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玄関に近づく足音に合わせて上がる心拍を抑えるように呼び鈴に出る。宅配便です、という無愛想な声に安堵と切なさを覚える日々はまだ続きそうだ。
宅配便を受け取り、玄関を閉めると目に入る靴箱の上のドライフラワー。君が家を出てから沢山のものを捨てる癖をつけたのに、これだけはまだ捨てられなくて。
「もう、とっくに」
…終わってるんだけどな。なんて独言ると、柔らかい風がカーテンを撫でた。
窓から見える空の色が悲しいぐらい晴れ渡っていて、自嘲気味に笑う。
2人で過ごすには手狭だったこの部屋も無駄に広く感じるし、2人で並んで風を受けたベランダもまるで違うものに見えるから不思議だ。
朝に弱くて、いつも寝巻きのままで俺を見送った。首元に腕を巻きつけて甘えるようなキスをしていたことを不意に思い出す。
(拳くん)
その優しい眼差し、柔らかい手の温もり、さらりと流れる髪はまだ、俺の中に鮮明に残っていて。
時折、俺を呼ぶ声が何処かから聞こえるような気がして。まだ。
(…ごめんね)
仕事に没頭して、会えない日が続いた。
文句ひとつ言わず健気に待ち続けてくれた彼女にすっかり甘え切っていた俺は、彼女の寂しさに気づくことは出来なくて。
あの日、泣きながら謝って、俺の家の合鍵を置いて出た君はもう違う誰かと一緒になっているんだろうか。俺はまだこんなにも過去に囚われているのに。
あの日々を思い出にするには、まだ近すぎて。
「…バカだなあ」
彼女が置いて行った合鍵につけたお揃いのキーホルダーを右手で弄ぶ。こんなにも君のことが好きだったなら、どうしてもっと大切にしてやれなかったんだろう。
もう一度玄関に戻りドライフラワーを手に取る。
香りも何もない枯れ果てたそれは、触れるだけでほろほろと形を失っていく。
「俺たちももう、こんな風だったのかもね。」
君はいつだって俺の記憶の中では笑っていた。心の中では、ずっと泣いていたんだろうか。
ベランダに出て、ぐしゃりとその花を握りつぶす。粉々になったそれは地面に落ちて、風に流されて。
「青ちゃんのこと、ほんとに、愛してたんだけどな。」
情けない最後の告白は青空に溶けて消えていく。
薄皮を剥がれたような、じくりじくりと染みる痛み。今はまだ、もうすこし。
# 君を思い出にする為に
(情けなくても、泣いて縋っていたら、君は俺のとなりにいてくれた?)
宅配便を受け取り、玄関を閉めると目に入る靴箱の上のドライフラワー。君が家を出てから沢山のものを捨てる癖をつけたのに、これだけはまだ捨てられなくて。
「もう、とっくに」
…終わってるんだけどな。なんて独言ると、柔らかい風がカーテンを撫でた。
窓から見える空の色が悲しいぐらい晴れ渡っていて、自嘲気味に笑う。
2人で過ごすには手狭だったこの部屋も無駄に広く感じるし、2人で並んで風を受けたベランダもまるで違うものに見えるから不思議だ。
朝に弱くて、いつも寝巻きのままで俺を見送った。首元に腕を巻きつけて甘えるようなキスをしていたことを不意に思い出す。
(拳くん)
その優しい眼差し、柔らかい手の温もり、さらりと流れる髪はまだ、俺の中に鮮明に残っていて。
時折、俺を呼ぶ声が何処かから聞こえるような気がして。まだ。
(…ごめんね)
仕事に没頭して、会えない日が続いた。
文句ひとつ言わず健気に待ち続けてくれた彼女にすっかり甘え切っていた俺は、彼女の寂しさに気づくことは出来なくて。
あの日、泣きながら謝って、俺の家の合鍵を置いて出た君はもう違う誰かと一緒になっているんだろうか。俺はまだこんなにも過去に囚われているのに。
あの日々を思い出にするには、まだ近すぎて。
「…バカだなあ」
彼女が置いて行った合鍵につけたお揃いのキーホルダーを右手で弄ぶ。こんなにも君のことが好きだったなら、どうしてもっと大切にしてやれなかったんだろう。
もう一度玄関に戻りドライフラワーを手に取る。
香りも何もない枯れ果てたそれは、触れるだけでほろほろと形を失っていく。
「俺たちももう、こんな風だったのかもね。」
君はいつだって俺の記憶の中では笑っていた。心の中では、ずっと泣いていたんだろうか。
ベランダに出て、ぐしゃりとその花を握りつぶす。粉々になったそれは地面に落ちて、風に流されて。
「青ちゃんのこと、ほんとに、愛してたんだけどな。」
情けない最後の告白は青空に溶けて消えていく。
薄皮を剥がれたような、じくりじくりと染みる痛み。今はまだ、もうすこし。
# 君を思い出にする為に
(情けなくても、泣いて縋っていたら、君は俺のとなりにいてくれた?)