ベルフェゴールの探究。( 三男 )
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" 私、女だけど梅子ちゃん好きです "
" 可愛いなぁお前は、先生とお話しようか "
" お前 胸ついてんのかよ~ "
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時間が経っていくと、環境も変わってくる。
例えば好きな曲が変わったり、好きな色が変わったり。
自分で服を選び始めて自分のお金を使って食べたいものを買って…そして人は自立していく。
周りの影響を受けていたけれど今度は自分の意思で何かに興味を持ち始めたりなんかして。
梅子の場合は上に姉が2人。
彼女の父は彼女が物心着く前に他の女の人と家を出ていく。
彼女は父の記憶が無いために父には " お母さんの他にも女の人を虜に出来ちゃうイケイケの人 " と尊敬の念に近いものを抱いていた。
母は母で暫くの間は立ち直れなかったものの仕事仲間の1人が母のことを諦められなかったと打ち明け社内でドロドロドタバタした結果 " 男はろくなのがいない " と切り替えることが出来るら、
とはいえ母自体最初に娘二人を産んでしまったため3人目は男を望んでいたそうだ。
だからといって梅子は愛して貰えなかった訳では無い。沢山撫でられて可愛がられた。
ただ三人目になると育児にも慣れるのか適当だった。
だからといって苦労したわけじゃない。
むしろ周りよりも早く一人で出来ることが増えた。
そんなイケイケな父とモテモテな母の遺伝を引き継いだ彼女と2人の姉 は 顔の完成度が高い。
ただ、先程も言った通り 男の子 が欲しかった母、そして姉2人は 末っ子である彼女を 弟として可愛がった。
顔は父と母のいい所取りで整った中性顔。
髪を短くして男物の服を着て歩けば何度か女の子に声をかけられた。
それは中学生の記憶だった。
その頃は彼女も満更ではなく男として評価されるのは悪くないとも思っていた。
実際その時には自分がもう男だと思い込んでいただけだろう。
己は 女 だ、と自覚は芽生えず成長して行った。
面倒臭いのは高校に上がってからだった。
高校生になって周りの女子が色付いていく。
お洒落して自分磨きに徹して。
たまに男ウケしか狙っていない短い丈のスカートなんて履いてみる。
梅子はそれを見てもまったく羨ましいだなんて思わなかった。
きっと彼女の中で 男の子 の 服を着る というのが当たり前になっていたからなのだろうけれど。
ただそれがどうとか言った訳では無い。
前から全面的に男として過ごしていた訳では無い。制服は女物だった。
ただあまり周りに干渉せず余計な事を言わない性格のせいなのか、お陰なのか クールな女の子(しかも男の子みたいに髪が短いしむしろ男の子に見える ) ということで女子からは告白され、
更には 身長には恵まれなかったせいなのか、男の娘 が 好きな 男 に 目をつけられることもしばしば。
例えば担任の先生、
隣の席の男。
" 顔は男なのに 、胸ついてんの?
なぁ?確認させて "
ただ思い出して欲しいのだが 彼女は クール な女子と言われていたが 本人は ただ 喋ること自体苦手な静かな女子だった、ということだけ。
姉ふたりがイケイケ過ぎる反動なのかむしろそういった性への興味、恋愛などは疎く、むしろ自身の性別にも嘘をついているという点で セクハラ教師やクラスメイトの発言にも理解が追いつかずなんとなくスルーできていたのだ。
そんな彼女は初めて自分で興味を持ち調べたいと思うものが出来る。
それは
" 悪魔 "
だった。
特に理由はない。
たまたま図書室で本を眺めていたらそういったタイトルの本を見つけて手に取ってしまっただけの話。
ただクラスでは 色恋沙汰 の話題が飛び交い、家に帰れば母と姉たちの他愛ない会話 が耳に入る環境で 彼女にとって 悪魔 は 非日常のように思えた。
気づけば とある悪魔 の ことを調べ、
ついには召喚方法までもを頭に入れてしまう。
" 呼んでみたい。"
軽はずみな気持ちはどんどん大きくなっていく。
後戻り出来なかった。
召喚したらどうしよう、
誰か に 危害 を 与えるために呼ぶことしか出来ないのかなぁ。
ボランティアに手伝ってくれないのかな。
あ、
少しだけ担任の先生の笑い方が嫌いだな…、
直してもらいたいな。
そんな曖昧でふわふわした 願いとも言えないもの達。
彼女は六芒星を書き終わると真ん中にたち1度顔を見あげてキラキラと光る星を見つめる。
あとは円で囲むだけ。
囲み、曲線が繋がった時、
あんなにもキラキラと光っていた星が見えなくなる。
雲が彼女の上で渦巻き、おぞましい気配が背中にあることを知る。
暫くして強ばった体から力が抜けてふぅ、と彼女はその場に座り込む。
そこで気づく。
自身以外の存在を。
『 …なんの用? 僕も暇じゃないよ、』
彼女は顔を上げる。
彼女は悪魔の召喚に成功したのだった。
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