五月雨、恋催い
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シャワーを終えて、貸してもらった服を着て脱衣所を出る。
サイズはピッタリだったからすごく助かったけれど、私より遥かに歳下の子と同じ身長か…と考えるとちょっと複雑だった。
リビングに戻ると、豪炎寺くんがソファに座ってテレビを一心に見つめていた。
スポーツ番組だったけど、彼は何か考え事をしていて集中して見ていないようだった。
近づいていくと、途中で私の気配に気づいたのか視線をこちらに変える。
「ほんと、助かっちゃった。服まで借りて、お風呂まで」
髪の水気をタオルで拭いながら、私もソファの端に座ってお礼を言った。
「いえ…困った時はお互いさまですから」
豪炎寺くんは低い声で言って、何かを取りにキッチンへ向かう。
部屋の中はあたたかくて、柔らかい間接照明の光が外から少し聞こえる雨音とよく似合っていた。
「ココアとかいります?インスタントだけど」
「うん、嬉しい、温かいの」
彼は何も言わず粉をお湯でとかして、ココアの入ったカップを私に手渡した。
湯気の向こうにいる彼の顔は、どこか伏し目がちで、何かを考えているようだった。
「鍵…どうしてなくなったんですか」
「あー……」
…やっぱり、聞くよね。
私の指先が、コップの縁をなぞる。
一度深く息を吸ってから口を開いた。
「ちょっと、彼氏と喧嘩しちゃって。鍵持って行っちゃったみたい」
言葉にした途端、やっと心が現実に追いついた。
今日だけじゃない。彼となんて、ずっと前からうまくいってなかった。
「え」
バッと豪炎寺くんが私を見る。
まじまじと見てくるので、私の顔が変なのかなってちょっと心配になる。
「彼氏、いるんですか」
「え、え、うん…」
マグの縁に口をつけたまま、私はそっと豪炎寺くんの方へ体を向ける。
彼は私と目が合うと、視線をそらすようにしながら、ちょっとだけ顔を顰めた。
「そういう人がいて、男の部屋に入るのって大丈夫なんですか?」
彼に悪気がないことは、わかってる。
でも、確信をついて聞かれてしまうとうまく答えられる気がしない。
「…えっと、前から、あんまりうまくいってないの」
「……」
「彼、浮気っぽくて、今回もその話で喧嘩しちゃって」
私が悪い訳じゃないのに、なんだか後ろめたい。
それでも口をつぐめなかったのは、きっと、誰かにわかってほしかったからだと思う。
「ちゃんと怒れないし、ちゃんと別れられなくてずるずるしてるうちに、こんなんなっちゃって。…バカみたいだね、ほんと」
思い出したくもない光景が、頭の中を巡る。
彼が他の子と連絡してるのを見たときの失意も。
言い訳にされた言葉も。
「お前だって悪いとこあるじゃん」って、壁に押し付けられたあの瞬間も。
なのに、離れられない自分の弱さだけが、ずっと心の中に居座っていた。
「バカ、じゃないですよ」
横から落ちてきたその声に、私は目を見開いた。
そんな私とは対照的に、豪炎寺くんはまっすぐこっちを見ていた。
同情するでもなく、慰めるでもなく、ただ静かに、私という存在を受け止めようとしてくれていた。
「豪炎寺くんは優しいね」
「…そうですか」
うふふ、と笑う私を豪炎寺くんは不思議そうに見ていた。
沈黙を埋めるためにココアを一口、含んで飲み込む。
濃厚な甘さが口いっぱいに広がって、思わず頬が緩む。
豪炎寺くんが飲んでいるカップには黒い液体。
多分、コーヒーかな?
というか、彼は私に彼氏がいることを心配していたけど…
「ねえ、豪炎寺くんは彼女いないの?」
私にも聞いてきたんだから、こっちだって聞いてもいいよね、って。
特に深い意味はなかった…なんて、言い訳。
最初からちょっと気になってた。
「…いませんよ」
まあ、良く考えれば、私を家にあげてる時点で答えは明確だった。
彼女がいるのに他の子にうつつを抜かすような性格では無さそうだもの。
「なんか、優しいし、落ち着いてるし、女の子の方から言い寄られそうなのに」
「別に、そういうの求めてないだけです。今は」
「ふーん…?」
今はってなんだろう?
