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「こんばんは、強がりさん。」
背中に降りかかる、甘い声。
今日一日、一度も気を抜かなかった。当たり前に仕事をこなして、なんならいつも以上に上手くいった気さえしていた。ちょっとオフィスに残って明日の準備も済ませて、普通の一日を、普通の私を演じたはず、だったのに。
「…バレてないと思ってた?」
私よりほんの少し早くオフィスを出たはずの福良さんが、何故か、どうしてか、目の前に居て。
「…頑張ってきた、みたいだね」
どうして、なんで。そんな疑問を投げかけるより先に、私の中、唯一残っていた細い糸が切れた。それを物語るようにはらはらと大粒の涙が溢れて、柔らかい笑顔がじんわりと滲んでいく。
「…ちゃんと好き、って言えた?」
「っ、く…ふ…」
頬を伝い、顎に引っかかって、ぱたぱたと落ちるそれがコンクリートを黒く濡らす。縦に首を振るしかできない私の頭を、大きくて柔らかい手が撫でる。
「そっか、よかった。」
言えてよかったね。霞む視界の先、やっぱり福良さんはいつもどおり柔らかい笑みを浮かべていて。
「ふ、くらっ…さ」
「ん、なあに?」
「ちゃ、んと、…言えて、よ、よかった…」
「…うん、」
泣き顔を見られまいと俯いていたら、…それならもう抱きしめても許してもらえるかな?なんて戯けた口調が降り注いできて、ゆっくりと顔を上げる。
「…明日からは、俺が絶対笑わせてあげるから」
細められた眼差しと共に、ゆっくりと広い胸が私を包み込む。懐かしいようで、切ない、甘い香り。
「今日までの分、全部、泣いていいよ」
相変わらずほんの少し戯けた、けれどまっすぐ私を慈しむ柔らかい声に、心がぎゅっと押し潰されそうになる。
今はまだ次の恋は見えないけれど、きっといつかこの声に惹かれていくのだろうか。
けれど、今日は。
(ほんとうに、あのひとのことが、)
「…そうだね」
続く言葉を遮るように、抱きしめる腕に力が込められた。それでも、祈りにも近いこの感情をあなたが想い出に変えてくれると信じて、私はゆっくりと目を閉じた。
# 明日からの想い出
(今日までの想いはどうか、明日から思い出になってくれますように)