甘口だーりん [降谷零]
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-甘口だーりん-
『はぁ...やっぱり、今日のデートもキャンセルかなぁ?』
どうやら今回も私の彼氏様は事件に巻き込まれたらしく、 “すまない、約束の時間に間に合わない。終わったら連絡する” ...っていう合間に送ったであろうそのメールを受信して、色々と悟った。きっとこの事件が解決しても、すぐにはこちらに来られないだろう。
きっとまた、あの眼鏡の坊やと一緒に巻き込まれちゃったんだろうな...どっちかって言うと、あの坊やは自分から巻き込まれに行ってる気がするけれど。
着替えも済ませて、待ち合わせ場所に向かおうとした丁度そのタイミングで私の気分を降下させる例のメールの着信音が鳴った。
しかも同僚に「どーせ暇だろ?この資料戻しておいてくれ」なんて、資料の束を押し付けられて資料庫に逆戻りする羽目になるし。そりゃ、溜め息の一つも出るわ。
その後で取って付けたように「お前、そういう可愛い格好も似合うな」なんて褒めても何も出ないんだから。
そもそも、私が褒めて貰いたかったのは......あ、また落ち込みそう。
『せっかく、お洒落したのになぁ...』
溜め息混じりの呟きは、自分でも笑っちゃうくらい弱々しいものだった。
『よし、落ち込んでも仕方ない!一杯ひっかけて帰ろうかな!』
無理矢理テンションを上げようと、声に出して言ってみたけど、…なかなか虚しい。空元気全開でそのままエレベーターに乗り込んだ。
普段飲まないようなお酒でも飲んじゃおうかな。バーボン、とか。
一杯になるか、いっぱいになるかはわからないけど。
なんて考えながらエレベーターの“閉”ボタンを押した。...その時だった。
ガッ!ガコッ...!!
『っ?!!』
物凄い音がして、目を見開くと、
何者かがエレベーターの隙間に強引に足を挟んで、閉まるのを防いで、両手で扉を抉じ開けてきた。
ひーっ?!!何なになに?!!何事?!!
す、素手で開けた...。
「...っ、それは、許可出来ないな」
『へ...?』
「全く、そんな格好で一人で飲み歩くなんて、どういうつもりだ?」
『零、さん...?』
瞬きも忘れるくらい、凝視してしまった。だって、今ここにいる筈のない人が...いるんだもん。
「そのスカート、スリット深すぎないか?」
些か強引にエレベーターへ乗り込んできたのは、いつものスーツ姿ではなくて、少しカジュアルな格好をした零さんだった。
安室透の姿よりも、色味が少し落ち着いてて、零さんのお休みの時の格好、だ。
見慣れた筈なのに、思わず見惚れてしまった。
『だって、零さんが...私の脚、綺麗だなって言ってたから』
「...なら、俺以外に見せるなよ」
少しムッとした表情で、でも少し照れた様子。
その何だか幼さの増した零さんを垣間見て、少し笑ってしまった。
『ふふっ...だって、零さん遅いんだもん。もう先に他の人に見られちゃったよ』
「それは、悪かったよ。毎回約束守れなくて、ごめんな。ちゃんと埋め合わせするから」
『...えっと、』
ごめんな、ヒロイン...なんて申し訳なさそうな声で言いながら、目を細める零さんに壁際に追いやられていく。
あの、...ここ、職場のエレベーター内、ですよ?
あの、......零さーん?
「でも、それとこれは別だ」
ニッコリと、黒い微笑を浮かべた零さんに、ある意味心身共に追い詰められる。
辛うじて、抱えてる資料の束のお陰で密着は防げてるけど、
「見られちゃった、か。抱えてる資料からすると...今その資料に関する事件を担当してたのは確か...ヒロインと同期のあいつだろ」
バレてる...!
隙間から、チラ見しただけの資料で、ついさっき会った人物まで特定されてる。
「あの男...ヒロインの事、よく見てるよな」
『よく見てるって...まぁ、別に仲が悪いって訳じゃ、ないし』
「へぇ...」
一向に動かないエレベーターを不思議に思って、ふとボタンのところを見ると、閉ボタンの部分に何か細工されてあるのに気付いた。...時にはもう遅かった。
『え?あ!...零さ、んっ...』
「そういう可愛い格好も似合うな、か。妬けるな」
『れ、零さん?!一体どこから...ぁっ、』
スリット部分から差し込まれた褐色の指先が、するりと太股を撫でて、ビクッと身体が震えた。
この資料、逆効果だ...!これの所為で全然身動き取れない!
