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「拓司ぃ」
「げ」
「げ、じゃないでしょ!」
青さんは、オフィスでのんびりしていた伊沢の前に仁王立ち。
「今日の13時までにこの資料上げて、って言ったよね?」
「ひー、すぐやるすぐやる」
伊沢は鬼は外!なんて言って青さんの手のひらに一口サイズのチョコレートの小包をいくつかを握らせてデスクへ逃げるように向かった。
「河村さん、今度拓司がサボってたらげんこつ食らわせてください」
「それは僕の手がやられちゃうよ」
「それはこまった…あ、じゃあこれ使ってください。」
「青さん、花瓶は十二分に鈍器の扱いですよ」
冗談か本気かわからない顔でそんなことを言う青さん。自分の彼氏を鈍器で殴れというのはいかがなものか。なんて考えつつ伊沢の方に目をやると、すでに完成していた資料を作る振りをしていて。
(ほんと、小学生みたいだ)
「まあまあ青さん。伊沢のことだからすぐ資料完成するだろうし、ちょっと油売っていきなよ。」
ソファに座る僕の隣に腰掛けるよう促すと、伊沢が少し鋭い目つきになる。嫉妬深い男は怖いなあ、伊沢なら尚更。
「んじゃ、拓司がサボらないように見張っときます。」
青さんはぽすん、と軽い音を立ててソファに座る。ちらと見た携帯の待ち受けは伊沢とのツーショット。
伊沢はもちろん、青さんもその聡明さで彼の右腕としてQuizKnockの舵取り的存在を務めていることもあり、ライターらには健全なボニーアンドクライドみたいだ、なんてことを言われているけれど、(というか健全なボニーアンドクライドって。)まあ、僕からすればどこまでも可愛いカップルだ。
それからものの十数分後。
「青ちゃーん」
「なによ拓司。あんたは黙って資料作ってなさい」
「できたもん」
「は?」
ひょい、とラップトップを青さんに向ける。確信犯め。
「え、うそ…」
青さんは懸命にその資料に齟齬がないか確認している、無駄なんだよなあ。だって、それ二日前にはできてたし。
(じゃれあいたいからこんなことしてるらしいけど、)
「す、すごい…」
「ご満足いただけた?」
資料を覗き込む青さんに勝ち誇るような笑みを向ける伊沢。
「ま、あ」
「じゃ、ご褒美のちゅーは?」
「は?」
「ほら、河村さんに見せてやろ」
「ばっか何言ってんの!?河村さんがいるからこそしません!」
嫌がる大声とは裏腹、真っ赤に染まった耳。ほんと、お似合いのカップルだ。接頭語の"バ"は今日はつけないであげよう。
僕はぎゃあぎゃあと言い合う二人を見つめながら、ローテーブルに置いたコーヒーにもう一度手を伸ばし、ゆっくり口をつけた。
「…ボニーアンドクライドより、ミルクアンドコーヒー、ぐらいかな」
ちょっと!見てないで助けて河村さん!と言いながら抱きつこうとする伊沢を制する青さん。
僕は毎日何をみせられてるんだか。でもまあ、嫌な感じがしないからいいか。ほろ苦く甘いコーヒーを口の中で転がしながら、じゃれ合う二人を見つめて小さく笑った。
# Bonnie and Clyde
(おかえり河村、今日も茶番たのしんできたの?)
(あら、福良。相変わらず完全犯罪の犯せなさそうなカップルだよ)
(それは社員としても安心だね)