含みを持って言うからなんだか気になってしまう。
聞き返そうか迷っていたら、豪炎寺くんが立ち上がってコーヒーの入ったカップを洗い場に置く。
そのままシャワーでも浴びに行くのかな?と思っていたらまたこちらへ戻ってくる。
「…今日、泊まっていいですよ」
豪炎寺くんが、ぽつりと言った。
「え」
「というか泊まらないでこれからどうするんですか」
たしかに…
図星だから何も言えずに目を泳がせた。
鍵屋さんはこの時間閉まってるし、ベッドタウンのこの辺にホテルはない。
私は、そっと頷いた。
「…じゃあ、少しだけ。おじゃましようかな」
私の顔色を伺っているようだった彼の表情がふっと緩んだ。
明日は土曜日で、仕事がないしこれからの事は明日考えよう。
今はこうやって雨風凌げることを幸福に思わなきゃ。
ふと時計を見て、昼から何も食べていないことに気づく。
この時間だし、コンビニでも行ってご飯揃えようかな…?
「ねーえ、私、お腹すいちゃった。豪炎寺くんご飯食べた?」
「まだです」
スポーツやってると体に気を使ってるからコンビニのご飯なんて食べないのかな…
それなら誘って一緒に行くと良くないかもしれない。
「いつも何食べてるの?忙しそうだけどちゃんと食べてる?」
少し冗談っぽく言ったつもりだったけど、彼は言葉を詰まらせて肯定しなかった。
「まあ…外で済ませることが多いですね。それか、惣菜とか、カップ麺の日もあるし」
「ええ!?!?それはちょっと不健康じゃない!?!?」
思わず声が大きくなる。
身を乗り出して距離を詰めると、彼は少しだけ顔を赤くして肩をすくめた。
「時間ないんで、適当にっていうか…」
私と目を合わせないように顔を背けてそう言った。
その様子にうーん、と少し考える。
「じゃあ私が作ってあげる!」
豪炎寺くんの目が、ゆっくりと見開かれる。
「今日助けてくれたお返し」
にこっと笑って言うと、完全に言葉を失っていた。
そのまま私を見つめているからお節介だったかな?って心配したけど…
「いいんですか…?」
その返答に嫌がってはいないことがわかって少しほっとする。
「うんうんっ、まかせて!冷蔵庫の中、ちょっと見て もいい?」
「…どうぞ。あんまり入ってないですけど」
そう言われてキッチンへ向かい、冷蔵庫の扉を開けた瞬間、私は思わず笑ってしまった。
「あはは、たしかにこれはお惣菜生活の冷蔵庫って感じだ」
「すみませんね…」
離れてても私の声が聞こえたのか、怒っては無いけどちょっとすねた感じの返答が返ってくる。
「でも、ここは私の腕の見せどころだねぇ」
お肉はご飯と一緒に焼いて、野菜は蒸して温野菜。
他の材料でスープも作れるし…うん、完璧!
