甘い毒 [降谷零]
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カランコロン、と軽やかな音をたてて開く扉。
見渡すと、落ち着いた穏やかな空間が広がっていた。
「いらっしゃいませ!」
初めて入った喫茶店は当たりだった。
洒落たカフェとかよりも、この“喫茶店”って感じの居心地の良い雰囲気が素敵で。
窓際の席へと誘導してくれた店員さんも笑顔が可愛くて好印象だ。
「ご注文はお決まりですか?」
『ミルクティーと...あと、何か軽く食べたかったんですけど、迷っちゃって』
「それなら、ハムサンドがオススメですよ!軽く食べるにはちょうど良い量だと思いますよ?」
『じゃあ店員さんオススメのハムサンドで』
それに、ハムサンドも絶品だった。
店員さんがオススメするのもわかる。パンはふわふわだし、何か隠し味でも入ってるんだろうか?マヨネーズのソースが絶妙な味で美味しくって、あっという間に完食してしまった。
『とってもおいしかったです!今まで食べたハムサンドの中で一番好きな味でした』
「ふふ、そう言って頂けると、安室さんもきっと喜びます」
どうやらこのハムサンドは安室さん...っていう、スタッフが色々と研究して出来上がったものらしい。パン屋さんがその味の秘訣を知りたがるくらい...って、可愛い店員さん(梓さんっていう名前らしい)が力説してくれた。
「ハムサンドも勿論人気なんですけど、安室さんも人気なんですよ!この前も女子高生に“めっちゃイケメン!!”ってキャーキャー言われてて...」
『イケメン...良いですねぇ...うちの職場にはそんなイケメン全然いないんで、ちょっと羨ましいです』
「ふふふ、本人に言ってあげて下さい!...あ、噂をすれば...休憩から戻ってきたみたいてす」
私はその安室さんっていうイケメン店員も気にはなるけど、もっと梓さんと楽しく会話していたかったんだけどな。可愛いし。
なんて思いつつも梓さんの視線の先を辿る、と
『え、...?』
見覚えのある、男性の姿。
明るい髪色に、ブルーグレーの瞳、褐色の肌。
いや、そんな、まさか
他人の空似?
それにしては、あまりにも、似すぎてる。
もう二度と、会うことはないと、思っていた、相手に。
『れい、ちゃ...』
声に出した筈のその名前は、掠れて上手く言葉にならなかった。
