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(あのふたり、本当に仲良しだね)
(男女の友情って本当に存在するんだ~って思っちゃった)
(でも、美男美女だから…本当は何があるかわからないよ?)
(いやいや、あの二人に限って、そんなことはないでしょ!)
-
私と拓朗は、いつも一緒に過ごしてた。
彼の知名度も相まって、大学でも有名なコンビ的な扱い。
今日も朝からずっと同じ授業で、ずっと隣の席で。
「…リップ変えた?」
授業も終盤に差し掛かった頃、拓朗は頬杖をつきながら、私の顔を見て言った。
「お、さすが」
「まあ、な」
ふ、と小さく笑う拓朗につられて笑う。
大講義室の授業ほど聞く気にならないものはない。私は真面目に授業を受けていた拓朗とは裏腹、隣でゲームをしたり、携帯を触ったり。
「ほんま、青は不真面目やのに成績ええから腹立つな」
「要領がいいからね。…てか拓朗、髪色変えた?」
「いつの話してんねん」
「…ふふ」
自分の落書きだらけのノートに視線を落とす。今期は誰からノートを買おうか。
「青、」
珍しくすっかり授業への興味を失ったらしい拓朗が、私の名前を呼ぶ。
「次、…サボる気ない?」
「なにそれ、お誘い?」
「…お誘いだったとしたら?」
いいよ。そういう前に、私は教科書とノートを閉じた。
終礼のチャイムまで、あと5分。
-
4限を飛ばせば、あとは帰るだけ。
いつもより艶っぽいリップが俺を誘っているような気がして、イエスしか答えのない質問をした。
大講義室の授業を終えて、人の少ない通りを抜けて帰路につく。
「今日はどっち?」
「ん~、俺んち?」
「そっちの方がありがたい」
髪を掻き上げる彼女の白い手に見とれる。
「…ネイルも変えてる」
「気づくのがおそい~」
(今日、夜は彼氏が来る感じ、か)
最初は、もう少し綺麗だった。全部が。
「じゃ、…いこ。」
細い路地に入り、誰にも見えないようにそっと手を繋いだ。
-
もうすっかり来慣れてしまった拓朗の家に入るなり、優しいキスが降る。
「もうするの?」
「…あかん?」
ダメじゃないという前に彼の首に腕を回す。ああ、今日も同じ毎日だ。
彼の甘く鋭い眼差しは、あまりに私を盲目にさせる。
-
青の甘い香りは、全部をダメにしてしまう。
灯りもつけず、カーテンも開けず、俺たちは情事に及ぶ。
薄暗い部屋は、まるで二人だけの世界のようだ。けれど、愛の言葉も何もなく、ただお互いを求め合うそれは、恋人とは違う、もっと禍々しくて深くて、抜け出せない感情が伴う。
「青」
体全部が溶け合って、一つになればいいのに。と思う。
そしたら恋人がどうとか、永遠がどうとか、何も考えなくて済むのに、と。
-
「今日は、彼氏何時頃くるって?」
「わかんない。仕事終わりだからそんなに早くはないと思う。」
「そう」
熱の残るベッドでふたり、ろくに服も着ないままぼんやりと会話をする。
「拓朗の彼女さんは?」
「今日は来ないって。」
「そう、残念。」
「本当に。」
目があって、口付ける。たまに怖くなる。
最初は、ほんの出来心だった。
本当に男女を忘れて仲の良かった私たちは、ずっと周りから本当はできてるんじゃないか?と冷やかされていた。お互いに長い恋人がいて、ただの友達だと信じて疑わなかった。けれど、ある日、少し飲みすぎた私たちは当たり前のように二人で拓朗の家に帰って、当たり前のように一緒のベッドで寝て、当たり前のようにキスをしていた。
その違和感の無さに驚きながらも、同時に溢れ出る欲望は抑えることができなかった。
「一回だけ、だよな」
「一回だけ、でしょ」
後ろめたさではなく、溺れる可能性に、あの日から気づいていたのかもしれない。
「青、」
「なに」
「もっかい」
「、ん」
(もう、戻れないところなのかもしれない)
-
「じゃあね」
彼女は、来たときに限りなく近い姿に戻った。
どちらからともなく今日最後のキスを落とす。
ひらひらと手を振る仕草はさっぱりしているのに、瞳は名残惜しそうで。
きっと俺も変わらない顔をしているんだろうな、と思いながら玄関を出る彼女を見送った。いつもはそんなことしないのに、数秒待ってから、廊下に出る。
しばらくすると見えた、エントランスから出た彼女の後ろ姿。
彼女は、香水を振り直したあと、まるで分かっていたかのようにふと振り返る。
そして、少し驚いた顔をして、笑う。
(…………。)
柔らかい唇が動いて、何かを伝えようとする。俺にはそれが何かはわからなくて、少し顔をしかめた。すると、すこし悲しそうな顔をしたあと、いたずらな顔で投げキッスをしてきたから、俺は冗談めいて冷笑を返す。そのあとは、振り返ることなく彼女は、恋人が帰ってくるであろう彼女の家へ戻っていった。
部屋へ戻り、ベッドに横になる。まだ彼女の残り香が強く香る。
(どこまで溺れられるんだろう)
いつか俺も彼女も、全部を投げ捨ててしまうかもしれない。
(青が居たら、それでいい)
日に日に増して行く危うい気持ちを殺すように、目を閉じた。
# never without you
(恋よりも熱く、愛よりも重く、きっと俺はもう離れられない。)