袖を少しまくって、手早く食材を取り出す。
食べてくれる人がいるってなると、ちょっと気合が入る。
うちの彼氏はいつも帰ってくるのが遅くて一緒にご飯食べることなんて無かったから…
野菜の皮を包丁で向いていると、豪炎寺くんがテレビを消してこちらに来る。
「…何か手伝いましょうか?」
「ううん、大丈夫。せっかくなら、味見してほしいしお客さんは座ってて!」
「俺の家なんですけど」
「うふふっ、そうだった」
笑いながら、私はフライパンにお肉を入れて火をつける。
ジュワッと油の音が立って、野菜を混ぜるタイミングを見計らう。
左ヒーターでは、乱切りにしたじゃがいもとにんじんに軽く塩を振って蒸している。
「手際、いいですね」
「そりゃあね。こう見えて栄養士の資格持ってますから」
そういえば実家にいた頃から誰かのためにご飯作るのが好きだった。
就職して一人暮らししてから忙しくもあったし、そんなこと忘れかけていた。
「…ヘえ」
豪炎寺くんはそれ以上なにも言わなかったけど、手元が気になるみたいでじっくり眺めてくる。
包丁を持つ私の指先や、動く手の角度、そんな細かいところまで…
「もう、豪炎寺くん…そんなに見られてると恥ずかしい」
「あ…すみません」
その声は、思っていたよりも素直で、思わず笑ってしまいそうになる。
「ふふ、別に怒ってないってば。ただ、あんまり真剣に見られると、変に力入っちゃうんだもん」
そう言いながらもう一度包丁を握ると、彼はそこから離れてソファで携帯を触り始めた。
あ!そういえば!とフライパンを確認して焦げてないことに胸を撫で下ろした。
頭にあるレシピを手繰り寄せながら思い出していく。
やがて料理が完成してテーブルに料理を並べる。
「できた!食べてみて」
料理を見た豪炎寺くんが「うわ」と声を上げる。
私が作ったのはオムライス。でも普通のやつじゃない。
ケチャップライスでくまさんを形作って、卵をその上に乗せて、お布団で寝ているように見えるオムライス。
「こんなの、食べていいんですか」
可愛すぎるから引かれちゃうかなって思ったけれど彼の表情を見る限りそうではないらしい。
携帯で写真まで撮っちゃってて少し恥ずかしくなってしまう。
「たべてたべて、感想聞かせて」
「……いただきます」
そう言って、彼がスプーンを手に取ってクマの下の方から食べていく。
…あれ。何も話さない。
もしかして、久しぶりに作ったしあんまり美味しくなかった…?
緊張して豪炎寺くんをじーっと見てると、それに気づいて彼はフッと笑った。
「…うまいです」
その言葉に嬉しくなってわぁ!と声を上げる。
「良かった、嬉しい…!」
安心して私も自分の分の食事に手をつけた。
こんな楽しい夜はいつぶりかな?
食べる手を止めない彼を眺めながら、この瞬間を味わった。
サイズはピッタリだったからすごく助かったけれど、私より遥かに歳下の子と同じ身長か…と考えるとちょっと複雑だった。
リビングに戻ると、豪炎寺くんがソファに座ってテレビを一心に見つめていた。
スポーツ番組だったけど、彼は何か考え事をしていて集中して見ていないようだった。
近づいていくと、途中で私の気配に気づいたのか視線をこちらに変える。
「ほんと、助かっちゃった。服まで借りて、お風呂まで」
髪の水気をタオルで拭いながら、私もソファの端に座ってお礼を言った。
「いえ…困った時はお互いさまですから」
豪炎寺くんは低い声で言って、何かを取りにキッチンへ向かう。
部屋の中はあたたかくて、柔らかい間接照明の光が外から少し聞こえる雨音とよく似合っていた。
「ココアとかいります?インスタントだけど」
「うん、嬉しい、温かいの」
彼は何も言わず粉をお湯でとかして、ココアの入ったカップを私に手渡した。
湯気の向こうにいる彼の顔は、どこか伏し目がちで、何かを考えているようだった。
