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「や、ちょっと着丈やばくない?」
「パニエとペチパン履いてるんでしょ?いけるいける!」
「でも〜…」
東京大学の学園祭、五月祭。
私たちの学科は売り子を女の子にして売り上げを伸ばそうなんて安易な案が通ってしまって、女子は強制メイド服。
確かに準備を怠った私も悪かったが、予備のメイド服は私にはやや小さくて。
「ワカメちゃんじゃんこんなの…」
「ロングドレス買ってくるんだったね〜」
友人らは膝より長い丈のシックなメイド服を調達しており、なんとなくハメられた気分。
「買うとき私にも言ってよ〜」
「全体ラインで共有しました。」
「…すみません。」
ま、青はとりあえずそれ着て接客な!と言われて渋々承諾するも
(これ、駿貴さん怒りそうだな…)
恋人の駿貴さんの顔を思い浮かべる(、あ、やめて脳内でナイスガイポーズしないで…)
コスプレとか可愛い服は喜んでくれるけど、こういう…人目の多いところであんまり露出しないで欲しい、みたいなことは前からちらほら言っていて。
「お客さん入り出したよ〜!みんな持ち場について〜!」
遠くから喧騒がやってくる。これはもう仕方がない。
「まあ、やりますか…」
きゅ、と後ろ手でスカートの裾を引っ張る。嗚呼、心もとない!
-
(うう)
「えー、お姉さんめちゃくちゃ可愛い!ここのベビーカステラ超買うから連絡先教えてよ!」
どこかの大学の人たちだろう、3人組が懸命に声を掛けてくる。
(さっきの人たちまでは断ったら聞いてくれてたのに)
「いや、ちょっとそう言うのは…」
「まあまあ、学祭よ?思い出にどう?」
「いやー、はは、は…」
「えーこんなエロい格好しといて生殺し〜?」
「!?」
その瞬間、ふわりとスカートをめくられる感覚がして慌てて手で押さえる。
「わ、インナーもふりふりじゃん!かーわーいーいー」
(ああ、やば、店の。誰か…)
同じ学科の友人らに視線でなんとか助けを求めようとするが、屋台そのものにも行列ができていて手が空きそうにない。数名の男子はちらちらとこちらを見ているが、その男らの軽い風貌から、まだ止めに入るか悩んでいるようだった。
(む、むり〜〜〜!)
「えー!!青ちゃん超かわいいじゃん!」
場の喧騒もかき消すほどの大声がして、私…とその辺りにいた人はその声の主に目を向けた。
「駿貴、さん!」
「んもー、こんな可愛いカッコで接客するんだったら早く言ってよ〜。ベビーカステラどころか店ごと買って青ちゃん独り占めしたのに!」
いつもの明るい口調でそういいつつ、ナンパ男と私の間に割って入る。
「というわけで、」
聞いたことのないような低い声。先ほどの快活で陽気な雰囲気が一種で消え去る。
「…この可愛い可愛いメイドちゃんの彼氏ですけど。何かご用でも?」
ぽん、と音を立てて男らの肩に手を置き、白い歯を見せて爽やかに笑う駿貴さん。なのに消しきれない、禍々しいオーラに私まで背筋が伸びる。
「…なーんだ、彼氏いるんすね!」
「そんな誘うようなカッコしてるから〜!」
男らはゲラゲラと笑いながらさりげなくその場を去っていった、彼らのこめかみに大量に浮く汗はこの日差しのせいか、それとも…。
「…青ちゃん。」
「ひっ、…はい」
駿貴さんが私を見下ろしながら、羽織っていた薄手のカーディガンを脱ぎだした。
「しゅ、しゅんき…さ?」
「とりあえず、これ巻いときな」
さっきのテンションとは打って変わって、冷静に、素早く私の腰元にそれを巻きつける。
「ちょっと青ちゃん借りていくね〜」
屋台の中に向かってそう声を掛けてすぐ、駿貴さんは私の腕を引いて人混みをかき分け進んでいった。
-
人気のない校舎内まで連れてこられて、それでもまだ無言で私の腕を引いて歩く駿貴さん。
「駿貴、さん」
「…」
「駿貴さん」
「…」
「ね、しゅんき、さ、!」
人気のない校舎の廊下の突き当たり、駿貴さんはそのまま私を抱きしめた。
「しゅんき、さん…」
「…も〜〜〜〜〜〜〜!!」
「く、くるし」
駿貴さんはこれでもか、ってぐらい強く私を抱きしめて、大きな声を出す。
