壊してくれるなら、優しくして
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【姫野なまえ】
「また来たのか、なまえ」
有人さんの声には、呆れたような、それでいてどこか優しさが孕んでいた。
部屋に入って、両手を揃えて後ろで組む。
「お話聞きたいです。だめですか?」
もう、これで三日目。
夕食後、入浴が終わったタイミングで、毎日彼の部屋に来ていた。
…最初のうちは、ただ、彼の懐に入るためであった。
この婚約が決まった際、両親からは必ず有人さんに気に入られるようにと強く言われていたから。
サッカーを愛してやまない事も、事前に聞かされていたから、それを「知りたい」と言うことでこの部屋に踏み込んだ。
それなのに。
それなのに…有人さんがサッカーの話をする時の表情は普段とまるで違って輝いていて。
彼を夢中にさせるサッカーを、もっと知りたくなった。
毎回、ソファに座り、モニターに映された映像を見ながら彼の説明を聞く。
練習メニュー、選手の特性、連携の精度。
サッカーなんてまるで知らなかったはずなのに、いまやポジションの名前も自然とロに出すほどになっていた。
だって、そうすると彼が嬉しそうに笑うから。
その日の練習映像を流しながら、会話をする。
ふと、言いたかったことを思い出した。
「あの、私、明日…練習を見に行ってもよろしいでしょうか?」
有人さんは、少しだけ驚いたように眉を上げた。
「見に?」
「ええ、 百間は一見にしかず、と申しますでしょう?もし、お邪魔でなければ…その、実際に拝見できたらと思って」
彼はしばらく私を見つめ、静かに頷いた。
「いいだろう。明日、迎えの車を手配させる。時間は調整しておく」
「ありがとうございますっ」
久しぶりに、心から笑えた気がした。
翌日。
午後の帝国学園。
校舎の裏手にある広大なサッカーグラウンドでは、すでに練習が始まっていた。
「こちらにどうぞ、姫野様」
付き添いのメイドに見学席へ案内され、設置された椅子に座った。
初めて見る、本気の練習。
汗を飛ばし、声を張り、鋭いパスが何本も通る。
その中心には、有人さんがいた。
「かっこいい…」
思わず、感嘆の声が唇からこぼれた。
厳しい目で周囲を見渡しタイミングを見計らって動き、必要なときには静かに指示を出す。
一歩先を読みながらチーム全体を操るその姿は、まさしく司令塔。
人の上に立つ者、というのはこういう人の事なのだろう。
彼の冷静さ、鋭さ、 そして支配するような存在感
に、目を離せなくなっていた。
練習の間、 椅子でじっと姿勢を崩すことなく見続けていた。
まるで、何か大切なものを確かめるように。
やがて練習が終わって、有人さんがユニフォームのまま私の見学席まで来る。
「退屈だったか?」
「いいえ!まさか!見応えがありましたわ」
「みなさん素敵でしたけれど、やはり有人さんが一番目を引いていらっしゃいました。動きも美しくて、無駄がなくて、本当に、すごいとしか言えません」
そう跳ねるように言うと、有人さんはほんのわずかに口角を上げた。
「そうか。お前にそう言われるとはな。悪くない気分だ」
誇っているわけではない、ただ、自分の努力が、少しでも伝わったのだという満足感からだろう。
「また、見に来ても、いいですか?」
その問いに、彼は即答した。
「ああ、構わない。お前が見たいなら、いつでも来い」
嬉しくて、自然と顔が綻ぶ。
有人さんは振り返って見学席の出口へと向かった。
「俺は総帥と話がある。先に帰っていろ」
「総帥…?」
「……ここを束ねているお方だ」
あまり話したがらない様子に、私は少し困った顔をしてしまう。
聞き返してはいけなかったかもしれない。
「わかりましたわ。家で待っています」
彼の後ろ姿をこっそり見つめながら、自分の寂しさを誤魔化した。
「また来たのか、なまえ」
有人さんの声には、呆れたような、それでいてどこか優しさが孕んでいた。
部屋に入って、両手を揃えて後ろで組む。
「お話聞きたいです。だめですか?」
もう、これで三日目。
夕食後、入浴が終わったタイミングで、毎日彼の部屋に来ていた。
…最初のうちは、ただ、彼の懐に入るためであった。
この婚約が決まった際、両親からは必ず有人さんに気に入られるようにと強く言われていたから。
サッカーを愛してやまない事も、事前に聞かされていたから、それを「知りたい」と言うことでこの部屋に踏み込んだ。
それなのに。
それなのに…有人さんがサッカーの話をする時の表情は普段とまるで違って輝いていて。
彼を夢中にさせるサッカーを、もっと知りたくなった。
毎回、ソファに座り、モニターに映された映像を見ながら彼の説明を聞く。
練習メニュー、選手の特性、連携の精度。
サッカーなんてまるで知らなかったはずなのに、いまやポジションの名前も自然とロに出すほどになっていた。
だって、そうすると彼が嬉しそうに笑うから。
その日の練習映像を流しながら、会話をする。
ふと、言いたかったことを思い出した。
「あの、私、明日…練習を見に行ってもよろしいでしょうか?」
有人さんは、少しだけ驚いたように眉を上げた。
「見に?」
「ええ、 百間は一見にしかず、と申しますでしょう?もし、お邪魔でなければ…その、実際に拝見できたらと思って」
彼はしばらく私を見つめ、静かに頷いた。
「いいだろう。明日、迎えの車を手配させる。時間は調整しておく」
「ありがとうございますっ」
久しぶりに、心から笑えた気がした。
翌日。
午後の帝国学園。
校舎の裏手にある広大なサッカーグラウンドでは、すでに練習が始まっていた。
「こちらにどうぞ、姫野様」
付き添いのメイドに見学席へ案内され、設置された椅子に座った。
初めて見る、本気の練習。
汗を飛ばし、声を張り、鋭いパスが何本も通る。
その中心には、有人さんがいた。
「かっこいい…」
思わず、感嘆の声が唇からこぼれた。
厳しい目で周囲を見渡しタイミングを見計らって動き、必要なときには静かに指示を出す。
一歩先を読みながらチーム全体を操るその姿は、まさしく司令塔。
人の上に立つ者、というのはこういう人の事なのだろう。
彼の冷静さ、鋭さ、 そして支配するような存在感
に、目を離せなくなっていた。
練習の間、 椅子でじっと姿勢を崩すことなく見続けていた。
まるで、何か大切なものを確かめるように。
やがて練習が終わって、有人さんがユニフォームのまま私の見学席まで来る。
「退屈だったか?」
「いいえ!まさか!見応えがありましたわ」
「みなさん素敵でしたけれど、やはり有人さんが一番目を引いていらっしゃいました。動きも美しくて、無駄がなくて、本当に、すごいとしか言えません」
そう跳ねるように言うと、有人さんはほんのわずかに口角を上げた。
「そうか。お前にそう言われるとはな。悪くない気分だ」
誇っているわけではない、ただ、自分の努力が、少しでも伝わったのだという満足感からだろう。
「また、見に来ても、いいですか?」
その問いに、彼は即答した。
「ああ、構わない。お前が見たいなら、いつでも来い」
嬉しくて、自然と顔が綻ぶ。
有人さんは振り返って見学席の出口へと向かった。
「俺は総帥と話がある。先に帰っていろ」
「総帥…?」
「……ここを束ねているお方だ」
あまり話したがらない様子に、私は少し困った顔をしてしまう。
聞き返してはいけなかったかもしれない。
「わかりましたわ。家で待っています」
彼の後ろ姿をこっそり見つめながら、自分の寂しさを誤魔化した。