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フリーランスのデザイナーとしてQuizKnockに関わるようになって早1年。最初は臨時の外注だったのに、「青さんはやっぱりみんなと気が合うから。」なんてよくわからない理由で伊沢にコアメンバーとして引っ張られたのがきっかけだった。
山本くんやこうちゃんはとっても可愛い弟みたいな存在だし、河村くん、川上くんは文学の話で盛り上がれる貴重な日本語オタク。(河村くん、本当に理系なのかな?)須貝さんはその持ち前の根明振りに救われた事は数知れず。伊沢とファルコンはなんだかんだで長い仲だから今更語ることはない。んだけど。
「青さん青さん」
オフィスでwebのコーディングをしていると、福良くんが自然に私の隣に腰掛けた。
「お取り込み中?」
「あー、いや、…よし、大丈夫だよ。どうした?」
切りのいいところまでタグを打ち込み、念の為のctrl+S。その後私の落ち着きのなさがバレないよう、ラップトップを閉じて小さく息を吐いた後に福良くんをみる。
福良くん。QuizKnockではプロデューサーという立場で企画を行う言わばチームのブレイン。物腰柔らかい所作や表情、落ち着いた声で警戒心なんてものは一ミリも抱いて居なかった、んだけど。
「福良さん、青さんのことマジ狙いなんだよなー!」
いつかのアプリリリースお疲れ様飲み会で、酒に飲まれた伊沢が大声でそんな事を言ったのだった。
周りは一気に盛り上がり、福良さんと私に視線が注がれた。
「あれ、伊沢。そういう事言っちゃうの?」
けれど福良くんは至っていつものトーンで(、にしても酒強いな)笑いながらそう言って。
周りが囃し出すか否かのところで
「…じゃあ伊沢のアノ話、ここでしていいの?」
なんて爆弾を投下したことでみんなの興味はそっちに移ってしまった。
でも、そこから最後まで、自然と隣に座っていた私の腰に手を回していたのは、多分誰も気付いていない。
あの日以来、別にみんなの態度も変わらずそのままの日々であって欲しい…と思っていたんだけど、福良くんは突然飲みに誘ってくれたりプレゼントをくれたりと、さりげなく、でも確実な好意で私を満たしてくれているのは間違いなくて。
この1年で強く感じたことは、紳士な顔をした"慣れた人"と言うことだ。
(でもまあ、私なんかよりいい子沢山いるだろうし。)
福良くんのことは嫌いじゃない、寧ろ好みの部類である、ただ…ちょっと手練れな彼のやり口に遊びか本気か決めかねている所で。
「青さん?」
「あ、ごめ。飛んでた」
閑話休題。デスクに戻って。
「あ、わざわざ手を止めるほどのことでもなかったんですけど」
「あら、そうなの。なんかごめん」
「いやいや僕が」
あたりは次の動画準備のため慌ただしく私たちの前を行き来している。が、私たちの方にはどうも関心がない様子だ。
「あのね」
男の人の割に高くて甘い声が耳を掠める。少しこわばる私の耳元に、更に唇が寄せられる。
「…ピアス、とってもよくお似合いです。」
ゆっくり彼の方を向くと、慈しむような目で私をみながら、彼はその透き通る青い石のついた飾りを人差し指で緩くなぞる。耳元に一気に熱が集まったような気がして、くらくらする。
「…さすが僕、青さんのことよくわかってる。」
いつもより少し低く、掠れた声で囁かれればもう完全にノックアウトで。
言い返そうとすると同時に「ふくらさーん!」という伊沢の大きな声が聞こえる。はっと気づいて辺りを見渡すと既にみんなは撮影準備に入ったのか、そこには私と福良くんの2人きり。
「…いつでも、素直になってくださいね」
いまいく!と声を上げたのち、ちゅ、とリップノイズを立てて私の頭頂部に唇を落とす福良さん。
「…落ちる以外の道、あんのかな?」
情けなくゆるんだ顔もそのままに、福良くんがくれた青いピアスに触れる。耳は、顔は、身体は、まだまだ熱が抜けそうにない。
-策士、その名は-
(『QuizKnockプロデューサーの、福良拳です。』あの日出会った時から全部、彼の術中だったのかもしれない。なんて)