ko-chan
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「青ちゃんとこうちゃんって…付き合ってるの?」
山本の何の気無しの問いかけに狼狽えてしまったのが運の尽きだった。
「ねえ!青ちゃんとこうちゃんが付き合ってるのってマジ?!」
須貝さんが大声で作業スペースに飛び込んできてからは阿鼻叫喚の地獄絵図。
(そりゃあ、俺みたいなのが高嶺の花の青さんと付き合ったらこうなるとは思ってたけど!)
何がよかったどこがよかった、青さんはこうちゃんでいいのか、何て失礼な質問さえも飛び交うフロアに俺も青さんもなにも言えないままずっと黙りこくっていて。なんなら青さんに関しては少しうざったそうな、冷ややかな表情だから少しドギマギしてしまう。
「あら、ついに付き合ったのね〜」
そこに現れた福良さんは、さも当たり前のようにそんなことを言って笑ったかと思えば、まるでなんてことなかったみたいにラップトップを開いて編集作業をしだした。
一瞬場も落ち着いたかと思ったところで、魔王伊沢さんが現れて…
「じゃ、いまからこうちゃんと青ちゃんに1人ひとつ質問できる権利プレゼント!」なんて叫んで。嗚呼地獄。
「じゃ、質問」
悪い笑みを浮かべて手をあげたのは河村さんで。
「主導権はやっぱり青さん?」
さりげなく青さんの隣に座り、彼女の目を覗き込む。整った顔とその紳士ぶり…俺とは全然違うタイプだな、と思いつつも青さんと距離の違い河村さんを無意識に睨み付けていたようで、柔らかい微笑みを向けられて思わず目を逸らす。
青さんがクイズノックに入った最初の頃、好みは河村さんのような人だと言っていたのが未だに脳裏にこびりついていて…俺は思わず彼女の顔を見る。
「…当たり前じゃないですか、わたしの方が年上だし」
冷静を装いつつも普段は河村さんに対してタメ口の青さんが思わず敬語で答えてしまい、また狼狽える。
「へえ、やっぱり青さんは引っ張っていくタイプなんですねえ」
河村さんはまるで我が子を見るような優しい眼差しで俺と青さんを交互に見て、もういちど柔らかく微笑んだ。
「ごめんねえ…」
オフィスでの仕事後、青さんの家に向かうと、申し訳ないと青さんは項垂れたまま俺を出迎えてくれた。
「いいんです、むしろ俺こそすみません」
ワンルームの真ん中、2人でソファに並んで座る。
バレンタインの告白から数日後、俺からもう一度告白をして晴れて恋人になったけれど。
(まさか、青さんのはじめての彼氏だなんて)
ちらりと隣を見ると、綺麗な伏せた睫毛が目に入る。見惚れていると、その目はこちらを向いて。
「なに?なんかついてる?」
「あ、いや、綺麗。だな、って」
しどろもどろに褒めると、青さんの顔はみるみるうちに真っ赤になって。
「うう、意地悪」
普段のかっこいい雰囲気からは想像もつかないぐらい、可愛く俺を睨む。ほんの少し嬉しくなって、少しだけ身を寄せる。
「…誰が主導権取ってるんでしたっけ」
「あーもうやだ、きらい」
「本当ですか?」
「…うそ、です」
両手で顔を覆う青さん、その手を掴んで開くと、きゅっと下唇をかんで俺から目をそらす。ああ、気が狂いそうなぐらい可愛い。
「情けないよね、年上なのにこんな…恋愛不器用で…」
「もー、だめ!そんなことないです。可愛すぎます!」
俺はその手をぐっと引いて、彼女を抱きしめた。
「主導権とかどうでもいいです、俺は、青さんが、全部好きです」
「うー…!」
自分の心臓が馬鹿みたいにうるさい。きっと青さんにも聞こえているであろうそれが、バレないように更に強く抱きしめる。
「くるし、」
「おう、すみません」
ゆっくり離れると、青さんは相変わらず真っ赤な顔のままで、ふにゃりと笑った。きっと俺しかまだ知らない、彼女の笑い方。
「青さん、ホワイトデーなんですけど」
「なに?」
「プチ旅行、とかどうです?」
「え!」
切れ長の目をまん丸に開いて、青さんは笑った。
「付き合って日も浅いし…嫌なら大丈夫なんですけど、俺、もっと青さんのこと知りたいし、知って欲しいな。って」
「う、」
「う?」
「うれしい、です」
今にも泣き出すんじゃないか、ってぐらいに目を潤ませた彼女。俺をどこまでダメにするつもりなのか。
「…そういえば」
「ん?」
俺はふと思い出したように、彼女に問いかける
「青さん、河村さんが好みって最初の方言ってましたよね?」
「あー…ああ…」
青さんは少し考えて、その後に照れたように笑った。先ほどまでの甘い気持ちがほんの少し陰って、彼女の顔を覗き込む。
「あれはね、言っていいよ、て言われてたっていうか…」
「え?」
不思議に思って聞き返すと、彼女は照れたように俺に抱きついた。
「一番最初にね、私がこうちゃんのこと好きって気づいたの、河村さんだったの。」
きゅ、と抱きしめる力が強くなる。
「色々と相談乗ってもらうことがあって…そのあと、もしみんなにばれたくないなら僕のこと適当に使ってくれていいですよ、って」
河村さんらしいといえばらしいが、きっとあの人のことだ、ここで俺が嫉妬することまで見越した動きだとおもうと…少ししてやられた気持ちにもなる。
「だから、」
俺が少し考えていると、彼女の方から声がかかった。
「?、なんですか?」
「みんなの前だと、まだ素直になれなくて…ごめんね」
青さんは俺の顔色を伺うように小さく呟いた。
「こうちゃんのこと、大好きなんだけど、なんか、自分のキャラじゃないかなって…強がっちゃって…」
しゅんと項垂れた彼女をみて、つい笑みが溢れた。
「それでいいですよ」
「え?」
「かっこいい青さんが、本当はこんな可愛い
ってみんなに知られちゃったら、俺も気が気じゃない。」
し、独り占めしたいし。本音は胸の奥にしまって、彼女に笑いかけた。河村さん、ずる賢い人だけど、どこまでも優しいな。なんてちょっと嫉妬しつつ。
しばらくの間の後、彼女はがばりと俺に抱きついて、触れるだけのキスをした。
「なっ...!」
「もう、好きすぎる。」
なんだか怒ったような声色で、けれど少し嬉しそうに。
青さんはもう一度俺にキスをした。
こんな可愛いところ、絶対俺だけにしか見せないでくださいよ。と思いながら、旅行なんていったら絶対に我慢できないだろうな。と近い未来に想いを馳せて、小さく笑った。
甘いだけじゃ言い表せない
(お、こうちゃん。楽しんでる?)
(...河村さんの方が楽しんでません?)