなんか違う。弄ばれてる感が強すぎて!
『私の反応見て楽しんでるんですか?私を弄ぶのはやめて下さい』
そのままプイッと安室さんから顔を逸らす。
『からかってるだけなら、…安室さんのこと、…ちょっと嫌いになりそうです』
そう伝えた途端、私の両手の拘束があっさりと解かれた。
「すみません、……少し調子に乗ってしまいました」
あ、今度はちゃんと反省してそうな声だ。
さっきは反省はしてませんとか言ってたのに。
「もう強引な事はしないと誓うので、…許してもらえませんか…?」
声に覇気がない…。その声に、少し罪悪感が生まれた。少しだけね。
『……今回は許してあげます』
くるりと、背けていた顔を戻して安室さんの顔を見たら、少し落ち込んでるように見えた。心なしか、叱られた子犬みたいに見える。
「すみません…。僕が意地悪したせいで、…ちょっと跡付いちゃいましたね…」
私の口唇に触れるか触れないかの所で、安室さんは伸ばした手を引っ込めた。
弄ばないでとは言ったけど、触らないでとは言ってないのに。……いやいや、それじゃあ触れて欲しいみたいじゃない!
少し物足りなさを感じてしまって、なんだかモヤモヤ。
毒されてるなぁ…もう…。
『えっと、その…』
「…はい、」
『強引すぎるのと、弄ぶのは駄目ですけど、……そうじゃないのなら、…その…』
自分から言うのがこんなに恥ずかしいなんて…。
な、なんて言えばいいんだろう。
『触れるのは、…問題ない、です…』
「…キスは、しても良いんですか」
『ぅ………ちょっとだけ、なら……』
問題ないですって何だよ、ちょっとだけって、…もう、私、何言ってるんだろ…
余計なこと言ってしまって心の中は大パニックだ。
さっきとは違って、ゆっくり引き寄せられて、
ゆるゆると優しく抱き締められた。少しだけ、ぎこちない。でも、…暖かい。
そのままゆっくりと、整った顔が近付いて、影を落とす。ちゅ、…と軽く触れるだけのキス。
離れては、もう一度…僅かに触れる口唇。
『…あむろ、さん。………もうすこし、だけ』
そんな言葉が、ぽろりと零れた。
自分で言っておいて、言っちゃった!と驚いたんだけど、安室さんも、ちょっと、目を丸くしてた。
そしてジトッと少し不機嫌そうな顔。
「…これでも僕、我慢してたんですけど……」
『うぐ…』
「やりすぎたなって、反省したから…控え目にしてたんですが」
『ぅ……』
「はぁ、………今回はヒロインさんから言い出したんですからね、……本当に嫌な時は思いきり殴ってくれて構いませんから」
え?思いきり殴る…?
戸惑ってる間に再度距離は詰められてて
私達の距離は0になった。
『…んむ!……っふ、…ぁっ』
頬に触れていた安室さんの手が、耳を掠めた時、不意に声が漏れて、
その瞬間、口唇の隙間からぬるりとしたものが入り込んできた。それに私の舌が絡め取られていく。
混ざり合う、芳しい紅茶の香りと、チョコレートの味。
…甘い。
『……っ…は、……んんっ…』
静かな室内には二人の吐息と、くぐもった声。
くちゅ、と水音が妙に大きく響いて、途端に恥ずかしくなってきて、鼓動が一気に早くなる。
我慢しても、僅かに声が出てしまって、
聞き慣れない自分の声に、耳を塞いでしまいたくなった。
決して経験豊富とは言えない私はもう、パンク寸前でした。
『あ、あむろさ、……っも、むり…っ』
「…おっと、…大丈夫ですか?」
ガクン、と身体から力が抜けて、安室さんに支えられた。
『あ、あれ…?』
足に力が入らない。
これってあれかな、腰砕けってやつでしょうか。
普通になる現象だったの、これ!!
それとも私の足腰が脆弱なだけ…?
