燈が灯った日
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あれから無事掃除用具を見つけ、簡単な清掃活動を行った後夕食をとった。
ちなみに学園長の申し出通りツナ缶をゲットしたグリムは、餓死寸前の子どもの如く一心に食らいついていた。
その姿さえ愛おしい。
我が子を愛でるような目で凝視していたところ、口元に食べかすを散らばらせたグリムから冷たい視線を浴びたのはなかなか良い思い出だ。
その後、お腹も満たされたことで一気に眠気が襲ってきたのであろう。彼は目を擦りながらよろよろとソファに向かって行ったかと思うと、今度は力が抜けたように倒れ込んでしまった。
それを見て、ヨレヨレのブランケットを優しく掛けてあげる監督生。
もう、親友超えて親子。
これこそ愛ですわ。
夜も大分更けた頃。
明日から始まる学園生活に備え、お互い休むことになった。
2人、長い廊下を並んで歩く。
「はぁー!なんか充実した一日やったな!」
「そ、そう。すごいね⋯僕はいっぱいいっぱいだったよ⋯」
「へっへっへ。ワイは何事も全力エンジョイ勢やからな」
「はは⋯」
顎に手を添えポーズを作ってみせると、彼は弱々しい笑顔で力なく笑う。
ここにきてどっと疲れが出たのだろうか、心做しか瞳の奥が揺れている気がした。
「⋯な!あれ見てみて!」
「え?」
そんな彼に対し、突飛もなく窓の先を指さしてみる。
監督生は一瞬驚いたように固まったが、やがてゆっくりとこちらへ近づいてきた。
がたついた窓の縁に手を置き、彼が外を覗き込む。
───そこには、こぼれ落ちそうなほど大粒の恒星が集まる、満天の星空が広がっていた。
雨上がりの空気を纏った星々は、息を呑むほど鮮明で。
隣で監督生が息を飲むのが分かる。
それは、一瞬にして人の心を奪ってしまうほど美しいものだった。
「うわぁ⋯!綺麗⋯」
「せやろ?どんな世界でも星空は変わらんのやな」
「うん⋯」
「だからさ、どこかで君の世界とも繋がってる。みんな、待っててくれてるよ」
「⋯⋯」
堪らず感嘆の声を漏らす監督生へ、語りかけるように呟く。
俯いた彼の手が僅かに震えているのは、見ないフリをして。
「大丈夫や」
「⋯⋯え?」
「何かあってもワイが守るから、安心してな!何せヒーローやから!」
「ひ、ヒーロー⋯」
「そうそう!ワイがついてる限り無敵や!何でも預けてくれてええで」
ヒーロー。
伏せていた顔を上げ、象るように言葉を反芻する監督生。
安っぽいワードの連続だが、敢えて明るい口調で続けた。
「うん。⋯⋯ありがとう、ゴンザレスくん」
「うっ⋯!その笑顔、100億点満点すぎる⋯」
「え?」
「そんな無防備に振りまいたらあかんで?変な虫が寄ってくるから!⋯いや待てよ?それを無言の圧で牽制するエーデュースとか萌えるな⋯」
「⋯え、えっと⋯?」
少し気力を取り戻したのであろう。
女神のような微笑みを浮かべる監督生に、心臓が一気に鷲掴みされる。
これは最早死者が出てもおかしくないレベル。いや、NRCの秩序が乱れる。
しかも当の本人は全く自覚がないので尚更たちが悪い。こちらの忠告にも困ったように首を傾げるだけだ。
でもそんな無自覚受けがどストライクなので、何の問題もない。心置き無く、周りから溺愛されてくれ。
てか、早くエーデュースと出会ってくれよ。生絡み見たいんやけど。
早く寝て明日に備えよ。
「ま!何がともあれこれからよろしく!ユウきゅん!」
「ゆ、ユウきゅん⋯!?」
「よっしゃ、明日から頑張ってこー!」
呼び慣れないあだ名に戸惑う監督生などお構いなしで、勢いよく彼の肩に手を回す。
機嫌よく鼻歌を鳴らせば、監督生も諦めたように小さく笑った。
そんな2人を見守るように、静かな月明かりが辺りを包み込んでいた。
