五月雨、恋催い
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
食後のテーブルには、空になったお皿と、かすかに残るスープの香り。
久しぶりに腕によりをかけて作った料理は、想像していた以上に美味しかった。
豪炎寺くんは一足先に食事を平らげてしまった。
私もそれに続くように食べ終えて食器を片付け始める。
台所に立って食器を洗おうとしたら、すぐ後ろから豪炎寺くんの手が伸びてきて、動きを止められた。
「いいです、俺がやります。今日は作ってもらったんで」
「え、でも…」
「お客さんは座っててください」
それ、私が言ったやつ…
無防備なところにカウンターをくらってしまって、呆然とする。
そんな私を見て彼は面白そうにふっと笑った。
彼の口調からは、私が何を言っても譲る気はなさそうで、ここは潔く引くことにした。
けれど、なんだか少し気になってしまい、そのまま後ろの壁に寄りかかって彼の背中を見ていた。
彼は、器用に、手際よく食器を片付けていく。
ふと頬に触れた自分の髪はもうすっかり乾いていて、こんなにも時間が経っていたなんて、まるで嘘みたいだった。
片方が作って、もう片方が片付けて。
そんな風に役割を分担するのって、まるで長く一緒に暮らしている恋人同士みたいで。
そうやって勝手に妄想して、勝手に意識してしまう。
けれど、手の届く距離にいる彼はやけに現実味があった。
「この感じ、なんだか久しぶり」
気づけばシンクの中は空っぽになっていて、タオルで濡れた手を拭きながら豪炎寺くんはこちらを見やる。
「……彼氏さんは?」
彼氏さんは…こういうことしてくれないのか、という問いかな。
彼はそう口走ったのを少し後悔したようで、眉を寄せている。
悪気は無いみたい。
でも芋づる式に嫌な記憶が引きづり出されていく。
「…あの人ねえ…いつも外食とか、コンビニでばっか買ってきちゃって…全然一緒に食べてくれないの」
全部言ってしまってから、ハッとする。
色々なことを思い出した拍子に声に口走ってた。
待って待って、目の前にいるのは私より年下の男の子。
歳上らしくいなきゃ、って思っていたけれど既に後の祭り、吐いた唾は飲めない。
家に上がらせてもらってるこの状況で今更もう失うプライドなんてないのに…
キュッと口を結んで早くこの瞬間が終わればいいのに、なんて願っていると豪炎寺くんが私の手をとって急に距離を縮めてくる。
「俺は…すげえ美味いって思ったし、毎日でも食べれます」
声は変わらず落ち着いているのに、彼も耳の先が少しだけ赤くなっているのを私は見逃さなかった。
「え…っ?」
息を呑む音が、自分でもはっきり聞こえた。
至近距離にある彼の顔。
どこまでも真っ直ぐなまなざしに、 心臓がばくんと大きく跳ねる。
豪炎寺くんは、私の手をとったまま、視線を逸らさない。
「そんな、毎日なんて」
お世辞はよして…って、苦笑まじりに返そうとしたけれど、うまく声にならなかった。
だって、彼の目が真剣すぎて、どこにも逃げ場がなかったから。
「…じゃあ」
ゆっくりと顔を上げて、戸惑いながらも口を開く。
「毎日、作ってあげようか?」
自分でも、信じられないことを言ったと思う。
でも、それは確かに私の本音だった。
豪炎寺くんは酷く驚いていて、そのまま目を見開いて固まってしまっていた。
もしかして慰めるために言っただけで、本当にお世辞だったのかも…!?
