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「次こそ!ローだ!」
「はいはい、黙ってプレイスユアベット。」
「う~もう!フルベット!」
「お、強気ぃ。じゃ、ノーモアベット」
適当に広げたカードのど真ん中、ゆっくり引き抜かれたハートのクイーン。…山本、残念。HIGHだ。
「…んふふ」
「わ~!もう!いっつも!最後の最後で!」
「はい、賭け金ゼロ。おーしまい」
「や~もう一回!」
何してるの?という声と私の元に落ちる影。
「あ、福良さん」
向かいに座る山本の呼ぶ声でその影の主を知り、私は黙々とカードを集めていく。
「またトランプ?青ちゃんにはろくに勝てないからやめときなって」
「あ」
最後の一枚まで取って、纏めようと手に持ったカードの束を福良がひょいと奪い上げた。思わず顔をそちらに向ける。
「さっきはちょっと勝ったんだよ?でもいっつも最終的にはゼロになっちゃうの~」
目の前でうーんと頭を抱える山本の方に向き直して、つい笑みを溢した。
「…山本も毎回可哀想に、青ちゃんは策士だからなあ」
「お?悪口か?」
「違うよ~。人聞きの悪い」
「ふふふ」
人の良い笑顔。福良のほうが策士だっての。
「あ、福良さんなら青ちゃんに勝てるんじゃない?!僕のかわりに戦ってよ~!」
すっかり駄々っ子の山本がブンブンと腕を振る。
「俺は遠慮しとく。遊ぶのもいいけど、二人ともちゃんと締め切りまでに記事出してよ?」
そんな彼には目もくれず、はい、と私にカードを返すとともにお小言を溢す福良。思わず苦い顔を向けると、何故か満足げな笑みを向けられてため息。
「…福良はすーぐそういうこと言う」
「あはは、特に青ちゃん。2ヶ月連続締め切り破ってるよ~」
「やーん怖い怖い」
私は受け取ったカードを軽く繰ってから仕舞い、集めたコインもそそくさとケースに戻していった。
「…にしても、コインも持ち歩いてるの珍しいよね」
ふと声の方を見ると、山本が大きな目でじっと私のカードとコインケースを見ていた。
「こういう時の暇つぶしに最適だからね」
須貝さんなんて私の顔見るたび挑戦してくんだもん。なんていうと、山本はケラケラと笑った。
言葉の通り、ノリで買ったコインも今やすっかりQuizKnockでのお遊びに大活躍だ。
「じゃ、福良に怒られちゃうから私は作業にもどりま~す」
「わ、まって僕も僕も!」
楽しい時間も大事だが、流石に仕事をしない訳にはいかない。適当にそれらをカバンに詰めた後ひらひらと手を振り、私は執務室に向かった。
-
…その後は近くに座ったメンツと談笑も交えつつそれなりに仕事をして。
それでも、20時を回るとオフィスの人も疎らになる。リビングからはまだ声がする、けれど執務室は気付けば1人きり。集中力の切れた私はノートパソコンを閉じて、鞄の中から先程のトランプを取り出した。
リフルシャッフル、スプリング、ウォーターフォール。そしてワンハンドリフル…はやっぱり手が小さくて難しい。
静かな執務室、紙の擦れる音だけが響く。
次は誰と遊ぼうか。今朝のことを思い出しながら自分の手によく馴染んだカードをもう一度軽くシャッフルした。
そのままデスクでスプレッド。そしてターンオーバーを数回繰り返す。ブルーの柄が波のように現れては消える様子が美しい。
「…本当にディーラーにでもなるの?」
「…じゃ、練習がてらハイローあたりでどう?」
音も立てずに執務室にやってきた福良の方を向くことなく、伏せたデックから一枚引き出したカードはスペードの8。
「まーた絶妙なカードを」
「ほらほら、あっち側座ってよ」
「わがままなゲームマスターだ」
言いつつも、福良はほんの少し困ったように眉を下げて私のいう通り向かいに座った。
「じゃ、…ハイで」
「ベットは?」
「え~。100円?」
「保守的だねえ。…お、当たり。」
デックから引き出したカードはクローバーのジャック。ほんの少し驚いた彼の顔の理由は、聞かずともわかる。
「…そういうのをなんでもない顔して折り込むから、山本は気付かないんだよ」
「さすが、ホンモノの策士は違うね」
デスクにターンオーバーした時点でそれなりのカード位置を把握している私が”あえて”ハイを引いたことに対する驚き。やはり、彼には全てお見通しらしい。
-
ほんの少しの静寂の後、福良の唇が動いた。
「…ねえ、次は違うゲームしようよ。」
私のイカサマぶりを知る彼は、普段勝負したがらない。
「珍しいね。…喜んで受けましょう」
