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「…え、席替え?」
「…あんたまた話聞いてなかったの?」
7時間目のHR前、親友の春妃は私の顔を見て深いため息をついた。
「次のHRで席替え。くじ引きだってさ」
「ええ~、…ふくらくん見えなくなっちゃうじゃん」
「まだ言ってんの?」
いい加減連絡先ぐらい聞きなよ、なんて言うけれど、聞けたらこんな事でうだうだいってないんだけどな。担任が教室に入ってきて、喧騒が波のように引いていく。
(、きれーな横顔)
斜め後ろから見る、彼の顔が好きだった。
勉強がよく出来て、みんなに優しい福良くんとは必要最低限の会話しかしたことがないし、目立つタイプかと言われるとそうではない、…けれど私は福良くんのことがすごく気になっていた。
同じクラスになって、数ヶ月前の席替えで彼の斜め後ろの席になって…密かに舞い上がっていたものの、そんな甘い展開は簡単には訪れない。
「はい、じゃあ前言ってた通り席替えします。出席番号順にくじ引いて~」
チャイムが鳴るや否や、担任が気だるげにそう呼びかける。今度は喧騒が波のように押し寄せる。
(さよなら、美しい横顔…)
「青、あんたどこだったの?」
「前から2番目…真ん中より…」
「うわ、かわいそ。頑張ってね」
私は窓際最終列~なんて引いたくじをひらひらと揺らす。
「ぐぬぬ、特等席だ…」
「いいでしょ~」
そんなやりとりもそこそこに、ガタガタと机を動かす音が教室中に響き渡る。
(さよなら…)
仲良しの男の子とどこの席だと喋りながら机を運ぶ福良くんの背中に、心の中でそっと告げる。
-
「あれ?せんせー。ここの席ダブってる」
「あ、まじか?書き間違えたか」
私の隣でチャラチャラ系の男子2人がなにやら話し込んでいる。どうも私の右隣の席のくじがダブっていたらしく、くじに入れ漏れていたのが廊下側の最後列で、不真面目な2人はどちらが後ろの席に行くかで揉めているようだった。
「よりによってお前らか、ラチあかねーな。じゃんけんしろじゃんけん」
「あの」
先生が諦めてじゃんけんを提示した時だった。
「俺、そこいきます。」
「お、福良?お前いいのか、一番後ろの席だろ?」
「そこの2人が最後列がいいなら、俺がそこに移動して、2人に後ろ譲った方が話早いかなって」
前の方が板書よく見えるし。なんて笑うと、揉めていた2人はありがとう~!そうしよそうしよ!と机をガタガタと後ろに運んでいった。
そして、あれよあれよと言う間に私の隣に机を持ってきた福良くんにあっけにとられていると
「御園さん、お隣、よろしくね?」
メガネの奥、綺麗な瞳が柔らかく笑った。
「はい、お前ら席替え終わったな。今日は自習!」
職員会議の準備してくるわ、なんて適当なことを言って担任が教室を出る。まあみんな真面目に自習するはずもなくて。
(どうしよ、どうしよう…)
隣の席は嬉しいけれど、こっそり顔を見ることも出来ない。なんて思いつつも、欲望には勝てなくて…ちらりと福良くんの方に目をやると
「…俺が、隣じゃしんどい?」
しっかりと私の方を向いた福良くんが、そう問いかけてきた。
「あ、いや!ぜんぜん!そゆのじゃなく、て」
緊張で言葉が続かない。絶対私の顔は真っ赤だ!
高ぶる気持ちや教室の喧騒とは裏腹、私たち2人の間だけまるで凪のようで。
(あ、なんか、話、えっと)
春妃に助けを求めたくても席が遠くてアイコンタクトもできない。そんな時だった。
「そういえばこれ、席替えの時に御園さん、落としてたよ」
「え…?」
記憶のない、小さく折りたたまれたメモを福良くんから差し出される。
「じゃあ、これからよろしくね?」
ふんわりと笑顔を向けられ、つられるように笑う。
秀才福良くんはそのまま近くに座る友人と一言二言交わした後、喧騒も気にせず自主学習を始めた。
(は、はあ…)
ふう、と小さく心の中でため息をつき、差し出されたメモを開く。
「…!?」
男の子らしい、少しまとまりのない字で綴られたその文字を見る。
はっと振り向いた先、ノートに目を落とす彼の耳は、見たことないぐらい真っ赤に染まっていた。
【金曜7限のホームルーム】
(メッセージアプリのIDと、「ずっと、御園さんのことが気になってました。よかったらお友達になりませんか?」なんて言葉、まるで夢みたいな、現実。)