甘い毒 [降谷零]
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─降谷side─
俺には、ずっと忘れられない人がいる。
生まれて初めて、心から愛した人だった。
降谷零という一人の男として、初めて恋をして...誰かを愛するということを知った。
でも、その人はある日突然別れを告げて、跡形もなく消えてしまった。
最後に会った時の、あの儚く切な気に涙を耐えた表情が、頭から離れない。
何が原因なのかわからなかった。俺が嫌いになったのか、他に好きな男ができたのか、
泣くばかりで、答えようとしない彼女に、それ以上何も聞くことができず...
そのまま駆け出す彼女を引き留める事もできず、ただ伸ばした手が虚しく空をつかむだけだった。
今ならば、調べようと思えば連絡先も、住んでる場所も、調べられる。方法はいくらでもあった。
でも、再び会ってどうする?また拒絶されるかもしれない。今更理由を聞いてどうするつもりだ?
頭の中で自問自答を繰り返すばかりで、何も進展しなかった。
だが、思わぬ所で転機が訪れた。
───────
─────
───
休憩が終わり、梓さんにも休憩を促そうとその姿を探していたら、窓際の席のお客さんと談笑しているようで、楽しげな声が聞こえた。
時折梓さんから“安室”の名前が出ていたので自分が話題に上がってるのを知って、挨拶でもしようかと歩みを進めた。
その女性客がこちらに顔を向けた時、
手にしていたエプロンを取り落とした。
それほどの動揺で。
思わず、安室透の仮面が剥がれかけた。
一瞬...
時が、止まったのかと思った。
何年過ぎようとも、色褪せる事なく、更に鮮明になっていく彼女の記憶。
今、視界に入っているのは紛れもなく、本物の彼女で。記憶でも幻でもなく、本物の彼女で。
あの時とちっとも変わっていない愛しい彼女の姿が、そこにあって。
彼女の震える口唇があの時と同じように“れいちゃん”と紡ぐのを見て、歓喜に震えた。
しかし、その喜びも束の間で、彼女はポアロから飛び出して行った。
「あ、安室さん!どうしましょう...あの、さっきのお客さん、一万円札、おつり...」
よっぽど動揺しているのか、梓さんは一万円札を手にしたまま固まっていた。その様子を見て、いくらか冷静さを取り戻した。
「注文はハムサンドのセットでしたね?僕がお釣りを届けてきます」
レジから丁度お釣り分の金額を取り出して、
「安室さん、お願いします!」
梓さんの声と、チリンと鳴るベルの音を背に、俺は駆け出した。
体力のない彼女の事だ。あまり遠くへは行けない筈だ。
その震える口唇から聞きたい。
何故俺の元を去った...?
肯定でも、否定でも、全て受け入れよう。
だからどうか、
俺から逃げないで。
俺には、ずっと忘れられない人がいる。
生まれて初めて、心から愛した人だった。
降谷零という一人の男として、初めて恋をして...誰かを愛するということを知った。
でも、その人はある日突然別れを告げて、跡形もなく消えてしまった。
最後に会った時の、あの儚く切な気に涙を耐えた表情が、頭から離れない。
何が原因なのかわからなかった。俺が嫌いになったのか、他に好きな男ができたのか、
泣くばかりで、答えようとしない彼女に、それ以上何も聞くことができず...
そのまま駆け出す彼女を引き留める事もできず、ただ伸ばした手が虚しく空をつかむだけだった。
今ならば、調べようと思えば連絡先も、住んでる場所も、調べられる。方法はいくらでもあった。
でも、再び会ってどうする?また拒絶されるかもしれない。今更理由を聞いてどうするつもりだ?
頭の中で自問自答を繰り返すばかりで、何も進展しなかった。
だが、思わぬ所で転機が訪れた。
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休憩が終わり、梓さんにも休憩を促そうとその姿を探していたら、窓際の席のお客さんと談笑しているようで、楽しげな声が聞こえた。
時折梓さんから“安室”の名前が出ていたので自分が話題に上がってるのを知って、挨拶でもしようかと歩みを進めた。
その女性客がこちらに顔を向けた時、
手にしていたエプロンを取り落とした。
それほどの動揺で。
思わず、安室透の仮面が剥がれかけた。
一瞬...
時が、止まったのかと思った。
何年過ぎようとも、色褪せる事なく、更に鮮明になっていく彼女の記憶。
今、視界に入っているのは紛れもなく、本物の彼女で。記憶でも幻でもなく、本物の彼女で。
あの時とちっとも変わっていない愛しい彼女の姿が、そこにあって。
彼女の震える口唇があの時と同じように“れいちゃん”と紡ぐのを見て、歓喜に震えた。
しかし、その喜びも束の間で、彼女はポアロから飛び出して行った。
「あ、安室さん!どうしましょう...あの、さっきのお客さん、一万円札、おつり...」
よっぽど動揺しているのか、梓さんは一万円札を手にしたまま固まっていた。その様子を見て、いくらか冷静さを取り戻した。
「注文はハムサンドのセットでしたね?僕がお釣りを届けてきます」
レジから丁度お釣り分の金額を取り出して、
「安室さん、お願いします!」
梓さんの声と、チリンと鳴るベルの音を背に、俺は駆け出した。
体力のない彼女の事だ。あまり遠くへは行けない筈だ。
その震える口唇から聞きたい。
何故俺の元を去った...?
肯定でも、否定でも、全て受け入れよう。
だからどうか、
俺から逃げないで。
