第一章 始まり
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しんみりとした音楽、沢山の花の香り
黒い縁に囲まれた中で微笑む父と母の写真
横には号泣する大事な妹
「おとうさぁん!おかぁさぁん!」
泣きすぎて引きつけを起こしかけてる妹を私は泣くな、なんて言えず、ただただ目の前の現実を現実と受け止められていなかった。
「なんで…お父さん、お母さん…」
私、これからどうしたらいいの
高校2年生の春。私の生活は一変する事になった。
空に上がる一筋の煙を見上げ、ひっく、ひっくと泣きじゃくる妹の頭を撫でる。
両親が亡くなったのは近所のスーパーに2人で買い物に行っている最中だった。久しぶりの休みだからご馳走作ろうかな!なんて張り切っていたお父さんにお母さんが「貴方だけじゃ要らないものも買いそうだわ」と付き添って出て行ったのを、私が少しでも引き止めておけば…もしくは私達も着いていくと少しでも時間を稼いでおけば…
「私が…代わりに買い物に行っておけば…!!」
思わずギリッと手を握りしめ、有りもしない「かもしれない」を考えては心臓がぎゅっと握りしめられたかのように痛む。
「ご自分を、責めないで下さい。…きっと御両親もそんな事は望んでいませんよ。」
思わずぱっと顔を上げる。
「だ、誰ですか…?」
そこには黒いスーツをピシッと着こなし、眉を下げて私達を見つめる男の人がいた。
「はじめまして。私、弁護士をしております、成瀬、と申します。」
どうぞ、と渡された名刺には成瀬領と弁護士さんの名前が書かれていた。
「貴女の御両親には色々とお世話になりまして…その時に、もしもの事があれば娘達を頼む、とも」
「…お父さん達が…?」
思わず手の中にある名刺をじっと見つめる。
「実は、御両親と初めて出会った時も今回と同じような事故が起きた時だったんですが…」
その事故の弁護として私が宛てがわれた際の目撃証言の方が貴女の御両親だったんです。
初めて聞く話に思わず「え…?」と声が出る。お父さんお母さん、そんな話したこと無かったのに…
「そんな事が…」
「知らないのも無理はありません。あの時はちょうど妹さんが産まれたばかりの頃でしたから。」
「そうだったんだ…」
そう言えば、何日かお父さんお母さんが忙しくなるから、とおばあちゃん家に泊まってた時があったな…そこから毎朝小学校に通ってたっけ…
「御両親は本当にとても良い方達で、自分たちだけでは不確かな事もその当時現場近くに住んでた人達に一軒一軒回って事故状況を調べて下さったんですよ。」
なんでそこまでするのか、赤の他人なのにって言われながらも、明確にするまで決して諦めなかったんです。
「僕もびっくりしました。…こんなに人の為に一生懸命になれる人が本当にいるんだと。」
ふわりと優しく笑う成瀬さんに、ポロッと涙がこぼれる。そうだ、私の両親は超がつくほどお人好しで、近所の人から子犬や子猫を貰いすぎて里親を探すのが大変だったり、よく分からない置物も「隣の丸岡さんが置くとこないって困っててさー、貰っちゃった!」なんて言いながら貰ってきちゃったり、そのせいで部屋が狭くなっても、子猫に噛まれまくっても、いつも笑顔で楽しく過ごしてた。…私達が悩んだり辛いことがあると凄く自分の事のように悩んだり怒ったりしてくれてた。…自慢の両親だったのに。
「…成瀬さん…わ、私の、両親は…っ超がつくほどお人好しでッ…どうしようもなくって…!
でもッ大好きだったんです…!!」
その瞬間ボロボロと涙が溢れ出す。
うわぁぁーー…ん
「おねぇちゃ…うわぁぁぁーーん!」
「…大丈夫。僕が守りますから。」
ボソッと呟き、私達をぎゅっと抱きしめてくれたその温かさを私はずっと忘れないだろう。
その後成瀬さんは宣言通り様々な法律上の手続き等を代わりにやってくれて、施設には絶対行きたくないと言う私達の気持ちを組み、親戚との繋がりも薄かった私達の為に成瀬さんが保護者として名乗り上げてくれた。
そのお陰で今まで通り実家で私と晴香の2人で暮らすことが出来ている。
そして月日は流れ、私が大学を卒業し妹が高校に入学した桜舞う季節
私は運命の出会いをした。