「さぁ?どこからだろうな?」
『ゃ、ちょっ...零さん?...まだ、やること残ってるんでしょ?戻らないといけないんじゃ...』
「問題ない。後は報告だけだからな」
こっちは問題大ありだよ!!!!
...って文句言いたいけど、目の前の色気にあてられて何も言えない。
『ほ、報告終わったら...ちょっとはゆっくり出来るんでしょ...?』
「あぁ、明日は一日フリーだ。組織の方もポアロのシフトも何も入ってない」
『なら、』
「...久々に会えたんだ。その前にちょっとは充電させてくれ」
『んむっ!ふ、...んぅ、』
ちょっと不機嫌そうな声が聞こえて、次の瞬間には少し強引に口を塞がれていた。
壁に押し付けられてるから、後ろにも下がれないし、両手は塞がってるし何も抵抗出来ないまま、必死に酸素を取り込もうと口を開けば舌を捩じ込まれた。
『は、っ...ん、ふぁ...』
「ん、...相変わらず、息継ぎ下手だな」
『誰の、せいだと...っ!』
抗議の声を上げようとしたら再びキスで塞がれて、舌先を ジュッ と吸い上げられて何も言えなくなる。そんなの、ずるい。
その後も、散々翻弄されて酸素を奪われて、漸く解放された頃には息も絶え絶えで。塗り直した筈のリップは零さんのせいで殆ど落ちてしまった。
「30分だ」
『っは、...ん、...え......?』
「30分で全部終わらせるから、その資料戻し終えたら先に駐車場に行っててくれ。場所は分かるだろ…?」
言いながら、くい、と上を向かされる。
されるがままにしていれば、口唇に見慣れたピンク色のリップグロスを塗られた。
え?あれ、ポケットに入れてたやつ...?
いつの間に?!そもそも、どうしてグロスだけポケットに入れてる事知ってるの?
...と、視線を向けたら
「他はメイクポーチに入れてるけど、これだけは別で持ち歩いてるだろ?」
『そんな事、話したこと、あったっけ...?』
「見てれば分かるよ。...はい、」
流石だなぁ、なんて思いながらグロスを受け取れば、一緒にチャリン、と車の鍵も渡された。
「先に乗っててくれ」
『う、うん。わかった』
「今日は泊まっていくだろ?」
『え、...ぅ......でも、』
「ん?」
『零さん、疲れてるでしょ...?』
そりゃあ、勿論二人で過ごしたいし、一緒にいたい。明日だって私もお休みだし、出来る事なら...って思うけど、零さんは絶賛トリプルフェイスで多忙すぎる日々を送っているから、ごく稀にあるお休みくらいしっかり休んだ方がいいんじゃないか、と思ったんだけど...。
「ヒロインがいてくれた方が、俺は休めるんだけど?」
『ほ、ほんとに?』
「嘘ついてどうする。それとも何だ、...癒してくれないのか?」
『へ...?』
「俺が休みの日まで仕事しないように、お前が傍で見張っててくれ。...な?』
キョトンと間抜け面で見上げる私の額をコツンと小突いて、零さんはふわり と柔らかく微笑んだ。
その、笑顔は...反則だ。
「ほら、返事」
『っ、ひゃい!』
「ははっ、動揺し過ぎだろ」
『うぅ...』
「休みは二人でゆっくり過ごそう。とびきり旨い朝食を作るから、期待しててくれ」
女として、それはどうなのかと思うけど、零さんの料理は間違いなく美味しいから仕方ない。しっかり休んで欲しいけど、...零さんの作る朝食も捨てがたい。
う...どうしよう。
いいのかな?甘えちゃっても。...悩む。
でも、やっぱり欲望には勝てなかった。
『...期待する』
「今、疲れてるだろうからどうしよう、なんて考えたろ。...たまには甘えてくれ」
“俺が、甘やかしたいんだ。”
そんな甘い言葉と、甘ったるい笑みを残して 零さんはエレベーターから出ていった。
勿論、例の細工は抜かりなく回収されていた。
『し、資料...戻しに行かなきゃ......』
散々色気の攻撃によるダメージを受けた私は、エレベーターから出る頃には 若干覚束ない足取りで。
ちゃんと明日まで心臓がもつかどうか、心配になったのでした。
ーfinー
『はぁ...やっぱり、今日のデートもキャンセルかなぁ?』
