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「珍しいね、青さんがパーティに参加。」
「たまたま明日の仕事が昼からだったから、」
先日、とあるチャリティーイベントの打ち上げがあった。
特にお給料が出るわけではなかったけれど、その分最後はみんなでパーティでもしようという話が企画会社から持ち上がったとき、まさか私もも伊沢くんが、伊沢くんも私が来るなんて思ってなかっただろうななんてぼんやり思い返しつつ、座敷の一番奥の席に座る。
「それでは、お疲れ様!!」
業界のお偉いさんみたいな男の人の大きな声で、会場はわっと盛り上がる。
そういう雰囲気を暫く味わった後は、また端の席に戻って一人で酒を煽る。
モデル・タレントとして割と長いことこの界隈にいると、確かにいがみ合いも辛い争いもあるけれど、ここまで来るとみんな過干渉しすぎず、比較的自由で大人な子が多い。
(ほんと、色々あるけど居心地いいんだもんな)
一端のタレントとして活躍できて、こんな環境下にいられて、辛いことの方が多いっちゃ多いけど、その分充実感は計り知れない程だから。
「お疲れ様」
そんな中ひらひらと右手を上げて私の横に座ったのは伊沢くんだった。
最近テレビ番組で共演してから、細々と連絡を取り合う中になった人。
学業も会社もしっかりやって、さらにタレントと言う肩書まで持って…私たちとは少し違う雰囲気を持った、不思議な人。
「そっちも珍しいじゃん、お仕事人間なのに」
「こういう飲み会は割と顔出すよ?青さんが来てないからそう感じるんじゃない?」
左手に持った中ジョッキをごつ、とテーブルに起き、右手で持ち直した後、さらっと乾杯をしてお互い一口
「にしても青さん、元気ないの?」
「んや、騒ぐより見てたい気分だった」
チャリティーイベントも終わり、ひとときの楽しみに溢れかえる会場はとても楽しそうで、思わずふと微笑んだ。
「…伊沢くんはこれからも仕事だらけじゃないの?」 「それは青さんも一緒でしょ」
でも、それが楽しんだよなあ。なんて笑った後遠くを見る眼差しはいつも真っ直ぐで。本当に変な人だな、って思う。
(ほんと、頑張り屋さんだなあ)
…笑顔も可愛いし、ユーモアもあるし、QuizKnockのCEOまで務めちゃう頑張り屋さんなんだから、もちろんモテない筈がなくて。
そして悲しいことに私も例に漏れず彼をイイなと思う女の一人となってしまった。
ほんの少し赤くなった伊沢くんの目元をぼんやりとみていると、ん?と不思議そうな顔をされて。
「なんかついてる?」
「いや、なんでもない」
「なに〜」
私たち2人だけのゆっくりした空気感に、ちょっぴり笑みをこぼし、両手をゆっくりと床におろす。
「ねぇ」
ねぇ、の後の言葉を聞くために、ふと彼の方を向いた頃には、熱い左手が私の右手に重ねられていて。
ちらとそれを一瞥したあと、飛び跳ねそうな心臓の音を隠すようにクスッと笑って「…なにこれ?」と言うと 「なんだろうね?」と伊沢くんはイタズラに笑った。
少しずらされた彼の左手の指が、ゆっくりと私の右手に絡められる。
「…ほんとに、なんだろうね?」
私の顔を覗き込みながら、追い打ちをかけるようにそう言って笑う彼に少しドキドキしながらも、強がって私も笑う。
「伊沢くん」
「なに?」
「正直な気持ち言っていい?」
一瞬、強張ったものの、彼は私になに?と優しく問いかけた。
(今日くらい、お酒の力を借りてもいいのかもしれない、から)
寄せられた耳元に、そっとささやく
(この時間が、ずっと続けばいいのにね)
喧騒の中で静かに、耳まで赤く染めた彼は、今度は照れたように笑った。
「ほーんと、敵わないね」
-このまま時が止まればいいのに-
(俺もおんなじ事、思ってる)