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なんとなく、恋人との終わりが近いような気がしている。
QuizKnockに加入してからは日々が刺激的で忙しくて。
あんまり根を詰めすぎるなという伊沢さんの言葉も聞き流して、撮影や企画、準備や記事の作成…毎日楽しく過ごしていた。
もちろん本分である学業、そしてバイトも併せるとどんどん時間がなくなって。
できる限り隙間時間は尽くして、沢山愛を伝えようとして、けれど、不器用な私は上手に振る舞えなくて。
やっぱり、どんどん心は離れていって。
「…はー」
「珍しいね、青ちゃんがため息」
「わ、…福良さん」
きい、と隣の椅子に腰掛ける福良さんに柔らかく微笑みかけられて、思わず小さく頭を下げた。
「なんかお困りごと?」
俺でよければ聞くけど?なんて柔らかい表情でもういちど微笑まれる。気の利いた冗談も言えず、眉を下げて笑って誤魔化すしかできない自分が情けない。
「や、はは…」
「…ま、言いづらいなら別だけどね」
お隣、お邪魔します。と言った後、福良さんはノートPCを起動して編集用のアプリケーションをダブルクリックした。
「…あ、の」
福良さんがイヤホンを差し込む直前、思わず声を掛ける。
「…話す気になった?」
その柔らかい微笑みに、思わず胸がぐっとなって。
やっぱり眉を下げて笑うことしかできなかった。
ー
「なるほどね」
「はい…」
気を利かせた福良さんが、オフィスの中の空き部屋に呼んでくれた。
そんな中お互い作業をしながらだけれど、ぽつりぽつりと言葉を紡いで。
QuizKnockが楽しくて、恋人との時間をうまく作れない自分にも問題はあるのかもしれない、けれど
「でも…ちょっとした時間とか、絶対彼と会うようにしたり、沢山、頑張った、んですけど…」
なんとなく、違う人ができたのかなというのはまだ私の勘でしかないから伏せたまま…福良さんに告げる。
「うーん、恋人だけに依存せず、自分の時間とか仕事とかも大事にできる女性、素敵だと思うけどなぁ」
ま、メディアに出てるのが男ばっかりだから、彼氏さんもそう言う環境にいると思って気に入らないのかもね。なんておどけて笑う福良さんにつられるように笑ったけれど、どこか情けない顔をしているような気がした。
「意外とやられてる?」
「…へへ、すみません」
「ううん、茶化してごめんね」
福良さんは作業の手を止めて、ぱたんとノートパソコンを閉じた。
「…なるほどなあ〜」
じっと見つめられて、気まずくて、目を逸らす。
「…ほんとはもっと好きって言いたい、のにね?」
急に投げかけられた、確信を突くその一言に胸がどくんと跳ねる。
「なんなら、仕事に没頭して、依存しちゃうのを避けようとしてるぐらいなのにね?」
「…も〜」
わ、図星だあ。なんて言いながら目尻を下げて笑う福良さんにはどうも敵いそうにない。
「可愛いなあ」
「やめてください…」
ほんとうは、もっと会いたいし、わがままも言いたい。けれど、嫌われる方が怖くて…どうしても可愛い女の子にはなれない。
「…そうこうしてるうちに、自分じゃない誰かに彼氏さんの気持ちが向いてるような気がしてたり?」
一体この人は…どこまで私を見透かしているのか。恥ずかしさと悲しさでジワリと視界が滲む。
「…そっかそっか」
思わず俯いた私の頭を、暖かい掌が撫でる。
「ほんっと、もったいないなあ」
「…なにがですか?」
「青ちゃんは、こんなにも可愛いのに」
照れくさいけれど、まっすぐで暖かい言葉。
言ってもだめかもしれない、けど、言わなきゃ伝わらないよ?と言われ、ゆっくりと顔を上げる。
「福良さん…」
「今日は早めに切り上げて、ちゃんと話し合ってくる?」
「…うーん、でも、まだ、怖くて」
「もしダメだったとしても、俺が絶対慰めてあげる」
「でも、」
「…ふふ」
かたん、と小さな音を立てて立ち上がった福良さんは、私の隣までやってきて。
「今すぐ準備しないと、俺が青ちゃんのことこうして引き止めちゃうよ〜?」
「え」
「そんでもって」
パソコンのキーボードに置いた私の右手に重ねるように、福良さんの右手が重なる。
「…弱ってるところ、つけ込んじゃうよ?」
「え、え、え」
柔らかく、けれどまっすぐ見つめられて、先ほどとは違うドキドキが降り注ぐ。
固まってしまったみたいに福良さんを見つめていると、その顔はどんどん近づいてきて
(え、え、ええ…!?)