「ヒロインさん…?息してます?」
『してますよ!ちゃんと生きてます!』
「良かった。その様子なら大丈夫そうですね」
一人で立ち上がれないこの状態のどこをどう見たら大丈夫そうに見えるんだよと、ツッコミ入れたくなった。
「一人で帰れます?」
『……たぶん』
「無理そうですね」
『すみません…』
「選択肢は2つありますよ。僕の家に来るか、ヒロインさんの家に送るか……どっちがいいですか?」
これは……どっちが正解なのか。
家に送ってもらうべきか…
それとも……
いやいやいやいや。
もう一つの選択肢のその先の展開を想像して首を横に振った。
『帰ります』
「僕の家に?」
『私の家に!!』
「ふふ、…残念です。……もう一つの選択肢の方は、……その時まで、楽しみにしてますから」
『……その際はお手柔らかにお願いします』
「善処しますよ」
いい笑顔だけど、…全然信用出来ないな。
この後、ちゃんと家まで送り届けてくれたから、良かったけど。
あのまま、彼の家に連れて行かれてたとしたらどうなっていたのか……少し考えてから、……まだ心の準備が出来てないので考えるのを途中でやめた。
待って、
……心の準備って、どうすればいいんだろ。
(キスだけでこの状態って……これ以上先に進んだら私死ぬんじゃ?)
(ふふ、まさか。一度進んでしまえばすぐ慣れますよ。すぐ、ね)
耳元で、
とろり、と甘ったるい
それはまるで悪魔の囁きのようでした。
ーfinー
手伝って欲しい事があるから、閉店後に来て欲しい…って安室さんに言われてポアロに来たんだけど…
X'masの飾り付けとか…?いや、かなり前から飾り付けはしてたよね。X'masメニューの準備…のお手伝いとか…?
首を捻りながら、扉を開けよう…として一旦止まった。
『closeになってるけど……入って大丈夫なのかな…でも、そのまま入ってきてって…言われてるしなぁ…』
キィ…と音をたてる扉。
いつもと違って暗い店内にビビりながら、ゆっくりと店内に入る。
『あ、安室さーん…?』
「ヒロインさん?」
『きゃっ!……び、びっくりしました…』
すぐ隣から聞こえた声に、思わず飛び上がる。
気配が全然なかったんですけど?!
「すみません、驚かすつもりはなかったんですが…」
『こちらこそ、悲鳴上げちゃってすみません。…言われた通りお手伝いに来ましたけど、何をお手伝いしたらいいですか…?』
「明日出す予定のX'mas限定メニューなんですが、…いくつか候補はあるんですけど、実はデザートメニューだけまだ決まってなくて、その試食をお願いしたいんです」
『なるほど…』
「土台はもう決まってるんですが、仕上げのデコレーションに悩んでしまって…」
聞けば、3つある候補の中から1つを選んで欲しい…とのこと。
ふむふむ、チョコ、イチゴ、抹茶味のチョコレートソースのかかった3種類の小さめの可愛いケーキ。フルーツをふんだんに使ってて全部美味しそうだ。
小さなキャンドルの明かりに照らされて、キラキラしてる。綺麗…。ほんと、安室さんて器用。
「…というのは建前で」
『えっ?』
「それを理由にして、ただヒロインさんに会いたかっただけ……って言ったら、困りますか?」
『え?……えっ?!』
その真剣な表情を見ると、からかってる訳じゃなさそうだけど…。いきなりこれは、心臓に悪いんですが!
『こ、こ、困るません』
「クスッ…それはどっちなんですか?」
『うぅ……今日、X'mas Eveですよ?…困るなら、…事前に断ってますよ……』
安室さんに手伝って欲しいと言われて、嬉しかった。
少しでも役に立てるなら…って。
X'mas Eveだし、期待しなかった訳じゃないけど、期待しすぎて落ち込むのも嫌だから、考えないようにしてたのに。
『安室さんにお手伝い、お願いされなかったら、ぼっちX'mas Eveでしたし…。ポアロの手伝いだとしても、……安室さんに会えるのは、…嬉しかった、から』
「今日、ヒロインさんが来てくれる事が決まって、柄にもなく浮かれてしまったんです。実はメニューも決まってて、仕込みも、もう終わってるんです。このケーキは、……X'mas用じゃなくて、…ヒロインさん用で…」
ゆらりと揺れる、キャンドルの明かり。
ほんのり安室さんの頬が赤く見えるのは、キャンドルのせい…?
『う、嬉しい、ですっ!』
「……良かった…。」
私の頬も、きっと赤くなってるけど、
…キャンドルのせいにしてしまおう。
『あっ、あの、…良かったら、……安室さんも一緒に…食べませんか?』
「えぇ、…喜んで」
二人で食べた、今限定のX'masケーキは…何だか特別な味でした。しっかり味わいました。
「紅茶、もう一杯どうですか?」
『ありがとうございます、いただいてもいいですか?』
「…はい、どうぞ」
『ありが…っあ、す、すみません…』
少し手が触れただけなのに、…私何でこんなそわそわしてるの?!!少女漫画か!!
