燈が灯った日
⬛︎
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うお。うおおお⋯
うおおおおおお!!?
辺りが静寂に包まれる中、自身の脳内だけは非常やかましく響いていた。
すげえ。なんかよく分からんけど一件落着ってやつでは!?
自分、やれば出来る子やん!!
自身の掌を見つめ、興奮と感動で震えているうちに、状況理解が追いつき出した周囲が途端に騒がしくなる。
「なんだ、今の?」
「てか、あの飛び出してったヤツ⋯誰だ?」
満場の視線が、刃のようにこちらへ突き刺さる。
しかし、会場のざわめきが頂点に達する前に場を切り裂くような声が響いた。
「──そこまでです」
学園長が一歩前へ出る。
その声には、有無を言わせぬ圧があった。
「入学式はこれにて終了です。
新入生及び在校生は各寮長の指示に従い、速やかに帰寮しなさい」
「うそだろ?」
「ちょ、こんな状態で⋯!?」
不満と混乱の声が上がる中、学園長は毅然とした姿勢を崩さなかった。
「──そちらの新入生」
その視線が、次はこちらを射抜く。
うわ、やっべ。
反射的にフードを深く被り直す。
さっきまで見えていた視線が、一斉に布の向こうへ隠れた。
「貴女はこちらへ」
有無を言わせぬ口調。
当然反論する余地はなく、珍妙なカニ歩きでこそこそと動き出した瞬間。
——視界の端に、監督生の姿が映った。
小さな体に、ぐったりとしたグリムを抱えている。不安そうに唇を噛み、周囲を見回すその横顔。自身の受けレーダーが瞬時に発動した。
え?可愛すぎん?天然記念物扱いやで。
てかグリムも気絶させちゃったし、一言でも──
下心丸出しで彼に近づこうとするも、今度は一斉に移動し始めた生徒達の波に巻き込まれる。
集団から弾き出された頃には監督生は見えなくなっており、諦めて渋々学園長室へと歩き出した。
「⋯」
その背後で、意味ありげに眉をひそめたリドルが僅かにこちらへ足を向けかけた──のだが。
「寮長達も以上です。帰寮後、速やかにオリエンテーションを」
学園長の一言で流れが強制的に断ち切られたことにより、彼がこちらと交わることはなかった。
リドルは踵を返して、戻っていく。
他の寮長たちもまた、それぞれ意味深な視線を残したまま去っていった。
──誰一人、何も言わない。
けれど、確かにその存在が深く刻み込まれていることは確かだった。
「てか、寮長達生で見ると圧倒的カリスマ感⋯圧倒的美⋯」
こちらとしては、そんなこともつゆ知らず。
呑気に推し達の姿を思い出して、だらしなく破顔を晒していた。
────
訪れた学園長室内は不気味なほど静寂に包まれており、先程までの喧騒が夢なのかと錯覚しそうになる。
部屋の中央。立派な革製の椅子に腰掛けた学園長は、こちらを一瞥するなり深いため息をこぼした。
「⋯全く。貴女は自分がどれほど危険な行動を取ったのか、理解していますか?」
「いや〜、でもみんな無事やったし、結果オーライってやつじゃないです?」
「それは“結果論”です」
曖昧な笑顔で笑って見せるも、間髪入れずに鋭い指摘が飛んでくる。
「今回はたまたま上手くいきました。しかし、少しでも判断が遅れていれば貴女自身が重傷を負っていた可能性もあった」
「まぁ、確かにそうかも?」
「どうも貴女は自分の身を顧みずに行動する癖があるようですね。今後は無謀かつ衝動的な行動は慎むように」
学園長の言葉自体は柔らかい。
だが、同時にその奥に滲む確かな圧。
「目立つ行動は避けるように、とも言いましたね。⋯何より。
──今ここで、貴女に死なれては困る」
一拍間を置いて紡がれた言葉は、心配とも、忠告とも、命令とも取れる声音だった。
「え!!ワイそんな簡単に死ぬつもりないんで!まだ推しの空気全然吸えてないし!」
そんな彼の意図を知ってか知らずか、はたまた気づかないフリを演じたのか。
変わらないトーンで、にっこりと笑って見せた。
学園長はそんな私を静かに見つめる。
仮面の裏が僅かに揺れたのに気づいたとして、それだけで彼の感情など読み取れるはずもなかった。
「⋯まぁ」
暫く沈黙が続いた後、やがて学園長は小さく咳払いをした。
「結果として、多くの生徒を救ったことは事実です。その点については⋯評価しましょう」
「ほらやっぱり!ワイのヒーロー人生幕開けや!」
「こら!すぐ調子に乗らない!⋯改めて言いますが、それはあくまで“結果”です。次も同じように動いて良い、という意味ではありません」
「はいはい、りょーかいっす!」
——どう見ても、分かっていない。
またもや調子に乗り出したこちらを咎めようとするも、時すでに遅し。
それに気づいた学園長は、額に手を当てるしかなかった。
「⋯本当に、この者で良かったのでしょうか」
彼女と出会った数刻の間に幾度となく感じた本音。
堪らず彼の口から漏れた呟きは、濁った空気に紛れて消えていった。
うおおおおおお!!?