「鍵…どうしてなくなったんですか」
「あー……」
…やっぱり、聞くよね。
私の指先が、コップの縁をなぞる。
一度深く息を吸ってから口を開いた。
「ちょっと、彼氏と喧嘩しちゃって。鍵持って行っちゃったみたい」
言葉にした途端、やっと心が現実に追いついた。
今日だけじゃない。彼となんて、ずっと前からうまくいってなかった。
「え」
バッと豪炎寺くんが私を見る。
まじまじと見てくるので、私の顔が変なのかなってちょっと心配になる。
「彼氏、いるんですか」
「え、え、うん…」
マグの縁に口をつけたまま、私はそっと豪炎寺くんの方へ体を向ける。
彼は私と目が合うと、視線をそらすようにしながら、ちょっとだけ顔を顰めた。
「そういう人がいて、男の部屋に入るのって大丈夫なんですか?」
彼に悪気がないことは、わかってる。
でも、確信をついて聞かれてしまうとうまく答えられる気がしない。
「…えっと、前から、あんまりうまくいってないの」
「……」
「彼、浮気っぽくて、今回もその話で喧嘩しちゃって」
私が悪い訳じゃないのに、なんだか後ろめたい。
それでも口をつぐめなかったのは、きっと、誰かにわかってほしかったからだと思う。
「ちゃんと怒れないし、ちゃんと別れられなくてずるずるしてるうちに、こんなんなっちゃって。…バカみたいだね、ほんと」
思い出したくもない光景が、頭の中を巡る。
彼が他の子と連絡してるのを見たときの失意も。
言い訳にされた言葉も。
「お前だって悪いとこあるじゃん」って、壁に押し付けられたあの瞬間も。
なのに、離れられない自分の弱さだけが、ずっと心の中に居座っていた。
「バカ、じゃないですよ」
横から落ちてきたその声に、私は目を見開いた。
そんな私とは対照的に、豪炎寺くんはまっすぐこっちを見ていた。
同情するでもなく、慰めるでもなく、ただ静かに、私という存在を受け止めようとしてくれていた。
「豪炎寺くんは優しいね」
「…そうですか」
うふふ、と笑う私を豪炎寺くんは不思議そうに見ていた。
沈黙を埋めるためにココアを一口、含んで飲み込む。
濃厚な甘さが口いっぱいに広がって、思わず頬が緩む。
豪炎寺くんが飲んでいるカップには黒い液体。
多分、コーヒーかな?
というか、彼は私に彼氏がいることを心配していたけど…
「ねえ、豪炎寺くんは彼女いないの?」
私にも聞いてきたんだから、こっちだって聞いてもいいよね、って。
特に深い意味はなかった…なんて、言い訳。
最初からちょっと気になってた。
「…いませんよ」
まあ、良く考えれば、私を家にあげてる時点で答えは明確だった。
彼女がいるのに他の子にうつつを抜かすような性格では無さそうだもの。
「なんか、優しいし、落ち着いてるし、女の子の方から言い寄られそうなのに」
「別に、そういうの求めてないだけです。今は」
「ふーん…?」
今はってなんだろう?
含みを持って言うからなんだか気になってしまう。
聞き返そうか迷っていたら、豪炎寺くんが立ち上がってコーヒーの入ったカップを洗い場に置く。
そのままシャワーでも浴びに行くのかな?と思っていたらまたこちらへ戻ってくる。
「…今日、泊まっていいですよ」
豪炎寺くんが、ぽつりと言った。
「え」
「というか泊まらないでこれからどうするんですか」
たしかに…
図星だから何も言えずに目を泳がせた。
鍵屋さんはこの時間閉まってるし、ベッドタウンのこの辺にホテルはない。
私は、そっと頷いた。
「…じゃあ、少しだけ。おじゃましようかな」
私の顔色を伺っているようだった彼の表情がふっと緩んだ。
明日は土曜日で、仕事がないしこれからの事は明日考えよう。
今はこうやって雨風凌げることを幸福に思わなきゃ。
ふと時計を見て、昼から何も食べていないことに気づく。
この時間だし、コンビニでも行ってご飯揃えようかな…?