だからこそ、妙に挑戦的なその目と遊んでみたくなって。
「そうだな…大きい数字を引いたほうが勝ち。でどう?」
「ふふ、シンプルでいいね」
先程言った通り、大体のカードの場所は把握している。私は狙いのカードの場所をぼんやりと考えながら笑った。
「で、勝ったほうが、ひとつだけいうこと聞く」
よくあるやつ。と福良は相変わらず人の良さそうな笑みを浮かべて私を見つめる。
「いいね、今日はどこまでも挑戦的で」
「お褒めの言葉ありがとう」
いつもの口調、いつもの表情なのに、どこか真剣な眼差しのまま眼鏡を上げる彼。たったそれだけの動きに、妙な緊張感を覚え、ぞわぞわと身体が粟立つ。
「…じゃ、わたしから。」
デックの左端から3枚目。引いたのは勿論スペードの…キング。
「あら、勝負決まったり?」
彼は私のそんな軽口すらもいつもの笑みで受け流した後、デックの上に柔らかく指を滑らした。
その細く綺麗な人差し指は、一つのカードの上で止まった。
「これ、かな」
真っ直ぐな目が私を捉える。そのままゆっくりと引き抜き、私に絵柄を向けたそれは、
「私の、…負けだ」
「あら、ミラクル」
「ね、何仕組んだの…?」
思わず怪訝な声を上げる私の言葉に覆いかぶせるように福良は言葉を紡いだ。
「負けたら、俺のいうこと聞くんだよね?」
人の良さそうな、けれど確実によからぬことを考える福良のその顔の隣に掲げられたジョーカー。…それがまあよく似合うから悔しい。
「…オーケイ、女に二言はありません。」
「そういうところ、嫌いじゃないよ」
それだけ言うと嬉しそうに立ち上がり、私の隣までやってくる。
「俺のお願い事…ちゃんと聞いて、ね?」
耳元。私にしか聞こえない、けれどどこか甘さを孕んだ声が紡がれて小さく胸が跳ねる。
気を紛らわすために泳がした視線の先、テーブルの上でこちらをみて笑うジョーカーは、やっぱり彼みたいだ。
「…俺と、…」
その言葉に肯定を返した瞬間、どんな賭け事より、どんなイカサマより、ずっと刺激的な日々が始まるのだろう。そんな予感を胸に顔を上げる。
そのまま、目の前で笑う策士の甘い声に耳を傾けた。
# place your bet
(ね、あの時どうやってジョーカー引いたの?)
(ふふ、俺にはずっーと勝てないまんまだね?)
「はいはい、黙ってプレイスユアベット。」
「う~もう!フルベット!」
「お、強気ぃ。じゃ、ノーモアベット」
適当に広げたカードのど真ん中、ゆっくり引き抜かれたハートのクイーン。…山本、残念。HIGHだ。
「…んふふ」
「わ~!もう!いっつも!最後の最後で!」
「はい、賭け金ゼロ。おーしまい」
「や~もう一回!」
何してるの?という声と私の元に落ちる影。
「あ、福良さん」
向かいに座る山本の呼ぶ声でその影の主を知り、私は黙々とカードを集めていく。
「またトランプ?青ちゃんにはろくに勝てないからやめときなって」
「あ」
最後の一枚まで取って、纏めようと手に持ったカードの束を福良がひょいと奪い上げた。思わず顔をそちらに向ける。
「さっきはちょっと勝ったんだよ?でもいっつも最終的にはゼロになっちゃうの~」
目の前でうーんと頭を抱える山本の方に向き直して、つい笑みを溢した。
「…山本も毎回可哀想に、青ちゃんは策士だからなあ」
「お?悪口か?」
「違うよ~。人聞きの悪い」
「ふふふ」
人の良い笑顔。福良のほうが策士だっての。
「あ、福良さんなら青ちゃんに勝てるんじゃない?!僕のかわりに戦ってよ~!」
すっかり駄々っ子の山本がブンブンと腕を振る。
「俺は遠慮しとく。遊ぶのもいいけど、二人ともちゃんと締め切りまでに記事出してよ?」
そんな彼には目もくれず、はい、と私にカードを返すとともにお小言を溢す福良。思わず苦い顔を向けると、何故か満足げな笑みを向けられてため息。
「…福良はすーぐそういうこと言う」
「あはは、特に青ちゃん。2ヶ月連続締め切り破ってるよ~」
「やーん怖い怖い」
私は受け取ったカードを軽く繰ってから仕舞い、集めたコインもそそくさとケースに戻していった。
「…にしても、コインも持ち歩いてるの珍しいよね」
ふと声の方を見ると、山本が大きな目でじっと私のカードとコインケースを見ていた。
「こういう時の暇つぶしに最適だからね」
須貝さんなんて私の顔見るたび挑戦してくんだもん。なんていうと、山本はケラケラと笑った。
言葉の通り、ノリで買ったコインも今やすっかりQuizKnockでのお遊びに大活躍だ。
「じゃ、福良に怒られちゃうから私は作業にもどりま~す」