どうしようもなくて、ぎゅっと目をつぶる。
「…なんてね、」
永遠みたいな数秒間ののち、福良さんの意地悪な声に目を開く。
「そんな可愛い反応されたら、冗談じゃなくなっちゃうじゃん」
ははは、と短い笑い声と共に離れる福良さん。
「ほら、行っておいで?」
伊沢たちには俺から適当に言っておくから、そう言いながら私の右手に添えられていた手がぽん、と背中を叩いた。
「は、はい」
「頑張って、青ちゃんなら大丈夫。」
「そ、それは買いかぶりすぎでは…?」
「ううん、ダメだったら相手の見る目がないってだけだよ。」
優しく暖かい眼差しにさらされていると、なんだか妙な気持ちになって。
いたたまれなくなった私は慌ててノートパソコンを閉じて立ち上がる。
「青ちゃんは、最高に素敵なんだから、ね?」
魔法みたいにすっと心に沁みこむその言葉に、思わず笑みがこぼれる。
「…はい!」
(自然消滅するぐらいなら、全部ぶつけてしまったほうが、きっといい)
多分きっと終わる、けれど、この気持ちに嘘をつかないために。
私は福良さんの言葉を胸に、ゆっくりと部屋を出た。
ー
「はー、」
「あら、福良さん。」
「青ちゃん、帰った?」
「うん、なんか急いで出てったけど」
彼女が出てしばらくしてから執務室に戻ると、作業をしていた伊沢と目があって。
「そ、ならよかった」
「なんかあったの?」
「なんか急ぎの用があるのに仕事ひと段落してから〜とか悠長なこと言うから帰るよう言ったの。」
「青ちゃん、ほんっと真面目だな」
「ほんとね〜」
伊沢の斜向かいに座り、もう一度作業をしようとノートパソコンを開く。
(俺だけの人に、なったらいいのに)
応援しているのも事実だが、隣にいてほしいと想うのも事実だ。
「…ほんと真面目だし、可愛いねえ」
「あらあら福良さん、急にどした〜?」
「ううん、ちょっとね」
「おやおや〜?」
(俺の知らない誰かを想う彼女が可愛い、ということは重々承知しているが。)
「…追い風が吹くのを願うのって、別に悪いことじゃないよね?」
「悪いことじゃないけど、そういう福良さんは悪い顔してる」
「伊沢は勘がいいねえ」
「お〜怖い」
上手く行ったら行ったで、また健気で可愛い彼女が見られるならそれでいい、けれど。
(彼女にあんなに想われるなんて、堪らないだろう)
「ほんっと、可愛すぎるんだもん」
「あー、奪うのはダメよ〜」
「奪いそうになってたら止めてね、伊沢」
「…止まらないくせによく言う」
(やっぱり、俺を見つめてほしいなんて、わがままかな)
「…ほんと、いじらしいのはどっちだか」
俺はそうひとりごちて笑った後、もう一度作業に戻った。
# かわいいきみに
(恋する君は可愛いけれど、俺に恋する君は多分、きっと、絶対、もっと。)
なんとなく、恋人との終わりが近いような気がしている。
QuizKnockに加入してからは日々が刺激的で忙しくて。
あんまり根を詰めすぎるなという伊沢さんの言葉も聞き流して、撮影や企画、準備や記事の作成…毎日楽しく過ごしていた。
もちろん本分である学業、そしてバイトも併せるとどんどん時間がなくなって。
できる限り隙間時間は尽くして、沢山愛を伝えようとして、けれど、不器用な私は上手に振る舞えなくて。
やっぱり、どんどん心は離れていって。
「…はー」
「珍しいね、青ちゃんがため息」
「わ、…福良さん」
きい、と隣の椅子に腰掛ける福良さんに柔らかく微笑みかけられて、思わず小さく頭を下げた。
「なんかお困りごと?」
俺でよければ聞くけど?なんて柔らかい表情でもういちど微笑まれる。気の利いた冗談も言えず、眉を下げて笑って誤魔化すしかできない自分が情けない。
「や、はは…」
「…ま、言いづらいなら別だけどね」
お隣、お邪魔します。と言った後、福良さんはノートPCを起動して編集用のアプリケーションをダブルクリックした。
「…あ、の」
福良さんがイヤホンを差し込む直前、思わず声を掛ける。
「…話す気になった?」
その柔らかい微笑みに、思わず胸がぐっとなって。
やっぱり眉を下げて笑うことしかできなかった。
ー
「なるほどね」
「はい…」
気を利かせた福良さんが、オフィスの中の空き部屋に呼んでくれた。
そんな中お互い作業をしながらだけれど、ぽつりぽつりと言葉を紡いで。
QuizKnockが楽しくて、恋人との時間をうまく作れない自分にも問題はあるのかもしれない、けれど
「でも…ちょっとした時間とか、絶対彼と会うようにしたり、沢山、頑張った、んですけど…」
なんとなく、違う人ができたのかなというのはまだ私の勘でしかないから伏せたまま…福良さんに告げる。
「うーん、恋人だけに依存せず、自分の時間とか仕事とかも大事にできる女性、素敵だと思うけどなぁ」
ま、メディアに出てるのが男ばっかりだから、彼氏さんもそう言う環境にいると思って気に入らないのかもね。なんておどけて笑う福良さんにつられるように笑ったけれど、どこか情けない顔をしているような気がした。
