壊してくれるなら、優しくして
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
晴れた日曜の朝。いつもより早く目が覚めたから、誰もいない静かな邸宅の中を歩いていた。
微かな音すら吸い込む、磨かれた大理石の床。
大きい窓から差し込む陽射しは、妙に白くて冷たかった。
使用人もまだ出てきてない、まるで時間が止まったかのように感じられるその廊下を抜ける。
私が足を向けたのは、屋敷の中央にあるグランドホールだった。
そこには一台のスタインウェイ。
うるみの帯びた艶をまとった黒のグランドピアノが朝日を静かに受けていた。
ただ見に来ただけ…のはずだった。
吸い込まれるような黒に魅了される。
「少しくらい…」
誰に許しを乞うでもなく、そっとピアノの前に座る。
白いワンピースの裾を整え、指先をたてて鍵盤に乗せる。
手癖で弾き始めたのはショパンのノクターン。
あまり使われていないようなのに、綺麗に調律されている。
暗譜も完璧なはず。
それでもいつも物足りない。
「完璧だが、面白くないな」
ふいに、背後から低い声が響いた。
振り返ると、そこには帝国学園の制服を着た有人さんが立っていた。
ピアノの音に、通りかかったらしい。
「ご、ごめんなさい、勝手に…うるさかったですね」
思わず椅子から降りようとするが彼はそれを制した。
「別にいい、今日もこれから練習がある」
「でも、面白くないって…」
「……上手いが楽譜通りって感じだ」
有人さんは数歩、私の横に歩み寄る。
ピアノの鍵盤に一瞥を送り、指でひとつ、Cの音を鳴らした。
「サッカーが1人でやるものじゃないみたいに、楽譜も記号だけじゃない」
「……」
知ってる。
それは自分一番がわかっていた。
見て見ぬふりをしていたのに、最大の欠点を再認識する。
「どうすればいいんですかね」
誰かに向けた問いかけではなかった。
言い終えたあと、ピアノの上に目を落とす。
映り込んだ自分の顔がひどく冷たく見えて、思わず視線を逸らした。
「お前は、あいつと全く逆だな」
「……?」
「いや、なんでもない。練習に行くから少し部屋を空ける」
有人さんは肩越しに振り返ることもなく、静かに、 私を置いていった。
…あいつ、って女の人なんだろうか。
その言葉を、胸の中で何度も反芻する。
今まで、 そんなこと考えたことがあったっけ。
いつも使わない、変なところの頭を酷使するからふらふらしてきた。
鍵盤の蓋を閉じる。
熱くなった体温を隠すように、ぱたりと体を倒してその上に伏せる。
今日は、何もやる気が起きない。
微かな音すら吸い込む、磨かれた大理石の床。
大きい窓から差し込む陽射しは、妙に白くて冷たかった。
使用人もまだ出てきてない、まるで時間が止まったかのように感じられるその廊下を抜ける。
私が足を向けたのは、屋敷の中央にあるグランドホールだった。
そこには一台のスタインウェイ。
うるみの帯びた艶をまとった黒のグランドピアノが朝日を静かに受けていた。
ただ見に来ただけ…のはずだった。
吸い込まれるような黒に魅了される。
「少しくらい…」
誰に許しを乞うでもなく、そっとピアノの前に座る。
白いワンピースの裾を整え、指先をたてて鍵盤に乗せる。
手癖で弾き始めたのはショパンのノクターン。
あまり使われていないようなのに、綺麗に調律されている。
暗譜も完璧なはず。
それでもいつも物足りない。
「完璧だが、面白くないな」
ふいに、背後から低い声が響いた。
振り返ると、そこには帝国学園の制服を着た有人さんが立っていた。
ピアノの音に、通りかかったらしい。
「ご、ごめんなさい、勝手に…うるさかったですね」
思わず椅子から降りようとするが彼はそれを制した。
「別にいい、今日もこれから練習がある」
「でも、面白くないって…」
「……上手いが楽譜通りって感じだ」
有人さんは数歩、私の横に歩み寄る。
ピアノの鍵盤に一瞥を送り、指でひとつ、Cの音を鳴らした。
「サッカーが1人でやるものじゃないみたいに、楽譜も記号だけじゃない」
「……」
知ってる。
それは自分一番がわかっていた。
見て見ぬふりをしていたのに、最大の欠点を再認識する。
「どうすればいいんですかね」
誰かに向けた問いかけではなかった。
言い終えたあと、ピアノの上に目を落とす。
映り込んだ自分の顔がひどく冷たく見えて、思わず視線を逸らした。
「お前は、あいつと全く逆だな」
「……?」
「いや、なんでもない。練習に行くから少し部屋を空ける」
有人さんは肩越しに振り返ることもなく、静かに、 私を置いていった。
…あいつ、って女の人なんだろうか。
その言葉を、胸の中で何度も反芻する。
今まで、 そんなこと考えたことがあったっけ。
いつも使わない、変なところの頭を酷使するからふらふらしてきた。
鍵盤の蓋を閉じる。
熱くなった体温を隠すように、ぱたりと体を倒してその上に伏せる。
今日は、何もやる気が起きない。