「い、嫌なら…ごめ……」
「そんなの」
彼は一度だけ息を飲んで、私の目をそらさずに言葉を継いだ。
「俺、本気にしますよ」
言葉が出ない。
冗談で笑い飛ばすこともできなくて、ただ黙って彼を見つめ返す。
ほんの少しの間、 部屋の空気が静まり返っていた。
「あ、あ、ち、近い……」
ようやく出たのはそんな言葉。
豪炎寺くんは私の手を握りっぱなしだったことに気づいて離れていく。
なんだかそれが少しだけ寂しい…
「…ねえ、今度は何が食べたい?」
「なんでも。 姫野さんが作ったものなら」
照れ隠しで、何か言わなきゃって思ったから急に的はずれな問いかけをしてしまったのに、彼が即答するから「ふふっ」と笑ってしまった。
その声に豪炎寺くんもつられて笑ってさっきまでの緊張がすっと溶けていく。
「約束ね」
久しぶりに腕によりをかけて作った料理は、想像していた以上に美味しかった。
豪炎寺くんは一足先に食事を平らげてしまった。
私もそれに続くように食べ終えて食器を片付け始める。
台所に立って食器を洗おうとしたら、すぐ後ろから豪炎寺くんの手が伸びてきて、動きを止められた。
「いいです、俺がやります。今日は作ってもらったんで」
「え、でも…」
「お客さんは座っててください」
それ、私が言ったやつ…
無防備なところにカウンターをくらってしまって、呆然とする。
そんな私を見て彼は面白そうにふっと笑った。
彼の口調からは、私が何を言っても譲る気はなさそうで、ここは潔く引くことにした。
けれど、なんだか少し気になってしまい、そのまま後ろの壁に寄りかかって彼の背中を見ていた。
彼は、器用に、手際よく食器を片付けていく。
ふと頬に触れた自分の髪はもうすっかり乾いていて、こんなにも時間が経っていたなんて、まるで嘘みたいだった。
片方が作って、もう片方が片付けて。
そんな風に役割を分担するのって、まるで長く一緒に暮らしている恋人同士みたいで。
そうやって勝手に妄想して、勝手に意識してしまう。
けれど、手の届く距離にいる彼はやけに現実味があった。
「この感じ、なんだか久しぶり」
気づけばシンクの中は空っぽになっていて、タオルで濡れた手を拭きながら豪炎寺くんはこちらを見やる。
「……彼氏さんは?」
彼氏さんは…こういうことしてくれないのか、という問いかな。
彼はそう口走ったのを少し後悔したようで、眉を寄せている。
悪気は無いみたい。
でも芋づる式に嫌な記憶が引きづり出されていく。
「…あの人ねえ…いつも外食とか、コンビニでばっか買ってきちゃって…全然一緒に食べてくれないの」
全部言ってしまってから、ハッとする。
色々なことを思い出した拍子に声に口走ってた。
待って待って、目の前にいるのは私より年下の男の子。
歳上らしくいなきゃ、って思っていたけれど既に後の祭り、吐いた唾は飲めない。
家に上がらせてもらってるこの状況で今更もう失うプライドなんてないのに…
キュッと口を結んで早くこの瞬間が終わればいいのに、なんて願っていると豪炎寺くんが私の手をとって急に距離を縮めてくる。
「俺は…すげえ美味いって思ったし、毎日でも食べれます」
声は変わらず落ち着いているのに、彼も耳の先が少しだけ赤くなっているのを私は見逃さなかった。
「え…っ?」
息を呑む音が、自分でもはっきり聞こえた。
至近距離にある彼の顔。
どこまでも真っ直ぐなまなざしに、 心臓がばくんと大きく跳ねる。
豪炎寺くんは、私の手をとったまま、視線を逸らさない。
「そんな、毎日なんて」
お世辞はよして…って、苦笑まじりに返そうとしたけれど、うまく声にならなかった。
だって、彼の目が真剣すぎて、どこにも逃げ場がなかったから。
「…じゃあ」
ゆっくりと顔を上げて、戸惑いながらも口を開く。
「毎日、作ってあげようか?」
自分でも、信じられないことを言ったと思う。
でも、それは確かに私の本音だった。
豪炎寺くんは酷く驚いていて、そのまま目を見開いて固まってしまっていた。
もしかして慰めるために言っただけで、本当にお世辞だったのかも…!?
「い、嫌なら…ごめ……」
「そんなの」
彼は一度だけ息を飲んで、私の目をそらさずに言葉を継いだ。
「俺、本気にしますよ」
言葉が出ない。
冗談で笑い飛ばすこともできなくて、ただ黙って彼を見つめ返す。
ほんの少しの間、 部屋の空気が静まり返っていた。
「あ、あ、ち、近い……」
ようやく出たのはそんな言葉。
豪炎寺くんは私の手を握りっぱなしだったことに気づいて離れていく。
なんだかそれが少しだけ寂しい…
「…ねえ、今度は何が食べたい?」
「なんでも。 姫野さんが作ったものなら」
照れ隠しで、何か言わなきゃって思ったから急に的はずれな問いかけをしてしまったのに、彼が即答するから「ふふっ」と笑ってしまった。
その声に豪炎寺くんもつられて笑ってさっきまでの緊張がすっと溶けていく。
「約束ね」
6/6ページ