「意外とやられてる?」
「…へへ、すみません」
「ううん、茶化してごめんね」
福良さんは作業の手を止めて、ぱたんとノートパソコンを閉じた。
「…なるほどなあ〜」
じっと見つめられて、気まずくて、目を逸らす。
「…ほんとはもっと好きって言いたい、のにね?」
急に投げかけられた、確信を突くその一言に胸がどくんと跳ねる。
「なんなら、仕事に没頭して、依存しちゃうのを避けようとしてるぐらいなのにね?」
「…も〜」
わ、図星だあ。なんて言いながら目尻を下げて笑う福良さんにはどうも敵いそうにない。
「可愛いなあ」
「やめてください…」
ほんとうは、もっと会いたいし、わがままも言いたい。けれど、嫌われる方が怖くて…どうしても可愛い女の子にはなれない。
「…そうこうしてるうちに、自分じゃない誰かに彼氏さんの気持ちが向いてるような気がしてたり?」
一体この人は…どこまで私を見透かしているのか。恥ずかしさと悲しさでジワリと視界が滲む。
「…そっかそっか」
思わず俯いた私の頭を、暖かい掌が撫でる。
「ほんっと、もったいないなあ」
「…なにがですか?」
「青ちゃんは、こんなにも可愛いのに」
照れくさいけれど、まっすぐで暖かい言葉。
言ってもだめかもしれない、けど、言わなきゃ伝わらないよ?と言われ、ゆっくりと顔を上げる。
「福良さん…」
「今日は早めに切り上げて、ちゃんと話し合ってくる?」
「…うーん、でも、まだ、怖くて」
「もしダメだったとしても、俺が絶対慰めてあげる」
「でも、」
「…ふふ」
かたん、と小さな音を立てて立ち上がった福良さんは、私の隣までやってきて。
「今すぐ準備しないと、俺が青ちゃんのことこうして引き止めちゃうよ〜?」
「え」
「そんでもって」
パソコンのキーボードに置いた私の右手に重ねるように、福良さんの右手が重なる。
「…弱ってるところ、つけ込んじゃうよ?」
「え、え、え」
柔らかく、けれどまっすぐ見つめられて、先ほどとは違うドキドキが降り注ぐ。
固まってしまったみたいに福良さんを見つめていると、その顔はどんどん近づいてきて
(え、え、ええ…!?)
どうしようもなくて、ぎゅっと目をつぶる。
「…なんてね、」
永遠みたいな数秒間ののち、福良さんの意地悪な声に目を開く。
「そんな可愛い反応されたら、冗談じゃなくなっちゃうじゃん」
ははは、と短い笑い声と共に離れる福良さん。
「ほら、行っておいで?」
伊沢たちには俺から適当に言っておくから、そう言いながら私の右手に添えられていた手がぽん、と背中を叩いた。
「は、はい」
「頑張って、青ちゃんなら大丈夫。」
「そ、それは買いかぶりすぎでは…?」
「ううん、ダメだったら相手の見る目がないってだけだよ。」
優しく暖かい眼差しにさらされていると、なんだか妙な気持ちになって。
いたたまれなくなった私は慌ててノートパソコンを閉じて立ち上がる。
「青ちゃんは、最高に素敵なんだから、ね?」
魔法みたいにすっと心に沁みこむその言葉に、思わず笑みがこぼれる。
「…はい!」
(自然消滅するぐらいなら、全部ぶつけてしまったほうが、きっといい)
多分きっと終わる、けれど、この気持ちに嘘をつかないために。
私は福良さんの言葉を胸に、ゆっくりと部屋を出た。
ー
「はー、」
「あら、福良さん。」
「青ちゃん、帰った?」
「うん、なんか急いで出てったけど」
彼女が出てしばらくしてから執務室に戻ると、作業をしていた伊沢と目があって。
「そ、ならよかった」
「なんかあったの?」
「なんか急ぎの用があるのに仕事ひと段落してから〜とか悠長なこと言うから帰るよう言ったの。」
「青ちゃん、ほんっと真面目だな」
「ほんとね〜」
伊沢の斜向かいに座り、もう一度作業をしようとノートパソコンを開く。
(俺だけの人に、なったらいいのに)
応援しているのも事実だが、隣にいてほしいと想うのも事実だ。
「…ほんと真面目だし、可愛いねえ」
「あらあら福良さん、急にどした〜?」
「ううん、ちょっとね」
「おやおや〜?」
(俺の知らない誰かを想う彼女が可愛い、ということは重々承知しているが。)
「…追い風が吹くのを願うのって、別に悪いことじゃないよね?」
「悪いことじゃないけど、そういう福良さんは悪い顔してる」
「伊沢は勘がいいねえ」
「お〜怖い」
上手く行ったら行ったで、また健気で可愛い彼女が見られるならそれでいい、けれど。
(彼女にあんなに想われるなんて、堪らないだろう)
「ほんっと、可愛すぎるんだもん」
「あー、奪うのはダメよ〜」
「奪いそうになってたら止めてね、伊沢」
「…止まらないくせによく言う」
(やっぱり、俺を見つめてほしいなんて、わがままかな)
「…ほんと、いじらしいのはどっちだか」
俺はそうひとりごちて笑った後、もう一度作業に戻った。
# かわいいきみに
(恋する君は可愛いけれど、俺に恋する君は多分、きっと、絶対、もっと。)