出逢いの息吹
Me
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そこからは、文字通りの地獄の日々だった。
今まで慕っていた子達からは尽く避けられ、居ないものとして扱われる。今までのあの関係は何だったのか、幻でも見ているような感覚に陥った。声をかけても、肩に触れても、彼女達には届かない。本当に透明人間にでもなったようだった。私の声をかき消すたび、一瞬苦しそうな表情を見せるのは、私の都合の良いフィルターをかけていたからかもしれない。
秋奈ちゃんはもともと他の子達みたいに私に甘えてくることもなく、割とあっさりした部分があったが、唯一昔から仲の良い冬音ちゃんには随分心を開いているのが見てとれた。
それでも、そこまで不仲というわけでもなかったし、私も心を開いてもらおうと色々と関わってきたつもりだった。…けれど、それは全てからまわりしていたのかもしれない。
あの日から、秋奈ちゃんは分かりやすく私に敵意を向け、暴言や時には手を出されたりもした。雑用や汚いことも私がするように命令し、少しでも抵抗の素振りを見せれば力でねじ伏せようとする。_____絵に描いたような「いじめ」だった。
冬音ちゃんとは、秋奈ちゃんよりかは仲良しのつもりでいた。本好きな冬音ちゃんにおすすめの本を教えたり、図書館で一緒に勉強したりしたこともあった。…けれど、それも完全なる私の勘違いだったのだ。冬音ちゃんも秋奈ちゃんの豹変から何かに目覚めたように、私へ悪意の塊をぶつけてきた。
秋奈ちゃんのように手を出したりすることは無かったが、突き刺すような鋭い眼光で睨みつけながらひどい言葉を向けられれば、私の心は呆気なく砕かれる。
おすすめした本も全てゴミ箱に捨てられており、思い出さえなかったことにされた。
私のきったつもりでいた新たな居場所でのスタートは、未だスタート直前で燻り続けていたのだ。
そんなことが続いて、もうすぐ3年目に入ろうとしている。
…正直、もう限界だった。この施設は他とは違い、卒業年齢が20歳と少し高めに設定されている。今年18歳の私は、少なくともあと2年ここにいることになる。
それはどうやっても苦しいことだった。
何度も逃げ出したくなった。どこか遠くへ行きたいと夜の空を見上げて幾度となく考えたが、そんな事したところで私に行く所なんてない。
天涯孤独の私に____もう帰るあてなどない私にはここしか居場所がないのだ。
____辛いよ、寂しいよ、私にも居場所がほしい。
温かくて、何でも無償に受け入れられる、「ただいま」と「おかえり」を言ってもらえるそんな場所を。
そんな心の奥底で苦しそうに叫んでいる私にも気づかないふりをし続けた。
本当は誰かに気づいてほしかった。…けど、頼れる姉も、友達も、…居場所も私にはもう残されていない。
____私はここで、ひたすら耐え続けていくしかないのだ。
いつか、もしかしたらみんなが私を受け入れてくれる___そんな日が来ることを夢見て。
そうして傷ついて立っていられなくなった時は、姉が残してくれた形見___「 」を象ったブローチを胸に抱き締め、私はひたすら自身の境遇に耐え忍ぶ日々を送ってきた。そして、これからもそんな日々を過ごすのだと、覚悟はしてきたつもりだった。
___そう。運命が変わる、あの日が来るまでは。