「大丈夫ですか?少し顔が赤いようですけど…」
『えっ、あっ、いえ、お構いなく……』
「…ほら、頬もこんなに熱い…」
『や、これは…その………って、安室さん、わかっててやってますね?』
「クスッ……えぇ、わざとです」
安室さんの大きな手に、私の頬が包まれる。
この人、自分がイケメンだってわかっててやってんな…?ドキドキするに決まってるじゃんか…。
『こんなの……ずるい』
目の前にいる確信犯から目を逸らして、不満げに口唇を尖らせてたら、
ちゅ、…と、口唇に柔らかくて暖かい何かが触れた。
『…へ………?』
「あ、…つい」
『つい…って、何?!』
被ってた猫も逃げ出すよ。
思わずつっこんでしまったじゃないか。
「可愛い顔して口唇尖らせてたから、思わず塞いでしまいました。反省はしてません」
『ぬぁっ…、か、かわっ、……』
動揺しすぎて、言葉にならなかった。
可愛い顔してとか、それ貴方だよ!!!!鏡見ろよ!!!!超絶ベビーフェイスでしょうが!!!!
しかも反省してませんて、何なのこのイケメンは!!!!!
罪深すぎるでしょ!!!!!
はい、ギルティ!!!!!!!
「一回も二回も同じですよね?」
『えっ、なにこのイケメン…怖い……えっ、ちょ、あの…!!近いんですけど!!』
猫被ってたのは、安室さんもだったみたいです。
たぶん、10匹くらい、猫被ってた。
「ふふ、…近付いてるんだから当たり前じゃないですか」
『ひぇ……耳元で囁くのはNGで…っ』
「許可できませんねぇ」
『いじわるだ…』
「好きな子ほど、意地悪したくなる…っていうのはこういう事か」
『何一人で納得してっ……、ちょっと…安室さっ…ん、ぁ、っ……』
「ん…?どうしました?」
『ぅ、…だから、……耳っ、ダメって…』
多分、今の私の顔は真っ赤だろう。
それもこれも全部安室さんのせいだ。
いつもならこんなに動揺なんて、する事ないはずなのに…
耳元で触れる吐息がくすぐったくて、時折甘噛みされて、身体がプルプルと震えてしまう。
ろくに抵抗も出来ないまま真っ赤な顔して震えることしか出来ない。何故なら、私の両手は安室さんの手に優しく、けれどもがっちりと固定されてるから。
『…くっ、………ぅ……』
変な声が出そうになって、ぐっと口唇を噛んだ。
「あ、駄目ですよ。口唇に傷が出来たらどうするんです」
誰のせいだよ!!と叫び出さなかった私を誰か誉めてほしい。ただ、目の前の意地悪な人を恨めしそうに睨むことしか出来なかった。
「……煽ってるんですか?」
『睨んでるんですよ!!』
「可愛い顔して睨んでも、逆効果ですよ?」
可愛い顔して…なんて、イケメンプリティフェイスに言われたくない。
嫌な訳じゃないけど、むしろ嬉しかったし、…でも、これはなんか違う。弄ばれてる感が強すぎて!
『私の反応見て楽しんでるんですか?私を弄ぶのはやめて下さい』
そのままプイッと安室さんから顔を逸らす。
『からかってるだけなら、…安室さんのこと、…ちょっと嫌いになりそうです』
そう伝えた途端、私の両手の拘束があっさりと解かれた。
「すみません、……少し調子に乗ってしまいました」
あ、今度はちゃんと反省してそうな声だ。
さっきは反省はしてませんとか言ってたのに。
「もう強引な事はしないと誓うので、…許してもらえませんか…?」
声に覇気がない…。その声に、少し罪悪感が生まれた。少しだけね。
『……今回は許してあげます』
くるりと、背けていた顔を戻して安室さんの顔を見たら、少し落ち込んでるように見えた。心なしか、叱られた子犬みたいに見える。
「すみません…。僕が意地悪したせいで、…ちょっと跡付いちゃいましたね…」
私の口唇に触れるか触れないかの所で、安室さんは伸ばした手を引っ込めた。
弄ばないでとは言ったけど、触らないでとは言ってないのに。……いやいや、それじゃあ触れて欲しいみたいじゃない!
