ko-chan
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最弱が最強になる瞬間を待ちわびて、今日も念入りにメイクを施す。厚く塗られた肌とは裏腹、心は柔らかく擦り減っていた。
「こうちゃん!」
「お、青ちゃん」
いつものキラキラとした笑顔で、私の名前を呼ぶ。
「今日こそ河村さんに怒られない記事書いてきた?」
「ヤダ、毎日怒られてるわけじゃ無いです~!」
ケラケラと笑う私たちは側からみればお似合いだと誰かは笑っていた。そんな意味のない言葉ですら縋ってしまいたくなる程、私は彼に惹かれている。
「俺が先に見てあげようか?」
「こうちゃんだって私と打率変わんないでしょ?」
「いやいや、俺の方が5厘は高い」
「ビミョー!」
そう言いながらも記事の入ったUSBを彼の前に揺らすと、手を差し出した彼の薬指に光るシルバーのリングが目に入る。
長い間彼の指を彩るそれに、意味がないはずもなくて。
私の方が早く出逢っていたら、なんて馬鹿馬鹿しいことをずっと考えている。
こんなにも近くで、誰よりも君の事を想っているんだけど、なあ。
「…どしたの?」
「あ、や、なんでもない。確認お願いしちゃお」
邪な気持ちを悟られぬよう、私はいつものように笑って、彼の掌に小さなメモリを置く。鈍く光るシルバーがこんなにも憎くなってしまったのは、いつからだったろうか。
-
ある日、彼は私の隣で深いため息を吐いていた。
どうしたの?なんて聞かずとも浮かない顔の理由はわかっている、けれど騒ぐ心を沈めるように厚く塗った化粧の奥にその濁った感情を隠す。
「こうちゃん、どしたの?」
「あー、青ちゃん。」
はあ、と短いため息を吐き頭を描く彼の薬指。そこにいつもの光がないことに、どくどくと心が騒ぐ。
「や、実は…彼女とのペアリングなくしてさ。」
そっから大喧嘩。なんて情けない顔で笑う彼を抱きしめたい衝動をぐっと堪えて、悲しい表情をする。
「元々忙しくて最近会えてなかったこともあって…まー、なんか、ちょっとヤバめっていうか」
ごめん、こんな話して…続く言葉を遮るように、私は言葉を紡ぐ。
「そんなことで、怒られちゃったの?」
「…え?」
「たしかに、ペアリング無くしちゃったのはこうちゃんの管理不足かもだけど…仕事とかは仕方ないじゃん。」
切なさを孕むように、言葉の抑揚を意識して。
どんどんと叩きつけるような鼓動は、アンフェアなプレイングへの警鐘のようだけれど、私はもう引き返せないのだ。
「こうちゃんは、こんなに頑張ってるのに。」
彼の眼差しが揺らぐ瞬間を見逃さないよう、真っ直ぐに見つめる。
「青、ちゃん」
ほんの少し隈の浮いた目元、不安を孕む眼差し。ジョーカーは切られた。
「私なら、絶対…そんなこと言わないのに」
デスクの下、控えめに彼の手に手を添える。
戸惑った顔をしても君はきっと振り払わない。心に空いた隙間は君が想像するより大きいということを私は確信しているから。
恐る恐る握り返されたその手に、安堵と罪悪感を覚えながら、私は彼にだけ聞こえるように紡ぐ。
私じゃあ、駄目?、と。
柔らかく、けれど確実に握り返された手。
微かに揺らぐその瞳に、初めて私が1人の女として映る瞬間を見て、ぞくりと震える感情に私は小さく微笑んだ。
# スペードの3
(私のボトムのポケットに入ったあなたのリング、どうか今だけはその煌めきを殺していてよ。)
「こうちゃん!」
「お、青ちゃん」
いつものキラキラとした笑顔で、私の名前を呼ぶ。
「今日こそ河村さんに怒られない記事書いてきた?」
「ヤダ、毎日怒られてるわけじゃ無いです~!」
ケラケラと笑う私たちは側からみればお似合いだと誰かは笑っていた。そんな意味のない言葉ですら縋ってしまいたくなる程、私は彼に惹かれている。
「俺が先に見てあげようか?」
「こうちゃんだって私と打率変わんないでしょ?」
「いやいや、俺の方が5厘は高い」
「ビミョー!」
そう言いながらも記事の入ったUSBを彼の前に揺らすと、手を差し出した彼の薬指に光るシルバーのリングが目に入る。
長い間彼の指を彩るそれに、意味がないはずもなくて。
私の方が早く出逢っていたら、なんて馬鹿馬鹿しいことをずっと考えている。
こんなにも近くで、誰よりも君の事を想っているんだけど、なあ。
「…どしたの?」
「あ、や、なんでもない。確認お願いしちゃお」
邪な気持ちを悟られぬよう、私はいつものように笑って、彼の掌に小さなメモリを置く。鈍く光るシルバーがこんなにも憎くなってしまったのは、いつからだったろうか。
-
ある日、彼は私の隣で深いため息を吐いていた。
どうしたの?なんて聞かずとも浮かない顔の理由はわかっている、けれど騒ぐ心を沈めるように厚く塗った化粧の奥にその濁った感情を隠す。
「こうちゃん、どしたの?」
「あー、青ちゃん。」
はあ、と短いため息を吐き頭を描く彼の薬指。そこにいつもの光がないことに、どくどくと心が騒ぐ。
「や、実は…彼女とのペアリングなくしてさ。」
そっから大喧嘩。なんて情けない顔で笑う彼を抱きしめたい衝動をぐっと堪えて、悲しい表情をする。
「元々忙しくて最近会えてなかったこともあって…まー、なんか、ちょっとヤバめっていうか」
ごめん、こんな話して…続く言葉を遮るように、私は言葉を紡ぐ。
「そんなことで、怒られちゃったの?」
「…え?」
「たしかに、ペアリング無くしちゃったのはこうちゃんの管理不足かもだけど…仕事とかは仕方ないじゃん。」
切なさを孕むように、言葉の抑揚を意識して。
どんどんと叩きつけるような鼓動は、アンフェアなプレイングへの警鐘のようだけれど、私はもう引き返せないのだ。
「こうちゃんは、こんなに頑張ってるのに。」
彼の眼差しが揺らぐ瞬間を見逃さないよう、真っ直ぐに見つめる。
「青、ちゃん」
ほんの少し隈の浮いた目元、不安を孕む眼差し。ジョーカーは切られた。
「私なら、絶対…そんなこと言わないのに」
デスクの下、控えめに彼の手に手を添える。
戸惑った顔をしても君はきっと振り払わない。心に空いた隙間は君が想像するより大きいということを私は確信しているから。
恐る恐る握り返されたその手に、安堵と罪悪感を覚えながら、私は彼にだけ聞こえるように紡ぐ。
私じゃあ、駄目?、と。
柔らかく、けれど確実に握り返された手。
微かに揺らぐその瞳に、初めて私が1人の女として映る瞬間を見て、ぞくりと震える感情に私は小さく微笑んだ。
# スペードの3
(私のボトムのポケットに入ったあなたのリング、どうか今だけはその煌めきを殺していてよ。)