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「川上くん」
「はい」
「この内容のチェックお願いします」
「かしこまりました。」
「…ねえ、伊沢」
「なに?」
「あの2人って、マジで付き合ってんの?」
須貝さんの隠す気の無い声が聞こえて、私と拓朗は同時にそちらを見る。
「付き合ってますよ〜」
拓朗は私の送ったデータに目を通しながら、なんでもないことのように答える。
「らしいですよ〜」
それに合わせるようになんでもないふりをしているけれど、内心ちょっぴりそわそわしている。
「あと御園。ここミスってる」
「わ、まじだ。直します。」
須貝さんはちょっとちょっと〜とオネエっぽい口調で私たちの会話に割り込む。
「だってさ〜、付き合って結構経つのに苗字呼び?一緒に帰ってるところも見ないし?川上も青ちゃんも全然のろけたりしないし!?」
「まあ、そんな初々しいあれでもないですし…」
家では名前で呼び合うし、多分他のカップルよりもベタベタしているし、帰りもこっそりオフィスを出た先で待ち合わせていることも多いし…本当は大好きなんだけど、どこかでセーブをしとかないと変なボロが出ちゃいそうで控えてます。なんて恥ずかしすぎて言えないし。
私が困ったようにそう伝えると、なぜか不満そうな須貝さんに「やだ!青ちゃん大人すぎじゃない!?もっと愛を叫んでもいいんだよ!?」と言われて、思わずたじろぐ。
「須貝さん、伊沢〜。楽しそうなところ申し訳ないけど撮影するよ〜。」
そんな私たちを見ていた福良さんと山本くんがひょっこりと撮影部屋から顔を出した。
「はいよ!ホラ須貝さん、若者いじめもそれぐらいにして行きますよっと、」
「わ、伊沢も面白がって聞いてたじゃん!」
「へいへ〜い」
喧騒が撮影部屋へ吸い込まれていくのを見届けた後、しばらくの沈黙。
撮影が始まる声が漏れ聞こえてきて、ふう。と小さくため息をつくと、拓郎の小さな笑い声が聞こえた。
「…なによ」
「ほんま、オフィスではちゃんとしとるなあ」
不意打ちの関西弁にドキッとしていると、軽く腕を引っ張られて、隣に座るよう促される。
「…だって、仕事場、だし」
「恥ずかしいねんもんな?」
拓朗は嬉しそうに私の顔を覗き込みながら、囁いて笑う。
「2人の時は甘えたさんなんも、俺のこと実は大好きなんも、バレたくないもんなあ」
「ちょ」
拓朗は嬉しそうに私の腰に手を回す。唇をギリギリに寄せられて、心臓の跳ねるスピードがさらに早まる。
「な、…青」
「ちょ、たく、ろっ」
腰に回されていた筈の手がゆるゆると私の頭を捉え、指先が優しく耳をなぞる。
「オフィスやで、…声、我慢して。」
しー。なんて態とらしく囁かれて心臓がはちきれそうで、耐えられずぎゅっと目を瞑ると、唇に柔らかい熱が触れる。
舌先が優しく唇をなぞり、歯列に触れようとした時だった。
「…かーわーかーみー。」
拓朗越しに聞こえる、呆れた福良さんの声。
驚きのあまり、私たちはその状態で固まってしまって。
「…あー、怒らないし、川上の頭で…色々見えてないから動かないで。」
まあ、強いて言うなら…唇くっついてんなら離して。と困ったような声色で言われて、ほんの少しだけ距離ができる。
撮影部屋から福良さんまだ〜?という声がして本当に焦ったけれど、その声に食い込む勢いですぐ戻るから待ってて!と大声で返す福良さん。
「…誰にも口外しないけど、今日の行為は改めること。2度目はないからね。」
「は、い」
「あー、もう〜…。僕は撮影部屋戻るから、頭冷やすのは5秒後にしてね。」
見てるこっちが恥ずかしいよ〜。と恥ずかしそうな、でもちょっと面白がるような短い声が聞こえて、福良さんの足音が遠ざかった。
「た、くろう」
「…」
「た…」
「…」
「か、川上くん」
「…〜!」
私の肩に顔を埋めるようにして、拓朗は声にならない声を上げていた。
「やば、これはヤバい。まじで恥ずい」
「私なんか福良さんとちょっと目合ってたんだからね…!」
「ごめ…、調子乗った…」
ゆっくり顔を上げた拓朗を見ると、不機嫌そうな顔をしているけれど、耳まで真っ赤に染まっていて。
「顔真っ赤」
「青も」
より不服そうな顔をした後、ちゅっと短いリップノイズを立てて唇を奪われて。
「は〜!福良さんに合わす顔ないから早めに添削して帰ろ」
「わ、川上くんずるい!」
「御園も早く終わらせて一緒に帰ろ」
「あ、え、うん」
さっと体制を変えて、拓朗はいつもと同じようにカタカタとパソコンに向き合い始めた。
川上くん、御園、いつもの呼び方。
拓朗もしれっと標準語になって、お互いオフィスモードに切り替える準備をして、私も完全に切り替えるべく立ち上がる。すると、あ。と拓朗は短い声を上げて。
「…やから、はよ帰って、はよ続き、しよ。」
甘えるような、してやったような瞳で、拓朗が笑う。
ああもうほんと、私はこの人の全部が。
ーーーだめかもしれないーーー
(ごめん福良さん取りに行かせちゃっ…、あれ、顔赤くない?)
(ほんと?…まあ、向こうの部屋が妙に…暑くてね)
<<サイト「永遠少年症候群」よりお題お借りしました>>