kwkm
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「川上くん、おかえり」
いつからか、彼女の家に帰っても「おかえり」と言われるようになって。付き合って2年の月日は心も、体も、住まいも溶け合わせて行くのに十分な期間なのだろうか、なんて他愛ないことを考えながら、「ただいま。」と短い返事をして彼女の待つリビングへ向かう。
「今日の収録も楽しかった?」
廊下からリビング…ワンルームに繋がる扉を開けると、そう問いかけながら優しく俺に抱きつく青。ほのかに甘い香りがする。彼女のヘアオイルの香りだ。
「楽しかったけど、青不足。」
「ふふ、じゃあたくさん充電してね」
ぎゅ!なんて可愛らしい擬音語を声に出して、溶けたように笑う彼女を見て思わず頬が緩む。2年という月日を経てもなお、彼女への愛情はとどまるところを知らないし、日に日に増す感覚すら覚える。あまり人に興味を持つタイプではないと思っていたんだけどな、と思いながら彼女の頬に一度口付けてから2人ソファに腰掛ける。
文句なしの幸せな日々、溶けるほどに甘い生活。しかし、一つだけ、ひとつだけ。俺には気になることがあって。
-
「ねえ、青」
「ん?」
俺もシャワーを済ませて、2人で深夜帯のテレビをぼんやり見ている時だった。
「何回か言ってるけどさあ」
「んー?」
彼女の手を引き、ずるずると自分の足の間に座らせて、そのままソファに横になる。
「なんであんまり名前で呼んでくれへんの?」
ぎくり。そんな音が聞こえそうなぐらい彼女は露骨に肩を震わせて、俺の方を見た。
「や、あ〜、えっと。」
へへへ、と乾いた笑いを浮かべてそろりと俺の足の間から抜け出そうとする彼女を抱きとめる。
「だーめ」
いつも軽く往なされていたその話をちゃんと確認すべく、俺はさらに腕の力を込めた。
「うう」
彼女はしばらく項垂れて、諦めたように俺に体重を預けた。
「恥ずかしいの?」
「まあ、…ううん…」
煮え切らない返事に、俺は彼女の耳元でふうと息を吹きかける。
「や!もう…」
ぎゅっと体をひねり、俺の顔を睨む。心なしか頬が少し赤らんでいて。
「なんかねえ、」
しばらくしてから、なんかねえ、ともう一度繰り返すも、そこからの言葉が出てこない青。俺は左腕で彼女を抱きとめて、右手でゆっくりとその髪に触れた。
「笑わないで聞いてくれる?」
「もちろん」
「川上くんのこと、名前で呼ぶの、その」
「その?」
「してる、ときが…多いから…」
彼女の髪をさりげなく耳にかける。予想通り真っ赤に染まったそこをみて、バレないように小さく笑う。
「…から?」
ちょっとした悪戯心で、さらに続きの言葉を待つ。
「なんか、ちょっと、ドキドキしちゃうの」
(その時の顔とか、思い出しちゃって)
と、消え入りそうに囁く彼女に、欲情するなという方が可笑しいだろう。
「…やっぱ、名前で呼ぶんは2人きりのときだけでええわ」
「な、」
軽い体を持ち上げて、俺と向かい合う形に座らせてすぐ、柔らかい素材に隠されたその滑らかな肌をなぞる。
「俺も、名前で呼ばれたら青のエロい顔、思い出してまう」
「や、あ…ちょ、拓朗、く…!」
俺の名を呼ぶその唇に、柔く唇を重ねた。
この恋は、まだまだ深い沼のようだ。