少し物足りなさを感じてしまって、なんだかモヤモヤ。
毒されてるなぁ…もう…。
『えっと、その…』
「…はい、」
『強引すぎるのと、弄ぶのは駄目ですけど、……そうじゃないのなら、…その…』
自分から言うのがこんなに恥ずかしいなんて…。
な、なんて言えばいいんだろう。
『触れるのは、…問題ない、です…』
「…キスは、しても良いんですか」
『ぅ………ちょっとだけ、なら……』
問題ないですって何だよ、ちょっとだけって、…もう、私、何言ってるんだろ…
余計なこと言ってしまって心の中は大パニックだ。
さっきとは違って、ゆっくり引き寄せられて、
ゆるゆると優しく抱き締められた。少しだけ、ぎこちない。でも、…暖かい。
そのままゆっくりと、整った顔が近付いて、影を落とす。ちゅ、…と軽く触れるだけのキス。
離れては、もう一度…僅かに触れる口唇。
『…あむろ、さん。………もうすこし、だけ』
そんな言葉が、ぽろりと零れた。
自分で言っておいて、言っちゃった!と驚いたんだけど、安室さんも、ちょっと、目を丸くしてた。
そしてジトッと少し不機嫌そうな顔。
「…これでも僕、我慢してたんですけど……」
『うぐ…』
「やりすぎたなって、反省したから…控え目にしてたんですが」
『ぅ……』
「はぁ、………今回はヒロインさんから言い出したんですからね、……本当に嫌な時は思いきり殴ってくれて構いませんから」
え?思いきり殴る…?
戸惑ってる間に再度距離は詰められてて
私達の距離は0になった。
『…んむ!……っふ、…ぁっ』
頬に触れていた安室さんの手が、耳を掠めた時、不意に声が漏れて、
その瞬間、口唇の隙間からぬるりとしたものが入り込んできた。それに私の舌が絡め取られていく。
混ざり合う、芳しい紅茶の香りと、チョコレートの味。
…甘い。
『……っ…は、……んんっ…』
静かな室内には二人の吐息と、くぐもった声。
くちゅ、と水音が妙に大きく響いて、途端に恥ずかしくなってきて、鼓動が一気に早くなる。
我慢しても、僅かに声が出てしまって、
聞き慣れない自分の声に、耳を塞いでしまいたくなった。
決して経験豊富とは言えない私はもう、パンク寸前でした。
『あ、あむろさ、……っも、むり…っ』
「…おっと、…大丈夫ですか?」
ガクン、と身体から力が抜けて、安室さんに支えられた。
『あ、あれ…?』
足に力が入らない。
これってあれかな、腰砕けってやつでしょうか。
普通になる現象だったの、これ!!
それとも私の足腰が脆弱なだけ…?
「ヒロインさん…?息してます?」
『してますよ!ちゃんと生きてます!』
「良かった。その様子なら大丈夫そうですね」
一人で立ち上がれないこの状態のどこをどう見たら大丈夫そうに見えるんだよと、ツッコミ入れたくなった。
「一人で帰れます?」
『……たぶん』
「無理そうですね」
『すみません…』
「選択肢は2つありますよ。僕の家に来るか、ヒロインさんの家に送るか……どっちがいいですか?」
これは……どっちが正解なのか。
家に送ってもらうべきか…
それとも……
いやいやいやいや。
もう一つの選択肢のその先の展開を想像して首を横に振った。
『帰ります』
「僕の家に?」
『私の家に!!』
「ふふ、…残念です。……もう一つの選択肢の方は、……その時まで、楽しみにしてますから」
『……その際はお手柔らかにお願いします』
「善処しますよ」
いい笑顔だけど、…全然信用出来ないな。
この後、ちゃんと家まで送り届けてくれたから、良かったけど。
あのまま、彼の家に連れて行かれてたとしたらどうなっていたのか……少し考えてから、……まだ心の準備が出来てないので考えるのを途中でやめた。
待って、
……心の準備って、どうすればいいんだろ。
(キスだけでこの状態って……これ以上先に進んだら私死ぬんじゃ?)
(ふふ、まさか。一度進んでしまえばすぐ慣れますよ。すぐ、ね)
耳元で、
とろり、と甘ったるい
それはまるで悪魔の囁きのようでした。
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