「なーんでそんな可愛いカッコしてんの!?しかもこんな人の多いときに!俺が行かなかったら大変なことになってたかもしれないのよ!?」
「しゅんき、さっ、くるし…」
「もう遠目から見ても秒で青ちゃんてわかるレベルでマジ大天使!本気で可愛すぎて失神しそうになった!…じゃなくてなにあの男たち!?タンスの角に足の小指ぶつけて永遠に苦しめ!」
俺の青ちゃんに気安く触るしな〜もうなにあれ!まじ!許せん!ととめどなく溢れる言葉に気圧されて抱きしめられるがままの私。
一通りの悪口(…呪い?)を言い切った駿貴さん。ゆっくりと抱きしめる力が弱まり、私に視線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「…ほん、っと…、心配したぞぉ…。」
先ほどとは打って変わって優しくて暖かい眼差し、安堵を孕んだ甘い声。その瞬間、本当に心配させてしまったことを知り、ほんの少し胸が痛む。
「…ごめんなさい」
「いんや、青ちゃんは悪くない」
「でも…」
「ううん…でも、ちょっとだけ」
「ん…!」
ぎゅ、と唇を押し付けられてほんの少し跳ねる体。
緊張と心配と、安堵…そしていつも以上の愛情が一気に伝わるキス。
「…うっし、充電した。ごめん、仕事中に引っ張り出して。」
「ううん、駿貴さんが来てくれて、よかった」
「…だ〜どこまでも可愛い〜早く売り子終わらせて俺と学祭デートしようなあ〜」
まるでペットでも愛でるように頬ずりしながら抱きしめてくる駿貴さんには思わず苦笑い。
でも、元気で、快活で、明るくて、そしてどこまでもかっこいい。
「…やっぱり、最高の彼氏だなあ」
「なーにもう可愛いんだからアナタは!」
くしゃりと歯を見せて笑う駿貴さん。
差し出された手をきゅっと握ると、もう一度その太陽みたいな笑顔を向けられて、また恋に落ちる音がした。
# Super Darling!
(その後、俺の直談判により腰にカーディガンを巻いたメイドという姿で接客した青ちゃんであった、めでたしめでたし)
(…あれ、駿貴さんがストーリーテラー?)
「パニエとペチパン履いてるんでしょ?いけるいける!」
「でも〜…」
東京大学の学園祭、五月祭。
私たちの学科は売り子を女の子にして売り上げを伸ばそうなんて安易な案が通ってしまって、女子は強制メイド服。
確かに準備を怠った私も悪かったが、予備のメイド服は私にはやや小さくて。
「ワカメちゃんじゃんこんなの…」
「ロングドレス買ってくるんだったね〜」
友人らは膝より長い丈のシックなメイド服を調達しており、なんとなくハメられた気分。
「買うとき私にも言ってよ〜」
「全体ラインで共有しました。」
「…すみません。」
ま、青はとりあえずそれ着て接客な!と言われて渋々承諾するも
(これ、駿貴さん怒りそうだな…)
恋人の駿貴さんの顔を思い浮かべる(、あ、やめて脳内でナイスガイポーズしないで…)
コスプレとか可愛い服は喜んでくれるけど、こういう…人目の多いところであんまり露出しないで欲しい、みたいなことは前からちらほら言っていて。
「お客さん入り出したよ〜!みんな持ち場について〜!」
遠くから喧騒がやってくる。これはもう仕方がない。
「まあ、やりますか…」
きゅ、と後ろ手でスカートの裾を引っ張る。嗚呼、心もとない!
-
(うう)
「えー、お姉さんめちゃくちゃ可愛い!ここのベビーカステラ超買うから連絡先教えてよ!」
どこかの大学の人たちだろう、3人組が懸命に声を掛けてくる。
(さっきの人たちまでは断ったら聞いてくれてたのに)
「いや、ちょっとそう言うのは…」
「まあまあ、学祭よ?思い出にどう?」
「いやー、はは、は…」
「えーこんなエロい格好しといて生殺し〜?」
「!?」
その瞬間、ふわりとスカートをめくられる感覚がして慌てて手で押さえる。
「わ、インナーもふりふりじゃん!かーわーいーいー」
(ああ、やば、店の。誰か…)
同じ学科の友人らに視線でなんとか助けを求めようとするが、屋台そのものにも行列ができていて手が空きそうにない。数名の男子はちらちらとこちらを見ているが、その男らの軽い風貌から、まだ止めに入るか悩んでいるようだった。
(む、むり〜〜〜!)