どうやら今回も私の彼氏様は事件に巻き込まれたらしく、 “すまない、約束の時間に間に合わない。終わったら連絡する” ...っていう合間に送ったであろうそのメールを受信して、色々と悟った。きっとこの事件が解決しても、すぐにはこちらに来られないだろう。
きっとまた、あの眼鏡の坊やと一緒に巻き込まれちゃったんだろうな...どっちかって言うと、あの坊やは自分から巻き込まれに行ってる気がするけれど。
着替えも済ませて、待ち合わせ場所に向かおうとした丁度そのタイミングで私の気分を降下させる例のメールの着信音が鳴った。
しかも同僚に「どーせ暇だろ?この資料戻しておいてくれ」なんて、資料の束を押し付けられて資料庫に逆戻りする羽目になるし。そりゃ、溜め息の一つも出るわ。
その後で取って付けたように「お前、そういう可愛い格好も似合うな」なんて褒めても何も出ないんだから。
そもそも、私が褒めて貰いたかったのは......あ、また落ち込みそう。
『せっかく、お洒落したのになぁ...』
溜め息混じりの呟きは、自分でも笑っちゃうくらい弱々しいものだった。
『よし、落ち込んでも仕方ない!一杯ひっかけて帰ろうかな!』
無理矢理テンションを上げようと、声に出して言ってみたけど、…なかなか虚しい。空元気全開でそのままエレベーターに乗り込んだ。
普段飲まないようなお酒でも飲んじゃおうかな。バーボン、とか。
一杯になるか、いっぱいになるかはわからないけど。
なんて考えながらエレベーターの“閉”ボタンを押した。...その時だった。
ガッ!ガコッ...!!
『っ?!!』
物凄い音がして、目を見開くと、
何者かがエレベーターの隙間に強引に足を挟んで、閉まるのを防いで、両手で扉を抉じ開けてきた。
ひーっ?!!何なになに?!!何事?!!
す、素手で開けた...。
「...っ、それは、許可出来ないな」
『へ...?』
「全く、そんな格好で一人で飲み歩くなんて、どういうつもりだ?」
『零、さん...?』
瞬きも忘れるくらい、凝視してしまった。だって、今ここにいる筈のない人が...いるんだもん。
「そのスカート、スリット深すぎないか?」
些か強引にエレベーターへ乗り込んできたのは、いつものスーツ姿ではなくて、少しカジュアルな格好をした零さんだった。
安室透の姿よりも、色味が少し落ち着いてて、零さんのお休みの時の格好、だ。
見慣れた筈なのに、思わず見惚れてしまった。
『だって、零さんが...私の脚、綺麗だなって言ってたから』
「...なら、俺以外に見せるなよ」
少しムッとした表情で、でも少し照れた様子。
その何だか幼さの増した零さんを垣間見て、少し笑ってしまった。
『ふふっ...だって、零さん遅いんだもん。もう先に他の人に見られちゃったよ』
「それは、悪かったよ。毎回約束守れなくて、ごめんな。ちゃんと埋め合わせするから」
『...えっと、』
ごめんな、ヒロイン...なんて申し訳なさそうな声で言いながら、目を細める零さんに壁際に追いやられていく。
あの、...ここ、職場のエレベーター内、ですよ?
あの、......零さーん?
「でも、それとこれは別だ」
ニッコリと、黒い微笑を浮かべた零さんに、ある意味心身共に追い詰められる。
辛うじて、抱えてる資料の束のお陰で密着は防げてるけど、
「見られちゃった、か。抱えてる資料からすると...今その資料に関する事件を担当してたのは確か...ヒロインと同期のあいつだろ」
バレてる...!
隙間から、チラ見しただけの資料で、ついさっき会った人物まで特定されてる。
「あの男...ヒロインの事、よく見てるよな」
『よく見てるって...まぁ、別に仲が悪いって訳じゃ、ないし』
「へぇ...」
一向に動かないエレベーターを不思議に思って、ふとボタンのところを見ると、閉ボタンの部分に何か細工されてあるのに気付いた。...時にはもう遅かった。
『え?あ!...零さ、んっ...』
「そういう可愛い格好も似合うな、か。妬けるな」
『れ、零さん?!一体どこから...ぁっ、』
スリット部分から差し込まれた褐色の指先が、するりと太股を撫でて、ビクッと身体が震えた。
この資料、逆効果だ...!これの所為で全然身動き取れない!
