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落花流水【らっか・りゅうすい】
ー落ちた花が水に従って流れる意で、ゆく春の景色。転じて、物事の衰えゆくことのたとえ。時がむなしく過ぎ去るたとえ。別離のたとえ。
「四字熟語?」
「そ、思いついたやつなんでもいいから2つ教えて!」
オフィスに着くや否や、山本くんが目を輝かせてそんな質問をしてきて。
「うーん…好きなの…、悠々閑閑…?」
「ふふっ…」
「なによ」
「いやいや、2つ目は?」
「じゃあ、落花流水あたりで。」
山本くんはおおー。なんて声を上げて笑う。
「これはね、一つ目がその人の人生観、二つ目がその人の恋愛観らしいよ!
ちなみに僕は外柔内剛と質実健剛~なんて言うから
「本当にぃ?山本くんのちょっといい感じすぎない?」
「いやいや、僕の深層心理だからね~」
なんてふざけあっていた。
「にしても、落花流水かあ」
「衰えゆく物事ね、ふふ」
「あーいま山本くん笑ったでしょ」
「笑ってませんー」
片思いには辛い仕打ちよ。と笑うと、でもね、と山本くんは携帯の画面を向けてきた。
「相思相愛、って意味もあるよね?」
「そうね。まあ実際にはそんなの夢のまた夢だけど。」
「…河村さんとの進捗は相変わらず?」
「たまに、ご飯したり…連絡はとりあってるけど…」
「いやー、ほんっとにいい感じだと思うんだけどな?」
「やだ、絶対嘘。そうやって人のこと持ち上げる」
「もー、信用ないんだから」
私の恋心を知って、ちょっかいをかけてきつつも気にかけてくれる山本くんがちょっぴり照れくさくて睨むと、こわいこわいと手を上げて笑った。こう言うモーション、ほんとに伊沢さんに似てきたな。
「あら、お2人お取り込み中?」
「河村さん!」
しかしまあ、噂をすればなんとやら。用事を済ませたらしい河村さんがオフィスに帰ってきた。
「ねーねー、河村さん」
「何、急に。」
「パッと思いついた四字熟語二つ、教えて?」
山本くんは相変わらず目をキラキラさせて河村さんを見る。そんな山本くん越しの河村さんは、ううん、と小さく唸ってから顎に手を当てて思案しているようで。
「摩頂、放踵…?」
わあん、努力家!と山本くんが唸ると、何よ急に…と河村さんはたじろぎつつ笑って。
「もういっこもういっこ!」
「ええ…そうだな、嗜好を変えて…」
「落花流水、かな」
丸い眼鏡の奥の瞳が、柔らかく私を貫く。
「え、え、え、」
思わずうろたえる私と、わー!と喜ぶ山本くん…と置いてけぼりの河村さん。
「なになに、心理テスト?」
「そー!一つ目がその人の人生観、二つ目がその人の恋愛観らしいの!」
興奮気味に説明する山本くん、一方私はこの鼓動の速さがどうやったらバレないか考えるのに必死で。
「あら、僕意外とちゃんと努力するタイプってバレちゃったね」
「意外じゃない~!そんなことより!」
河村さんの恋愛観、青ちゃんと一緒!と山本くんが嬉しそうに話す。
「あら、それは奇遇ですね。」
うーん、と唸りながら私の顔を覗き込む河村さんから思わず目を逸らす。
「…じゃ、僕と相思相愛になってみますか?」
その言葉に驚いて、河村さんの方を向くと、なーんてね。なんてお茶目な笑顔を向けられて。
あっけにとられた私と山本くん、と少ししたり顔な河村さん。
「ま、ふたりともあんまりおしゃべりしてると、伊沢に怒られちゃうよ?」
そろそろくると思うしね。とだけいい、河村さんは奥の撮影部屋に向かった。
「…な、な…え、あ。あれ…」
「っく~!河村さんもやるなあ」
「や、やるなあって…聞こえて、たのかな?」
「ふふ、どうだろうね」
動揺する私とは対照的に、山本くんは余裕そうににやにやして
「僕の読みは外れてなかったか~…ま、あとはお二人次第じゃないの?」
僕も撮影部屋いこーっと!とだけ言い残して、山本くんは跳ねるようにその場を後にした。
「ええ…?!」
1人頭を抱えていると、携帯のバイブレーションを感じて画面を見る。
一通のメッセージの通知を開いて、私は顔全部が赤くなる音を聞いた気がした。
「…や、やられた…」
落花流水【らっか・りゅうすい】
ーまた、男女の気持ちが互いに通じ合い、相思相愛の状態にあること。散る花は流水に乗って流れ去りたいと思い、流れ去る水は落花を乗せて流れたいと思う心情を、それぞれ男と女に移し変えて生まれた語。
# 散る花、流る水
(『さっきの言葉、割と本気ですよ?』)