「えー!!青ちゃん超かわいいじゃん!」
場の喧騒もかき消すほどの大声がして、私…とその辺りにいた人はその声の主に目を向けた。
「駿貴、さん!」
「んもー、こんな可愛いカッコで接客するんだったら早く言ってよ〜。ベビーカステラどころか店ごと買って青ちゃん独り占めしたのに!」
いつもの明るい口調でそういいつつ、ナンパ男と私の間に割って入る。
「というわけで、」
聞いたことのないような低い声。先ほどの快活で陽気な雰囲気が一種で消え去る。
「…この可愛い可愛いメイドちゃんの彼氏ですけど。何かご用でも?」
ぽん、と音を立てて男らの肩に手を置き、白い歯を見せて爽やかに笑う駿貴さん。なのに消しきれない、禍々しいオーラに私まで背筋が伸びる。
「…なーんだ、彼氏いるんすね!」
「そんな誘うようなカッコしてるから〜!」
男らはゲラゲラと笑いながらさりげなくその場を去っていった、彼らのこめかみに大量に浮く汗はこの日差しのせいか、それとも…。
「…青ちゃん。」
「ひっ、…はい」
駿貴さんが私を見下ろしながら、羽織っていた薄手のカーディガンを脱ぎだした。
「しゅ、しゅんき…さ?」
「とりあえず、これ巻いときな」
さっきのテンションとは打って変わって、冷静に、素早く私の腰元にそれを巻きつける。
「ちょっと青ちゃん借りていくね〜」
屋台の中に向かってそう声を掛けてすぐ、駿貴さんは私の腕を引いて人混みをかき分け進んでいった。
-
人気のない校舎内まで連れてこられて、それでもまだ無言で私の腕を引いて歩く駿貴さん。
「駿貴、さん」
「…」
「駿貴さん」
「…」
「ね、しゅんき、さ、!」
人気のない校舎の廊下の突き当たり、駿貴さんはそのまま私を抱きしめた。
「しゅんき、さん…」
「…も〜〜〜〜〜〜〜!!」
「く、くるし」
駿貴さんはこれでもか、ってぐらい強く私を抱きしめて、大きな声を出す。
「なーんでそんな可愛いカッコしてんの!?しかもこんな人の多いときに!俺が行かなかったら大変なことになってたかもしれないのよ!?」
「しゅんき、さっ、くるし…」
「もう遠目から見ても秒で青ちゃんてわかるレベルでマジ大天使!本気で可愛すぎて失神しそうになった!…じゃなくてなにあの男たち!?タンスの角に足の小指ぶつけて永遠に苦しめ!」
俺の青ちゃんに気安く触るしな〜もうなにあれ!まじ!許せん!ととめどなく溢れる言葉に気圧されて抱きしめられるがままの私。
一通りの悪口(…呪い?)を言い切った駿貴さん。ゆっくりと抱きしめる力が弱まり、私に視線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「…ほん、っと…、心配したぞぉ…。」
先ほどとは打って変わって優しくて暖かい眼差し、安堵を孕んだ甘い声。その瞬間、本当に心配させてしまったことを知り、ほんの少し胸が痛む。
「…ごめんなさい」
「いんや、青ちゃんは悪くない」
「でも…」
「ううん…でも、ちょっとだけ」
「ん…!」
ぎゅ、と唇を押し付けられてほんの少し跳ねる体。
緊張と心配と、安堵…そしていつも以上の愛情が一気に伝わるキス。
「…うっし、充電した。ごめん、仕事中に引っ張り出して。」
「ううん、駿貴さんが来てくれて、よかった」
「…だ〜どこまでも可愛い〜早く売り子終わらせて俺と学祭デートしようなあ〜」
まるでペットでも愛でるように頬ずりしながら抱きしめてくる駿貴さんには思わず苦笑い。
でも、元気で、快活で、明るくて、そしてどこまでもかっこいい。
「…やっぱり、最高の彼氏だなあ」
「なーにもう可愛いんだからアナタは!」
くしゃりと歯を見せて笑う駿貴さん。
差し出された手をきゅっと握ると、もう一度その太陽みたいな笑顔を向けられて、また恋に落ちる音がした。
# Super Darling!
(その後、俺の直談判により腰にカーディガンを巻いたメイドという姿で接客した青ちゃんであった、めでたしめでたし)
(…あれ、駿貴さんがストーリーテラー?)