「ねーえ、私、お腹すいちゃった。豪炎寺くんご飯食べた?」
「まだです」
スポーツやってると体に気を使ってるからコンビニのご飯なんて食べないのかな…
それなら誘って一緒に行くと良くないかもしれない。
「いつも何食べてるの?忙しそうだけどちゃんと食べてる?」
少し冗談っぽく言ったつもりだったけど、彼は言葉を詰まらせて肯定しなかった。
「まあ…外で済ませることが多いですね。それか、惣菜とか、カップ麺の日もあるし」
「ええ!?!?それはちょっと不健康じゃない!?!?」
思わず声が大きくなる。
身を乗り出して距離を詰めると、彼は少しだけ顔を赤くして肩をすくめた。
「時間ないんで、適当にっていうか…」
私と目を合わせないように顔を背けてそう言った。
その様子にうーん、と少し考える。
「じゃあ私が作ってあげる!」
豪炎寺くんの目が、ゆっくりと見開かれる。
「今日助けてくれたお返し」
にこっと笑って言うと、完全に言葉を失っていた。
そのまま私を見つめているからお節介だったかな?って心配したけど…
「いいんですか…?」
その返答に嫌がってはいないことがわかって少しほっとする。
「うんうんっ、まかせて!冷蔵庫の中、ちょっと見て もいい?」
「…どうぞ。あんまり入ってないですけど」
そう言われてキッチンへ向かい、冷蔵庫の扉を開けた瞬間、私は思わず笑ってしまった。
「あはは、たしかにこれはお惣菜生活の冷蔵庫って感じだ」
「すみませんね…」
離れてても私の声が聞こえたのか、怒っては無いけどちょっとすねた感じの返答が返ってくる。
「でも、ここは私の腕の見せどころだねぇ」
お肉はご飯と一緒に焼いて、野菜は蒸して温野菜。
他の材料でスープも作れるし…うん、完璧!
袖を少しまくって、手早く食材を取り出す。
食べてくれる人がいるってなると、ちょっと気合が入る。
うちの彼氏はいつも帰ってくるのが遅くて一緒にご飯食べることなんて無かったから…
野菜の皮を包丁で向いていると、豪炎寺くんがテレビを消してこちらに来る。
「…何か手伝いましょうか?」
「ううん、大丈夫。せっかくなら、味見してほしいしお客さんは座ってて!」
「俺の家なんですけど」
「うふふっ、そうだった」
笑いながら、私はフライパンにお肉を入れて火をつける。
ジュワッと油の音が立って、野菜を混ぜるタイミングを見計らう。
左ヒーターでは、乱切りにしたじゃがいもとにんじんに軽く塩を振って蒸している。
「手際、いいですね」
「そりゃあね。こう見えて栄養士の資格持ってますから」
そういえば実家にいた頃から誰かのためにご飯作るのが好きだった。
就職して一人暮らししてから忙しくもあったし、そんなこと忘れかけていた。
「…ヘえ」
豪炎寺くんはそれ以上なにも言わなかったけど、手元が気になるみたいでじっくり眺めてくる。
包丁を持つ私の指先や、動く手の角度、そんな細かいところまで…
「もう、豪炎寺くん…そんなに見られてると恥ずかしい」
「あ…すみません」
その声は、思っていたよりも素直で、思わず笑ってしまいそうになる。
「ふふ、別に怒ってないってば。ただ、あんまり真剣に見られると、変に力入っちゃうんだもん」
そう言いながらもう一度包丁を握ると、彼はそこから離れてソファで携帯を触り始めた。
あ!そういえば!とフライパンを確認して焦げてないことに胸を撫で下ろした。
頭にあるレシピを手繰り寄せながら思い出していく。
やがて料理が完成してテーブルに料理を並べる。
「できた!食べてみて」
料理を見た豪炎寺くんが「うわ」と声を上げる。
私が作ったのはオムライス。でも普通のやつじゃない。
ケチャップライスでくまさんを形作って、卵をその上に乗せて、お布団で寝ているように見えるオムライス。
「こんなの、食べていいんですか」
可愛すぎるから引かれちゃうかなって思ったけれど彼の表情を見る限りそうではないらしい。
携帯で写真まで撮っちゃってて少し恥ずかしくなってしまう。
「たべてたべて、感想聞かせて」
「……いただきます」
そう言って、彼がスプーンを手に取ってクマの下の方から食べていく。
…あれ。何も話さない。
もしかして、久しぶりに作ったしあんまり美味しくなかった…?
緊張して豪炎寺くんをじーっと見てると、それに気づいて彼はフッと笑った。
「…うまいです」
その言葉に嬉しくなってわぁ!と声を上げる。
「良かった、嬉しい…!」
安心して私も自分の分の食事に手をつけた。
こんな楽しい夜はいつぶりかな?
食べる手を止めない彼を眺めながら、この瞬間を味わった。