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くすぐったい感覚で目を覚ます。
夢と現の間を彷徨うように、俺はもう一度目を閉じ、胸元のぬくもりを確かめる。
俺のじゃない髪が頬をかすめて、今日も彼女がそこにいることに、小さな安堵の息と微笑みが漏れる。
「ん、」
「お、起きちゃった?」
「拓司…いま、何時?」
「まだー、8時前。」
「早いなあ…相変わらず」
「ごめん、癖で。もうちょっと寝てていいよ。」
彼女は眠たげな目をこすって、グッと伸びをした。昨晩泣きはらした目が、まだ少し赤い。
「…昨日は、ごめんね」
昨日。
日々の職場でのストレスが少しずつ鬱積していたらしい青は、俺の家に着くなり声をあげて泣き出して。
(わたしみたいなのじゃ、拓司と釣り合わないよ)
長く付き合ってきた中でも見たことがない表情に、一度も聞いたことのない言葉。
痛々しいほどに弱った声でそんなことを言うものだから、俺は何度も彼女に愛を伝えて、話を聞いて、一緒にお風呂に入って、何度も涙を拭ってあげて…とにかく彼女がスッキリするまで付き合った(、俺が、そうしなくちゃ気が済まなくて)
「拓司が、いてくれてよかった」
まだ眠気の残る声で、そう囁かれて、思わず笑みがこぼれる。
「…俺がいなかったら今頃風呂で寝てたもんね」
「もー、うるさい〜」
泣き疲れた彼女の髪を乾かし、着替えを手伝い、眠るまで抱きしめて。
今朝の顔を見る限りは、随分とスッキリした様で安心した。
「じゃあ、俺もわがまま」
「なに?」
「…ん」
何の気なしに唇を向けると、まだすこし寝ぼけ眼の彼女が俺に触れるだけのキスをした。
「…あ〜」
「なに?」
「幸せ、」
へんなの、といい僕に背中を向けた彼女。いつもしてるじゃん、と、笑った。
「こんな可愛い彼女が、眠る前も、目が覚めても目の前にいるって、奇跡みたいだなって。」
「泣きすぎてブサイクだけど」
「そんなことねーよ」
きゅ、っと後ろから抱きしめると、彼女はくすぐったそうに身をよじる。
「こそばい〜」
「釣れないなあ。」
耳まで真っ赤なくせに。その一言はそっと俺の胸にしまった。
「風、きもちい、ね」
青にそう言われ、窓の方に目をやる。
昨晩、開けっ放しだった窓から吹く風がレースカーテンを揺らす。
お揃いのパジャマに真っ白なシーツを照らす日差しが心地よい。
ねえ、こそばいよ、と繰り返して笑っていた青が、抱きしめた俺の手を不意に握る、そのまま、彼女の頬に添える様に寄せられて。
「青のほっぺ、柔らかい」
「ふふ、拓司の手も、温い」
しばらく、朝日と微睡みの狭間で揺らいでいると、青がポツリと囁いた。
「拓司」
「ん、なーに?」
「…一緒にいてくれて、ありがとう」
俺の手のひらに、きゅ、と頬を擦り寄せて。
「…だいすき、だよ」
不意打ちの甘い言葉に、どきりとしたけれど
そこから、規則正しい寝息が聞こえて。
「…せめて、俺も、って言ってから寝てよね」
俺は呆れた様に小さく笑ったあと、目の前にある彼女のつむじに唇を落とした。
# やさしくだきしめて
(俺は君を支える光、君は、俺を支える光)