「わ、まって僕も僕も!」
楽しい時間も大事だが、流石に仕事をしない訳にはいかない。適当にそれらをカバンに詰めた後ひらひらと手を振り、私は執務室に向かった。
-
…その後は近くに座ったメンツと談笑も交えつつそれなりに仕事をして。
それでも、20時を回るとオフィスの人も疎らになる。リビングからはまだ声がする、けれど執務室は気付けば1人きり。集中力の切れた私はノートパソコンを閉じて、鞄の中から先程のトランプを取り出した。
リフルシャッフル、スプリング、ウォーターフォール。そしてワンハンドリフル…はやっぱり手が小さくて難しい。
静かな執務室、紙の擦れる音だけが響く。
次は誰と遊ぼうか。今朝のことを思い出しながら自分の手によく馴染んだカードをもう一度軽くシャッフルした。
そのままデスクでスプレッド。そしてターンオーバーを数回繰り返す。ブルーの柄が波のように現れては消える様子が美しい。
「…本当にディーラーにでもなるの?」
「…じゃ、練習がてらハイローあたりでどう?」
音も立てずに執務室にやってきた福良の方を向くことなく、伏せたデックから一枚引き出したカードはスペードの8。
「まーた絶妙なカードを」
「ほらほら、あっち側座ってよ」
「わがままなゲームマスターだ」
言いつつも、福良はほんの少し困ったように眉を下げて私のいう通り向かいに座った。
「じゃ、…ハイで」
「ベットは?」
「え~。100円?」
「保守的だねえ。…お、当たり。」
デックから引き出したカードはクローバーのジャック。ほんの少し驚いた彼の顔の理由は、聞かずともわかる。
「…そういうのをなんでもない顔して折り込むから、山本は気付かないんだよ」
「さすが、ホンモノの策士は違うね」
デスクにターンオーバーした時点でそれなりのカード位置を把握している私が”あえて”ハイを引いたことに対する驚き。やはり、彼には全てお見通しらしい。
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ほんの少しの静寂の後、福良の唇が動いた。
「…ねえ、次は違うゲームしようよ。」
私のイカサマぶりを知る彼は、普段勝負したがらない。
「珍しいね。…喜んで受けましょう」
だからこそ、妙に挑戦的なその目と遊んでみたくなって。
「そうだな…大きい数字を引いたほうが勝ち。でどう?」
「ふふ、シンプルでいいね」
先程言った通り、大体のカードの場所は把握している。私は狙いのカードの場所をぼんやりと考えながら笑った。
「で、勝ったほうが、ひとつだけいうこと聞く」
よくあるやつ。と福良は相変わらず人の良さそうな笑みを浮かべて私を見つめる。
「いいね、今日はどこまでも挑戦的で」
「お褒めの言葉ありがとう」
いつもの口調、いつもの表情なのに、どこか真剣な眼差しのまま眼鏡を上げる彼。たったそれだけの動きに、妙な緊張感を覚え、ぞわぞわと身体が粟立つ。
「…じゃ、わたしから。」
デックの左端から3枚目。引いたのは勿論スペードの…キング。
「あら、勝負決まったり?」
彼は私のそんな軽口すらもいつもの笑みで受け流した後、デックの上に柔らかく指を滑らした。
その細く綺麗な人差し指は、一つのカードの上で止まった。
「これ、かな」
真っ直ぐな目が私を捉える。そのままゆっくりと引き抜き、私に絵柄を向けたそれは、
「私の、…負けだ」
「あら、ミラクル」
「ね、何仕組んだの…?」
思わず怪訝な声を上げる私の言葉に覆いかぶせるように福良は言葉を紡いだ。
「負けたら、俺のいうこと聞くんだよね?」
人の良さそうな、けれど確実によからぬことを考える福良のその顔の隣に掲げられたジョーカー。…それがまあよく似合うから悔しい。
「…オーケイ、女に二言はありません。」
「そういうところ、嫌いじゃないよ」
それだけ言うと嬉しそうに立ち上がり、私の隣までやってくる。
「俺のお願い事…ちゃんと聞いて、ね?」
耳元。私にしか聞こえない、けれどどこか甘さを孕んだ声が紡がれて小さく胸が跳ねる。
気を紛らわすために泳がした視線の先、テーブルの上でこちらをみて笑うジョーカーは、やっぱり彼みたいだ。
「…俺と、…」
その言葉に肯定を返した瞬間、どんな賭け事より、どんなイカサマより、ずっと刺激的な日々が始まるのだろう。そんな予感を胸に顔を上げる。
そのまま、目の前で笑う策士の甘い声に耳を傾けた。
# place your bet
(ね、あの時どうやってジョーカー引いたの?)
(ふふ、俺にはずっーと勝てないまんまだね?)