「さぁ?どこからだろうな?」
『ゃ、ちょっ...零さん?...まだ、やること残ってるんでしょ?戻らないといけないんじゃ...』
「問題ない。後は報告だけだからな」
こっちは問題大ありだよ!!!!
...って文句言いたいけど、目の前の色気にあてられて何も言えない。
『ほ、報告終わったら...ちょっとはゆっくり出来るんでしょ...?』
「あぁ、明日は一日フリーだ。組織の方もポアロのシフトも何も入ってない」
『なら、』
「...久々に会えたんだ。その前にちょっとは充電させてくれ」
『んむっ!ふ、...んぅ、』
ちょっと不機嫌そうな声が聞こえて、次の瞬間には少し強引に口を塞がれていた。
壁に押し付けられてるから、後ろにも下がれないし、両手は塞がってるし何も抵抗出来ないまま、必死に酸素を取り込もうと口を開けば舌を捩じ込まれた。
『は、っ...ん、ふぁ...』
「ん、...相変わらず、息継ぎ下手だな」
『誰の、せいだと...っ!』
抗議の声を上げようとしたら再びキスで塞がれて、舌先を ジュッ と吸い上げられて何も言えなくなる。そんなの、ずるい。
その後も、散々翻弄されて酸素を奪われて、漸く解放された頃には息も絶え絶えで。塗り直した筈のリップは零さんのせいで殆ど落ちてしまった。
「30分だ」
『っは、...ん、...え......?』
「30分で全部終わらせるから、その資料戻し終えたら先に駐車場に行っててくれ。場所は分かるだろ…?」
言いながら、くい、と上を向かされる。
されるがままにしていれば、口唇に見慣れたピンク色のリップグロスを塗られた。
え?あれ、ポケットに入れてたやつ...?
いつの間に?!そもそも、どうしてグロスだけポケットに入れてる事知ってるの?
...と、視線を向けたら
「他はメイクポーチに入れてるけど、これだけは別で持ち歩いてるだろ?」
『そんな事、話したこと、あったっけ...?』
「見てれば分かるよ。...はい、」
流石だなぁ、なんて思いながらグロスを受け取れば、一緒にチャリン、と車の鍵も渡された。
「先に乗っててくれ」
『う、うん。わかった』
「今日は泊まっていくだろ?」
『え、...ぅ......でも、』
「ん?」
『零さん、疲れてるでしょ...?』
そりゃあ、勿論二人で過ごしたいし、一緒にいたい。明日だって私もお休みだし、出来る事なら...って思うけど、零さんは絶賛トリプルフェイスで多忙すぎる日々を送っているから、ごく稀にあるお休みくらいしっかり休んだ方がいいんじゃないか、と思ったんだけど...。
「ヒロインがいてくれた方が、俺は休めるんだけど?」
『ほ、ほんとに?』
「嘘ついてどうする。それとも何だ、...癒してくれないのか?」
『へ...?』
「俺が休みの日まで仕事しないように、お前が傍で見張っててくれ。...な?』
キョトンと間抜け面で見上げる私の額をコツンと小突いて、零さんはふわり と柔らかく微笑んだ。
その、笑顔は...反則だ。
「ほら、返事」
『っ、ひゃい!』
「ははっ、動揺し過ぎだろ」
『うぅ...』
「休みは二人でゆっくり過ごそう。とびきり旨い朝食を作るから、期待しててくれ」
女として、それはどうなのかと思うけど、零さんの料理は間違いなく美味しいから仕方ない。しっかり休んで欲しいけど、...零さんの作る朝食も捨てがたい。
う...どうしよう。
いいのかな?甘えちゃっても。...悩む。
でも、やっぱり欲望には勝てなかった。
『...期待する』
「今、疲れてるだろうからどうしよう、なんて考えたろ。...たまには甘えてくれ」
“俺が、甘やかしたいんだ。”
そんな甘い言葉と、甘ったるい笑みを残して 零さんはエレベーターから出ていった。
勿論、例の細工は抜かりなく回収されていた。
『し、資料...戻しに行かなきゃ......』
散々色気の攻撃によるダメージを受けた私は、エレベーターから出る頃には 若干覚束ない足取りで。
ちゃんと明日まで心臓がもつかどうか、心配になったのでした。
ーfinー
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