辺りが静寂に包まれる中、自身の脳内だけは非常やかましく響いていた。
すげえ。なんかよく分からんけど一件落着ってやつでは!?
自分、やれば出来る子やん!!
自身の掌を見つめ、興奮と感動で震えているうちに、状況理解が追いつき出した周囲が途端に騒がしくなる。
「なんだ、今の?」
「てか、あの飛び出してったヤツ⋯誰だ?」
満場の視線が、刃のようにこちらへ突き刺さる。
しかし、会場のざわめきが頂点に達する前に場を切り裂くような声が響いた。
「──そこまでです」
学園長が一歩前へ出る。
その声には、有無を言わせぬ圧があった。
「入学式はこれにて終了です。
新入生及び在校生は各寮長の指示に従い、速やかに帰寮しなさい」
「うそだろ?」
「ちょ、こんな状態で⋯!?」
不満と混乱の声が上がる中、学園長は毅然とした姿勢を崩さなかった。
「──そちらの新入生」
その視線が、次はこちらを射抜く。
うわ、やっべ。
反射的にフードを深く被り直す。
さっきまで見えていた視線が、一斉に布の向こうへ隠れた。
「貴女はこちらへ」
有無を言わせぬ口調。
当然反論する余地はなく、珍妙なカニ歩きでこそこそと動き出した瞬間。
——視界の端に、監督生の姿が映った。
小さな体に、ぐったりとしたグリムを抱えている。不安そうに唇を噛み、周囲を見回すその横顔。自身の受けレーダーが瞬時に発動した。
え?可愛すぎん?天然記念物扱いやで。
てかグリムも気絶させちゃったし、一言でも──
下心丸出しで彼に近づこうとするも、今度は一斉に移動し始めた生徒達の波に巻き込まれる。
集団から弾き出された頃には監督生は見えなくなっており、諦めて渋々学園長室へと歩き出した。
「⋯」
その背後で、意味ありげに眉をひそめたリドルが僅かにこちらへ足を向けかけた──のだが。
「寮長達も以上です。帰寮後、速やかにオリエンテーションを」
学園長の一言で流れが強制的に断ち切られたことにより、彼がこちらと交わることはなかった。
リドルは踵を返して、戻っていく。
他の寮長たちもまた、それぞれ意味深な視線を残したまま去っていった。
──誰一人、何も言わない。
けれど、確かにその存在が深く刻み込まれていることは確かだった。
「てか、寮長達生で見ると圧倒的カリスマ感⋯圧倒的美⋯」
こちらとしては、そんなこともつゆ知らず。
呑気に推し達の姿を思い出して、だらしなく破顔を晒していた。
────
訪れた学園長室内は不気味なほど静寂に包まれており、先程までの喧騒が夢なのかと錯覚しそうになる。
部屋の中央。立派な革製の椅子に腰掛けた学園長は、こちらを一瞥するなり深いため息をこぼした。
「⋯全く。貴女は自分がどれほど危険な行動を取ったのか、理解していますか?」
「いや〜、でもみんな無事やったし、結果オーライってやつじゃないです?」
「それは“結果論”です」
曖昧な笑顔で笑って見せるも、間髪入れずに鋭い指摘が飛んでくる。
「今回はたまたま上手くいきました。しかし、少しでも判断が遅れていれば貴女自身が重傷を負っていた可能性もあった」
「まぁ、確かにそうかも?」
「どうも貴女は自分の身を顧みずに行動する癖があるようですね。今後は無謀かつ衝動的な行動は慎むように」
学園長の言葉自体は柔らかい。
だが、同時にその奥に滲む確かな圧。
「目立つ行動は避けるように、とも言いましたね。⋯何より。
──今ここで、貴女に死なれては困る」
一拍間を置いて紡がれた言葉は、心配とも、忠告とも、命令とも取れる声音だった。
「え!!ワイそんな簡単に死ぬつもりないんで!まだ推しの空気全然吸えてないし!」
そんな彼の意図を知ってか知らずか、はたまた気づかないフリを演じたのか。
変わらないトーンで、にっこりと笑って見せた。
学園長はそんな私を静かに見つめる。
仮面の裏が僅かに揺れたのに気づいたとして、それだけで彼の感情など読み取れるはずもなかった。
「⋯まぁ」
暫く沈黙が続いた後、やがて学園長は小さく咳払いをした。
「結果として、多くの生徒を救ったことは事実です。その点については⋯評価しましょう」
「ほらやっぱり!ワイのヒーロー人生幕開けや!」
「こら!すぐ調子に乗らない!⋯改めて言いますが、それはあくまで“結果”です。次も同じように動いて良い、という意味ではありません」
「はいはい、りょーかいっす!」
——どう見ても、分かっていない。
またもや調子に乗り出したこちらを咎めようとするも、時すでに遅し。
それに気づいた学園長は、額に手を当てるしかなかった。
「⋯本当に、この者で良かったのでしょうか」
彼女と出会った数刻の間に幾度となく感じた本音。
堪らず彼の口から漏れた呟きは、濁った空気に紛れて消えていった。
